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一杯の記録|番外編|一杯の向こう 第7編 澄みの先へ向かう十の流れ

一杯は、重なる。
そして、ほどけていく。

低く沈むものもあれば、
すっと流れるものもある。

澄みに辿り着いた先で、
言葉を離れる一杯もある。

ここからは、第61話から第70話までの
“澄みの先へ向かう十の流れ”。

味ではなく、
その移ろいを辿る。



第61話|春鹿 純米 超辛口(奈良・ならまち)

今西清兵衛商店


春は、すでに酒の中にあった。

やわらかな甘み。
静かにほどける飲み口。

陽だまりのような温度。
やさしさの奥で、芯はぶれない。

やわらかく、ひらいていく。



第62話|天美 純米吟醸 うすにごり生原酒(山口・菊川)

長州酒造


ほどける透明。

軽やかで、澄んでいる。

触れた瞬間に消えても、
印象は鮮烈に残る。

設計された美しさが、
空気の中へ、ほどけていく。



第63話|紀土 純米酒(和歌山・海南)

平和酒造


「ちょうどいい」という完成。

なめらかな流れ。
余計なものがない。

引っかかりのないまま、
自然に次へ。

ただ、静かに、流れ続ける。



第64話|會津宮泉 純米酒(福島・会津若松)

宮泉銘醸


正道の美しさ。

米と水に向き合い、
ただ正しく積み上げる。

揺れない。
迷わない。

迷いのない輪郭が、
まっすぐに、流れている。



第65話|屋守 純米中取り無調整生(東京・東村山)

豊島屋酒造


現代の躍動。

華やかで、瑞々しい。
それでいて、崩れない。

甘みが弾み、
旨みが追う。

流れの中で、
軽やかに跳ねている。



第66話|豊國 純米酒(福島・会津坂下)

豊国酒造


低く、沁みる。

派手さはない。
じんわりと広がる旨み。

時間をかけ、
静かに染みていく。

深く、ゆっくりと沈んでいく。



第67話|萩乃露 雨垂れ石を穿つ 十水仕込特別純米生酒(滋賀・高島)

福井弥平商店


密度の中の透明。

濃い。
それでも、濁らない。

十水の厚みと、
生酒の清らかさ。

相反するものが、
重なりながら流れていく。



第68話|三笑楽 山廃純米 山田錦(富山・五箇山)

三笑楽酒造


山の太さ。

どっしりとした旨み。
低く、力強い。

動かない。
けれど、止まってはいない。

重厚なまま、流れている。



第69話|山三 山恵錦 純米吟醸(長野・上田)

山三酒造


水の、その先へ。

やわらかな甘み。
澄んだ流れ。

整っている。
それでも、まだ進んでいる。

水のように、けれど水以上に、
ほどけながら、先へ進む。



第70話|観音下 無濾過原酒 2019 Vintage(石川・白山)

農口尚彦研究所

言葉の外にある一滴。

整っている。
けれど、少し遠い。

美味いかどうかではない。
ただ、そこにある。

静かに、そこにあり続ける。

ひとつの、到達。



おわりに

酒は、重なる。

深まり、
ほどけ、
そして流れていく。

澄みの先に、
言葉の届かない領域がある。

振り返れば、
そこには十の静かな流れ。

また十杯重なったら、
その先を辿ってみよう。

——  一杯の向こう、そのさらに向こうへ。

一杯の記録|第61話〜第70話 一覧

61話|春鹿立春朝搾り(奈良・ならまち)
62話|天美純米吟醸うすにごり生原酒(山口・菊川)
63話|紀土純米吟醸春ノ薫風生酒(和歌山・海南)
64話|會津宮泉純米酒無濾過生(福島・会津若松)
65話|屋守純米中取り無調整生(東京・東村山)
66話|豊國純米酒(福島・会津坂下)
67話|雨垂れ石を穿つ十水仕込特別純米生酒(滋賀・高島)
68話|三笑楽山廃純米山田錦(富山・五箇山)
69話|山三山恵錦純米吟醸(長野・上田)
70話|観音下無濾過原酒 2019 Vintage(石川・白山)

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