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一杯の記録|第65話 屋守 純米中取り無調整生(東京・東村山)

一杯の酒から、その土地をたどる。

東京・東村山。
武蔵野の面影が残る町だ。

畑と林が広がり、
空は思いのほか広い。

屋守を醸す豊島屋酒造は、
慶長年間、江戸・神田で産声を上げた。

町は江戸から東京へと変わった。

けれど、暖簾を継ぐ意志は、
この地で今も、
熱く、瑞々しく脈打っている。

江戸の粋を、今の感性で。

米と水に向き合い、
酒を整える。

四百年を超える歴史は、
古びるためではなく、
この鮮やかな一杯を醸すためにある。

さて、本題。

立ち香は、明るい。
完熟したメロンのような、
やわらかな果実の気配。

口に含むと、
しゅわりと、生きたガスが弾ける。

瑞々しい。

ジューシーな甘みが、
ぱっと、口腔を塗り替えていく。

軽やかだ。
けれど、すぐに
密度の高い旨みが追いかけてくる。

甘みと旨みが、
ぐっと重なり、
心地よい酸が、その輪郭を鮮やかに縁取る。

華やかだが、
流れは崩れない。

余韻はやわらかい。
上質な果実を頬張ったあとのような満足感を残して、
静かにほどけていく。

——うん、いいね。

東京も、まんざらでもない。

この一杯は、
そんな“躍動する旨み”として、ここに記録しておく。

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