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一杯の記録|第69話 山三 山恵錦 純米吟醸(長野・上田)

一杯の酒から、その土地をたどる。

長野・上田。
山に囲まれた、静かな盆地だ。

冬は冷え込み、空気は澄む。
水は低く、ゆっくりと流れている。

山三酒造は、
一度、酒造りを止めた蔵だ。

そして、戻ってきた。
ここで、もう一度、酒を醸すために。

すでに整っている。
それでも、まだ進み続けている。

この土地の水が、
その輪郭を静かに支えている。

さて、本題。

立ち香は、華やか。
やわらかな果実の気配。

口に含むと、
わずかに舌先がほどける。

甘みがある。
けれど、広がりは水のようにきれいだ。

軽すぎない。
ほどよい厚みが、静かに下支えしている。

旨みは、
時間とともにほどけていく。

最初は、少しだけ若い。
けれど、次第に、角が取れていく。

後半、
うっすらとした苦み。
それが、流れを引き締める。

やわらかく消える余韻。

——  水のように、けれど、水以上に。

すっと、澄んでいく。

この一杯は、
そんな“水の輪郭”として、ここに記録しておく。

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