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一杯の記録|第68話 三笑楽 山廃純米 山田錦(富山・五箇山)

一杯の酒から、その土地をたどる。

富山・五箇山。
切り立った山々に囲まれた、雪深い地だ。

冬は白く閉ざされる。
人の歩みも、
時間の流れも、ここではゆっくりだ。

三笑楽酒造は、
この山あいで灯を守るように
酒を醸してきた。

地元の人は、
親しみを込めてこう呼ぶ。

「山の酒」と。

都会の華やかさを追うのではない。
厳しい冬、囲炉裏を囲む食卓で、
静かに、けれど力強く、
盃を重ねるための酒。

さて、本題。

立ち香は、穏やか。
静かな米の気配が、深く漂う。

口に含むと、
山廃らしい厚みのある旨みが、
どっしりと舌を満たす。

山田錦のふくらみが、
内側から熱を帯びるように
広がっていく。

その奥に、
わずかな熟成の影。

それを支えるのは、
太く、揺るぎない酸の骨格だ。

ほのかな渋みが、
野生の力強さとなって、
味の輪郭を締める。

重厚だ。

それでいて、
雪解け水のような瑞々しさが、
その芯をきれいに貫いている。

冷やしてよし、
燗してよし。

温度を上げるほどに、
山の懐のような
広がりを見せる。

—— いいのを見つけた。

この一杯は、
そんな“山の酒の太さ”として、
ここに記録しておく。

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