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『八雲の妻 小泉セツの生涯』~朝ドラ「ばけばけ」主人公のモデルの生涯を知るのにおすすめ!

長谷川洋二『八雲の妻 小泉セツの生涯』概要と感想~NHK朝ドラ『ばけばけ』の副読本におすすめ!

Amazon商品紹介ページより

今回ご紹介するのは2025年9月に潮出版社より発行された長谷川洋二著『八雲の妻 小泉セツの生涯』です。

早速この本について見ていきましょう。

今秋の、NHK朝ドラ「ばけばけ」で話題沸騰!!

小泉八雲の妻・セツの人生がこの一冊に凝縮!

出雲・松江でラフカディオ・ハーン(小泉八雲)とめぐり合い、
人生の伴侶であっただけでなく、『怪談』などの
再話文学創作における最高のアシスタントでもあった小泉セツ。
そんな一人の女性の生涯を、豊富な資料をもとに丁寧に
描き出した唯一無二の力作評伝。

Amazon商品紹介ページより

本書は朝ドラ『ばけばけ』の主人公のモデルとなった小泉セツの生涯を知れるおすすめ伝記です。

本書をおすすめしたい理由は何と言っても、著者の次の言葉にあります。

今秋(二〇二五年)からNHKの連続テレビ小説(「朝ドラ」)で、セツを主人公とする「ばけばけ」(「化け化け」の意)が放映される。その要かなめとして本書が使われているので、読者は比較することによって、「ドラマ化」の妙を堪能することができるだろう。

潮出版社、長谷川洋二『八雲の妻 小泉セツの生涯』P359

そうです。本書は朝ドラの脚本においても非常に大きな意味を持つ作品となっています。

著者が述べるように、史実とドラマの違いを考えながら観るというのも、刺激的な楽しみ方ですよね。

そして本書自体も当時の武士たちが置かれていた残酷で悲惨な運命が事細かに語られていて、「幕末、明治維新の日本はこんなことになっていたのか」と目が開かれるような思いになります。これを朝ドラでやるとなると、かなりえげつないシーンが続くなと今から心構えをしてしまっている自分がいます。

しかもこの幕末から明治維新にかけての悲惨な転落というのは、私にとっても他人事ではありません。

なぜなら私は仏教僧侶だからであります。

日本のお寺業界も武家同様、明治維新に廃仏毀釈によって大変な苦難を味わうことになりました。

有名な話で言いますと、あの興福寺の五重塔が薪として二束三文で売られる寸前までいってしまったという話があります。ぎりぎりのところで食い止められはしましたが、興福寺の荒廃はそれほど厳しいものだったのです。もしそのまま荒廃が進んでいたら、今や国民的人気となった阿修羅像ももしかすると二度と見れなくなっていたかもしれません。

この廃仏毀釈の流れについては以前当ブログで紹介した牧野隆夫著『仏像再興 仏像修復をめぐる日々』に詳しく書かれていますのでぜひおすすめしたいです。

この本の後半では明治政府の神仏分離令やその後の仏教、神道政策の流れがわかりやすく解説されます。この解説が見事で、私もこれまで何冊か廃仏毀釈に関する本を読んだのでありますがその中でも圧倒的にわかりやすく、深い考察がなされています。

ただ単に廃仏毀釈で寺院や仏像がひどい目に遭ったという事例紹介で終わるのではなく、なぜそれが起こったのか、それが進んだ背景とは何だったのか、人々はそれに対しどのような思いを持っていたのかということを現場の目線からも見ていきます。破損した仏像を修復してきた著者だからこそ見えてくるものがあります。

本書で語られた廃仏毀釈の実態を知り、私は衝撃を受けずにはいられませんでした。単に「寺院や仏像が破壊された」で済まない大きな歴史のうねりがそこにあったのです。「廃仏毀釈は江戸時代に堕落した仏教への反感から起こった」という説が世間で説かれていたこともありますが、これがいかに作為的なものだったか本書を読めばはっきりします。

この『八雲の妻 小泉セツの生涯』でも、まさに武士が没落したその背景を詳しく知ることができます。仏教と武家、共に旧時代の価値観や体制を代表する存在でありましたが、そこに忠実であったが故に新時代に対応できない、あるいは狙い撃ちされるという悲しい運命を本書では知ることとなります。

そしてそんな没落士族出身の小泉セツだからこそ小泉八雲の偉大な業績の影の功労者となれた。これがまた何ともアツいのですよね。さすが朝ドラヒロインのモデルともなる女性です。

また、本書では小泉セツの様々な側面や、家族についても詳しく知れますので、ドラマと比較するのもいよいよ面白いかと思います。

セツの波乱万丈な人生だけでなく、当時の時代背景も知れる本書は実に刺激的でした。情報量も多く、入門書としてはちょっと厳しいかなとも思いますが、朝ドラの副読本としてぜひおすすめしたい一冊です。

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