見出し画像

映画感想(10) ヨーロッパ映画 (~1949)

サブスクで見た有名な作品のちょっとした感想を書いてます。順不同。
備忘録みたいなものですね。随時追加していきます。


嘆きの天使 Der blaue Engel
1930年 ドイツ 107分
★★★
監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
脚本:ロベルト・リーブマン
出演:マレーネ・ディートリヒ/エミール・ヤニングス/クルト・ゲロン

戦前のドイツ映画の優秀さを象徴する名作。ナチ以前の戦前ドイツ映画を代表する作品だが、監督はハリウッド育ちのドイツ人ジョセフ・フォン・スタンバーグでいわば逆輸入。この時期のドイツ映画は名作の宝庫なのだが、この作品は今見るとセンスがちょっと古いかなと感じるところはある。マレーネ・ディートリッヒの出世作なんだけど、この時彼女はすでに30歳近かった。彼女がスタンバーグと出会ってなかったら、映画の歴史自体がだいぶ違ってたかもしれない。この作品の公開直後アメリカに渡って撮ったのが有名な日本初の字幕付トーキーだった「モロッコ」。以降パラマウントの主力女優としてハリウッドに定住しちゃうのでドイツ製作のトーキー映画は生涯この一本だけ。彼女、ハリウッドから隠遁してヨーロッパに戻ってもドイツには殆ど帰ってない。いろいろ思うところがあったんだろうな。


自転車泥棒 Ladri di biciclette
1948年 イタリア 93分
★★★★☆
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
脚本:オレステ・ビアンコリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ヴィットリオ・デ・シーカ/アドルフォ・フランチ/ゲラルド・ゲラルディ/ジェラルド・グエリエリ/チェーザレ・ザヴァッティーニ
出演:ランベルト・マジョラーニ/エンツォ・スタヨーラ

イタリアンネオレアリズモと言えばこの作品。デ・シーカの名声を世界に届かせた名作。
ようやくありつけた仕事に必要不可欠な自転車を盗まれて再度失業の危機に陥った労働者親子が自転車を探してローマの町中を彷徨う。ただそれだけの映画。素人の配役で派手な演出のないドキュメンタリータッチで淡々と進行する。親子の絆を確かめるようなラストシーンは文字通り全世界が涙するレベル。ベタだが、こういうのはベタがいいのだ。まごうことなき名作。
このあとデ・シーカは「ミラノの奇跡」でファンタジックな世界をネオレアリズモ手法で描き、スタイルとして一つの完成形を作り出すが、ネオレアリズモの本来の精神である市井の人々のリアルな姿を体現しているのはやはりこの作品だろう。


靴みがき Sciuscià
1946年 イタリア 93分
★★★
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
脚本:セルジオ・アミデイ/アドルフォ・フランチ/チェーザレ・ジュリオ・ヴィオラ/チェーザレ・ザヴァッティーニ
出演:フランコ・インテルレンギ/リナルド・スモルドーニ/エミリオ・チゴリ

デ・シーカの「自転車泥棒」よりも前の作品で、これもネオレアリズモの傑作として名高い。「靴みがき」というタイトルだが、靴を磨くのは最初の5分くらい。あとは靴を磨いていた仲の良い少年二人の転落人生を描いている。
仲間の盗難事件に関与したかどで少年院送りとなった二人だが、ふとした勘違いから仲違いし、別グループに属して反目しあうようになってしまう。ラストまで勘違いのまま悲しい結末。この頃のデ・シーカ作品はみな切ない。


にがい米 Riso amaro
1949年 イタリア 107分
★★★★
監督:ジュゼッペ・デ・サンティス
脚本:コッラード・アルヴァーロ/ジュゼッペ・デ・サンティス/カルロ・リッツァーニ/カルロ・ムッソ/イヴォ・ペリッリ/ジャンニ・プッチーニ
出演:ヴィットリオ・ガスマン/ドリス・ダウリング/シルヴァーナ・マンガーノ/ラフ・ヴァローネ

これもネオレアリズモ期のイタリア映画を代表する傑作。
汗と泥と肉体を前面に出したリアルなドキュメンタリー風の水田労働の描写と、男女4人が入り乱れるチープなメロドラマが大胆に混在しているところが大きな魅力。アメリカ的消費文化に憧れる地元の田植え女を軸に、戦後イタリアの貧困、階級、女性労働、モラルの揺らぎがストレートに可視化される一方、ネオレアリズモ的世界には相応しくないシルヴァーナ・マンガーノのあまりにも肉感的な刺激が映画のバランスを崩す危うさもあって、定式化したネオレアリズモとは一線を画す冒険ぶりが魅力となっている異色作。
マンガーノはこれが実質デビュー作にしてすでに映画の主題には場違いともいえるスターらしい輝きを放っている一方で、ハリウッドから場末に流れ着いた感のあるドリス・ダウリングのこなれた疲労感が作品に何とも言えないリアリティを与えている。


第三の男 The Third Man
1949年 イギリス 105分
★★★★★
監督:キャロル・リード
脚本:グレアム・グリーン
出演:ジョゼフ・コットン/アリダ・ヴァリ/オーソン・ウェルズ

テーマ曲が有名な割に内容が知られていない映画ベスト10を作ったら確実にランクインしそうな作品。ミステリーなのでネタバレしちゃいけないから、紹介サイトとか見てもストーリーがあまり詳しく描かれていない。
とは言え、オーソン・ウェルズのクレジット上の扱いを見れば概ね内容の想像は付きそう。モノクロの暗い画面が続く中で、アリダ・ヴァリの神秘的な美しさが作品に華やかな色を添えている。アリダ・ヴァリはヴィスコンティやベルトルッチやパゾリーニと組んで印象的な作品に出演しているがそのほとんどが配信では見ることができない。残念。
オーソン・ウェルズ演じるハリーの名セリフ「500年の平和と民主主義はいったい何をもたらした? 鳩時計だよ」は強烈なインパクトあり。


天井桟敷の人々 Les enfants du Paradis
1945年 フランス 190分
★★★★★
監督:マルセル・カルネ
脚本:ジャック・プレヴェール
出演:ジャン=ルイ・バロー/アルレッティ/ピエール・ブラッスール/ マルセル・エラン/マリア・カザレス/ルイ・サルー

ヴィシー政権下のパリで撮影された、フランス映画を代表する名作。
映画自体が舞台劇のようなシアトリカルな作りになっていて、劇中劇の臨場感を高めている。たぶん戦時下での機材の問題などもあって映画を撮る上での制約も多かったんじゃないかと思うんだが、それを逆手に取った演出は見事。照明の暗さで舞台装置的な演出を見せていたりするのだが、4Kレストア版だと全般的に明るくなっていて、舞台的な様式美が少し失われているように見えるのが若干残念。圧倒的に美麗だけどね。
正直、映像のクオリティという点では、同時期のハリウッド映画のみならずイタリア映画あたりと比べても質感の古さは否めない。当時のフランス映画の粋を集めた大作のはずなのだが、映像は割とちゃっちい。ま、当時の状況考えるとこのレベルの大作を撮れたこと自体が奇跡なのかもしれない。
これだけの尺の割に登場人物は少なく、ストーリーも一見さほど複雑なものではないように見えるが、神の視点を見るもの=「観客」に委ね、その観客の視点が映画と劇中劇での二重構造になっているという構成と、タイトルにこめられた「天井桟敷で芝居を観る人々」と「天国の子供たち」というダブルミーニングの解釈が物語に深みを与えている。
十代の頃最初に見たときは主人公ほか男たちがみな思慕を寄せるガランスの外見が全く美しく見えなくてストーリー自体にどうにもピンと来なかったのだが、今改めて見ると魅力がよくわかる。年を取ると言うのはこういうことなのか。
とは言えやはりマリア・カザレス演じる主人公夫人の方が圧倒的に魅力的に見えるのは後のイメージゆえだろうか。


渇望 Törst
1949年 スウェーデン 85分
★★★★☆
監督:イングマール・ベルイマン
脚本:ヘルヴェット・グレヴェーニウス
出演:エヴァ・ヘニング/ビルイェル・マルムステーン/ビルギット・テーングロート/ミミ・ネルソン

ベルイマンの初期の傑作。
まだ数本のキャリアしかなかった頃に撮った作品だが、二人の女性の苦悩を二つの舞台設定でシンクロニックに描く意欲作。一方の死が一方の生の意思を示唆していたり、二人の境遇がいつの間にかシンクロしていくように見えたり、後の「ペルソナ」や「叫びとささやき」にも通じるような多層的構造の萌芽が既にみられる。
戦後のドイツを鉄道で旅する若い夫婦の不和と夫人のトラウマの回想とストックホルムでひとり孤独に耐える夫人の元同僚で夫の元恋人のストーリーが場所を隔てて交錯する。
あまり知られていない作品だが、ベルイマンは最初から凄かったのだというのがわかる傑作。


郵便配達は二度ベルを鳴らす Ossessione
1943年 イタリア 140分
★★★
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ
出演:マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマイ/ファン・デ・ランダ

イタリアンネオレアリズモの先駆とも言われる、ヴィスコンティの記念すべき商業映画デビュー作。1934年に出版されたジェームズ・M・ケインの小説の映画化だが、原作者の許可を得ていなかったため公開後お蔵入りになってしまったという今では信じられないような顛末で幻のデビュー作とも言われていた。そのせいもあってか日本初公開は約40年後の1979年。その後は名画座のヴィスコンティ三本立てみたいな興行の常連的な作品になった。
原作の英題は邦題通り"The Postman Always Rings Twice"だが、この映画のタイトルは"Ossessione" (妄想)
不倫の末の偽装殺人と原作通りのストーリー展開ではあるが、途中の主人公の放浪や、不倫女のキャラクターの曖昧さなど、この作品ならではのモチーフがあり独創的な作品に仕上がっている。


揺れる大地 La terra trema: episodio del mare
1948分 イタリア 160分
★★☆
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:アントニオ・アルチディアコノ/ジュゼッペ・アルチディアコノ/アントニオ・ミカーレ

ネオレアリズモ時代のヴィスコンティの代表作。
シチリア島を舞台に漁師一家の苦難を、素人俳優と現地方言、カットの極めて少ない長回しの採用など徹底したリアリズム手法に基づいてドキュメンタリータッチで描いた力作。めっちゃ共産主義丸出し。
漁師一家の跡取りが中間搾取を排し直売や加工品の販売など独創的で意欲的な取り組みを始めるが悉く失敗、借金と貧困にあえぐようになり誇りを失っていくリアルすぎてしんどい話になるのだが、最後の最後に戦いを諦めない純粋さに触れることで再起への希望を紙一重で残す。このギリギリの感じが「ベニスに死す」以前のヴィスコンティの衰退や終焉の在り方に繋がっていく感覚はある。共産主義は負けない!みたいな強いメッセージじゃないのが却ってリアル。


美女と野獣 La Belle et la Bête
1946年 フランス 95分
★★★★
監督:ジャン・コクトー
脚本:ジャン・コクトー
出演:ジャン・マレー/ジョゼット・デイ/ミラ・パレリ

一般的にはディズニー映画として名高いフランスの童話だが、そのほぼ半世紀前にジャン・コクトーの手で映画化された名作。ボーモン夫人の原作に近いストーリー立てで、ディズニー版しか知らないとまるで違う話のように見えるが、こっちが正統派。
一番の違いはディズニーでは野獣が女性を大事にすることを学ぶのだが、原作および本作ではベルがルッキズムの過ちを学ぶプロットになっていること。ディズニー版のガストンっぽい粗野な男は原作にはないが、この作品には出ているので、ディズニー版が本作の設定をパクってるということだろう。
コクトーらしい耽美的な映像至上主義をめざした作風だが、予算も技術も足りないので、いかにもなちゃっちいセットとチープな映像トリックでフィクショナルな世界をフィクショナルなファンタジーとして提示していて潔い。野獣のメイクが可愛いのが何とも言えず味わい深い。歌舞伎の隈取を参考にしたらしいが、なんか勘違いしてるっぽい。


黒水仙 Black Narcissus
1947年 イギリス 100分
★★★☆
監督:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー
脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー
出演:デボラ・カー/フローラ・ロブソン/ジーン・シモンズ/デヴィッド・ファーラー/サブー/エズモンド・ナイト/キャスリーン・バイロン/ジェニー・レアード

エギゾチックな植民地の貞淑な修道院でエロいことしちゃうという欧米人が好きな要素を組み合わせた困った作品。今では何もかもが全部アウトな価値観だがこの時代はこういうのが好まれたわけね。若くして院長に抜擢され野心に燃えてたデボラ・カー演じる修道院長も、ハーレム宮殿だったというエロスの呪いに取り付かれて徐々にエロいこと考え始めて、周りのシスターとの軋轢と嫉妬でドロドロのソープオペラ化する。前半のトーンと後半はガラッと変わって怖い。
インドのヒマラヤ山脈が舞台だが、撮影はすべてロンドンのスタジオで背景すら全て書割。テクニカラーの色彩も見事で当時の技術的にはめちゃくちゃすごい。
イギリスではそこそこキャリアのある中堅女優だったデボラ・カーにとってはこれが出世作となり、ハリウッド進出の契機となった。その後の活躍は此処で書くまでもなし。ジーン・シモンズはここでは端役だが、次の「ハムレット」で飛躍。なんやかんやで記念碑的な価値もある傑作と言って良いだろう。


ハムレット Hamlet
1948年 イギリス 155分
★★★☆
監督:ローレンス・オリヴィエ
脚本:ウィリアム・シェイクスピア
出演:ローレンス・オリヴィエ/ジーン・シモンズ/アイリーン・ハーリー

あまりにも有名なシェイクスピアの悲劇戯曲の映画化。
何度も映画化されている名作だがシェイクスピア俳優として名高いローレンス・オリヴィエが監督と主演を務めた決定版。オリヴィエにして見ればこの演目ならば演出も役柄もお手の物といったところだろう。半世紀後1996年に撮られたケネス・プラナー版も力作だが、敢えて1本だけ見るならこちらだろうか。
シェイクスピアの原作に忠実なストーリーで、演出も時代がかった仰々しさを感じるが、それが重厚さを醸し出している。オフィーリア役のジーン・シモンズの出世作であり代表作となった作品。


パルムの僧院 La Chartreuse de Parme/La Certosa di Parma
1948年 フランス・イタリア合作 174分 (完全版)
★★
監督:クリスチャン=ジャック
脚本:ピエール・ヴェリ/ピエール・ジャリ/クリスチャン=ジャック
出演:ルネ・フォール/ジェラール・フィリップ/マリア・カザレス/ルイ・サルー

終戦直後のフランス映画復興時代を代表する大作だが、今見るとどうにもしょぼい。フランスでは大ヒットしたらしいが、どの辺がフランス人のツボなのか正直よくわからない。
パルムとはパルマのフランス語読み。宮廷の政治駆け引きや陰謀に巻き込まれ波乱万丈の人生を余儀なくされながらも自由を貫徹する若者の姿を描いている。登場人物が多くてストーリーがよく見えづらいのだが、これでも原作に比べるとだいぶ端折ってるらしい。最後、黒幕も倒してハッピーエンドかと思いきや、みんな離れ離れになってしまうのがどうにも開放感がない。
これを見ると、ヌーヴェルヴァーグな人たちが批判していたことがなんとなく理解できないでもない。


無防備都市 Roma città aperta
1945年 イタリア 100分
★★★★☆
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミデイ/フェデリコ・フェリーニ/チェレステ・ナガルヴィッレ/ロベルト・ロッセリーニ
出演:アルド・ファブリーツィ/アンナ・マニャーニ/マルチェロ・パリエーロ

デ・シーカと並ぶネオレアリズモの巨人ロベルト・ロッセリーニの代表作。「戦争三部作」の第一弾。反ナチスレジスタンスの指導者を追うナチスと彼を匿う人々の攻防を描く人間ドラマ。ネオレアリズモと言いつつオールロケではなく俳優もプロが中心ではあるが、敗戦国イタリアの空気と緊張感をそのまま封じ込めたようなリアルさが国際的に絶賛された。ネオレアリズモという「用語」から連想されるような、現実の世界をそのまま切り取って来ましたというような演出ではなく、ドラマ構成を緻密に計算した上でのリアルさの再現をめざしているもので、そういう意味ではデ・シーカの作品が持つリアルさとは質が異なる。どちらも凄いけど。
すでにハリウッドで大女優となっていたイングリッド・バーグマンはこの映画を観て感銘を受け、ロッセリーニの元へと走って不倫関係になってハリウッドから干されてしまった、と言う有名な逸話あり。
敗戦直後のイタリア映画のレベルの高さを全世界に轟かせた名作であり、イタリア映画の希望の証となった作品でもあった。必見。


戦火のかなた Paisà
1946年 イタリア 134分
★★★★
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミデイ/フェデリコ・フェリーニ/チェレステ・ナガルヴィッレ/ヴィクター・ヘインズ/マルチェロ・パリエーロ/ロベルト・ロッセリーニ
出演:カルメラ・サツィオ ロバート・ヴァン・ルーン ドッツ・M・ジョンソン

ロッセリーニ戦争三部作の第二作。
連合軍による解放間近の終戦直前のイタリアの戦地で繰り広げられる様々な人間ドラマを連合軍の北進と併せてクロニクルなオムニバス形式で描いた秀作。米軍が上陸したシチリアから徐々に北へと進み最後はポー川の戦いまで、6部構成となっているが、それぞれのエピソードの間に関連性はない。
ロッセリーニ一流のドラマツルギーのリアルさをネオレアリズモ的手法を使って多層的に描いた作品で、映像表現としては前作「無防備都市」よりも一歩進んだと言えるかもしれない。「無防備都市」の衝撃の影に隠れてしまっている感があるが、これも名作。


ドイツ零年 Germania anno zero
1948年 イタリア 78分
★★★
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:ロベルト・ロッセリーニ/カルロ・リッツァーニ/マックス・コルペット エドモンド・メシュケ
出演:エルンスト・ピットシャウ インゲトラウト・ヒンツェ

敗戦直後のベルリンの荒廃と人々の価値観の混乱を描いた「戦争三部作」のフィナーレを飾る力作。ナチズム崩壊後の貧困と倫理的空白に翻弄される弱者を描いた作品。ロッセリーニらしい情緒的な救いを排した冷徹なリアリズムが貫徹されている。
病気の父と失業中の兄夫婦と瓦礫だらけのアパートで暮らしている少年が、闇市で仕事を見つけ、たくましく生きようとするが、弱者に厳しい社会の趨勢に絶望する暗いお話。復興への希望を全否定するようなラストシーンはイタリア人がナチスの惨劇の残り香を描くことへの複雑な心情をあらわしたものなのかもしれない。


アモーレ L'Amore
1948年 イタリア 79分
★★★★☆
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:ロベルト・ロッセリーニ/トゥリオ・ピネッリ/フェデリコ・フェリーニ
出演:アンナ・マニャーニ/マガリ・ノエル/フェデリコ・フェリーニ

「戦争三部作」時代のロッセリーニの隠れた名作。
イタリア映画黄金期の名女優アンナ・マニャーニの凄味が凝縮されためちゃくちゃ濃い映画。2部構成で第一部が電話で別れ話を延々と続ける女の独り舞台、第二部は流れ者の男を聖ヨセフと思い込み、妊娠を「神の子の受胎」と信じて村人に不謹慎と罵られながらも一人で出産する女の物語。どちらもむくわれぬ愛を求める女をマニャーニが鮮烈に演じている。人の愛と神の愛という二種類の愛の妄想に取りつかれたネオレアリズモとも宗教映画ともつかない独特の世界観がここにはある。ロッセリーニの真骨頂と言える名作だが、彼の創造性はここがピークで、マニャーニと別れてバーグマンとくっついてからは何かを失った感がある。バーグマンが悪いわけじゃないんだろうが、バーグマンにはこんな芝居させられないからなあ。
第一部の原案はジャン・コクトー、第二部の脚本を書いたフェリーニが流れ者役を自ら演じている。地味に豪華。


ブローニュの森の貴婦人たち Les Dames du Bois de Boulogne
1944年 フランス 84分
★★★★
監督:ロベール・ブレッソン
脚本:ロベール・ブレッソン
出演:ポール・ベルナール/マリア・カザレス/エリナ・ラブルデット

自分がシネフィル活動を引退していた間にいつの間にか20世紀を代表する巨匠に成り上がっていたブレッソンの最初期の作品。
「オルフェ」のマリア・カザレスが実質主演。
最近になってそっちからこの作品まで辿り着いてブレッソン観るようになったブレッソン超初心者だけど、私が現役の頃はブレッソンなんてほとんど作品を観ることができない人だったわけで、名前だけヌーヴェルヴァーグの解説書みたいなので見たことはある、レベルの人だった。最近になって凄い勢いでBDとか出てるけど、配信では初期の作品しか観られないので凄味が伝わりにくいのが残念。本作は戯曲の映画化で、コクトーが台詞を監修しているらしいのだが、脚本のクレジットはブレッソンだけ。
男に袖にされた上流社会の女性の復讐譚だが、展開が何ともまどろっこしくて時代背景を考えても迂遠すぎる。ほぼマリア・カザレスの存在感で成り立っている作品で、演出的には大して見るものがないというか割とベタベタな作りのように思うのだが、こういうベタなのを撮ってもちゃんと撮れる人だってことなんだろうな。いきなりエリナ・ラブルデットが踊り出す場面や、妙にぶっきらぼうな平坦な展開など、後年のブレッソン的な作風の一端は垣間見られる。と言えるほど作品観てないけど。


絆 Catene
1949年 イタリア 90分
★★☆
監督:ラファエロ・マタラッツォ
脚本:アルド・デ・ベネデッティ/ニコラ・マンザーリ
出演:アメデオ・ナザーリ/イヴォンヌ・サンソン/アルド・ニコデミ

「ニュー・シネマ・パラダイス」の劇中で1本のフィルムを前編と後編にわけて二つの劇場かけもちで上映されてた作品。映画の年次(1952年頃?)と公開年(1949)が若干合わないのだが、大ヒット作だったみたいなので、リバイバルされてたのかも。
内容は当時流行していたネオレアリズモの影響も色濃い、貧困層の家庭で起こる情事殺人劇を描いたもの。自動車整備業を営み、貧しいながらも幸せに暮らす一家が、妻の元恋人の強引な付き纏いによって安寧を奪われていく悲劇。ネオレアリズモ的な設定ではあるが、当時のスターの競演でもあり、貧困層の生活感や感情のリアルな描写はさほど見られない。どちらかというとサスペンス寄りの演出で、凡庸と言えば凡庸。
「ニュー・シネマ・パラダイス」でみんながすごく面白そうに観てたよね、という記憶をたどるために観るべき映画。実際結構面白い。


more to come…(近日公開予定)

制服の処女 Mädchen in Uniform
1931年 ドイツ 88分
★★★★★
監督:レオンティーネ・ザーガン
脚本:フリードリヒ・ダンマン
出演:ヘルタ・ティーレ/ドロテア・ヴィーク/エミリア・ウンダ

會議は踊る Der Kongreß tanzt
1931年 ドイツ 95分
★★★★★
監督:エリック・シャレル
脚本:ノルベルト・ファルク
出演:リリアン・ハーヴェイ/ヴィリー・フリッチ/コンラート・ファイト




★★★★★ 映画史に残る名作、必見
★★★★☆ 傑作、見ないと損
★★★★ 秀作、見るべき
★★★☆ 快作、見た方がいい
★★★ 良作、見る価値あり
★★☆ 佳作、悪くないので見て損はない
★★ 凡作、時間があれば見てもいいかも
★☆ 迷作、色々ダメだが見たいなら止めない
★ 駄作、ダメな映画のサンプルとして見るなら止めない
☆ 愚作、人生の苦難に耐える訓練として見るなら止めない
💀 見るべき理由が一切ないゴミ、時間の無駄


ヨーロッパ映画の感想はこちらもどうぞ


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集