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過去の演劇公演情報を求めて ――スタッフ情報はどこにあるのか

過去の公演情報をどうやって調べるか。検索エンジンで検索をしてみてもよいが、上演記録を調べるツールを使えば、効率よく調べることができる。そこで前回は、上演記録を検索できるツールや網羅的に上演記録を収録しているツールをまとめた。

できるだけ広範囲に多くのデータを収録していて様々な演劇ジャンルの調査に応用できそうなツールを中心に取り上げたが、実際に調べるときには他にも様々な方法がある。今回はもう少し具体的な例として、スタッフを調べる方法について記しておきたい。


スタッフ情報は調べにくい

スタッフを調べるのはなかなかに難しい。スタッフの中でも劇作家と演出家はさすがに簡単に調べがつく。公式サイトやチラシにも載るし、レポート記事や劇評にもたいてい載る。劇作家や演出家自身が著名であるから、本人たちの経歴にも載っていく。問題はそれ以外のスタッフ――舞台監督や演出助手や音楽や振付や殺陣や音響や照明や美術や小道具など――を調べる場合だ。難しい以前に、公開された情報の少なさ、そして、公開されている情報へのアクセスの難しさをがある。

私は一介の演劇ファンでしかないので、演劇の制作に携わる人にぜひ聞きたいところだが、スタッフ情報はどこまで公開するものなのだろうか。とりあえず、スタッフ情報が見つけられそうなものをあげてみよう。

スタッフ情報が載る媒体

まずは公式サイトが正式な公演情報になるが、作・演出くらいしか分からないものもあれば、主要なスタッフが載っている場合もあり、どれだけのスタッフが載るかは、その作品やその人のキャリアによって様々だ。上演期間が終わると閉鎖してしまうサイトもあるが、その時はインターネットアーカイブWayback Machineで探す。

劇団であれば、劇団の公式サイトに過去の上演記録が残されている場合もある。CoRich舞台芸術!も公式サイト代わりに使われているので、作り手自身によってスタッフ情報までしっかり載っていることが多い。

次に宣伝用のチラシポスター。これも、スタッフ情報がどれだけ載っているかは作品ごとに異なるようだ。上演が終わると残りづらいもので、あとで調べることが難しい。JDTA(Japan Digital Theatre Archives)EPAD作品データベースには、わずかだがチラシやポスター画像が含まれているので頼りになる。それをもとにスタッフ情報がデータ化されているので検索できる場合もあって重宝している。

しっかりした情報が得られるのは、パンフレットプログラム類だ。確実に載っている(はずだ)。特にここに載っているものが最も詳しいスタッフ情報だろうと思われるので、公開されたスタッフ情報としては、これが公式になると言えそうだ。これらは、来場者全員に配る当日パンフレットもあれば、グッズとして販売している場合もある。特にしっかりしたパンフレットだと、スタッフ一人一人の個別プロフィールが載っていることがある。すると、その人が過去に携わった作品についても知ることができる。

問題は、上演期間を過ぎると入手が難しくなるという点で、後から調べることが困難になる要因でもある。探せる可能性があるとすれば、演劇系の専門図書館だ。早稲田大学演劇博物館新国立劇場の情報センター松竹大谷図書館彩の国さいたま芸術劇場舞台芸術資料室兵庫県立尼崎青少年創造劇場ピッコロシアター資料室愛知芸術文化センターアートライブラリーなど。ディープライブラリーでは、様々な専門図書館を横断検索できる。パンフレットやプログラム類がヒットするので、近くであれば見に行ける。

上演期間が終了した後にスタッフ情報を手に入れる方法としては、映像版のエンドロールクレジットがあげられる。後日発売のDVD配信、WOWOWをはじめとするテレビ放映などがあれば、映像の最後のクレジットでスタッフ情報が確認できる可能性がある。前述の演劇系専門図書館で見られる場合もある。

また、戯曲が出版されていれば、上演記録としてスタッフ情報が載っていることがある。劇団なら、周年記念本公式ガイドブックのような本に、上演記録が詳細に載っていることもある。

演劇年鑑』も主要スタッフの情報が載っている。最新版はホームページでPDF公開されているのでページ内検索を使えば名前で検索もできそうだ。

演劇系の雑誌では『えんぶ』(旧:演劇ぶっく)や『悲劇喜劇』などが上演後の情報探しに向いている。『えんぶ』は詳しいスタッフ情報が載るわけではないが、たまにスタッフにフォーカスした記事が出たり、広告として芝居のチラシが多数載っていたりする。『悲劇喜劇』は、演劇時評で上演された公演が紹介され、主要スタッフの情報も載っている。

このあたりの本や雑誌として出版されたものは、図書館で調べることができる。

最終手段は、根気強くネット検索すること。本人がブログやSNSで過去の作品に言及していたり、観客のブログやファンサイトにスタッフ情報まで詳しく載っていたりする。やや裏道っぽい手法としては、オークションサイトで、パンフレットやチラシ類が出品されていると、画像が載っていたり、商品情報に詳しいことが書いてあったりすることも稀にある。見つかればラッキーだ。

【例】ある殺陣師の過去の作品を探す

では例として、ある殺陣師――アクションクラブの川原正嗣が携わった作品を調べてみる。前提として、彼は劇団☆新感線で毎公演、殺陣指導やアクション監督として携わっているので、劇団☆新感線の作品については簡単に分かる。作品ごとの公式サイトはもちろん、劇団の公式サイトの公演一覧でも、名前を確認できる。ここで調べたいのは、劇団☆新感線以外の作品だ。

ちなみに、「殺陣師」というのが、早速難しい。主要スタッフとして載るか載らないかの微妙なラインなのだ。おまけに「殺陣」「アクション」「擬斗」など作品ごとに肩書が違うこともあって、さらにややこしい。

公式サイト・プロフィールから調べる

それはさておき、まずは本人の公式サイトプロフィールからあたるのが無難だ。過去の作品一覧などがあればベスト。だが、スタッフという裏方仕事である性質からプロフィールが見つからない場合も多い。

幸い彼は役者としても活動しているので、公式プロフィールは存在する。所属事務所であるアクションクラブのホームページには、所属メンバーのプロフィールがある。が、作品一覧は見当たらない。そもそも2018年の更新情報からどうも止まっているらしい。それでも、このホームページのURLをWayback Machineに入れて過去のページを遡って見ると、その時点の最新作品がトップページに出てくるはずだ。そこから情報を得る方法もある(もっとも、今回は保存されているページが少なかったので得るものはあまりなかったのだが)。

もうひとつ業務提携している事務所の公式プロフィールがある。ここには作品一覧(2005年までだが)がある。殺陣で関わった作品なのか、役者として出演した作品なのか、ここでは判然としないが、出演と同時に殺陣でもかかわっている可能性があるので、作品が分かれば個別にスタッフ情報を確かめてみる価値はある。

プロフィールをあてにするなら、雑誌のインタビュー記事がないか調べる手もある。多くの場合、プロフィールが載っているからだ。そこに、近年の作品や代表作などが紹介されている可能性がある。

演劇専門誌『演劇ぶっく』で試してみよう。雑誌記事を検索するには、「雑誌記事索引データベース Web OYA-bunko」(運営:大宅壮一文庫)を使う。「川原正嗣」で検索すると、2007年4月号の『演劇ぶっく』がヒットする。劇団☆新感線の「朧の森に棲む鬼」公演後のスタッフインタビューだ。プロフィール欄から劇団☆新感線以外に「ラストショウ」や「ダブリンの鐘つきカビ人間」などの作品に携わっていることが分かる。

個別の作品を調べる

関係しそうな作品が分かったら、その作品のスタッフ情報を個別に調べてみる。早稲田大学演劇博物館enpaku デジタル・アーカイブ・コレクションは、スタッフ情報はあまり得られないが、作品名から上演時期や作・演出家を知ることができる。それを頼りに、また別の手段で調べていくのだ。

『演劇ぶっく』に載っていたプロフィールから分かった「ラストショウ」は、上演時期からしてパルコ劇場の長塚圭史作・演出「ラストショウ」であろうと思われる。「Last Show」表記も散見される。ホームページも残っているが、スタッフ情報は見当たらない。そこでまずは戯曲がないか探してみる。

▽戯曲の探し方については過去記事を参照

国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)で検索してみると、戯曲本が存在する。本が分かれば、購入するなり図書館へ行って借りるなりして確認。上演記録としてスタッフ情報の記載があり名前を確認できた。

ついでに、ディープライブラリーでも検索してみると、新国立劇場情報センターに戯曲だけでなくプログラムがあることが分かった。実際に行って確かめてみることもできよう。

データベース系のツールで調べる

上演記録データベース系のツールは、殺陣師がデータに載っているか載っていないか微妙なラインだが、ものは試しにやってみる。今度は、同じくアクションクラブの武田浩二を例にあげよう。

JDTA(Japan Digital Theatre Archives)で彼の名前を検索すると、「冬の絵空」がヒットする。ヒットしたのは出演者として名前があるからだ。主要スタッフのデータが入力されているが、ここに殺陣師の名前はない。しかし、掲載されているチラシ画像をよく見ると、実は入力されていないスタッフ情報がある。ここに「殺陣指導」があり、武田氏の名前を見つけることができる(川原氏の名前もある)。

EPAD作品データベースは、JDTAと重なるデータが多いが、細部に違いがある。EPAD収録の「冬の絵空」のデータには、チラシ画像に加えて、DVDの付属冊子のようなものまで画像が掲載されている。殺陣指導はもちろん、チラシに載っていなかった他のスタッフまで細かく載っている。さらに、出演者についてはプロフィールが載っているので、武田氏のプロフィールから過去の作品も分かる。

CoRich舞台芸術!は、スタッフ情報が詳しいデータが多い印象だ。武田浩二氏の名前で検索してみると、出演している劇団☆新感線の作品が多くヒットする一方で、演劇集団キャラメルボックス「また逢おうと竜馬は言った」のように殺陣のスタッフとして携わった作品も見つかる。また、ここにもプロフィールが紹介されているので、また別の作品を調べるきっかけにもなる。

CoRichは、ホームページや公式サイトのURLが載っている場合もあり、そこでより確かな詳細なスタッフ情報が見つかる場合もある。リンク切れの場合はWayback Machineで確認する。同じくキャラメルボックスの「TRUTH」は出演者名でヒットしたが、公式サイトをWaback Machineで確認するとスタッフ欄に「殺陣/武田浩二」を確認できる。また、ここにもプロフィールが紹介されているので、また別の作品を調べるきっかけにもなる。

おわりに

今回は「殺陣師」を例にしたが、ある程度は他のスタッフや出演者を調べるのにも応用できると思う。前回取り上げたツールの活用事例にもなっただろうか。これに加えて、観劇ブログやSNSなども漁りながら地道に根気強く調べていくと、そこそこ情報が得られるわけだ。

また、舞台美術に関しては日本舞台美術家協会JATDT舞台美術作品データベースがあるように、各分野に特化したデータベース類もある。何か面白いツールがあれば、情報提供を願いたい。

参考文献

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