戯曲『髑髏城の七人』とヨムゲキ100のゆくえ ――国立国会図書館にない本を探す
戯曲を調べる方法については、すでに幾度か書いている。
そして、また戯曲。だが、今回はシンプルに、現役の著名な劇作家の戯曲本を探すという正攻法について、改めて書き留めておこうと思う。この手の戯曲はまだ市販されている場合も多いので、普通にググれば難なく探せる場合が多い。しかし、基礎的な本の探し方をすると、今は絶版になっていて、しかも国立国会図書館に所蔵されていない戯曲本が見つかる場合もある。
それは、中島かずきの『髑髏城の七人』を調べていた時のことだった――。
『髑髏城の七人』の初期戯曲を見つける
『髑髏城の七人』は劇団☆新感線の代表作のひとつ。1990年に初演されて何度も再演されている。しかも作家の中島かずきは、キャストが変わればキャラクターも物語も変わるというスタンス。ゆえに戯曲は毎回書き換えられる。おまけに一度の再演で2パターンとか6パターンとか連続上演なんかするから、もう何通りもの『髑髏城の七人』が存在するのである。
では、その何パターンもあるバージョン違いの戯曲は、実際のところ何冊出版されているのか。
論創社は「K.Nakashima selection」として新作の度に戯曲を出版している。ちょっとググれば、K.Nakashima selectionの一覧など簡単に出てくる。
でもここで、あえて別の手を使ってみる。戯曲を(本を)探す正攻法をとってみるのだ。
国立国会図書館サーチで探す
使うのは国立国会図書館サーチ(以下、NDLサーチ)。
NDLサーチとは、国立国会図書館の所蔵資料を検索できるサイトだ。国立国会図書館には、国内で出版されたものすべてが納められることになっているので、ここにあるかどうかを調べることは、国内で出版されたかどうかを調べているのと同じことになる。まずはこれを使って、出版された戯曲本を探す。
絞り込み条件を開いて、【タイトル】に〈髑髏城の七人〉と入力し、【資料種別】の〈図書〉のみにチェックを入れて検索する(図1参照)。

検索結果が出たら、出版年の新しい順に並べ替えてみる。論創社のK.Nakashima selectionが多数あるが、はじめに並ぶのは、2017年から2018年に5パターン上演した際の戯曲。花鳥風月極の5冊のバージョン違いが出版されている。さらに遡ると2011年版と2004年版がある。2004年は2パターン上演したが、1冊に2パターンの戯曲が収録されているようだ。
ちなみに、K.Nakashima selection以外では、小説版の単行本と文庫が何冊かヒットしている。戯曲を探すという名目においてはノイズとなる検索結果だが、小説版があることを知るきっかけにもなる。
論創社のK.Nakashima selectionの出版が始まったのは1999年のこと。ゆえに、2004年版の戯曲以降はすべてK.Nakashima selectionにあるわけで、それはググっても見つかるし、今も購入できるものが多い。だから、ここからが勝負。1997年の再演、そして初演時の戯曲が手に入るかどうかである。
引き続き検索結果を見ていくと、2000年出版のものがある。ENBU研究所から「ヨムゲキ100(現代戯曲シリーズ)」のひとつとして出版されたようだ。直近の上演は1997年の再演なので、このときの戯曲と思われる。
「ヨムゲキ100」は、雑誌『えんぶ』(旧:演劇ぶっく)を出版しているえんぶが出していた戯曲シリーズ。90年代の終わりから2000年代のはじめあたりのこと。今や人気劇作家となった人たちの初期の戯曲がここから多く出版されている。
単行本 ヨムゲキ100
過去に作成した人気作家の初期戯曲シリーズ。
(本企画は終了していますので在庫が無くなり次第販売終了となります。)
ラインナップ:松尾スズキ 中島かずき 宮藤官九郎 平田オリザ 中島らも ほか
NDLサーチの検索結果をよく見ると、実はこれ、国立国会図書館の所蔵ではない。NDLサーチは国立国会図書館の所蔵を検索するとともに、全国の図書館(主に都道府県立図書館)の所蔵も一緒に検索できる仕組みになっている。それゆえに、国立国会図書館には所蔵されていない(すべて所蔵されている建前ではあるが、このように漏れがある)が、他の図書館が所蔵していたので検索できたのである。
検索結果で最も古いのは、この1997年版と思われる戯曲まで。1990年初演版はさすがになさそうだ。念のため、雑誌掲載の戯曲を探す方法でも検索してみたが、めぼしいものは見つからなかった。
買えない戯曲を入手する方法
論創社のK.Nakashima selectionは今も販売されているものが多いので、ぜひ購入したいところだ。一方、「ヨムゲキ100」はシリーズ刊行を終了して、『髑髏城の七人』もすでに在庫切れとなっている。普通にググると中古販売の情報がよくヒットする。こうなると、この戯曲を読む手段は、古本を買うか、図書館で借りるか、いずれかになる。
NDLサーチの検索結果から【全国の図書館の所蔵】を確認することができる。この本を所蔵している図書館が一覧で表示されるのだ。『髑髏城の七人(ヨムゲキ100)』 の場合は、東京都立多摩図書館と福井県立図書館にあることがわかる。
NDLサーチで分かるのは主に都道府県立図書館の所蔵状況だ。市町村立図書館など、さらに身近な図書館で所蔵しているところを探す場合には、カーリルローカルを使う。都道府県単位で、市町村立や大学図書館も含めて一度に検索できる。
ただし、都道府県立図書館でさえ2館しか所蔵していないヨムゲキ100シリーズを所蔵する市町村立図書館はなかなかないと思われる。せいぜい大学図書館がヒットする程度だろうか(大学図書館も条件次第で利用できる場合がある)。
所蔵している図書館に行ける人はよいが、遠くて行けない場合もあるだろう。そういう場合は、住んでいる地域の図書館で、「取り寄せ」を相談してみるとよい。相互貸借といって図書館同士で本の貸し借りをしてくれるのだ。足りないのなら借りればいい。例えば、福岡県に住む人が、福井県立図書館にある『髑髏城の七人』を読みたいと思ったら、福岡県立図書館にこの本の取り寄せができるか尋ねてみる。そうすると、手続きの方法を教えてくれるだろう。
戯曲は、本の中ではややマイナーなジャンルなのか、あまり所蔵していないという図書館は結構ある。「ヨムゲキ100」シリーズに限らず、探している戯曲が近くの図書館にないという確率はかなり高いと思われる。でも、他館から取り寄せができれば、手に取ることができる戯曲は一気に広がる。その図書館にないからといってあきらめず、他館の所蔵を調べたり、司書に相談したりしてみてほしい。
国立国会図書館にない「ヨムゲキ100」を調べる
ところで、この「ヨムゲキ100」シリーズは、その名前から100冊ありそうに思われるが、実際のところ何冊刊行されているのだろうか。前述の通り、現在は刊行を終了し、えんぶの公式ショップでは在庫のあるものしか取り扱いがないので、全貌が分からないのだ。
こういう時に頼りになるのが、国内の出版物がすべて集まることになっている国立国会図書館、のはずだった。しかし、この「ヨムゲキ100」シリーズは所蔵されていない。そうは言っても、NDLサーチで他館の所蔵データも検索できるわけだから、とりあえず検索してみる。
絞り込み条件を開いて、【タイトル】に〈ヨムゲキ100〉と入力し、【資料種別】の〈図書〉のみにチェックを入れて検索する(図2参照)。検索結果が出たら、出版年の新しい順に並べ替えてみる。

44件がヒットしている。『髑髏城の七人』以外を見ても、所蔵館は大抵の場合、東京都立多摩図書館か福井県立図書館。そしてCiNii(大学図書館の横断検索サイト)の結果も混ざっている。ちなみに、宮藤官九郎の戯曲に関しては、宮城県立図書館も時々所蔵している(さすが地元)。
各図書館の蔵書検索でも調べてみる。各図書館の公式サイトから蔵書検索ページで「ヨムゲキ100」と検索。東京都立多摩図書館は44件、福井県立図書館は43件がヒット。
CiNii Booksでも再度検索。全国の大学図書館が所蔵する本を検索できる(NDLサーチの大学図書館版と思うと分かりやすい)。演劇や文学の研究に使われそうだなと思ったのだが、27件しかヒットしなかった。1冊につき、3~4館の所蔵が確認できる。
演劇といえば、早稲田大学演劇博物館だろう。CiNii Booksではヒットしなかったので、公式サイトから蔵書検索サイトに入り、検索してみる。41件がヒットした。
※追記 コメントをいただいて他の演劇系の専門図書館も調べてみた。兵庫県立尼崎青少年創造劇場ピッコロシアター資料室は30件、愛知芸術文化センターアートライブラリーは39件の所蔵があった。新国立劇場の情報センターと松竹大谷図書館は、演劇系専門図書館としては有名だが、ヨムゲキ100の所蔵数はいずれも一桁台。対象にする演劇ジャンルがやや違う印象だ。(2025.8.11追記)
各図書館の所蔵している戯曲がどれほど重なり合っているのか、そこまでの確認はできていないが、最多所蔵の東京都立の44冊くらいが刊行された冊数として有力だろうか。出版年を見ると、東京都立と福井県立が所蔵する、石原美か子『うちに来るって本気ですか?』が2002年8月刊行で最も新しいようだ。
ちなみに、1991年10月(81号)の『演劇ぶっく』に、「ヨムゲキ100」シリーズの宣伝が載っている(p.85)。この時点では、『演劇ぶっく』100号を記念して始めたシリーズのようで100冊刊行を謳っていた。その後は刊行を重ね、宣伝ページには新刊情報や当時のラインナップが載っている。中島かずきの戯曲は『髑髏城の七人』含め全部で9冊刊行されているようだ。そして、100号を目の前にした2002年10月(99号)に、8月発売の新刊として石原美か子『うちに来るって本気ですか?』が紹介されている(p.93)。だが、肝心の100号では「ヨムゲキ100」の宣伝ページが見つけられなかった。この辺りが、シリーズ刊行の最後になったのだろうか。
『演劇ぶっく』は、全巻無料で見ることができる。宣伝ページの検索は難しそうだったので、検索ではなく、年月のあたりをつけてページをめくっていった。
おわりに
『髑髏城の七人』の初期の戯曲が読めないか調べたかっただけなのだが、「ヨムゲキ100」に興味がわいてしまって、つい調べまくってしまった。国立国会図書館にないというのが残念でならない。それでも、東京都立多摩図書館と福井県立図書館が所蔵してくれているおかげで、NDLサーチで検索もできたし、相互貸借によって手元に取寄せできる可能性もある。国内のどこかの図書館にあれば、なんとかなるのだ。
以前書いたように、少し昔のレジェンド的な劇作家たちの戯曲は、国立国会図書館のデジタルコレクションで読めるものも増えてきた。「ヨムゲキ100」のラインナップにある劇作家たちも、もう数十年すればレジェンドに仲間入りだろう(すでにレジェンドの域にいる人もいる)。絶版になるならデジコレで読めたら……と淡い期待を抱いても、そもそも国立国会図書館に所蔵されていないので無理な話だ。
とは言え、「ヨムゲキ100」は復刻してくれてもいい気がする。人気劇作家たちの初期戯曲はなかなかに貴重だ。デジタル復刻でもしてくれたらどうだろうか、えんぶさん。
関連記事
