8月クリエーター支援月間としてフォロアーさんの作品の初期を深堀して紹介していく企画:第三回は、カンナギ晴さんの記憶の星暦盤※ネタバレ
8月は、クリエーター支援月間としてフォロアーさんの作品の初期を深堀して紹介していく企画をしています。
第1回は、yukariyajpさんの波打際スケッチの初期20話を深堀しました。
第二回は、神尾憲二さんのHAMLET 2の初期#025~#031を深堀していきます。
神尾憲二さんは、多分フォローいただいてから私の記事をほぼすべてスキをくれているフォロアーさんです。
※ネタバレ
カンナギ晴氏による連載小説『記憶の星暦盤』を読み終え、胸に深く刻まれたのは、**「記憶とは、その人を形作る光そのものである」**という力強いメッセージでした。戦後の混乱期、信州の山あいに建つ「氷の城」を舞台に繰り広げられるこの物語は、単なるファンタジーの枠を超え、救済と代償、そして友情の本質を鋭く問いかけてきます。
特に印象的だった三つのポイントを中心に、感想を綴ります。
1. 「忘却」は救済か、それとも冒涜か
物語の核となるのは、人の記憶を喰らう「星暦盤」という呪具です。戦場の凄惨な記憶に苛まれる相馬輝朗は、この盤を用いて人々の「つらい記憶」を消し去ることで彼らを救おうとします。
しかし、苦しみから解放されたはずの人々が、大切な人の名も、生きてきた証さえも失い、感情のない**「殻(抜け殻)」のようになっていく描写には戦慄しました。輝朗が説く「静謐な墓場」のような平和に対し、親友の敦史が放った「抜け殻を自由とは呼ばない」**という言葉は、私たちのアイデンティティがいかに記憶と密接に結びついているかを再認識させてくれます。
2. 対照的な二人の「友情」と自己犠牲
大陸の戦地で地獄を見て、冷ややかな瞳を持つようになった輝朗と、病弱ながらも「希望の星」として彼を支え続けた敦史。この二人の関係性は、物語の最も美しい部分であり、同時に最も切ない部分でもあります。
終盤、輝朗を救うために自ら「獣の器」となった敦史と、さらにその敦史を救うために獣を自分へと引き戻した輝朗の決断には、涙を禁じ得ませんでした。輝朗が最後にたどり着いた**「記憶は、奪うものじゃない……与えるものだ」**という境地は、彼が過去の呪縛を乗り越え、真に親友を想う一人の人間に戻った瞬間だったと感じます。
3. 百年の時を超える「観測」の意志
物語は、輝朗が盤とともに炎に消えるという悲劇的な結末を迎えるかに見えますが、そこには確かな希望が残されています。記憶を奪われていた村の人々には日常が戻り、一度は記憶を失った敦史も、雪割草の芽吹きとともにゆっくりと過去を取り戻していきます。
そして、物語のラストで現代を生きる水沢悠麻へと受け継がれる**「記憶を継げ」というメッセージ。輝朗が遺した「観測を続けろ」**という言葉は、過去を忘れずに見つめ続けることこそが、未来を守る唯一の方法であることを示唆しているようでした。
読み終えて
本作は、美しい星空や雪割草といった瑞々しい情景描写と、記憶を喰らう獣という禍々しい存在が織りなす、極上の幻想文学です。
「つらい記憶さえも、自分が自分であるための大切な一部である」。そんな風に、自分の過去を丸ごと抱きしめたくなるような、優しくも力強い物語でした。現在、続編や現代編も構想されているとのことで、この「星の物語」がどのように繋がっていくのか、今後の展開からも目が離せません


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