【連載小説・中間まとめ】『記憶の星暦盤』第四話までのあらすじと主要人物
6000ビュー突破。後半の“運命の盤”に向けて、これまでを振り返ります。
「記憶の星暦盤」もいよいよ折り返しとなります。
連載を始めた当初は「続けられるだろうか」「連載の需要があるのだろうか」と思っていましたが、気づけばnote開始一ヶ月経たないうちに6000ビューを突破し、作者本人が一番驚いております。開始時のまぐれかもしれませんが本当に嬉しいです。
この物語を読んでくださった皆さま、ありがとうございます。
今回は中間まとめとして、登場人物紹介と“ここまでのあらすじ”をまとめました。これから後半、さらに深まっていく“記憶と再生の物語”をお楽しみください。
登場人物紹介
相馬 輝朗(そうま・てるあき)
天文学者。信州の「氷の城」と呼ばれる山岳観測所に身を置く青年。
戦争で深い心の傷を負い、上海からの引き上げの際、市場の老翁から不思議な盤を受け取る。
誰よりも人を救おうとする優しさを持つが、盤を使ううちに“獣の力”に取り込まれ、その救いは、やがて他人の記憶を奪うことでしか成り立たなくなっていく。
水沢敦史(みずさわ・あつし)
輝朗の大学時代からの親友で、同じく天文学者。
助教授の野口が嫉妬するほどの秀才であり、理想主義者。
人間味が深く、輝朗の心を唯一照らす存在。
ただ隣にいる友を守りたい――その純粋さゆえに、やがて盤の持つ破壊的な力と正面から衝突していく。
野口貴大 (のぐち・たかひろ)助教授
帝国大学の助教授で、輝朗と敦史の上司にあたる学者。
戦地で負った火傷の傷を隠し持ち、やがて「記憶を奪う盤の力」に執着していく。
三十代で助教授となった野口にとって、才能ある後輩たちは脅威であり、嫉妬と劣等感が彼を蝕んでいく。
野口はこの物語における“理性の崩壊”と“人間の欲”を象徴する存在である。
柏木 教授
帝国大学理学部の教授であり、輝朗・敦史・野口の恩師。
学識と人望を兼ね備えた“学問の父”のような人物。
星を見ることを「神の言葉を読むこと」と語る温厚な人柄だが、
ある晩、野口が仕掛けた呪式によって悪夢に囚われ、精神を病んでしまう。
上海の老翁
上海の市場で輝朗に「星暦盤」を渡した謎の人物。
その正体は明かされず、彼が何者であったのか――すべては“盤”だけが知っている。
ここまでのあらすじ
序章:上海の邂逅
戦場を生き延びた理学士・相馬輝朗は、復員の途上で辿り着いた上海の裏路地で、奇妙な老翁と出会う。卓上に置かれていたのは、東西の星座を重ねた黒い円盤――「星暦盤」。それは、人の記憶と運命を映し、喰らう呪具だった。老翁は言う。「星を読む者はいつか、獣を見る」。
その言葉どおり、盤を渡された彼の運命は静かに狂い始める。
敗戦の影と記憶の傷を抱えた青年は、日本へ帰国した後、「氷の城」と呼ばれる天文台で“夢に現れ、記憶を喰う獣”と対峙することになる。
第一話:氷の城
――終戦直後、信濃の雪深き谷に建つ天文台。人々はそこを「氷の城」と呼んだ。戦場から帰還した理学士・相馬輝朗と、彼を支え続けた親友・水沢敦史。
かつて東京の大学で星を追い、未来を語り合った二人は、この地で再び同じ空を仰ぐ。しかし輝朗の手には、上海で手に入れた“鉛の盤”があった。
それは苦しむ人々を救うかに見えて、彼らの過去を喰い、愛する者の名までも奪っていく――。「つらい記憶を消すことが、人間にとっての救い」と言う輝朗に、敦史は言葉を失う。
友情と信念の狭間で、二人の運命は静かに裂けてゆく。
氷の城に灯る赤い燈火が、人の心の“忘却”を照らしはじめていた。
第二話:夢に現れた獣
輝朗の戦地の記憶はまだ終わっていなかった。
終戦から時を経ても、輝朗の夜は戦場の呻き声に満ちていた。
夢の底に現れたのは、黒い霧を纏う虎――“記憶を喰らう獣”。
それは老翁が告げた「星を読む者は、いつか獣を見る」という予言そのものだった。夢と現の境界が溶けはじめ、輝朗の中で盤が脈を打つ。
「奪え。支配者となれ。渡せ、記憶を」
獣の声が頭を蝕み、机の上の紙片から文字が掠れ落ちる――。抗う輝朗に、敦史さえ消してやるという獣の言葉。
恐怖と罪悪感のあわいで、輝朗は扉を閉ざし、秘密を抱えたまま夜を迎える。星暦盤の裏には、血のような赤い亀裂が走っていた。
それは、彼が“人の記憶を喰う器”となる始まりの印だった。
第三話:雪割草の映す未来
戦後の荒廃を経て、教授・柏木、助教授・野口、輝朗、敦史の四人は、信州の新設天文台へ赴任する。
雪に閉ざされた山の上で始まった研究の日々。
春が近づき、雪の下から顔を出した一輪の花。
その花を見つめる輝朗の瞳に、ようやく微かな笑みが戻った。
だが、穏やかな時間は長く続かなかった。
ある夜、野口が「黒い獣がいる」と叫び、翌朝には姿を消す。
続いて柏木も「影が来る」と譫言を残し、東京へ送還された。
残されたのは、輝朗と敦史の二人。
それでも輝朗は盤を手放さず、どこか安堵のような光を瞳に宿していた。
――その光の奥に、敦史は“獣の影”を見た。
敦史は、雪割草が春を告げるように、輝朗の心にも再生の兆しを祈った。
だが同時に、記憶を喰らう闇が、確かに芽吹き始めていた。
第四話:静寂の代償
氷の谷に「悪夢を消す星読み」の噂が広がる。涙に暮れた娘は恋人の名を忘れ、悔恨の老人は亡き娘を呼べず、若い母は我が子の匂いすら判じられない――救いのたびに“誰か”の記憶が薄皮のように剝がれていく。盤を操る輝朗の声は静かに、しかし残酷に村を鎮め、敦史は笑顔の裏に空いた空洞を見抜く。
やがて、輝朗と同じく戦争中に上海で「星暦盤」の存在を聞いていた野口は、輝朗を脅し、盤を奪い取る。しかし、盤は彼を選ばなかった。野口は「黒い獣」を見て、叫んで失踪し、柏木も野口の誤った使用により、精神が崩れる。盤の縁は赤く脈打ち、氷の城は呼吸する器と化す。「空になれば人は従順になる」と説く輝朗に、敦史は「それは心を空にした墓場だ」と抗う。静謐の中、空の美に魅せられた者と、心を護りたい者が静かにぶつかる。
次回予告:第五話「友情に刻まれる影」
星を見上げた夜、二人のあいだに落ちたのは、光ではなく“影”だった。
敦史は、全身全霊で輝朗の心を取り戻そうと、ただ真っ直ぐにぶつかっていく。
盤は静かに、次の器を選びはじめる――。
10月29日(水)22:00に更新します。これから物語は大きく動きます。
どうぞお楽しみに🌙
「記憶の星暦盤」すべての始まりはここから👇
