【憲法入門#4】人権とは何ですか?(人権総論)
前回の記事(https://note.com/hogakuyoridokoro/n/n9a4dfefee023)では、平和主義について解説しました。今回は人権総論と題して、人権とは何かについてわかりやすく解説します。
法学で人権を学んでいく流れ
「人権」。近年、この言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、一言に「人権」と言ってもその内容はさまざまです。憲法に規定されている人権にはさまざまな種類があり、それぞれに性質や判例があります。この#4からしばらくは憲法入門シリーズでは人権について扱っていきます。以下の流れで記事の執筆をしていきます。(原則として、法学部などで一般に扱われる順番で記事を作っていこうと思います。)
①基本的人権の原理
基本的人権とは「すべての人が生まれながらにもち、侵すことのできない永久の権利」です。これを軸としてさまざまな原理を紹介します。
②基本的人権の限界
個々の人権は絶対無制限というわけではありません。人権と人権の衝突があった際にそれを調整するための公平の原理が公共の福祉です。
③各人権
日本国憲法にはさまざまな人権が明記されており、また、近年は新たな人権も主張されるようになってきました。個々の人権を紹介します。
人権の性質とは何か
ここでは「人権」とは何か、どんな性質はあるのかについて解説します。
①人権とは
人権とは、簡単に説明すると、人であることを理由にもつ、普遍的な原理です。つまり、「人間」であれば人権は全員が持っているということです。人権に関する学習をする際にはこのことをしっかりと頭に入れておいてください。なお、人権には以下の3つの性質があります。
(1)固有性
人権を「人が人に生まれた」ということだけで生まれながらにして当然に持っているという性質です。先ほど「①人権とは」で話したことにもつながる性質です。
(2)不可侵性
国家のいかなる権力であっても、その人の人権を侵すことはできず、人権は永久に保障されるべきものだという性質です。
(3)普遍性
人種や性別、年齢、国籍、宗教、社会的地位などの要素に関係なく、人権はすべての人が「人であること」を理由に生まれながらに持っているという性質です。
人権の分類について
ここでは人権をある程度分類してきます。(個々の人権の詳しい解説は人権各論という回で説明しますので、ここでの解説は割愛しています。)
①自由権
国家の不当な介入や干渉を受けることなく、個々の意思で自由に行動や思考ができる権利です。以下のとおり、規定されています。
(1)精神の自由
・思想および良心の自由(第19条)
・信教の自由(第20条)
・表現の自由(第21条)
・学問の自由(第23条)
(2)身体の自由
・奴隷的拘束および苦役からの自由(第18条)
・適正手続きの保障(第31条)
・被疑者被告人の権利(第31条、第33条、第34条、第35条、第38条)
(3)経済活動の自由
・居住・移転および職業選択の自由(第22条)
・財産権の保障(第29条)
②参政権
国民が政治に直接的または間接的に参加する権利です。その他の権利を守るための権利です。
(1)選挙権(第15条)
(2)被選挙権(第15条)
(3)最高裁判所裁判官国民審査権(第79条)
(4)住民投票(第95条)
(5)憲法改正国民審査(第96条)
③社会権
経済的・社会的弱者が人間らしい生活を営めるよう、国家に対して積極的な配慮や介入を求める権利です。
(1)生存権(第25条)
(2)教育を受ける権利(第26条)
(3)勤労の権利と労働基本権(第27条、第28条)
〈労働基本権(労働三権)〉
・団結権
・団体交渉権
・団体行動権(争議権)
④その他
他にも包括的基本権、法の下の平等、受益権などがあります。
法的権利とは何か
個人や団体が、法律に基づいて一定の利益を主張し、享受したり、他者に対して特定の行動を要求したりできる「法的に認められた力」を指します。以下の2種類があります。
(1)具体的権利
憲法の規定を根拠として、裁判所に対して直接その権利の保護や救済、具体的な請求を求めることができる権利のことです。
(2)抽象的権利
(1)具体的権利に対して、憲法の条文が権利を定めているものの、それ自体を直接の根拠として裁判所に具体的な請求をすることはできず、具体的な法律が制定されて初めて法的権利となる権利のことです。
プログラム規定とは何か
憲法に書かれている人権規定について、国民個人に直接的な法的権利を与えるものではなく、立法や行政の政治的・道義的な努力目標や政策の指標を定めたものです。代表例としては憲法第25条の保障する生存権などがあります。
プログラム規定に関する重要判例
憲法第25条の定める生存権とプログラム規定との関わりが深い重要判例が朝日訴訟です。これは結核療養中の男性が当時の生活保護水準について憲法の定める生存権を侵害しているとして厚生大臣(当時)を相手にとって起こした訴訟です。裁判では、憲法第25条の規定(生存権)の法的性質が裁判で直接主張できる『具体的・抽象的権利』なのか、それとも国の努力目標に過ぎない『プログラム規定』なのかが争われました。なお、詳細はこちらの記事で解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
制度的保障とは何か
制度的保障とは、個々の人権を直接保障するのではなく、特定の制度を憲法で設けることで制度の核心を守り、間接的に国民の権利や自由を保障する仕組みのことです。具体的には、地方自治・政教分離・私有財産制度・司法権の独立・大学の自治・婚姻及び家族制度などが該当します。
政教分離についてはこちらで詳しく扱っています。
制度的保障に関する重要判例
制度的保障と関係が深い重要判例は「東大ポポロ事件」と「津地鎮祭事件」です。
「東大ポポロ事件」は大学の自治について、その限界について争われた事件です。大学内での活動に警察権の介入は許されるのか否かについて争われました。「東大ポポロ事件」については以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
「津地鎮祭事件」は、政教分離について自治体(行政)が行った地鎮祭が、宗教的活動として政教分離原則に反するか否かが争われた訴訟です。「津地鎮祭事件」については以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
本回のまとめ
人権は「人であること」を理由に全員が等しく持っているものであり、国家やその他のいかなる権力によっても侵されない。また、人権として規定されているものには法的権利(具体的権利・抽象的権利)やプログラム規定、また、人権を間接的に保護する制度的保障などがある。重要判例はプログラム規定が朝日訴訟、制度的保障が「東大ポポロ事件」である。
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