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【判例読み解き】昭和女子大学事件(私立大学は学生の政治活動を理由に退学させることができるか/大学の自治・私人間効力)

学生の政治的運動を理由としての退学処分が妥当か否かを争った昭和女子大事件をわかりやすく解説します。


基本情報

最高裁昭和49年7月19日第三小法廷判決
(昭和42年(行ツ)第59号:身分確認請求)
(民集28巻5号790頁)

事実の概要

被上告人は、学生が署名運動を行う際には事前に指示を受ける規定や学校の許可なく学外団体に加入することを禁止する規定が存在するなど、保守的傾向の私立大学でした。

昭和36年(1961年)10月ごろに、上告人Aは左派系政治団体「D同盟」に無許可で加入し、また、上告人Bも同団体への加入申請を行なっていたことが判明しました。」

被上告人は、1961年10月下旬にこれらの行為を把握しました。これらの行為に大して被上告人は、教育方針に反するものとして上告人らに対して、同団体との関係を断つように強く要求しました。しかし、上告人らには規約違反の責任自覚が薄く、団体離脱の意思なかったため、被上告人との対立を深めていきました。

1962年1月から2月にかけて、徐々に事態が悪化していきます。週刊誌に被上告人を批判する記事が掲載され、また、Aが仮名で被上告人の調査に関する日記を発表しました。また両上告人らがラジオに出演し、被上告人から受けた取り調べについて述べました。さらに、都内の公会堂で開催された「戦争と教育反動化に反対する討論集会」などに参加し、事件の経過を述べました。

これら一連の行動について被上告人は、「学外での大学誹謗」とみなし、1962年2月12日、上告人らの一連の言動が「学校の秩序を乱し、その他学生としての本分に反した」ものに該当するとして、退学処分を下しました。

上告人らはこの退学処分が、学問の自由や思想・信条の自由、教育を受ける権利を侵害し憲法に違反するものであると主張して民事訴訟を起こしました。第一審および控訴審は退学処分を有効と認めたため、最高裁に上告しました。

判旨

上告棄却

最高裁の判決文全文はこちらから検索できます。(事件番号に「昭和42年(行ツ)第59号」を入力してください。)

解説

学生の政治的活動に伴う退学処分。これを争った昭和女子大事件は大学の自治や自由権、私人間効力に関する重要判例の一つです。

最高裁での争点は、

①大学の規則の合憲性と私人間効力
②退学処分の有効性と裁量権の範囲
③思想・信条による差別的な扱いがあったか否か

でした。

①大学の規則の合憲性と私人間効力

被上告人(当該私立大学)には、署名活動に事前許可制や学外団体への加入の禁止などの政治的活動を一部制限する規定が存在しました。上告人はこれらの規定が憲法の保障する各規定(選挙権、請願権、思想・信条の自由、表現の自由、学問の自由、教育を受ける権利)を侵害するもので無効であると主張しました。

これに対して最高裁は、まず、基本的人権の規定は、国や公共団体に対して個人を保護するための規定であり、「私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない」と判示しました。

また、私立学校は、「建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針」を具体化し、実践する必要があるとし、そのために規制を行うことは、「十分にその合理性を首肯しうるところ」としました。

つまり、教育的見地から広範な規制を及ぼすことは「直ちに社会通念上学生の自由に対する不合理な制限であるということはできない」というのが最高裁の見解です。

②退学処分の有効性と裁量権の範囲

上告人らは、被上告人が下した、退学処分が学問の自由を侵害し、思想・信条を理由とした差別的な取扱いであり、裁量権を逸脱・濫用したもののため無効であると主張しました。

最高裁は、退学処分というのは、大学の持つ「自律作用」であり、どの処分を選択するかは、「教育の衝にあたるものの合理的な裁量に任すのでなければ、適切な結果を期しがたい」と前提を示しました。その上で、退学処分というのは、これを学外に排除することが教育上やむをえないと認められる場合にかぎつて」選択すべきであるとの条件を示した上で、上告人らは規則違反の責任自覚が薄く、説諭に反発し、外部メディア等で大学を公然と非難したことからも退学処分としたことは、「社会通念上合理性を欠くものであるとはいいがたく」、裁量権の範囲内にあると判示しました。

③思想・信条による差別的な扱いがあったか否か

上告人はそもそもの処分理由(「D同盟」に加入したこと)が特定の政治思想を理由としたものであり、憲法14条等に違反する差別的取扱であると主張しました。

最高裁はこの主張に対して、被上告人が思想を理由に処分を下したと言う事実は認められず、特定の団体からの脱退を要求したとしても、それが直ちに「思想、信条に対する干渉となるものではない」と判示しました。

以上の経緯のとおり、上告を棄却し、退学処分を有効とした原審の判断を支持しました。

※「」内は判決文から引用。

参考文献

  • 最高裁判決文(昭和42年(行ツ)第59号)

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