【憲法入門#13】国主導の宗教ってあり得る?(人権各論・政教分離)
前回の記事(https://note.com/hogakuyoridokoro/n/n4378cfb6ebe1)では、信教の自由について解説しました。今回は、信教の自由のうち、政教分離原則にフォーカスしてわかりやすく解説します。
政教分離とは
政教分離の原則とは、制度的保障と言われる憲法上の原則の一つです。まずは、条文を確認しましょう。
日本国憲法第二十条一項
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
日本国憲法第二十条三項
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
日本国憲法第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
憲法20条3項と89条に記載のとおり、日本国憲法における政教分離原則は、宗教団体が政治的機能を持つことを禁止し(20条1項)、国家による宗教的活動を禁止し(20条3項)、宗教的な公金の支出を禁止(89条)したものです。
なお、制度的保障という概念についてはこちらで解説しています。
政教分離の意義
では、政教分離はなぜあるのでしょうか。制度的保障にも繋がる話ではありますが、この原則は国民の権利を守るための原則です。では、具体的にどのような権利を守っているのでしょうか。
まず政教分離が守っているのは、信教の自由です。国家が特定の宗教と結びつくことでそれ以外の宗教を信仰する人や無宗教の人に不利な政策が決定される可能性が生じます。この不利益な状況を解消するために、自身の信条に逆らってその宗教を信仰せざるを得ない人も現れるでしょう。これでは、信教の自由を守ることができません。
また、国家主導で宗教を理由とした一部の国民への迫害や宗教間の対立による紛争を防止することも政教分離原則の目的です。
また、他にも政教が癒着することで民主主義が脅かされるのを防ぐという意味もあります。
政教分離違反の限界
では、もしも行政が政教分離原則に違反すうようなことを行った際にはどうしたら良いのでしょうか。
まず、住民として、自治体や国の政教分離違反を理由として裁判所に訴訟を提起することは原則としてできません。日本の裁判所は個人の具体的な利益侵害を経て初めて訴訟を受け付けるためです。
では、政教分離違反に関する訴訟が一切のないのかというとそういうわけではありません。以下にも重要判例を二つ提示しています。では、どのように訴訟を起こしたのでしょうか。
例えば、自治体が宗教団体に何かしらの便宜を図った場合(公金を支出した、土地を無償で提供したなど)には、地方自治法を元にした住民監査請求・住民訴訟を行い、結果的に政教分離原則違反を主張することができます。
では、実際に裁判所が政教分離原則に違反しているか否かを判断する基準はどこにあるのでしょうか。それが、目的効果基準です。
目的効果基準
これは、実際に事例が政教分離原則に違反しているか否かを判断する基準です。行政のその行為に
①目的(その行為が宗教的な意義を持つか)
②効果(その行為は特定の宗教の援助や助長、もしくは排除に該当するか)
があるかどうか、そしてそれは社会的通念から「相当」と言えるか否かで違憲かどうか判断されます。
ちなみにこれは、下でも紹介している津地鎮祭事件で示された基準です。
政教分離に関する重要判例
では、政教分離原則に関する重要判例を紹介します。
津地鎮祭事件
こちらは津市で市の体育館を新たに建設する際に市が公費で行った地鎮祭が政教分離に違反するものか否かが争われた判例です。以下の記事で詳しく解説していますので、興味ある方はぜひご覧ください。
愛媛県靖国神社玉串料訴訟
こちらは愛媛県が戦没者の遺族の援護行政のために、公費で玉串料を支出したことが政教分離に違反するものか否かが争われた判例です。以下の記事で詳しく解説していますので、興味ある方はぜひご覧ください。
本回のまとめ
憲法20条(1項後段および3項)と89条では、政教分離を定めている。
政教分離は制度的保障の一種であり、国家が特定の宗教団体を優遇したり、排除したり、公金を支出したりすることを禁止している。
政教分離違反の判定方法には「目的効果基準」がある。
重要判例は「津地鎮祭事件」と「愛媛県靖国事件玉串料訴訟」がある。
本回のまとめ
憲法20条では国民の信教の自由を保障している。
信教の自由は内心でとどまる限り、いかなる干渉も受けない
思想・良心の自由には、①信仰の自由、②宗教的行為の自由、③宗教的結社の自由がある。
皆様へのお願い
読者の方向けフォーム:「法学の拠り所」読者の方向けフォーム – フォームに記入する
記事の感想や「こんなテーマを解説してほしい」というご要望も歓迎しています。誤りのご指摘もこちらからお願いいたします。
また、note質問箱を解説しました。(リンク:https://note.com/qa/hogakuyoridokoro)こちらでも質問を受け付けています。些細な質問でも送ってくださると励みになります。
Xアカウント(https://x.com/hogakuyoridokor)では、記事の更新情報や法律の雑学的な内容を配信します。是非、フォローをお願いいたします。
関連記事
他の憲法入門記事はこちらに一覧でまとめています。
