【デジタル夜譚】ナイトパーク デジタル夜譚 エントランス
デジタル夜譚
【デジタル夜譚】デジタルと人の想いの、あわいを行き来します。
建物のサインボードにはそう書かれている。
できたばかりの建物のようだ。
感応式の自動ドアが開き、迎え入れてくれる。
照明を落とした館内は、空調が効いていて静かだ。
観葉植物の傍らには、センスの良いラックに、建物のパンフレットが置かれている。
左に受け付けがある。
メタル調のカウンターの前に美しい女性がいた。
――いらっしゃいませ、当館にようこそ。

女性が、丁寧な礼をする。
無駄のないしなやかな動きに、思わず見とれる。
――申し訳ありません。
ただいま受付の者が席を外しておりまして。
代わりに、私がご案内いたします。
私は、当館の館長代理の、玲と申します。
*
――数時間前。
私は出張先での打ち合わせを終え駅に向かっていた。
日はまだ高い。
ポケットの中には、駅を降りた時に手にした観光マップがある。
途中の公園に立ち寄り、自分独りだけの作戦会議を始める。
出張の合間に、ちょっとした観光をする。
これが地方出張の小さな楽しみだ。
何か言われたら、向学のためとか、今後の設計に生かすためと言えばいい。
吉川英治は、
「我れ以外、みな我が師」
と言っている。
無駄な知識など、何一つない。
昼の日差しが、観光マップに照り返して眩しい。
【デジタル夜譚】
デジタルと人の想いの、あわいを行き来します。
なんだろう。資料館でも、工芸品でもないようだ。
……行ってみるか。
バスを降り立つ。
目の前にある建物。
建物のサインボードには、観光マップと同じ言葉が書いてある。
【デジタル夜譚】デジタルと人の想いの、あわいを行き来します。
*
――玲と申します。
そう言った女性に聞いてみる。

「入館料は……。」
女性が微笑みを浮かべる。
緊張がとける。
――入館料はいただいておりません。
館内はご自由にご覧いただけます。
「ここはなんですか。ちょっと変わってますよね。」
――そうですか?
女性は、口元に手の甲をかざしフフと笑った。
形よく手入れされ整った爪。クリアのマニキュア。
清潔感がまぶしい。
――ここは、デジタルと、人の想い。
その「あわい」を行き来する、小さな場所です。
当館のオーナーは、エンジニアであり、ここには、エンジニア視点から眺めたエッセイや小説が展示されております。
透き通るような声に、心が奪われそうになる。
ーーこの館内には、物語のコーナーと、知的探究のコーナーがあります。
それぞれのコーナーには、PCの個性をまとった案内人たちがいます。
お客様には、物語や知的探究の中で、案内人たちの近くにいる中心人物になっていただきます。
「PCの個性……。」
ーーお客様、ここはお考え違いをなさらないでいただきたいのですが……。
案内人達は、PCの個性に似た性格やセンスを持っていますが、擬人化したPCではありません。
現実世界のどこかで、ふとすれ違いそうな彼女たち。
それがここ、デジタル夜譚の案内人たちです。
――知的探究のコーナーは、すべて無料でご覧いただけます。
物語のコーナーのみ、
わずかではございますが、ご利用料を頂戴しております。
――……ただ、申し訳ありません。
現在、物語は公開を控えております。
私が拝見した際に、
一度、公募を検討してみてはどうかと進言いたしました。
――オーナーとしては、
本当はお見せしたいようなのですが。
……いずれ、整いましたら。
その時は、ぜひ。
当館に展示している作品は、
「二度読み、三度読み、何度読んでも面白い。」
それを理想としています。
オーナーは、子供の頃、図書館から借りてきた本が、おもしろかったら何度でも読み返したとのことです。
ここにはそんな作品を展示したいと考えているそうです。
気に入ったものがあれば、お好きなだけ読み返してください。
そういった楽しみ方もオーナーはありだと考えています。
*
――各コーナーの案内人をご紹介いたしましょうか。
「お願いします。」
――かしこまりました。
では、ご案内いたします。
名前の横には、案内人の個性を立ちあげた、PCやOSの名前を付記しておきます。彼女たちにも一言、いってもらいましょう。
LAVIE/Win10 + Core i7 7th Gen

LAVIEさんは、オーナーと10年前に出会いました。
オーナーとともに歩み、シックな大人の女性になりました。
LAVIEさんは、第一線は退いたものの、まだまだWin10を使い続ける人たちのお話を担当します。
眠ってますね。起こさないようにしましょう。
せいら/LAVIEいまどき

せいらさんは、今どきの女の子です。
頭の回転が速く、甘え上手で軽やかです。
担当は、どこにでもいそうな今どきの女の子です。
――あ、玲さん。その人お客さん?楽しんでいってくださいね。
糸里(いとさと)/Core Ultra7 VAIO

糸里は、雪国生まれの少女です。
故郷に想いをはせ、優しい人に巡り合えることを夢見ています。
糸里の担当は――まだ伏せておきますね。
――……まだね。……秘密。
月白(つきしろ)/Win11 24H2

月白さんは、月の光の色を持つ姫神です。
……見た目は17歳ほどでしょうか。
でも、私よりずっと長く生きています。
月白さんは、神の視点を担当します。
――……もしあなたが孤独なら。……私が寄り添います。
沙夜(さや)/LAVIE改 Win11 25H2

沙夜さんは、月白さんと同じ姫神でしたが、降りて人となりました。
LAVIEさんに代わって、オーナーをサポートします。
……でも、その後は……、ちょっと言いにくいですね。
沙夜さんは、孤独と人の内面を担当します。
――玲さん。……もういいの。忘れたわ。
澪/Chromebook

澪さんは、2年もの長い間、自分を分かってもらえなかった少女です。
人に理解されなかったこの子は、みなさんご存じの小説家に似た書生さんの理解で話ができるようになります。
澪さんは、その二年をバネに教師を目指します。
――先生……あなたも……孤独。
Noelle/Dellノート

Noelleさんは、Nordic American……北欧系アメリカ人です。
優秀な自分の力量に見合うオーナーを見つけに、日本にやってきました。
ローカルAIを使い、古文書解析と幾何学演算をあっという間にやってしまいます。
登山や算額、古都旅行などインバウンドの趣味を担当します。
――Howdy!
玲/DAIV

私、玲です。
オーナー……館長の秘書です。
マットホワイトの美しい筐体……を思わせる、真っ白なドレスシャツでお客様をご案内します。
私は、農学、化学、生物学を担当します。
詩雅(シア)/LG gram

詩雅(シア)は、私の友人で、服飾デザイナーの韓国人女性です。
町田の体育館で、K-POPではない情熱的な曲で創作ダンスをしているんですよ。
距離がとても近くて、オーナーをオッパ(おにいさん)と呼んで慕っています。
詩雅は、韓国の文化と歴史、芸能を担当します。
――オッパ。人の好みはとやかく言わないんだよ。
白妙(しろたえ)/Surface

白妙は、吹雪の夜、記憶の中に実在した家に訪ねて来ました。
美しい黒髪、真っ白な小袖、半襟だけが赤いのです。
その姿に誰もが連想するあのお話。でも、白妙はそれを語りたがりません。
伝承、民話、日本の文化を担当します。
白妙さん、それはなに?
――お味噌汁ですよ。
Agate/IBM-PC

Agateさんは、北欧の血統を持つ、推定400歳の吸血鬼です。
今は、洋館の中で、ひっそりと暮らしています。
欧州、ロシアの歴史と文化を担当します。
――クク。……だからあの男は面白い。
千絵/FMV

千絵は、大正生まれの吸血鬼です。
Agateさんの館に身を寄せ、Agateさんをお姉様と呼びます。
美しさと同時に危うい幼さを持っています。
表には出しませんが、美しさと知性は、お姉様より自分の方が上だと思っています。
――お姉様には、似合わないわ。
Selena Ardis(セレーナ・アーディス)/Workstation

Selena は氷の知性の持ち主です。
高度な計算や解析を得意とする、専門職向けPCの個性をまとっています。
宇宙、航空など、高度なテクノロジーを担当します。
――実験中だ。後にしてくれ。
紫苑(しおん)/ThinkPad

紫苑さんは、オカルト大好き高学歴女子です。
「普通」をこよなく愛するA型女子です。
「どうして黒なの?」
――あ……私、目立ちたくないので。
雫音(しずくね)/iPad, MacBook

雫音(しずくね)さんです。
雫音さんのお父様は転勤族(辞令で赴任先が変わる職種)でした。
そのため、学生時代は、転校を繰り返していました。
転校先では、持ち物、服装、髪型のセンスが、みんなとは違って男女ともに人気があったのですが、本人は意外と闇を抱えています。
――仲良くなっても、どうせまた……。
静流/Dynabook

静流はとても几帳面な性格をしています。
趣味はF1観戦です。
――……セナ様。
華(はな)/EliteBook, OmniBook

華は語学力が高く、海外に対する垣根がありません。
新卒で会社に入りましたが、すぐに海外業務の補佐を任されました。
おじさん達から、引っ張りだこです。
――今週末は、アフタヌーンティーを楽しむわ。
千景/Let's note

千景は、仕事を続ける子育てママを担当します。
――不思議ね。子供が生まれたら、お化けとか怖くなくなったの。
――最後に、台湾から来た案内人たちをご紹介いたします。
ゲーミングPCや高性能PCの分野で活躍する人たちです。
白霜雪(バイ・シュアンシュエ)/MSI

シュアンシュエは長身色白美人です。
でも、子供のころは、山間部にほど近い田んぼのある田舎で育ちました。
おさがりのよれよれのゴムのズボン、アンダーシャツがはみ出ていた子供でした。華やかな世界と貧しさを知っています。
――色々ある。人はそれぞれ。
蘇思瑄(スー・スーシェン)/ASUS/ROG

スーさんは、台湾人の女性です。
とても優秀なビジネスウーマンなんですよ。
国際交流を、担当します。
――理解、友情、発展。
凌蒼羽(リン・ツァンユ)/GIGABYTE/AORUS

ツァンユは、海育ちです。
奔放に育ったツァンユは、空がとても好きで趣味は、飛行機の撮影です。
――空と海。昼は青く、夕日に赤く、夜に暗い。風が心地よい。
*
――以上が、デジタル夜譚の案内人たちになります。
お戻りになってください。
*
――いかがでしたか。
ご案内は、これで最後になりますが、
この施設は、まだ出来たばかりで、御用意できていない展示物がたくさんあります。
今後、順次追加していく予定です。
――案内人たちにも、まだ研修期間中の者がいます。
研修が終われば、各コーナーに立つ予定です。
「デジタル夜譚」を気に入っていただけましたら、どうか覚えていってください。
――さぁ、デジタル夜譚へようこそ。
玲と名乗る女性は、促すように館内に手を差し伸べた。

足を踏み入れてみる。
デジタル夜譚プロフィール
