記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

舞台 「ウルトラソウルメイト」 観劇レビュー 2026/05/23


写真引用元:ロロ 公式X(旧Twitter)


公演タイトル:「ウルトラソウルメイト」
劇場:東京芸術劇場 シアターイースト
劇団・企画:ロロ
作・演出:三浦直之
出演:亀島一徳、篠崎大悟、荒木知佳、大場みなみ、門田宗大、新名基浩、野口詩央
期間:5/15〜5/24(東京)
上演時間:約2時間10分(途中休憩なし)
作品キーワード:青春、ファンタジー、ノスタルジー、舞台美術、平成
個人満足度:★★★★☆☆☆☆☆☆


劇作家で演出家の三浦直之さんが主宰する劇団「ロロ」の新作公演を観劇。
「ロロ」は2009年に結成されてから、劇団特有のポップでファンタジックな作風を維持しつつ徐々に活躍のフィールドを広げている。
私自身、「ロロ」の演劇作品を拝見するのは、高校演劇活性化のための作品群「いつ高」シリーズを含めて、『BGM』(2023年5月)、『ロマンティックコメディ』(2022年4月)、『Every Body feat. フランケンシュタイン』(2021年10月)、『四角い2つのさみしい窓』(2020年2月)、『いつだって窓際であたしたち』(2025年6月)、『校舎、ナイトクルージング』(2025年7月)と過去に6度ほどある。

今回の新作公演は、1998年から2020年の22年間という長いスパンの時間を舞台に、サッカーを通じて繋がる若者たちを描く青春ファンタジーとなっている。
1998年、千葉県に住んでいる苺辺祝祭(亀島一徳)は家族の葬式で福島県に来ていた。
そこへ、同じサッカー好きの立町リリィ(篠崎大悟)と出会う。
サッカーを通じて親しくなった二人、リリィはサッカーが上手くなりたいから星空を見上げて星座の勉強もしているのだと祝祭に語る。
トキワの森で時計台(大場みなみ)という風船をつけた女性に出会ったり、電動自転車で発電して捨てられたテレビでW杯の試合を見るなど忘れらない青春を過ごした祝祭は、4年後には両親の離婚で千葉から福島へ引っ越すことになる。
その後祝祭は、福島で染川虹緒(新名基浩)、麦野(荒木知佳)、歯茎(門田宗大)と出会ってサッカー好きな仲間と共に青春を過ごすが...という話である。

本作では劇序盤で、映像として「福島県浜通り」という文字が表示される。
この時点で私は東日本大震災を連想し、今まで何事もなかったように生活していた人々が、震災を通じて大切なものを喪失していく様子が描かれるのかと予想した。
そしてその予想はあながち間違いではなく、被災することがメインテーマではないにせよ、祝祭やリリィたちが大人になるにつれて失っていくものをノスタルジックに描いていた。
そういう点において、私は「ロロ」の過去作『BGM』(2023年5月再演)と非常に似たテイストに感じた。

「ロロ」の作風は、いつも青春をファンタジックに描きながら、喪失した大切な人やものに想いを馳せてノスタルジックになる感情を掻き立てられる。
本作も例に漏れずそういった感情を掻き立てられて、いかにも「ロロ」の作品を観ている感覚にはなった。
しかし、個人的にはいつもの「ロロ」の演劇作品よりもハマらず、結果的に大きく感情を揺さぶられることはなかった。
何を描きたかったのかよく分からず消化不良で、いつものノスタルジーをやや感じた程度で、グッとくる場面はなかった。

一番の個人的な違和感は、PUFFYやスピッツの『愛のしるし』やモーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』、『エンタの神様』といった平成に流行した音楽やエンタメを具象的に作品に登場させてしまうことで、自分の感情が「ロロ」の脚本や演出そのものではなく、平成への懐かしさに引っ張られてしまい、「ロロ」が持っている本来の良さが薄れてしまったようにも思えた。
「ロロ」作品に登場する事象は、灯台や星空などもっとメタファーに富んだ抽象的で詩的なものに価値があるのに、その価値が薄らいだ点に勿体なさを感じた。

舞台美術は、非常に可愛らしくポップで素敵だった。
風船そのものを幽霊に見立てたり、天井に吊り下がる風船で出来た雲は紛れもなく「ロロ」の世界観だったし、ステージ中央奥側に聳え立つ灯台の存在感もどこか可愛らしくもあってファンタジーに感じられて素晴らしかった。

灯台は何のメタファーだろうと考えながら観劇していた。
東日本大震災によってそれ以外のポールは全て倒壊して倒されていたのに、灯台だけは残って私たちを照らし続けた。
きっと灯台は神様的な視点で、登場人物たちがどんなに大人になって変わっていこうともずっと不動の存在で、だからこそ私たちに過去のことを追憶させるものなのかもしれないと感じた。

出演者も「ロロ」でお馴染みの俳優に加え、今小劇場演劇界隈で活躍が目覚ましい若手俳優も起用されていて素晴らしかった。
祝祭を演じた亀島一徳さんとリリィを演じた篠崎大悟さんのコンビの相性の良さは去ることながら、個人的には麦野や金剛寺猫パフェ役を演じた荒木知佳さんのナチュラルな演技と、遊愛やはら原春めく役を演じたボーイッシュな野口詩央さんの演技が良かった。

過去の「ロロ」作品を沢山観てきた私にとっては本作は刺さらなかったが、平成に青春時代を謳歌してきた20代後半〜40代前半の世代には懐かしさを沢山刺激してくる演劇作品ではあると思う。

写真引用元:ステージナタリー ロロ「ウルトラソウルメイト」より。(撮影:石神俊大)




【鑑賞動機】

「ロロ」の演劇作品は、「いつ高」シリーズを除くと『BGM』(2023年5月)以来になるため、東京芸術劇場での新作公演で力も入っているだろうと思って観劇することにした。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

ストーリーに関しては、私が観劇で得た記憶なので、抜けや間違い等沢山あると思うがご容赦頂きたい。

1998年、福島県浜通りと映像で文字が表示される。苺辺祝祭(亀島一徳)が姿を現す。祝祭がサッカーボールを蹴り始めると、周囲に立町リリィ(篠崎大悟)、染川虹緒(新名基浩)、ツバメ(荒木知佳)、ジン(門田宗大)、源助(野口詩央)が集まってくる。そしてみんなでサッカーをする。
祝祭とリリィの二人が残る。W杯の話をして日本は優勝できるかなどと話すが、カズがいないから無理ではないかという話になる。
祝祭はリリィに自己紹介すると、千葉県に住んでいる祝祭は今は葬式で福島に来ていると言う。リリィは葬式を経験したことがなくて泣くものなのかと尋ねたりする。リリィは星空を眺める。そして星座にゼニガメ座などと名付けたりする。リリィはサッカーが上手くなりたいから、こうやって星空を眺めて星座の勉強をしているのだと言う。
PUFFY『愛のしるし』が流れる。

リリィは自分の師匠である時計台(大場みなみ)を祝祭に紹介する。しかし、リリィには見えているはずの時計台が祝祭には見えない。
祝祭はカメラで写真を撮るために旅行をしていて、ユーゴスラビアの話をする。そこからW杯の時間だと慌てて帰ろうとする。
祝祭が夜道を歩いていると、風船が近づいていて幽霊だと思う。
祝祭とリリィは捨てられたテレビを持ってきて、電動自転車で発電することでテレビが映らないか試す。電動自転車を漕ぐとテレビがついてW杯の試合の中継をやっている。

2002年、その4年後には祝祭は両親が離婚して千葉から福島へと引っ越して転校することになった。そして、リリィたちと再会した。
祝祭と虹緒の二人で話している。虹緒は自分で黄昏使いを名乗っている。虹緒は祝祭に何か悲しい過去を背負っていないかと尋ねられる。たとえば、引き裂かれた恋人がいたとか。祝祭は心当たりがなくて考え込む。そんな中、虹緒の夢は黄昏王になって海を渡り歩くことだと語る。祝祭は、それは例のアニメキャラクターと似ているなと感じる。
祝祭は時計台に会いにトキワの森へと向かう。時計台は背中に沢山の風船をつけている。そこへリリィもやってきて、久しぶりに祝祭に再会できたことを喜び、まだ写真は撮っているかと尋ねる。
祝祭と虹緒は再び会う。虹緒はルフィーのように赤いシャツを着ていた。そして麦わら帽子も似合うんじゃないかと言われて被る。虹緒は叫ぶ、祝祭の悲しい過去を見つけたと、両親が離婚したことじゃないかと。リリィが虹緒の誕生日を祝うために、バースデーケーキを運んできてhappy birthday to youを歌う。

2003年、祝祭、リリィ、時計台、麦野(荒木知佳)、歯茎(門田宗大)は車に乗っている。オシムが日本のサッカーチームの監督になった話をしている。祝祭とリリィがなぜか車を降りる。しばらくして、リリィだけ車に戻ってくると祝祭がうんこをしていると言う。祝祭はうんこをし終えて戻ってくる。
モーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』が流れる。
スタジアムに到着する。麦野と歯茎は二人で横に座って後ろ向きでいる。祝祭とリリィと時計台がいる所に、イビチャオシム(新名基浩)がやってくる。3人はびっくりして英語でオシムに話しかける。サッカーの試合に感動したこと、そしてあなたと一緒にサッカーがしたいことをオシムに告げる。そのままオシムを入れて写真を撮る。3人とも喜ぶ。
そのまま5人は電車に乗って「いわき」駅に到着する。祝祭はオシムに会えて大満足だったらしく寝言でオシムのことを話している。そのまま危うくゲロを吐きそうになる。

2004年、高校の寮にて。祝祭とリリィは離れ離れになった。リリィは高校のサッカー部に所属していて寮生活を送っている。寮では、リリィと泡鍋花冠(門田宗大)が同じ部屋で生活していた。禁止事項とか多くて寮生活に窮屈を感じている二人。
そこへ、サッカー部の先輩の遊愛(野口詩央)がやってくる。リリィは先輩である遊愛に対してタメ口なので敬語を使っておこっかと指摘する。しかしリリィは、自分よりサッカーが下手な人にはタメ口だと言うと、お前やべーなと遊愛に言われる。遊愛には、恋愛禁止でオナニー大丈夫かと2人は心配される。
リリィと花冠は波田陽区の話をして盛り上がる。「残念!」って言う人のことを話題にしたち、オシムがいかに監督として良いことを言うかを語り合う。また、写真を撮るのが好きな祝祭という友人のことについて花冠に語ったりする。
そこへ遊愛がやってきてタバコを吸い始める。2人はここは喫煙所ではないと注意する。
2005年、サッカー場。祝祭は時計台と一緒にいて、サッカーの試合を見ながらリリィに手紙を書く、そして読み上げる。エンタの神様は見ているかとか、オシム監督がいるから日本のサッカーは熱いとか。

2015年、舞台上にあるあらゆるポールが倒されていく。海の音がする。
サッカー場にリリィがいると、そこには金剛寺猫パフェ(荒木知佳)がいた。猫パフェはサッカーの試合を見ながら五郎丸には会えるかとリリィに聞く。リリィは、今見ているのはサッカーなので、ラグビーである五郎丸には会えないと言う。しかしリリィは、元を辿るとラグビーもサッカーも同じであったことを告げる。猫パフェは、であれば五郎丸はサッカーに出ているのではないかと言うが、そもそもこれはJ2だと言う。
リリィは猫パフェに小説家かと尋ねる。猫パフェは小説は『カラマーゾフの兄弟』しか読んだことないと言う。珍しいですねとリリィは言う。
星野源が流れる。
2018年、リリィは花冠と猫パフェの3人で会っている。リリィと猫パフェは結婚するらしい。花冠には式は挙げるの?と聞かれるので、こじんまりとしたのを挙げると言う。
そこでリリィは久しぶりに祝祭に連絡する。電話に出たので一時期その場を離れる。そしてすぐに戻ってきて、祝祭がすでに亡くなっていたことを告げる。
祝祭が亡くなったのは3年前で、仕事から帰ってきてそのまま寝て起きなかったらしい。

虹緒の車の運転で、福島をリリィと猫パフェは移動している。虹緒の話に、この辺は東日本大震災による原発事故の影響で帰宅困難区域になっていると言う。原発もこの辺りにあると言う。最初は海側へ放射能は流れたが、風向きが変わって内陸へ流れたと言う。
虹緒は祝祭の墓を案内する。スピッツの『愛のしるし』が流れる。
リリィの元へ、はら原春めく(野口詩央)という少年がやってくる。春めくは、リリィのことをぶっ殺してやる、侵入者は排除と敵視してくる。春めくはイナヅマイレブンが好きなようである。そしてグミも好きなようで、シゲキックスやハリボー、果汁グミにハマっていると言う。
虹緒と猫パフェは、風船爆弾基地の跡にやってくる。戦時中に女学生が爆弾だと思わずに作っていたと言われる風船爆弾で戦争に利用されると知らなかったと言う。
猫パフェの元に時計台もやってきて深呼吸をする。

2020年、リリィと春めく、そして時計台はみんなで家を作り始める。時計台は否定から入る人間になってしまったかとリリィの変わり映えを残念がる。
虹緒や花冠も家作りに加わる。みんなでポールを担ぎながら、ポールを建ててまるでテントを組み立てるようにして家を建てる。
そこへ祝祭が一人やってくる。そして写真を撮ろうと言い出してみんなで写真を撮る。ここで上演は終了する。

1998年から2020年という22年間の時間を描くことで、その当時流行ったものを登場させながら観客を懐かしい気持ちにさせるという点では成功していたのだが、それって「ロロ」の作品を観ているという意味でどうなのかとは思った。感情としては動くのだが、そういう感情の動き方を期待していた訳ではなかったという点にモヤモヤポイントがあった。
このファンタジックな世界観は「ロロ」らしくて素敵なのだが、過去の「ロロ」作品に比べてグッとくるポイントが少なかった。もっと登場人物たちの行動や台詞でグッとくる感情を味わいたかった。また、脚本としてももう少し伏線回収的に意味を汲み取れるものを散りばめて欲しかった。
キャラクターが沢山登場して、俳優が複数役演じるのも多かったが、だからこそ混乱してしまった部分もあった。

写真引用元:ステージナタリー ロロ「ウルトラソウルメイト」より。(撮影:石神俊大)


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

「ロロ」らしいポップな舞台空間と、そしてノスタルジーを掻き立てられる青春描写が詰め込まれていた。「ロロ」の演劇作品を観ているといつも、魔法にかけられたかのように独特な世界観に引き込まれて、「ロロ」の作品でしか味わえないような唯一無二の感情を掻き立てられる。
舞台装置、映像、舞台照明、舞台音響、その他演出の順番で見ていく。

まずは舞台装置について。
ステージ上には沢山の木製のポールが立っている。それはまるで樹木のようにも思えて森の中とも捉えられるかもしれない。時計台のいるトキワの森が登場するので、もしかしたら森を表しているのかもしれない。
そしてステージ中央奥には灯台が1つ立っている。この灯台は劇中でも大きな意味を持つ。東日本大震災が起きても他のポールは倒壊するのだが、この灯台だけは決して倒壊することはなく1998年も2020年でも同じように照らし続ける。木製で非常に可愛らしい灯台だった。
頭上には透明の風船がいくつも密接して吊られた雲を模したオブジェクトがあった。とても「ロロ」らしくてファンタジックで素敵だった。そして本作では風船というのが割と象徴的に登場していて、幽霊として祝祭を追いかけてきたり、時計台は風船を沢山背負っていたりして何らかのメタファーのようにも思えた。ちょっと幻想的な存在を風船で表しているのかもしれない。とても「ロロ」らしくて素敵だった。
ラストのポールで家を建てるというのも良かった。最後は再生を表すようにも思う。東日本大震災や祝祭を失うなど喪失などもあったと思うが、そういったものを乗り越えて、みんなで新たなものを築きあうという再生をイメージした。ややテントを組み立てているようにも見えたが。

次に映像について。
先述した通り、ステージには数々のポールが立っているので、そのポールに沿って縦に文字が映像で投影される演出が印象的である。
1998年、2002年、2015年など具体的に西暦が表示されるので、平成を生きた観客はその当時のことを思い起こしやすかったりすると思う。
その一方で、序盤に「福島県浜通り」と具体的に地名が登場していたが、この地名を見てしまうと、きっとこの後東日本大震災がやってくるという予想が出来てしまい、展開を先読みできてしまうので説明しすぎかなとも思った。会話のやり取りを踏まえて、これは東北だなと徐々に場所を特定できて3.11を迎えるという方が、より感情を揺さぶられるなと感じた。

次に舞台照明について。
「ロロ」の作風をより良い形で引き出してくれるのは、舞台照明の効果も大きいと思う。本作においては、幽霊が出るような夜のシーンがあったり、みんなで車に乗って移動するシーンも夜だったりと、割と夜のシーンも多いと思う。そんな夜を、ちょっと幻想的な感じで上手く照明で表現している点が、「ロロ」の持つ良さを引き出しているように感じた。
あとはステージ中央奥側にある灯台から照らされるライトも回転していて良かった。

次に舞台音響について。
平成の懐メロが色々と流れる劇中音楽だった。PUFFYの『愛のしるし』、モーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』、星野源(曲のタイトルは分からなかった)、スピッツの『愛のしるし』。どの音楽も好きだし、たしかに「ロロ」の作風にマッチはしていると思う。そして、多くの観客が懐かしさを込み上げて、こういった音楽が流れることを肯定的に捉えるかもしれない。しかし、私は「ロロ」の作品でここまで有名なJ-POPを流して欲しくはなかったという気持ちの方が強かった。これは「ロロ」という劇団への期待値の話でもあるのだが、「ロロ」だからこそ「ロロ」の素材としての良さで勝負して欲しかった。
また、序盤でPUFFYの『愛のしるし』が流れて、終盤でスピッツの『愛のしるし』が流れて、スピッツが近年『愛のしるし』をカバーしたのかと思ったが、作詞・作曲がスピッツの草野さんでそういう訳でもなかったので、余計にこのようにアーティストを変えて流した意味もよく分からなかった。スピッツは個人的に「ロロ」で流して欲しくはなかった。

最後にその他の演出について。
懐かしのJ-POPだけでなく、イビチャオシム、エンタの神様、波田陽区、パッション屋良、ルフィーのような平成を代表する流行を具象的に登場させたのは、懐かしいという感情を刺激する上ではアリだったのだが、「ロロ」の作品を楽しんでいるという感覚にはならなかった。「ロロ」には、もっと戯曲としての素材やメタファーで感情を揺さぶって欲しかった。単なる記号としてこれらを描いていることに違和感があった。
ただ、イナズマイレブンだけは理由があったなと思った。春めくは、リリィと比べて20歳くらい年下で世代が違う。けれどサッカー好きである。同じサッカー好きでも世代が違うと何に影響されるかも大きく違うのだなというのを痛感させられた。祝祭やリリィは世代的にサッカー好きだとオシムにインスパイアされているが、春めくはアニメのイナズマイレブンで、この違いは面白かった。
エンタの神様の流れで波田陽区が出てくるのはわかるが、パッション屋良は爆笑レッドカーペットの芸人なので若干時代が違う気がした。小梅太夫とか桜塚やっくんの方が近いのではと感じた。
俳優が一人で何役もこなしていたので、観客目線だと今は誰役なのか、同一人物なのかそうでないのかが判別つきにくかった。

写真引用元:ステージナタリー ロロ「ウルトラソウルメイト」より。(撮影:石神俊大)


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

「ロロ」所属の劇団員や「ロロ」作品でお馴染みの俳優、そして小劇場演劇界隈で活躍を広げている勢いある俳優ばかりで非常に素晴らしいキャスティングだった。
特に印象に残った俳優について見ていく。

まずは、苺辺祝祭役を演じた「ロロ」の亀島一徳さん。亀島さんの演技は、「ロロ」の演劇作品やその他の外部公演でも何度も演技を拝見している。
同じ劇団員というのだけあって、立町リリィ役の篠崎大悟さんとの相性が抜群だった。サッカーボールを蹴り合うシーンから始まるのもとても素敵である。サッカーボールを蹴り合うというのは、一つのコミュニケーションなのだとも思わせられる。そこで仲良くなってお互い好きなサッカーのことについて語るのは青春だなとも思う。
最初は祝祭が主人公なのかと思うが、祝祭は最後には死んでいてリリィの立場で描かれる。この辺りが自然とスイッチしているのもなんとも不思議な戯曲である。
祝祭は写真を撮るのが好きである。ユーゴスラビアなどに行って写真に納めて。写真を撮るという行為そのものも「ロロ」らしくノスタルジー感じると思う。
また、最後に死んだはずの祝祭が登場して、みんなの集合写真を撮る辺りも解釈が色々出来るよなと思う。これは誰かの理想なのかとか、死後の世界なのかとか。

次に、立町リリィ役を演じた「ロロ」の篠崎大悟さん。篠崎さんの演技も、「ロロ」の演劇作品やその他の外部公演でも何度も拝見している。
やはり亀島さんと篠崎さんの相性は抜群だったなと思うのと、サッカー選手になりたいという夢を持って頑張り続ける姿も良かった。中学生までの頃はオシムとサムライジャパンに憧れて、夢を持って生きていたが、高校に入って寮に入ってから禁止事項の多い環境でちょっとグレていく感じとかリアルだなと思う。
大人になって、サッカーの試合を見ている時のリリィの感情はいかなるものなのか。自分もJリーグに入りたかったという後悔もあるのだろうか。そして、結婚を機に久しぶりに祝祭に連絡をした時、すでに彼は亡くなっていると知った時のリリィの気持ちはどのようなものだったのか。色々考えると切なくなる。
きっとサッカー選手を目指していた時は、それを追いかけるのに夢中で忙しくしていたと思うが、結婚することになって家庭を持つとなった時、ふと自分の過去を振り返って、自分の青春というのはもう元には戻らないと悟ったのかもしれない。

特に良いなと感じたのは、ツバメ、麦野、金剛寺猫パフェ役の荒木知佳さん。荒木さんの演技は、ロロ『BGM』(2023年5月)でも演技を拝見している。
麦野の車の中でみんなで青春している感じはとても良かった。荒木さんの演技は「ロロ」でしか観たことないが、本当に「ロロ」作品にマッチしているなと感じる。
また猫パフェのキャラクターがとてもファンタジックだった。背中に羽をつけていて、そういうのも「ロロ」らしさなのだが、凄く天然なところ、サッカーとラグビーを混同したり、小説は『カラマーゾフの兄弟』しか読んだことないと言ったりするところも、凄くキャラクターとして目立っていた。

最後に、源助、遊愛、はら原春めく役を演じた「劇団かもめんたる」所属の野口詩央さん。野口さんの演技は、劇団かもめんたる『奇跡かな』(2025年12月)、ロロ『校舎、ナイトクルージング』(2025年7月)で演技を拝見している。
非常にボーイッシュな感じのキャラクター性が、サッカー少年っぽくあって良かった。遊愛のあの先輩の感じは好きだった。サッカーが上手くなくて後輩に舐められる感じとか小者感がハマっていた。
そして春めくも遊愛とはちょっとテイストを変えて演技をされていて上手いなと感じた。野口さんは本当に少年役が似合うと思う。

写真引用元:ステージナタリー ロロ「ウルトラソウルメイト」より。(撮影:石神俊大)


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

ここでは、本作の戯曲とメタファーについて考察していこうと思う。

先述した通り、本作も普段の「ロロ」らしく甘酸っぱい青春とファンタジーを掛け合わせて、大人たちにノスタルジーと喪失を感じさせる「ロロ」でしか味わえない観劇体験を提供していたと思う。
一方で、今までの「ロロ」とは異なり1998年から2020年までの22年間という長いスパンを扱っていて、だからこそ平成の懐かしさなどを詰め込んだ作品という意味では新鮮さがあったかもしれない。

そして本作で象徴的に出てくるものがある。星空、風船、サッカー、そして灯台である。
序盤において祝祭とリリィの2人において会話で、サッカーで意気投合した二人は、星座の話もする。リリィはサッカーが上手くなるために宇宙にも詳しくなると言っている。これはどういう意味だろうか。一見、サッカーと星空は関係ない。きっとリリィにとって星空は自分が目指すべき目標、高みの象徴なのかもしれないなと感じた。

次に風船であるが、風船は幽霊や時計台を象徴して描かれている。時計台はリリィにとって師匠である。何か霊的で不思議な存在を風船で表現しているように思う。そして終盤には、風船爆弾がこの地で作られたという解説がある。女学生たちが爆弾だとは思わず戦時中に作った風船爆弾。きっと時計台は戦時中に亡くなった風船爆弾を作っていた女学生の霊なのかなとも思った。
リリィはそんな霊的な時計台を見ることができる、いわば霊的な力を持っている存在なのかもしれない。だからこそ、ラストに死んだ祝祭も見ることができたのか。

サッカーが登場人物たちを繋いでいることは言うまでも無い。祝祭とリリィはサッカーを通じて出会い、リリィの青春はサッカーそのものであり、他のキャラクターたちもサッカーでつながっている。
そして世代を超えてサッカーは親しまれ、春めくはイナズマイレブンから好きになっている。
三浦さんってサッカーが好きな人だったのだろうか、自分はW杯の時だけサッカーを観るミーハーだったので、あまりそれ以外は詳しくないが、オシム監督の時代にサッカーにハマったとしても世代的に不思議ではないだろう。

そして最後は灯台である。この作品で一番象徴的に描かれていた灯台は何のメタファーだろうか。
東日本大震災が起きても倒壊することなく、1998年でも2020年でも変わらずそこにあって稼働している灯台。灯台は暗い夜でも周りを照らしてくれる。私は神様的な存在に思えた。いつも自分を見守ってくれる存在。星空もそうだが、何か夢に向かって進むときに、必ずいつもいて見守ってくれる存在かなと思う。
もしかしたら、最後はリリィはその灯台に祝祭を重ねるかもしれない。祝祭は天国に登って、灯台のようにいつもリリィを見守ってくれるのかもしれない。

リリィは最後に猫パフェと住む家を建てる。ここで家庭を築く。
きっとこの家庭も灯台や祝祭に見守られているのだろう、サッカー選手という夢を諦めても見守ってくれる存在がいる。そんなことを感じさせるラストだった。

写真引用元:ステージナタリー ロロ「ウルトラソウルメイト」より。(撮影:石神俊大)


↓ロロ過去作品


↓三浦直之さん作演出作品


↓亀島一徳さん過去出演作品


↓篠崎大悟さん過去出演作品


↓荒木知佳さん過去出演作品


↓大場みなみさん過去出演作品


↓門田宗大さん過去出演作品


↓新名基浩さん過去出演作品


↓野口詩央さん過去出演作品


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集