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舞台 「校舎、ナイトクルージング」 観劇レビュー 2025/07/12


写真引用元:ロロ 公式X(旧Twitter)


公演タイトル:「校舎、ナイトクルージング」
劇場:武蔵野芸能劇場 小劇場
劇団・企画:ロロ
脚本・演出:三浦直之
出演:小川紗良、徐永行、竹内蓮、野口詩央、古川路
期間:7/8〜7/13(東京)
上演時間:約1時間10分(途中休憩なし)
作品キーワード:いつ高、青春、ファンタジー、会話劇、高校演劇
個人満足度:★★★★★★☆☆☆☆


劇作家・演出家である三浦直之さんが主宰する劇団「ロロ」が、演劇を志す高校生たちに大会で上演してもらうことを目指して創作された「いつ高(いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三⾼等学校)」シリーズが上演されたので観劇。
「いつ高」シリーズは、2015年11月に『いつだって窓際であたしたち』がvol.1として上演されたのを皮切りに、2021年6月にvol.9の『ほつれる水面で縫われたぐるみ』とvol.10の『とぶ』が上演されるまで10作品の上演が行われてきた。
今回は、再びこの「いつ高」シリーズをvol.1からキャストをフルオーディションで一新して再演するということで観劇し、今作はそのvol.2にあたる。
「いつ高」自体は、vol.1の『いつだって窓際であたしたち』(2025年6月)のみを観劇したことがあり、「ロロ」の本公演は『BGM』(2023年5月)など4回ほど観ている。

今作はvol.1の『いつだって窓際であたちたち』と同様、「いつ高」の2年6組の教室を描いているのだが、vol.1が昼休みであるのに対して、今作は夜中の教室を描いている。
(逆)おとめ(古川路)は、2年6組の深夜の教室に一人いる。
誰か来たので(逆)おとめはロッカーの中に隠れる。
やってきたのは、夜の校舎で肝試しに来た朝(小川紗良)と将門(竹内蓮)だった。
朝と将門が肝試しをして教室を去ると(逆)おとめは再びロッカーから出てきて、教室に隠してあったテープレコーダーを取り出して聴く。
そこには、シウマイという男子生徒が崎陽軒の弁当について語っている音声が録音されていた。
そこへ、楽(徐永行)という松葉杖をついた男子生徒が教室に入ってきて、(逆)おとめと出会う。
楽は(逆)おとめを幽霊だと勘違いして、彼女をスクショに撮り始めるが...というもの。

「いつ高」シリーズvol.1の『いつだって窓際であたしたち』に続いて、私たち観客がかつて体験した青春を思い起こさせるような描写に良い意味で感情を動かされつつ、そしてvol.1よりも増して想像力を掻き立てられる作品になっていて上質な演劇を観て心が洗われた感覚にさせられた。
今回は真夜中の学校で肝試しをしている男女の学生ということで、それだけで青春がそこには詰め込まれていて観ていて楽しかった。
朝と将門が男女二人で肝試しで怖がる様子は本当に青春そのもので、自分が実際に学校で肝試しをしたことがないのに、なぜか自分の中学高校時代を思い出してあの頃に戻りたくなってしまう感情を掻き立てられる。
青春っていいなと思わせる描写が、vol.1よりも数多くある感じがして良かった。

また、これはvol.1との違いにもなるのだが、今作では「オールナイトニッポン」が登場するなど、ラジオに代表される音声にフォーカスされた演劇作品であるようにも感じて、より想像力というものが掻き立てられた。
耳で聞いた、聞こえたものから視覚情報を想像する。
まるで劇中で(逆)おとめが昼休みにこの2年6組の教室で起きている出来事を録音した音声から想像するように、また大好きなシウマイの顔を声から想像するように。
10代の学生たちは、大人たちには持っていない想像力を持っていると思う。
若いからこそ持つことが出来る想像力が。
それを私たち観客の大人に思い出させてくれたような感じがあって、とても心が洗われる思いだった。

また(逆)おとめは、普段真夜中にしか教室に現れず、同じ教室の生徒たちは彼女のことを知らず幽霊だと勘違いされてしまう存在である。
これは(逆)おとめという女子生徒が不登校で学校に来ていないことを意味する。
そして、不登校ではあるけれど学校という存在に興味はあって、本当ならその教室に自分も居たいのかもしれないなと感じた。
「いつ高」シリーズはvol.1でもそうだが、楽しそうなファンタジーを描きながら、不登校問題もさりげなく描かれていて、そういった点に青春にも残酷な影の部分もあることを物語っていて、また違った感情も掻き立てられる。
(逆)おとめはなぜ真夜中にしか学校に来なくなってしまったのかなど、暗い部分についても想像させる作品になっていて「いつ高」シリーズに深みを与えているポイントだと感じた。

出演者の演技も皆素晴らしかった。
vol.1から続投の朝役を演じた小川紗良さんのクラスの中で人気が出そうな女子高生のキャラクターが、まるで絵に描いた青春のようで素晴らしかった。
小川さんの演技は、声も透き通っていて全体的に透明感があって惹き込まれる。
そして、おばけちゃん役を演じた「劇団かもめんたる」所属の野口詩央さんも素晴らしかった。
喋り方や言動にも独特の雰囲気をしっかりと出していて、オバケのQ太郎的な存在に見えてキャラクターとして出来上がっていた。

今作は、vol.1とはまた違ったテイストで青春を楽しめるのでvol.1と比べ難いくらいに楽しめた。
vol.1に引き続き今作も配信でも視聴できるので、ぜひ青春時代を追体験して欲しいと感じた。

写真引用元:ステージナタリー ロロいつ高シリーズ「校舎、ナイトクルージング」より。(撮影:岩本美佳)




【鑑賞動機】

『四角い2つのさみしい窓』(2020年2月)で「ロロ」に出会ってから、三浦さんの創る演劇は好きだったが、この間まで「いつ高」シリーズは観たことがなかった。そして今回「いつ高」シリーズをvol.1から再演してくれるとのことだったので、先月(2025年6月)に上演されたvol.1に引き続きvol.2も観劇しようと思ってチケットを取った。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

ストーリーに関しては、私が観劇で得た記憶なので、抜けや間違い等沢山あると思うがご容赦頂きたい。

まずはステージ上に、作演出家の三浦直之さんが登場し、この演目は高校演劇で上演されることを目指して創作されたものであることを伝え、今作は高校演劇のルールに則って上演されることを告げる。そのため上演時間もきっかり60分で、舞台セットを生徒たちが運び込むところから始めると言う。そして照明・音響も顧問、または生徒たちが担当すると言う。三浦さんの合図によって、出演者たちはステージ上に机や椅子、窓際とカーテン、教室の入り口を仕込み上演が始まる。
真夜中の「いつ高」の2年6組の教室。(逆)おとめ(古川路)が一人いて誰かが来る音がしたのでロッカーの中に隠れる。懐中電灯を持った朝(小川紗良)と将門(竹内蓮)が教室へやってくる。二人は肝試しをしに夜の教室にやってきたようである。二人できゃっきゃ言いながら教室の中を散策する。将門は自分で置いたメガネに驚いて二人ともびっくりしたような声を出す。
その時将門は、若干ロッカーが動いたような気がして首を傾げる。しかし、そのまま二人は教室を出て行ってしまう。

朝と将門の足音が消えると、(逆)おとめはロッカーから出てくる。そして、教室に隠してあったテープレコーダーのようなものを取り出して、日中シウマイが座っている席に座る。そこでテープレコーダーのようなものを再生する。そこにはシウマイが崎陽軒の弁当について語っている音声が流れる。俵形のごはんとおかずをセットにして食べるなど。
そこへ松葉杖をついた楽(徐永行)が教室へやってきて(逆)おとめと鉢合わせしてしまう。楽は(逆)おとめを幽霊だと思い込み、早速肝試しに来て幽霊に出会ったと大喜びしながら、(逆)おとめを何枚もスクショで撮影する。それを嫌がった(逆)おとめは教室を出て行ってしまう。
そこへ朝と将門が再びやってくる。楽も肝試しに来ていたのかと二人は話をし、楽は先ほどこの教室に幽霊がいて早速スクショを撮ったのだと見せびらかす。しかし朝も将門も、スクショで撮ったのは幽霊ではなく普通に人間じゃないかと突っ込む。そんな勝手に女子高生をスクショで撮って良いものなのかと楽は指摘される。
朝と将門は、教室の窓際に夜明けの街が窓から見えるかのような巨大な絵画を設置する。そして朝と楽は二人で話しながら教室を去っていく。

教室には将門だけが取り残される。そこへ(逆)おとめが教室にやってくる。将門は(逆)おとめに話しかける。あなたは何者なのかと。
(逆)おとめは2年6組の生徒だが、真夜中にしか教室にやって来ないのだと言う。もうすぐ「オールナイトニッポン」が始まると(逆)おとめは言う。
そこへ朝と楽も戻ってくる。そして(逆)おとめを目の当たりにする。(逆)おとめは、この教室に真夜中にテープレコーダーを仕掛けて、日中のこの教室の音を録音しているのだと言う。そして真夜中にその録音した音声を再生して、この教室で日中どんなことが起きていたのか想像するのが好きなのだと言う。
(逆)おとめはシウマイに恋焦がれていた。シウマイの席でシウマイが崎陽軒の弁当について語る声が好きだった。(逆)おとめは机からシウマイの温もりを感じるのが好きで、将門たちからドン引きされていた。
将門は(逆)おとめに、シウマイの写真を見せようとするが断られる。(逆)おとめは視覚的にシウマイを見たいのではなく、音から想像して楽しみたいからだと言う。
楽は(逆)おとめに、さっきは無断で撮影なんかしてしまってごめんと謝る。そのまま(逆)おとめは教室を出て行ってしまう。

朝、将門、楽は伝説的漫画『まみずコズミック』の話をする。そこから朝は、「タイムセールの始まりだー」と漫画に登場する台詞を大声で叫ぶ。それにつられて、将門も楽も漫画に登場するキャラクターの台詞を言う。その様子をスマホでローアングルで撮影する。伝説的漫画『まみずコズミック』は映画化の話が朝の中であって、それをみんなでやろうとして盛り上がる。
将門は、シウマイの隣の席である楠木の机を漁っていたらテープレコーダーを見つける。しかしそのテープレコーダーに録音されていた楠木の声はなんかイメージと違くてそっとしておいた。

そこへおばけちゃん(野口詩央)が教室にやってきて「わー」と言って三人を驚かせようとする。しかしおばけちゃんは幽霊だとは思われなくてあまり驚かれていない。将門と朝にはおばけちゃんを見ることができたが、楽には見えていないようだった。
おばけちゃんは自分のことについて語る。おばけちゃんは昔の2年6組の生徒のようで、今はシウマイの席になっている位置が自分の机だったと言う。昔おばけちゃんが居眠りをしてよだれでべちょべちょにしてしまった机をシウマイは使っていると言う。
おばけちゃんが生徒だった時、隣の席は楠木という男子だったと言う。そしてそれは今も偶然楠木であることに一同は驚く。おばけちゃんはラジオ番組「オールナイトニッポン」を流す。すると、その声が楠木であることに驚くおばけちゃん。
そこへ(逆)おとめが教室へやってくる。おばけちゃんはなんでここにいるんだというような言い争いを(逆)おとめとしている。
みんなで集合写真をスマホで撮影する。すると、確かに写真におばけちゃんが写っていて、楽は心霊写真だと大喜びする。
「オールナイトニッポン」で、「息トロドン」というコーナーが始まる。息だけを聞いて誰かを当てるクイズである。ラジオでは息の音だけを聞いて楠木がシウマイであることを当てる。
最後にラジオからサニーデイサービスが流れて上演は終了する。

今作の「いつ高」のテーマは音による想像力だなと感じた。そのくらい劇中の描写からイマジネーションによっていかようにでも想像して楽しむことのできる作品だと感じた。vol.1の『いつだって窓際であたしたち』でもそうであったように、想像力というものがキーになることに変わりはなかったのだが、今作ではラジオやテープレコーダーなど音だけが聞こえるという状況が数多くて、その音声からビジュアルを想像するように仕向けられる演劇作品に感じられる点が特徴的だった。
また真夜中の学校という設定をふんだんに生かしていたなと思う。肝試しとかは青春時代の夏の夜に一番やりたいやつだし、自分は肝試しとか学校でやったことはなかったが、そういう青春は憧れるし学生時代に戻りたいなと思わせてくれる描写が多かった。
(逆)おとめとおばけちゃんの存在については、色々描かれていない描写も多くて想像できる余白が沢山あって考察が捗りそうである。こちらは考察パートで触れることにする。

写真引用元:ステージナタリー ロロいつ高シリーズ「校舎、ナイトクルージング」より。(撮影:岩本美佳)


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

2年6組の日中を描いたvol.1の『いつだって窓際であたしたち』とはまた違った、同じ場所である2年6組の夜の教室での世界観にファンタジーを感じた。ファンタジーだけでなくなんとも形容し難い青春の味など様々な要素が詰め込まれていて、「いつ高」らしさを感じた。
舞台装置、舞台照明、舞台音響、その他演出の順番に見ていく。

まずは舞台装置について。
先述したように「いつ高」シリーズである今作は、高校演劇の上演形式に則って上演されたので、はじめに出演者たちが舞台装置をステージ上に運び込んでから上演開始する。舞台セットは、下手側に教室の扉をイメージした縦長の四角い枠、教室の机と椅子が4つほど、そして上手側に窓際とカーテンが仕込まれている。また、ステージ上手側奥には(逆)おとめが隠れるために使っていたロッカーもあった。
座席の配置でいくと、上手側手前の席がシウマイの席で、(逆)おとめはその席でテープレコーダーを再生してシウマイの声を聞いていた。その席の下手側隣には楠木の席がある。
これはvol.1の『いつだって窓際であたしたち』を観劇した時にも思ったが、高校演劇でも上演できるような演劇作品なので、舞台セットも高校生たちでも頑張れば作れそうなシンプルなものになっていた。机と椅子、ロッカーは教室のものを使えば良いし、窓際とカーテンと入り口の扉部分の枠さえ用意出来れば上演出来るよなと思った。
朝と将門が持ってきた、窓を覆う巨大な絵の描かれたパネルのようなものが印象に残った。あれは何を意味するのだろう。おそらく機能的な面で行くと、教室の光が漏れないようにするためかなと思う。教室の電気をつけてしまうと外に灯りが漏れてバレてしまうので。では、なぜあのパネルに夜明けの街の絵が描かれていたのだろう。夜明けを待っているということだろうか、夜明けまでこうやって学校の中で楽しもうということなのかもしれない。
あとは、下手側の扉の枠に教室の照明を点灯させることが出来るスイッチのようなものもついていた。そのスイッチはおそらく偽物で、そのスイッチを押すと照明スタッフが照明を点灯するようなキューになっているかなと思う。

次に舞台照明について。
真夜中の教室が舞台なので、窓にパネルが設置されるまでは照明は全体的に暗く夜を表していた。そこに懐中電灯の灯りが照らされる感じなど肝試しっぽさがあって良かった。この序盤の肝試しの演出は良いよなと思う。こういう肝試しを舞台空間で観ると観客のテンションも上がるよなと。下手側の扉の枠のスイッチを入れると、教室は明るくなる。
また、終盤のシーンでは音楽と共に照明演出も加わって見応えがあった記憶である。

次に舞台音響について。
今作はテープレコーダーやラジオなど音声が多くを物語る作品である。その分音響は非常に重要な役割を果たしていた。
テープレコーダーに録音されたシウマイの声は、実際にvol.1『いつだって窓際であたしたち』で出演していたシウマイ役の稲川悟史さんの声を用いていた。崎陽軒の弁当について語る稲川さんのシウマイの声がはっきりと聞こえてきてクスクス笑えた。
あとはオールナイトニッポンが劇中で微かに聞こえてくる感じのボリュームが良かった。「息トロドン」は特に好きなコーナーだった。楠木の声は、当日パンフレットを見たら、「ロロ」の篠崎大悟さんだった。たしかに納得の低音ボイスだった。
あとはなんと言っても、サニーデイ・サービスの『夜のメロディ』がラストに流れるのが良かった。vol.1では至るシーンで楽曲が流れていたけれど、今作はラストにこの1曲だけ。それがまた良かった。

↓サニーデイ・サービス『夜のメロディ』



最後にその他の演出について。
(逆)おとめは序盤はずっとロッカーに隠れているけれど、(逆)おとめから外は見えないので、外でどんなことが起きているのか音で判断しながら演じているのかなと思う。ここでも出演者が音から想像するということが行われているよなと思う。
伝説的漫画『まみずコズミック』のワンシーンをやってスマホで撮影しようとする件、この件はよく分からなかったけれど、こうやってクラスメイト同士で漫画のワンシーンをやり切るという青春なのかなと思った。唐突過ぎてよく分からなかったが、こういうよく分からないシーンが入るのも「いつ高」らしさだよなと思う。

写真引用元:ステージナタリー ロロいつ高シリーズ「校舎、ナイトクルージング」より。(撮影:岩本美佳)


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

vol.1の『いつだって窓際であたしたち』から続投の出演者もいたり、今作から「いつ高」シリーズに登場する出演者もいたりと色々だが、皆小劇場演劇を中心に活躍している役者さんばかりで初めましての方も多かったが素晴らしかった。
出演者が5人しかいないので全員について見ていく。

まずは、朝役を演じた小川紗良さん。小川さんは、vol.1『いつだって窓際であたしたち』(2025年6月)でも朝役を演じており、2作連続での出演となる。
朝はvol.1においてもっと沢山シーンを観たいなと思っていたが、vol.1よりも出演シーンが多くてとても満足だった。まず序盤で将門と一緒に肝試しをしに教室に来て二人で怖がるシーンが見られただけでも満足だった。
キャラクター的にもなんとなくサバサバしていて、こういうしっかりものの女子高生いたら男子から人気だろうなとも思う。将門と一緒に入ってきたが、実は楽と付き合っているというのもそうなんだという感じだった。
伝説的漫画『まみずコズミック』のシーンをやろうとする朝も良かった。「タイムセールの始まりだー」の掛け声がとても印象に残る。伝説的漫画『まみずコズミック』のシーンを朝、将門、楽の三人でやろうとするがどうしても朝が目立っていてそちらに目を向けてしまうなと思う。
小川さんはラジオ番組もやっていらっしゃって、そういう意味でもラジオの登場する今作との共通点は多かったのではと思う。そして小川さんがinstagramで投稿されていた、演劇を通じて「想像する力」の大切さを語っていて、確かに今作は演劇の中でも想像力がテーマになっている作品だから、そういう部分に演劇の魅力を見出していて素敵に思えた。

次に、おばけちゃん役を演じた「劇団かもめんたる」所属の野口詩央さん。野口さんの演技は初めて拝見する。
なかなか癖のある喋り方をするおばけちゃんで、オバケのQ太郎とかそういうおばけのキャラクターを思い浮かべながら観劇していた。
なかなかこういう癖のあるキャラクターを演じ切るのは難しいと思うが、それを器用にこなしていて素晴らしかった。
おばけちゃんは、(逆)おとめとは対照的で、おばけなのに人間だと勘違いされるし怖がられない。本当はもっとおばけなので人間に驚かれたいという欲求を持っているように感じたが、周囲の人間は普通に馴染んでしまっている。
そして不思議なのは、かつて2年6組にいた生徒だというのにどうして楠木のことは知っているのだろうか。色々と余白があって考えさせられるキャラクターだった。

(逆)おとめ役を演じた「TeXis」所属の古川路さん。古川さんの演技を拝見するのも初めて。
長い黒髪でずっと元気がなくて引きこもりがちで、人間だけれど幽霊のように確かに感じる。不登校の生徒を幽霊のように扱うってちょっとグロテスクだなと感じる部分でもある。
それにしても(逆)おとめのシウマイに対する一途な感情は観ていて良いなと思う。こんなに夢中にさせてくれる男子がいて良いなと思う。ちょっと言動が変態じみているけれど、そういうキャラクター性を含めて(逆)おとめという存在が素晴らしかった。

将門役を演じた「劇団スポーツ」の竹内蓮さん。竹内さんは、vol.1『いつだって窓際であたしたち』でも将門役を演じており、2作連続での出演となる。
vol.1でも将門は幼馴染ということで朝と二人で仲良しやっているシーンが観られて良かった。序盤の肝試しのシーンの二人は最高だった。だからこそ朝が付き合っているのは楽なのか...と思ったのだが。
将門が(逆)おとめとの仲を深めていく光景も観ていて好きだった。将門は(逆)おとめが非常に変態で変わった性格だなとも思いつつ、彼女に興味を持って色々深掘りするのは良いなと思う。そしてそんな二人の会話を見守っている、楽・朝のカップルも良かった。
こういう光景を全てひっくるめて青春て良いなと思う。

最後に、楽役を演じた「ザジ・ズー」「サンバーチャイチャイ」「さるさるさる松井絵里」所属の徐永行さん。徐さんの演技も初めて拝見する。
こういう男子高校生いるなあと思わせるくらい、Yシャツをベロンと外に出して松葉杖ついて背の高い感じの役が良かった。こういう男子はおっちょこちょいですぐ怪我する。
おそらく鈍感だからこそ、(逆)おとめを幽霊だと思ってしまったり、おばけちゃんが一人だけ見えなかったりしたのだと思う。非常に役にハマっていた。

写真引用元:ステージナタリー ロロいつ高シリーズ「校舎、ナイトクルージング」より。(撮影:岩本美佳)


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

ここでは今作の脚本について謎に思えた部分について考察してみようと思う。

今作では多くは語られず、余白としてあえて描かずに観客の想像に委ねている部分も多くあると感じた。
今作で一番ミステリアスに感じられたのは、(逆)おとめとおばけちゃんである。この二人は対照的なキャラクターだが極めて謎めいたキャラクターとして今作で描かれている。

まずは(逆)おとめである。彼女は、2年6組の生徒であるにも関わらず真夜中にしか教室に来ない。日中に学校に来ていないので不登校だということが分かる。
しかし学校というものが全く嫌いだという訳ではなく、真夜中には学校にやってくるので、おそらく対人関係で何かあって学校に来なくなってしまったなどあるのかなと想像した。
(逆)おとめは、教室の至るところにテープレコーダーを設置して録音し、日中この教室で起こった出来事を音声から想像しながら楽しんでいる。その時点で、おそらくクラスメイトのことは嫌いではないのだと思う。嫌いであったらテープレコーダーに録音なんかして聞いて楽しんだりはしないから。
これは私の想像だが、(逆)おとめは直接人と会って相手に嫌われるのが嫌なのかなと思う。であればいっそのこと直接会わずに想像だけして学校生活を自由に楽しめば良いと。vol.1でも想像するならどこへでも行けるみたいな白子の台詞があった。やはり学校に馴染めない女子高生は、想像力豊かでその想像力で世界を楽しんでいるのかもしれない。
(逆)おとめが人間であるにも関わらず幽霊だと勘違いされてしまうのは、かなり皮肉だなと思う。(逆)おとめは人間ではあるが、日中の教室にはいなくて夜に現れて一方的に教室で起きたことを知っているので存在的には幽霊に近いのかもしれない。自分はクラスのことを認識しているけれど、他のクラスメイトからは(逆)おとめのことを認識されていない。幽霊のようだった。

一方で、おばけちゃんというキャラクターも登場する。おばけちゃんは(逆)おとめとは対照的で、人間ではなく幽霊なのだが、(逆)おとめよりも性格が明るくて全然おばけのように怖くないし人間なんじゃないかと勘違いされるキャラクターである。
かつて2年6組の生徒で、シウマイの席に座っていたと言っている。しかし、このおばけちゃんは謎が多すぎる。まずどうして夜の教室にずっといるのだろうか、いつの時代の2年6組の生徒だかも分からない。共通で知っている先生がいたので、さすがに何十年も離れていることはないのかなと思う。
またどうしておばけちゃんは亡くなってしまったのか、それも明かされない。何かこのクラスに未練があったのかもよく分からない。
そして一番の謎が、今の2年6組にいる楠木という生徒をおばけちゃんは知っていたということ。これはおそらく、おばけちゃんが楠木を知っていたのではなく、たまたま今の2年6組の楠木と同じ席に、おばけちゃんの頃の2年6組の楠木が座っていたというだけなのかなと思う。その証拠は、おばけちゃんが現れる直前に、楠木の机からテープレコーダーが出てきて楠木の声とはまるで違う声が出てきたからである。これがトリガーになっておばけちゃんが出てきたのだと思う。

朝、将門、楽はおばけに出会えるんじゃないかと思って肝試しに行ったところ、実際におばけちゃんという幽霊に出会えた。それは、2年6組の楠木の席に、かつて楠木という別人の男性がいたことが幽霊を呼び寄せたのかもしれない。
全然分からない部分の多い脚本だったが、そうやって色々描かれている描写から設定を想像してみるのは良いことだなと思う。小川紗良さnが言っていたように、想像するということの楽しさと大切さを感じた演劇作品だった。

写真引用元:ステージナタリー ロロいつ高シリーズ「校舎、ナイトクルージング」より。(撮影:岩本美佳)


↓「いつ高」過去作品


↓ロロ過去作品


↓三浦直之さん外部プロデュース公演


↓竹内蓮さん過去出演作品


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