宇宙叙事詩の科学ノート 第28回 なぜ人類は二足歩行を選んだのか
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1 二足歩行とは何か
二足歩行とは、後肢のみを主な移動手段として使用する歩行様式である。現在の地球上では、人類、鳥類、一部の爬虫類などが代表例である。
しかし人類の二足歩行は、鳥類などとは大きく異なる。人類の祖先は四足歩行を行う類人猿から進化したためである。つまり人類の二足歩行は、「四本足を持つ祖先が二本足で歩くようになった」という特殊な進化の結果なのである。
2 なぜ二足歩行が生まれたのか
現在のところ、「なぜ二足歩行が生まれたのか」について完全な答えは存在しない。しかし有力な仮説はいくつか存在する。
第一は森林縮小説である。約700万〜400万年前、アフリカでは気候変動によって森林が縮小した。それまで樹上生活を中心としていた祖先は、草原や疎林環境へ進出する必要に迫られた。その結果、直立姿勢が増加したという考え方である。
第二は遠距離移動説である。二足歩行は長距離移動において意外に効率が良い。広大な草原環境では、エネルギー消費を抑えながら移動できる利点があったと考えられている。
第三は監視説である。草原では敵や獲物を早く発見することが重要である。立ち上がることで遠方を見渡しやすくなるため、生存上有利だったと考えられている。
3 二足歩行がもたらした最大の変化
二足歩行の最大の成果は歩くことではない。手が自由になったことである。
前肢は移動から解放され、持つ、運ぶ、投げる、拾う、叩く、加工するといった新たな役割を担うようになった。自由な手は、世界へ働きかけるための器官へ変化していく。
4 手と知性の進化
自由になった手は、知性の発達とも深く関係している。物を持つだけであれば、他の動物にも可能である。しかし、道具を選び、形を理解し、使い方を覚え、結果を予測するためには、高度な認知能力が必要となる。
石を叩く。枝を使う。食物を運ぶ。獲物へ投げる。こうした行動は、単なる筋肉の動きではない。対象の性質を見分け、目的に応じて使い分ける能力を必要とする。
この過程で、手と脳は相互に影響し合ったと考えられる。手を使う行動が増えれば、より複雑な判断が必要になる。より複雑な判断が可能になれば、さらに高度な道具使用が可能になる。
つまり二足歩行は、直接脳を大きくしたというより、手を自由にすることで知性が発達しやすい環境を作ったのである。
5 手は世界を変え始める
多くの動物は環境へ適応する。しかし人類の祖先は、環境そのものへ働きかけ始めた。
石を使う。枝を使う。食べ物を運ぶ。後には道具を作る。環境は単なる背景ではなく、変化させる対象となった。
この変化は、後の火の利用、狩猟技術、農耕、文明へと続く重要な転換点である。
6 本稿「立つもの」との関係
第1節「立つもの」では、祖先たちが立ち上がり、世界へ手を伸ばし始める過程を描いた。
科学的には、二足歩行によって前肢が移動から解放され、道具使用や運搬能力が発達したと考えられている。自由になった手は、世界へ働きかける能力を拡大し、その過程で知性の発達にも影響を与えた。
理解の叙事詩は、ここから始まる。世界を理解する以前に、まず世界へ触れ、世界を変え始める身体が生まれたのである。
一行定義
二足歩行とは、自由になった手によって世界へ働きかけ、知性を発達させるための進化である。
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