宇宙叙事詩の科学ノート 第34回 数えることは、世界を抽象化することだった
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第33回「人類はなぜ膨大な知識を扱えるのか」では、人間の脳が経験を圧縮する仕組みについて考えた。
一匹の犬を見る。
別の日に別の犬を見る。
さらに別の犬を見る。
色も大きさも違う。
それでも人間は、それらを「犬」として理解する。
これは、個別の経験から共通する特徴を取り出す働きである。
この働きを抽象化と呼んだ。
第3章「残すもの」で描かれていたのは、その抽象化によって得られた知識を、脳の外へ保存していく過程だった。
定住。
都市。
文字。
記録。
制度。
知識は個人の記憶だけではなくなり、共同体の中に残され、世代を超えて受け渡されるようになった。
では、第4章「数えるもの」で描かれている抽象化は、第3章と同じものなのだろうか。
同じ面もある。
しかし違う面もある。
第3章の抽象化は、主に経験をまとめる働きだった。
犬を犬として理解する。
出来事を教訓として残す。
経験を知識へ変える。
これは、脳の中で起きる整理である。
一方、第4章の抽象化は、世界そのものを整理し始める働きである。
穀物を数える。
家畜を数える。
土地を測る。
時間を測る。
植物を分ける。
動物を分ける。
星の動きを追う。
ここで人類は、経験をまとめるだけではなく、世界の中にある違いや共通性を取り出し始めた。
第1節「数えるもの」では、人類が世界を量として扱い始めた。
穀物がある。
家畜がいる。
蓄えがある。
それだけでは足りなくなった。
どれだけあるのか。
どれだけ必要なのか。
どれだけ足りないのか。
数は、世界を比較できるものへ変えた。
第2節「測るもの」では、人類はさらに基準を作った。
長さ。
重さ。
面積。
時間。
測ることによって、世界は共通の尺度を持つようになった。
「遠い」では人によって違う。
しかし「十歩」なら共有できる。
「重い」では曖昧である。
しかし「同じ重さの石三つ分」なら比べられる。
測定とは、世界を共通の言葉へ変える行為だった。
第3節「分けるもの」では、分類が始まる。
植物。
動物。
鉱物。
薬。
土地。
知識。
人類は似たものを集め、違うものを分けた。
分類は単なる片づけではない。
世界の中に構造を見出す行為である。
知識は保存されるだけでは足りない。
探し出せなければ意味がない。
分類は、知識を再び使えるものへ変えた。
第4節「観測するもの」では、人類の視線は空へ向かう。
第2章「想像するもの」でも、人類は空を見上げていた。
そのとき空は神話の舞台だった。
星々の中に神々を見た。
英雄を見た。
物語を見た。
しかし第4章では、同じ空に別のものを見始める。
月の周期。
季節の巡り。
太陽の動き。
星々の配置。
そこには規則があった。
神話の空が消えたわけではない。
しかしその隣に、法則の空が現れ始めた。
ここで数学が芽吹く。
数学とは、数を使うだけのものではない。
世界の背後にある関係を扱うための道具である。
距離。
比率。
周期。
図形。
人類は見えているものそのものではなく、見えているものの背後にある構造を考え始めた。
第3章の抽象化は、経験を知識へ変える抽象化だった。
第4章の抽象化は、世界を構造として見る抽象化だった。
第3章では、知識が時間を超えた。
第4章では、世界が比較され、分類され、測られ、法則として見られ始めた。
どちらも抽象化である。
しかし第3章の抽象化は、知識を保存するための抽象化であり、第4章の抽象化は、世界を理解するための抽象化である。
この違いは大きい。
人類はただ覚えたのではない。
ただ記録したのでもない。
世界を比べ、分け、測り、その背後にある規則を探し始めた。
その先に、数学がある。
その先に、科学がある。
そしてその先に、宇宙を理解しようとする長い旅がある。
第4章「数えるもの」で描かれているのは、計算の始まりではない。
人類が世界を抽象化し始めた瞬間である。
一行定義
数えることとは、世界を比較できる形へ変える抽象化である。
※ noteによるAI自動翻訳(英訳)版も公開されています。興味のある方は、下記からご覧ください。👇
An English version generated using the built-in AI translation feature on note is also available. If you’re interested, please check it out below. 👇
🌐 Science Notes of the Cosmic Epic Part 34: Counting Was Abstracting the World
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