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【共同マガジン月一回のイベント】テーマ:働くって何だろう?

共同マガジンの「船出の日」である毎月 1 日に、お題持ち回り形式でやっていきたいです。 もちろん自由参加なので、執筆が忙しい月はパスしていただいても大丈夫です。
今回イベントの お題:「働くってなんだろう?」
お題担当:MeiMei さん 投稿日:6 月 1 日(月)

ルール
あなたのイメージの画像を 1 枚貼る その下に、簡単なエッセイ「働くってなんだろう?」を書く

「働くって何だろう?」

アスファルトの隙間から這い出してきた黒い粒が、等間隔の列をなして動いている。雨上がりの湿った土の匂いが部屋の窓辺まで漂う。彼らは互いに触角を震わせ、休むことなく何かを運び続けている。その淀みのない規則正しい足並みを見つめていると、机の上の視界が少しずつ狭くなっていく。吸い込んだ空気は梅雨特有の重みを含んでいて、吐き出した息は生温白く、目の前の白いデスクの表面にぶつかって霧のように霧散した。

かつては、あの行列の先頭を走るかのように、アリ以上にがむしゃらに動いていた。コロナ禍が訪れる前の世界では、休むことへの恐怖に急き立てられるように、朝から晩まで時間という時間をすべて労働へと注ぎ込んでいた。周囲の速度に遅れるまいと、自らの限界を超えてなお足を動かし続ける日々。あの頃はそれが当たり前であり、それ以外の生き方を知らなかった。

しかし、世界の歯車が大きく止まり、時代が反転した。

生物学の本を開けば、あの黒い集団の中にも、全く動かない個体が二割から三割は混ざっているのだという。組織の防衛策だとか、誰かが疲れたときの交代要員だとか、もっともらしい理由が活字で並んでいる。確かに、その「働かないアリ」の枠に収まれば、過酷な労働からは逃れられるのかもしれない。しかし、想像の中でその場に身を置いてみると、今度は別の重圧がのしかかる。周囲のすべての個体が忙しなく動き、義務を果たしている中で、自分だけがただ地面に伏している。その空間に漂う無言の視線。みんなが動いているのに、自分だけが止まっている。その事実が、目に見えない壁となって周囲を囲む。その気まずさに耐えかねて、結局は周囲の歩調に無理やり合わせて歩き出す姿が、容易に浮かび上がってしまう。

では、行列から完全に離脱して、あのキリギリスのように楽器を鳴らしてその日暮らしをすればいいのか。

窓の外に目をやると、冬の灰色の空が脳裏をよぎる。北風が吹きすさび、街の色彩が消え去る季節。蓄えを持たず、帰るべき場所もないまま、凍てついた地面の上に立ち尽くす未来。灯りが消え、景色が白く染まっていくその瞬間を想像すると、目の前の世界が暗転する。ただ終わりへと向かうだけの道は、重く、逃れられない絶望として目の前に立ちはだかる。

アリの行列に埋もれることもできず、キリギリスのようにすべてを投げ出すこともできない。行き場のない吐息が、再び口元から漏れ出し、部屋の隅の空気へとゆっくりと溶けて消えていく。

首を巡らせると、古い図鑑の片隅に写る、灰色の毛並みを持った生き物の姿が目に留まった。

ユーカリの硬い枝にしがみつき、一日のほとんどを木の上でじっと過ごしている。その生き物は、ただ怠惰に眠り貪っているわけではない。彼らが主食とする葉には、強烈な毒素が含まれている。生命を維持するために、その毒をじっくりと、何時間もかけて分解しなければならないのだ。生きるということは、彼らにとって「解毒のために、あえて動かず休む時間を耐え忍ぶこと」そのものなのだ。

これは、遠い異国の森の動物だけの話ではない。

かつてアリのように走り回っていた時期を経て、いま、糖尿病という常に自身の内側と向き合い続けなければならない現実が、この手元にある。ただがむしゃらに足を動かし、周囲と同じ速度で行列を歩き続けることは、自らの内側のバランスを決定的に崩してしまう。周囲の視線や社会の歩調に惑わされることなく、あえて速度を落とし、意識的に身体を休める時間を作らなければならない。それは怠けでも逃げでもなく、この日常を確かに維持し、明日へと繋ぐための必須の営みなのだ。

必要なのは、アリの行列に並ぶことでも、キリギリスのように終わりへ向かうことでもない。自分だけの木を見つけ、そこに鋭い爪を立ててしがみつくことだ。外側から絶え間なく流れ込んでくる圧力や、他者との比較という濁った澱みを、自らの内側で静かに、時間をかけて消していく。病と共に生きるために、あえて動きを止め、休息という静かな時間を積み重ねていく。

吐き出した息は、もうデスクの表面で霧散することなく、静かに部屋の空間を満たしていった。耳の奥で、ユーカリの葉を静かに噛み下す、幻の音が聞こえたような気がした。




LaLaLa | 創作AIエンジニア × 小説家



【自己紹介文】

note開始1年3ヶ月で、圧倒的な熱量とともに【2,700記事】を投稿。小説・エッセイの執筆から、生成AI(LLM)を活用した創作支援プログラムの開発、リアルなハンドメイドアクセサリー制作までを手がける「多角経営」のクリエイターです。

■ 主な実績・活動(ファクトデータ)実績: note総投稿数2,700記事超(毎日継続更新中)。
文芸: 【創作大賞2026】恋愛小説部門(TALESランキング)現在1位『怪獣の腹の中で』/ホラー小説部門『夢を読む頁』応募中。
開発: 心理診断&AIプロンプト自動生成アプリ『Psyche × Code』開発・運営。
運営: note共同マガジン『出版への道』主宰。
リアル: 2026年6月より、Webアプリの世界観を具現化した「概念ハンドメイドアクセサリー」のオンライン販売を開始。


■ 発信テーマ
AIに解説をさせず「主観描写に没入させる」ための実践的プロンプト、未経験から1ヶ月でアクセサリーを作って売る制作ドキュメント、独自の競馬・カルチャー回顧録。

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