恋も小説も長ったらしいのはダメ!
摘乃美津でございます。
皆さんは“執筆するきっかけ”、そして、“初めて誰かに読んでもらった時のこと”を覚えていますか?
私は創作することをためらっていたのですが「やってみようよ!」と同居人が背中を押してくれて小説を書き始めることができました。
初めて書いた作品を、誇らしげに彼に見せた日を今でも忘れません。
「ねぇ、書いたらさ、最初に読んで欲しいな。」
私のお願いでした。
上手く書けた…きっと褒めてもらえる…。
そんな淡い期待を胸にいざ見せたら…褒められるどころか、稚拙な文章のせいで読み進めるスピードが上がらず、更には段落ごとのダメ出しへと発展、その上2時間もかかってしまうとは…。
「う~ん、一生懸命に書いたのはわかるけど、何を言いたいのか伝わりにくいなぁ…。」
「え~!?ダメかなぁ…。結構書けたと思うんだけど…。」
「う~ん、言いたいことを盛り込み過ぎて述語までが長いね。いちいち立ち止まって、美津の言いたいことを整頓しなきゃいけない。つまり、文章が長大な一塊のせいで、全体像を掴むまでに時間がかかるんだ。もっと区切った方が良い。そうじゃないと途中で読むことをやめちゃう人が多いと思う。」
「はぁ…。そう…ですかね…。」
曇った表情の私に追い打ちが。
「“長い”っていうより、“長ったらしい”んだよね。多分なんだけど、思いついた言葉を、考えなしにその順番で書いたからだと思う。これは美津の文章というよりメモ帳って印象。『私、この単語が思い浮かんだんです』って、誰も聞いていないのに見せにきてる感じ。」
「そんなに酷い…?」
「そう見られても仕方ない。あと、何か上手いことを言ってやろうっていう感じが透けて見えるのがちょっとなぁ…。」
「…。」
やめられない止まらない。彼は彼で、一度口を開くと全てを放出するタイプ。
彼が私の成功のために時間と労力をかけてくれているのはひしひしと伝わります。だからこそのダメ出し…本人からすればこれでも言葉を選んでくれているようですが…。
この日以降、摘乃専属の編集担当のチェック日は、重要な会議を控えた会社員のように、自分が書いた作品への自信よりも、彼から何を言われるかわからない不安でソワソワするようになってしまいました。
とは言え、今までの全てのチェックでダメ出しをもらったわけではありません。不思議なことに、私がこれで良いのかな…と不安に思った原稿を提出した時ほど…
「今日の原稿の自己採点は何点?」
「う~ん…70点くらいかな。」
「不安な部分がある?」
「表現を迷ってる部分はある。もしかしたら情景を浮かべにくいかも。」
「ちょっと読んでみるね。」
——————「全然問題ないよ!分かりやすくて面白い!このままでOKだよ。」
「えぇ~…?すんなり行き過ぎても怖いな…。」
「ちなみに、不安な部分はどこ?」
「ここの会話部分。こっち都合の不自然な言い回しになってないかな。」
「大丈夫だよ。登場人物の性格に対する信憑性をちゃんと持たせられているから、イメージ通りのセリフで納得できる。」
このような状況は極々稀です。
ほとんどの場合、痛烈なダメ出しの連続です。あまりに言われて、小説の推敲という目的から逸脱して、ケンカにまで発展することもありました。
それでも毎回彼に依頼するのは、言語化能力に長けている彼の的確なアドバイスを信頼しているからです。
最初は文章に対する初歩的な指摘でしたが、執筆を継続するにつれ、構成、登場人物の厚み、物語の起伏など、指摘されるポイントにも変化が表れてきました。
今となっては、自分の内圧を放出するよりも、同居人から「すごい!」「面白い!」という言葉を聞きたくて執筆している側面の方が強いです。
まぁ頑張れ美津。肩の力を抜いた方が上手く行くってことやろ。えっ意味わからん?じゃあ偶然の産物ってことやな。でも続けて行くことで意味がわかることもあるやろ。しらんけど。
エッセイのサイクルが出来上がりつつあるから、もうちょっと書いてみ。
そう言い聞かせて、美津は布団に入ったとさ。
