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解題『両性具有神の恋』①:大人のための小説を、美しい本で届けたい―出版とエッセイ連載のお知らせ

はじめに

この春、札幌の印刷会社・アイワードの出版部門である共同文化社様のご協力を得て、長編小説『両性具有神の恋』を出版します。
2026年4月下旬の発売に向け、これから内容紹介や制作裏話、作中のモチーフやテーマなど、関連の話題をnoteに掲載していきます。

小説出版の動機はいろいろありますが、まずは「大人のための小説」を、「紙の本、それもハードカバーの、美しい装幀の本として」、欲しいと思ってくださる方の手元に届けたい、という気持ちがありました。

小説を読む人口が減り、文芸作品の市場が縮小する中で、出版社は比較的堅調なジャンル小説や青春小説の出版に力を入れています。ミステリーやホラー、ファンタジーなどのジャンルなら固定ファンが付いていますし、最もよく本を読むのは小中高生という調査結果もあります。数を売るためには、当然の方針といえるでしょう。

しかし、子どもや若者ではなく、ある程度は人生の苦さをも知った年代の視点で語られる一般小説にも、需要はあるのではないか。情報が届けば、つながる縁もあるのではないかーーそんな思いで、この文を書き始めました。

本作の初稿は、2021年に小説投稿サイトへの連載作品として書いたものです。ライトノベルが主流のウェブ小説の世界では、文芸色の強い本作は多くの読者を獲得したとは言えませんが、少数ながら熱心に支持してくださる方々に恵まれました。この作品には紙の本の形が合うという声に励まされ、大幅な加筆修正を経て書籍化が実現しました。仕様は四六判、上製本です。

トップの画像は、イラストレーターのよしおか氏によるカバーイラストです。よしおか氏は書籍の装画のほか、音楽アルバムのジャケットイラストやゲームのキャラクター画などで活躍されています。筆者が安壇美緒氏のベストセラー小説、『ラブカは静かに弓を持つ』の装画に惚れ込んでイラストの依頼を送ったところ、快諾をいただけました。

本の制作を依頼したアイワードは作品集などの印刷製本の質の高さで全国的に知られ、筆者が勤める大学の印刷物も数多く手がける会社です。共同文化社は、大学関係では研究成果出版を主に行っているところ、小説を出版したいという変わった相談にも親身に応じてくださいました。

小説『両性具有神の恋』について

本作のあらすじは、2010年前後の東京の大学キャンパスを舞台に、新しい言葉で言えば「ジェンダー・フルイド」――流動するジェンダー・アイデンティティを持つ19世紀アメリカ文学の男性研究者が、授業のアシスタントとしてやって来たバイセクシュアルの大学院生と出会い、彼を精神的・身体的危機から救おうとする中で、自らの過去の清算にも向き合っていくというものです。

大学が主な舞台ということや、ジェンダー、文学というキーワードから固い印象を持たれるかもしれませんが、物語展開は往年のハリウッド映画の構成や大衆小説のパターンを踏まえ、そこに文学的テーマを織り込む形を取っています。かつての「中間小説」ジャンルのような作品を書きたいという気持ちもあり、執筆にあたっては、静謐さの中にも熱が感じられるエンターテインメントを目指しました。

ストーリーレベルには「無償の愛」「喪失・挫折からの再生」といった普遍的テーマ。同時代的なテーマとして「分断と境界」「境界のあいまいさと越境」。さらに深層には、日本と西洋(特にアメリカ)の歴史的関係性を寓意的に描くという制作意図がありますが、読者それぞれの関心の範囲で楽しんでいただければと思います。

連載企画の予定

これから第10回まで、週1回(金曜日20:30)に公開する記事で本作の世界をご紹介します。2回目以降の予定タイトルは以下の通りです。
公開済みの記事にはリンクを併記しています。

② 試し読み(1) エピグラフ・第一章冒頭部分
       https://note.com/eiko_mt/n/ncb1adb531958
③ 試し読み(2) 第一章冒頭部分(続き)
  https://note.com/eiko_mt/n/ne745426e6834
④ 大学キャンパスの構造に、二人の距離感を重ねて
       https://note.com/eiko_mt/n/n77fd47ebca39
⑤ 「ジェンダー・フルイド」「バイジェンダー」「バイセクシュアル」―語り手が探す「自分を容れる言葉の器」
       https://note.com/eiko_mt/n/nb23c6f22ebe8
⑥ ヘルマプロディートス(両性具有神)像と砂時計
  https://note.com/eiko_mt/n/nc56be4601626?sub_rt=share_pw
⑦ ナサニエル・ホーソーン「痣」「ラパチーニの娘」「緋文字」
       https://note.com/eiko_mt/n/n2c105eaf66b6?sub_rt=share_pw
⑧ 大学のハラスメント相談体制―小説での描写とリアルとの相違
  https://note.com/eiko_mt/n/n7e77d81b9f9b?sub_rt=share_pw
⑨ ウェッジウッドの茶器と父子の関係
  https://note.com/eiko_mt/n/ndae1e7dd1cbd?sub_rt=share_pw
⑩ 「TAと担当クラス受講生の恋愛は禁止」の件
  https://note.com/eiko_mt/n/n66c8b4ed3924?sub_rt=share_pw

⑪ カバーイラストと装幀の話
  https://note.com/eiko_mt/n/n8e66d9bdb6ee?sub_rt=share_pw

第10回より後は小説発売の告知に加え、執筆・書籍化作業中のこぼれ話等を随時追加する予定です。連載を追っていただければ幸いです!

******(以下各回共通)*****

本書は限定少部数です。発売後はAmazon ・共同文化社サイトのほか、一般書店でも注文によりご購入いただけます。
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