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解題『両性具有神の恋』⑧:大学のハラスメント相談体制―小説での描写とリアルとの相違

2026年4月下旬発売の長編小説、『両性具有神の恋』を解説するエッセイシリーズです。
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この連載の②、試し読み(1)で、語り手が大学内で起こったハラスメント事案を処理する会議に出た話があります。学内のハラスメント相談体制と、語り手の朝永惇也教授がその一端にいることは、その後の物語展開に重要な意味を持ってきます。

筆者が大学に勤務しているため、小説内の設定と実際とは同じなのか、それとも違うのか、気になる方もいるのではないかと思います。

結論から申し上げると、小説内の設定は、北海道大学の過去のハラスメント相談・対応体制を参考にしつつも、異なる制度としています。

小説の舞台となる大学は、文系学部・理系学部と大学院を備えた総合大学です。医学系はありませんが、おそらく各種の研究センターやプログラムも持っているでしょう。学生相談室があり、専門的訓練を受けたカウンセラーが勤務していますが、それとは別に、各部局(学部および研究センター等)の教員から学生の相談を受け付ける人員を出し、委員会を作っています。予約必須のカウンセラーとは別に、どんなことでも気軽に相談できる窓口をたくさん置く、という発想です。
教員相談員には学修に関することをはじめ、何を相談してもいいことになっているのですが、ハラスメントが疑われる相談があった場合、相談者の希望によっては委員会レベルに上げて対応が話し合われるシステムです。(詳しくは小説の中で、惇也が学生に説明するくだりがあります。)

北大では今からちょうど10年前、2016年4月にハラスメント相談室が開設され、専門の相談員が配置されています。(詳細:北海道大学ハラスメント相談室
しかし、それ以前は各部局の教員から相談員を出し、委員会を結成するシステムでした。小説との違いは、よろず相談ではなくハラスメント相談に特化したものだったこと。筆者はこの旧制度下で4年間、相談員を務めました。

教員がハラスメント相談員を務めるのにはプラスの面とマイナスの面があります。プラス面は、大学という場所の特性を理解して対応にあたれることですが、マイナス面の方が多くなりがちです。

〇 そもそも相談受付については素人集団である
〇 正式にハラスメント事案の調査をする場合、男性・女性の2名で聞き取りにあたるのが望ましいが、男性教員の割合が圧倒的に大きいため、数少ない女性教員に過重な負担がかかる
〇 人数の少ない部局では、同じ人ばかりにお鉢が回って来がち(「**先生はこの仕事に向いてるでしょ?」)
〇 学生が相談したいとは思えない人が(以下略)

筆者自身を含め、当時関わった教員の名誉と誇りのために書いておきますと、経験の共有、相互サポート、相談受付とその後の対応など、ほとんどの教員は良心的かつ一生懸命にこの仕事をやっていました。けれども、それは持続可能な体制ではなかったということです。

この辺の疾風怒濤の展開は、筆者の任期の後半、上司であった文学研究院の櫻井義秀先生が以下の本に書いていらっしゃいますので、関心のある方はそちらをご覧ください。
大学のハラスメント相談室 ― ハラスメントと向き合うすべての人へ | 北海道大学出版会

小説に登場する時代は1979年から2017年までにわたりますが、メインストーリーは2009年秋~2010年早春、1つの学期の間の話です。ハラスメントの扱いを含め、当時の大学の雰囲気やそこで語られていたことを現在の状況から振り返ってみるのも、本作の読み方の一つかと思います。

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次回のトピック:ウェッジウッドの茶器と父子の関係

シリーズ第10回までの目次は以下にあります。2026年5月1日まで、週1回、金曜日の20:30に順次公開します。
https://note.com/eiko_mt/n/n40f2d6418db1

******(以下各回共通)*****

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