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続・文科省が育てようとしている人材は、今の社会で活躍できるのか?

文科省は「今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編)」という資料の中で、「高校生の探究が,実際に社会を変える力となることもある」「総合的な探究の時間を通して,自ら社会に関わり参画しようとする意志,社会を創造する主体としての自覚が,一人一人の生徒の中に徐々に育成されることが期待されている」と記しています。けれども、今のままで、期待される意志や自覚が育まれ、そのような人材が活躍できる場はあるのでしょうか。

文科省が考える「探究」

前回の続きです。

文科省のサイトでは、下記の資料が公開されています。

今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開(高等学校編)

したがって,総合的な探究の時間の探究においては,生徒一人一人にとっての「課題の設定」が極めて重要になる。問いや課題は,必ずしも既有の知識や経験から生まれるとは限らない。実社会や実生活と実際に関わることで,時間的な推移の中で現在の状況が問題をもっていること,空間的な比較の中で身の回りには問題があること,自己の常識に照らして違和感を伴う問題があることなどを発見し,それが問題意識となり,自己との関わりの中で課題につながっていく。

このようにして生徒の中に生まれた問いや問題意識が切実な課題として設定され,より明確な「質の高い課題」として洗練されていくプロセスや時間を確保することが大切である。

21ページより

実社会や実生活と実際に関わりの中で問題意識をもつためには、様々な視点からの情報を得る必要があると思います。

SNSなどで多くの人が自分の考えを発信していますが、多数派の考えが「正しい」とされる傾向があり、少数派の意見に対しては「悪い」ものだというレッテルを貼ろうとする人たちがいます。そのような社会で、文科省が目標とする人材を育てることができるのでしょうか。

偏った情報統制

例えば、HPVワクチンについては国が接種を勧めているので、接種を勧める人たちが多数派であり、勧めるための情報が「正しい」とされています。けれども、接種を勧める人たちが発信する情報がすべて正しいとは限りません。

以前の記事で取り上げましたが、中咽頭がんの予防については日本では承認されていないのに、Xで「予防できる」と発信している人が多数います(下記参照)。

承認されていない効果・効能について「予防できる」と思わせることが、「正しい」といえるでしょうか。

06資料2HPVワクチンの男性への接種について

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001515471.pdf

承認された効果は、添付文書でも確認できます。


シルガード9 添付文書(第3版)より

添付文書に書かれていない効果・効能を医師や議員が「ある」と発信し、それをきちんと調べずに信じて拡散する人が多数いるのです。

医師会や大学もHPVワクチンに関する「誤情報」を堂々と流していることは、令和6年9月20日に開催された「第17回 医薬品等行政評価・監視委員会」でも指摘されていました(下記参照)。

けれどもXで推進派が発信する情報には、「コミュニティノート」がつくことはほとんどありません。

「コミュニティノート」は、Twitterでより正確な情報を入手できるようにすることを目的に作られた機能です。この機能により、誤解を招く可能性があるツイートに、Twitterユーザーが協力して背景情報を提供することができます。

https://help.twitter.com/ja/using-twitter/community-notes

一方で、接種後の健康被害について発信すると、すぐに下記のような「コミュニティノート」がつきます。なぜ一方の情報だけ、このような扱いを受けるのでしょうか。

「接種後の副反応被害者が増加している」のは、協力医療機関を受診した人の推移を見ればわかります。協力医療機関を受診するということは、すぐに治るような症状ではないということです。

資料3-3 HPVワクチンの安全性に関するフォローアップ研究

HPVワクチンの積極的勧奨が再開となった2022年4月以降、HPVワクチン接種後の体調不良を主訴として協力医療機関を受診した患者数の推移を把握するための調査より

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001522683.pdf

2022年3月より前(積極的勧奨再開前)のデータは書かれていませんが、下記の資料に「多くの協力医療機関では、過去2年半の間、HPVワクチン接種後に生じた症状で受診した患者がいない状態が続いている」と書かれています。


2021年11月12日に開催

資料1  HPVワクチンについて
【調査対象】全84協力医療機関(61医療機関が回答、回収率72.6%)
【調査期間】2021年10月13日~11月2日

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000854145.pdf

コミュニティノートには「名古屋スタディ」の解説記事にリンクが張られていますが、郵送のアンケート調査でわかることは限られています(下記参照)。

厚労省が行った調査でも、「多様な症状」がワクチンとは無関係という結論はでていません(下記参照)。


祖父江班による全国疫学調査 より

祖父江班による全国疫学調査より

この「1」が一人歩きしていますが、「2」を見ると「因果関係は言及できない」と書かれています。つまり、因果関係があるともないとも言っていないということです。

それなのに、なぜ「事実とかけ離れている」と言われるのでしょうか。

事実を知らせることへの妨害

HPVワクチン薬害訴訟の原告や支援者の方たちは、接種後に起きた事実を知ってもらうために、全国各地で勉強会などを開催しています。

ところが、接種を勧めたい人たちはそれを妨害し、事実ではないことを混ぜて発信しています。

例えば、昨年11月に神奈川県海老名市で、教育委員会の後援により開催予定だったHPVワクチンに関する研修会が、Xで拡散された結果、後援取り消しとなる事態がありました。下記は会員限定記事ですが、途中まで読めます。

子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種を巡り、国と自治体が女子生徒らに接種を呼びかける中で、接種に疑義を唱える講師の市民集会を自治体が後援し、波紋を広げている。神奈川県海老名市では地元医師会が「行政が集会の後ろ盾となったことでワクチンは危ないというメッセージが伝わり、接種を控える動きが出始めた」と抗議し、同市教育委員会が21日に後援取り消しを決定。伊勢原市でも同様の事態があり、今月半ばに後援を取り消した。

2025年10月24日 付 東京新聞より

拡散した人のポストには、教育委員会を批判するコメントがついていました。

「反ワクの誤情報」「子供たちの健康を脅かす行為」「薬害デマ」「殺人幇助」などと書かれています。HPVワクチン接種に疑義を唱える講師や被害者の話を聞く機会を作るだけで、なぜこんなことを言われなければならないのでしょうか。

そして注目すべきは、下記のコメントです。

これが事実であるなら、当初は、ガイドラインに沿って許可を出していたと回答していたのに、Xで拡散されたことにより、後援は取り消されたことになります。

この研修会は、前半に示したような厚労省が公開している資料をもとにHPVワクチンや子宮頸がんについて知るための会です。講師がHPVワクチン薬害訴訟の原告団や支援者だからといって「反ワク」や「デマ」というレッテルを貼ることこそ、教育上問題があるのではないでしょうか。

国や製薬会社が原告117人の症状はすべて「心因性」だと主張していることに対して疑問を持ち、薬害について考えてほしいと思うことが「反ワク」なのでしょうか。原告の方たちは、ワクチンの効果や安全性を信じたからこそ接種しました。その結果、治療方法も確立されていない症状によって、接種前のような生活ができなくなってしまったのです(下記参照)。

伊勢原市でも同様の事態があったことが、東京新聞の記事後半に書かれています。その中に、主催者は「ワクチン反対集会ではない」と主張したと書かれていますが、それは事実ではありません。12月に開催された伊勢原市議会で、主催者である岸圭介議員が「東京新聞の取材は受けていない」と語っていました。議会で話されたことは、下記の動画で見ることができます(該当部分は12:55頃~)。

2025年12月定例会 12月17日(水) 一般質問

事実を伝えるべきメディアである新聞が、取材もしていないのに「主張した」と書いてよいのでしょうか。

議会の動画によると、岸議員は東京新聞の取材は受けていないけれど、推進派のジャーナリストから電話取材を受けた際に「伊勢原市に取材したところ、団体の意思が確認されていないことと、ワクチン反対の会に市の後援をつけるわけにはいかないので取り消しましたという答えでした」と言われたそうです。けれども、後援を取り消した理由は、主催した会が後援に関する要綱を満たしていなかったからだと担当者は説明しています。

岸議員が前述のジャーナリストに「ワクチン反対の会だから後援を外したとは聞いてない」と答えると、「ワクチン反対の会を主催していいのか、市民を混乱させているという自覚はないのか、ワクチンに疑問を持っているのは少数ですよ、英語の論文を読んだことがあるんですか?私は十年以上読んでますよ」などと威圧的に言ってきたと語っています。

前回の記事でも書きましたが、文科省は「探究」を通して「実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現すること」を目指しています。推進派の意見だけでなく、被害者の声を聞く機会を作ることは、両方の視点から情報を得たうえで何が問題なのか考えて接種するか決めることにつながるのだから悪いことではないはずです。

偏った情報しか得られず、疑義を唱えるだけでこんなにたたかれるような社会では、文科省が育てたい人材が育つでしょうか。もし明らかに接種のメリットがリスクを上回るのであれば、被害者の話を聞いても、接種したいと思うでしょう。そうであるなら、医師会は抗議するのではなく、両方の話を聞く機会を作るように意見を出せばよかったのではないでしょうか。副反応に関する話を聞く機会さえも作らせないのは、「予防接種実施規則 第五条の二」に反すると思います(下記参照)。

様々な妨害を受けながらも、被害者の方たちは勉強会などを開催しています。まずは、被害者の話を聞くのは悪いことではないと、学校でも堂々と語ることが必要なのではないでしょうか。

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