「HPVワクチンの薬害問題は日本だけ」という誤情報
Xでは誤情報や偏った意見が「事実」のように拡散されていますが、多数派の発言が「事実」とは限りません。一人ひとりが自分で確かめる習慣を付けなければ、重要な「事実」が埋もれていってしまいます。例えば、「HPVワクチンの薬害問題は日本だけ」だと言っているポストをいくつか見かけましたが、それが「事実」なのか確かめようとした人はどれくらいいるのでしょうか。
アメリカでの訴訟
アメリカでもHPVワクチンに関する訴訟は起きていますが、訴訟を起こすまでの手続きが日本とは違っています。
下記は法律事務所が発信している、HPVワクチン(ガーダシル)の訴訟に関する情報です。時系列でまとめられているので、過去までさかのぼることができます。
ここでは、2025年の情報に注目します。
August 15, 2025 – Vaccine Court Petitions Rising
Recent filings in the National Vaccine Injury Compensation Program show a noticeable uptick in Gardasil-related petitions this summer. Attorneys report that the preemption rulings in federal court have shifted strategy, with more claimants now filing directly in Vaccine Court before attempting civil litigation.
2025年8月15日付の記事に、「ワクチン裁判所への請願が増加」と書かれています。ワクチン健康被害補償プログラム(National Vaccine Injury Compensation Program)における最近の申請状況を見ると、ガーダシル関連の請願が今夏、顕著に増加していることを示しているとのことです。
アメリカでの状況を知るためには、「ワクチン健康被害補償プログラム(National Vaccine Injury Compensation Program)」について知る必要があります。
アメリカでは1986年に、無過失責任制度としてワクチン健康被害補償プログラム(VICP)が創設されました。
対象となるワクチン:The Vaccine Injury Table(表)

HPVワクチンに関しては、対象となる症状はアナフィラキシーとSIRVA(ワクチン接種に関連した肩関節障害)、血管迷走神経失神のみで、発生した時間もそれぞれ決まっています。
これらの症状が指定された期間内に発生し、かつ症状が表に記載されている定義に該当する場合、別の原因が証明されない限り、ワクチンがその症状を引き起こしたと推定されるようです。
さらに、症状がこの表に記載されていない場合などは、専門家の証言や医療記録、または医師の意見などの証拠を通じて、ワクチンが症状を引き起こしたことを患者が証明する必要があると書かれています。
難しいので、日本語で書かれた資料を掘り起こしました。
佐藤参考人提出資料(PDF:295KB) より

製薬会社を直接訴えるのではなく、まずこのプログラムで連邦請求裁判所に請求する必要があります。補償内容の資金源はワクチンに賦課した物品税とのことなので、税金です。

このプログラムに請求せずに、1000ドル以上の損害賠償請求訴訟を州裁判所に提起することが禁止されています。
このプログラムに請求して補償なしの決定か補償額に不服の場合に、はじめて州法に基づく損害賠償請求が可能になるということです。
しかも、先ほど示した「対象となる症状」の表に当てはまらない場合は、専門家の証言や医療記録、または医師の意見などの証拠を通じて、ワクチンが症状を引き起こしたことを患者が証明しなければならないのです。
HPVワクチンの「対象となる症状」は、たったの3つです。それ以外の症状が起きている人たちは、まず証拠を集めなければならないので大変な作業が必要になります。日本の予防接種健康被害救済制度もたくさん書類を集める必要があり、皆さん苦労されていますが、それ以上に大変なのではないでしょうか。

このような仕組みを日本でも導入しようとする動きもあるようですが、これだと製薬会社が責任を負わなくてよいケースが多くなります。逆に患者側は救済を受けるのも今以上に難しくなり、安全性を軽視した製品が販売されやすくなる可能性もあるでしょう。
下記の記事によると、ガーダシルを製造販売するメルク社は、HPVワクチンが深刻な神経疾患や自己免疫疾患を引き起こす可能性があると主張する 約200件のガーダシル訴訟に直面していたけれど、連邦控訴裁判所は、原告らが米国ワクチン裁判所が定める重要な提出期限(3年以内)を守らなかったとして、ガーダシル訴訟を再開する動きを打ち切ったとのことです。
症状とワクチンに関係あるなしの前に、3年間の期限内に提訴されていないということが問題となって、棄却されてしまうようです。
控訴裁判所は、3年間のワクチン裁判期限内に請求を起こした個人による異議申し立てにはまだ対処していないとのことなので、期限内に請求した人たちがどうなるかも気になります。
このようなハードルの高さがある中でも、裁判により「死因はガーダシルの副反応である」と認定された事例もあります(下記参照)。
2008年6月、米国メリーランド州在住の女子大学生であったクリスティーナ・ターセルさんは、ガーダシルの接種後から不整脈を生じるようになり、3回目の接種を受けた18日後に21歳で死亡しました。クリスティーナさんの母であるエミリーさんは、ワクチン健康被害補償プログラム(VICP)の下で米国保健福祉省を相手とした補償請求を連邦請求裁判所に提起しました。その後8年にわたる審理を経て、2018年8月には裁判所が死因はガーダシルの副反応であることを認定し、その判断が確定しました。
上記はVICPの下で行われた裁判ですが、現在アメリカでは、ガーダシルに関連してメルク社を相手取った初の民事訴訟であるJENNIFER ROBI氏の裁判が注目されています。
Jennifer Robi氏の事例
ロビさんについては、下記の記事にわかりやすくまとまっていました。
情報量が多く余力がないので、以下、翻訳サイトを使ってまとめました。
元高校スポーツ選手で優等生だったロビさんは、16歳の時(2010年と2011年)にガーダシルワクチンを3回接種した後、学校を中退せざるを得なくなり、車椅子生活を余儀なくされました。
症状:激しい痛み、頭痛、吐き気、疲労、視力低下、脱力感など
訴状によると、医師らは2015年8月まで彼女にPOTS(体位性頻脈症候群)の診断を下さず、その後、彼女の全身に小径繊維神経障害が潜在していることを確認。現在、ロビさんは持続的、制御不能な神経筋収縮(けいれん)、POTS、そして全身性自己免疫調節異常による多くの症状に苦しんでいます。
「ガーダシルワクチンは娘の人生を破壊し、私たち家族を壊滅させました」と、娘の母親キャサリン・ロビさんは2023年にカリフォルニア州議会保健委員会で証言しています。
証言している動画 (法律事務所Wisner BaumのFacebookより)
ロビさんの症状は、日本の原告の方たちとも重なります(下記参照)。
ロビさんは2013年9月20日にVICPに訴訟を起こし、2015年5月29日に判決を受けましたが、彼女は判決に満足せず、法的訴訟を起こしたのです。ワクチン被害訴訟がVICPを経て民事訴訟に持ち込まれた初のケースであり、HPVワクチンに限らず、ワクチンによる健康被害に関する一般的な問題でもあるので、将来の訴訟にも影響を与える可能性があるとも言われています。
ジェニファー・ロビさんとその家族は「途方もない苦しみ」を味わいながらも、勇敢に闘ってきました。被告側は裁判を回避しようと試みましたが、メルク側の略式判決または裁定を求める申立ては全面的に却下されました。詳細は、60ページに及ぶ決定書に書かれています。
訴訟では、わずか6ヶ月という短い承認プロセスの間、メルク社とその従業員が、薬剤の既知の副作用を含む、安全性と有効性に関する重要なデータをFDAに開示しなかったと主張。
下記の記事には、2019年に裁判所でサイエンスデー公聴会が開催された際のことが書かれています。公聴会では、原告側と被告側、それぞれの主張をプレゼンしたようです。長いですが非常に重要な内容なので、ぜひ翻訳サイトなどを使って読んでみてください。
記事の中で特に気になったのが、「メルク社の戦術の1つが、ワクチンまたはその成分に対して少しでも脆弱性のある者を臨床試験の対象から除外することだった」という部分。メルク社は臨床試験の際、免疫疾患などの脆弱性のある人を事前にスクリーニングして除外していたというのです。除外することで、臨床試験では「安全性に問題はなかった」という結果が出せます。けれどもワクチンは最終的に、臨床試験で除外された脆弱性を持つ人たちにも販売されることになるので、様々な症状が起きています。
医薬品の有効性や安全性に関する研究・データ分析の中で、製薬会社の目的を妨げる可能性がある要素を除外して結論を出していることは実際にあります。ですから、「除外」されたものにも目を向けることが重要です。
8月に傍聴したときも、ある報告書で被告側が「除外」によって印象操作を行っていることが明らかになりました(下記参照)。
アメリカでの被告側の主張を読んでいると、奇妙なことに気がつきます。日本での訴訟では、被告側(国と製薬会社2社)は、原告117人の症状はすべてワクチンとは関係ない「心因性」だと主張しています。ロビさんに起きている症状も日本の原告と同じような症状なのに、「心因性」の話が出てきません。ガーダシルという、同じワクチンの訴訟なのに。
私が目を通していない部分には書かれているのかもしれませんし、これから出てくるのかもしれませんが、製薬会社が本当に「心因性」であると思っているなら、アメリカでも最初からもっと前面に出すのではないでしょうか。
ロビさんの訴訟でも今後、日本のように「心因性」だとこじつけるためにカルテなどをほじくりかえすのでしょうか。
ロビさんの訴訟については、サイエンスデーでプレゼンをしたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が原告側で活動していたこともあるため、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が米国保健福祉長官に就任したことで、一時停止されました。ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏がワクチン健康被害補償プログラムを監督する立場となったので、利益相反の懸念が生じたためのようです。
日本と同様に、HPVワクチンに関しては大手メディアはあまり報じていないようですが、今後の動きについて日本国民も注目すべき訴訟だと思います。
訴訟増加の予想
下記の記事にも、訴訟を起こした被害者の事例が紹介されています。発信しているのは、医療法務やヘルスケア分野において、幅広い医療記録レビューサービスを提供している企業のようです。
ガーダシル訴訟2025:法廷闘争の幕開け
ガーダシル訴訟の例が挙げられていて、下記には14歳の少女が、ガーダシル接種後のひどい副反応で永久的な障害を負ったとして訴訟を起こしたことが書かれています。
Victoria, a healthy student-athlete, began experiencing dizziness, shortness of breath, insomnia, and gastrointestinal issues after receiving the vaccine. She is pursuing Gardasil injury claims because she wants others to be aware of the side effects of the vaccine.
“I just want people to realize that this happened to me, and I don’t want this to happen to other kids. It is crucial for me to share my story to help make sure others know that there are risks.” — Victoria Trevisan, Gardasil Plaintiff
さらに、ワクチン接種後、多くの人が様々な自己免疫疾患に苦しんでいるとして、例が続きます。
Many people have suffered from a variety of auto-immune disorders after receiving the vaccine. A Los Angeles girl also developed POTS and asked for a claim on July 28. A 21-year-old woman passed away after receiving Gardasil. Another HPV Gardasil lawsuit was filed in 2021 by a girl named Maddie. After the vaccination, she got severe allergic attacks. It changed her life, and she struggled to lead her life.
・ロサンゼルスのある少女もPOTS(体位性頻脈症候群)を発症し、7月28日に損害賠償請求を申し立てました。
・21歳の女性はガーダシル接種後に亡くなりました。
・2021年にはマディという名の少女がHPVワクチンとガーダシルをめぐる訴訟を起こしました。彼女は接種後、重度のアレルギー発作を起こし、人生が一変し、日常生活で苦労するようになってしまいました。
Soriely Flores filed a complaint in a North Carolina court on May 19, 2023. She alleges that Merck & Co didn’t clearly inform people about the health risks of Gardasil vaccinations. Flores claims that after receiving just one shot of the HPV vaccine, she developed POTS, fibromyalgia, and other HPV vaccine side effects.
Soriely Flores氏は2023年5月19日、ノースカロライナ州の裁判所に訴状を提出。
・彼女は、メルク社がガーダシルワクチン接種の健康リスクについて人々に明確な情報を提供していなかったと主張。
・Flores氏は、HPVワクチンを1回接種しただけで、POTS、線維筋痛症、その他のHPVワクチンの副作用を発症した。
Through July 28, 2022, there were 48 pending Gardasil lawsuits across the nation. The Gardasil class action lawsuit is gaining public attention, and a significant increase in the number of HPV shot lawsuits is anticipated in the coming months.
・2022年7月28日までに、ガーダシルに関する訴訟は全米で48件係争中だった。
・ガーダシル集団訴訟は世間の注目を集めており、今後数ヶ月でHPVワクチン接種に関する訴訟件数が大幅に増加すると予想されている。
2025年10月の情報では、「ガーダシル訴訟は緩やかに増加しており、現在、MDL(医療訴訟取締局)では123件の訴訟が係属中です」と書かれています。2024年度以前の情報も書かれているので、ぜひ上記サイトでご確認ください。
このように、アメリカでもHPVワクチン接種後の健康被害に苦しむ人が多数いて、訴訟は起きています。他国も調べれば出てくるはずです。
これでも、「HPVワクチンの薬害問題は日本だけ」だと言えるのでしょうか。そして、アメリカで訴訟を起こしている方たちも全員、「心因性」だと思えるでしょうか。
<参考資料>
JENNIFER ROBI氏関連など
In the United States Court of Federal Claims April 15, 2015
MDL No. 3036 Filed 09/20/22
No. 24-1828 Argued: May 15, 2025 Decided: September 4, 2025
Case Nos. 25-1383 (L), 25-1796 Filed: 08/27/2025
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