レポート:ファシリテーター99人カイギ#05大阪|ファシリテーターとつながり、ファシリテーションの可能性をみつけてひろげる
本記事は、こども国連環境会議推進協会(JUNEC)、DNP 大日本印刷株式会社、関西大学が主催し、特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会
と青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラムが後援した「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」について、3人の登壇者のうちの1人の視点から当日を振り返り、レポートしたものです。

「ファシリテーター99人カイギ」は、毎回3名のゲストのファシリテーターが登壇し、毎月3名のファシリテーターの話題提供から対話を深める連続企画です。
毎月、奇数月は東京、偶数月は大阪で3名ずつさまざまなフィールドで活動するファシリテーターがゲストとして登壇し、99人のゲストが揃ったら解散するという「ファシリテーター99人カイギ」。
私が登壇する機会をいただいた今回は、その第5回目に当たります。
当日の全体進行をこども国連環境会議推進協会の井澤友郭さん、グラフィッカーを金子由季さんに務めていただき、私は奥野美里さん、中谷和代さんと共に話題提供を行うファシリテーターの1人として登壇しました。

画面奥では金子さんがグラフィックに取り組まれています
今回の#05大阪では申し込み時点で40名超、Zoomによるオンライン参加とリアル会場に足を運ばれた皆さんでおよそ20名弱ずつのご参加をいただき、ハイブリッド体制で「ファシリテーター」について探求を深めていく場づくりが行われました。
以下、本プログラム登壇に際しての気づき・学びをまとめていければと思います。
本プログラムの前提共有
「ファシリテーター99人カイギ」の背景
今回、全体進行を務めていただいた井澤友郭さん(JUNEC)は、2016年頃からファシリテーション講座やワークショップ講座、問いのつくり方講座を実施されてくる中で、少しずつ世の中で「ファシリテーション」「ファシリテーター」のニーズも高まり、その存在も浸透しつつあることを感じられてきたといいます。
一方で、ファシリテーターとしてのスキルを身につけ、高めるためには講座で学んだり、本を読むだけでは不十分です。
自ら現場で実践を積み重ねることや、自分の価値観やスタイルに合った実践者に学ぶことが重要になりますが、自身の普段の現場や領域と異なるファシリテーターと出会う機会そのものが一般的に多くなく、自身の現場や領域においても「背中を見て学ぶ」という側面が強いというのが、ファシリテーターという生業の現状です。
そうした背景から、ファシリテーターとして第一線で活躍している人々からファシリテーターとして大切にしていることや何を身に着けてきたのか?失敗からどう成長したのか?等について伺う機会をつくり、自らの実践に活かすためのヒントを得てもらうための場として、「ファシリテーター99人カイギ」が構想されたとのことです。
また、「ファシリテーター99人カイギ」では井澤さんが2019年~2021年の間に取り組まれていた「SDGs100人カイギ」のフォーマットを応用している、というお話もご紹介いただきました。
「ファシリテーション」とは?
ここまで「ファシリテーター」「ファシリテーション」について述べてきましたが、以下に私なりの「ファシリテーション」の認識を簡単にまとめられればと思います。
『ファシリテーション(facilitation)』は、「促進する・容易にする」を意味する動詞・ファシリテート(facilitate)の名詞形です。
『ファシリテーションとは何か―コミュニケーション幻想を超えて』(ナカニシヤ出版)を引いてみると、ファシリテーションの定義には以下のような表現が用いられています。
人々が集まって、やりとりをしながら共同で何かを行うときに、コミュニケーションの場を保持し、そのプロセスに働きかける取り組み・仕組み・仕掛け
一般的には、参加型・体験型のワークショップの進行役がファシリテーターと呼ばれ、彼らが行う仕掛け・取り組みなどを指して「ファシリテーション」と称されることが多く、そのような認識をされている方も多いかと思います。
また、日本におけるファシリテーションの広がりにおいて、中野民夫さんの存在は欠かせません。
中野民夫さんが2001年に出版した『ワークショップ』(岩波書店)は、それまでさまざまな業界・領域で実践されていたものの、体系立てて説明されていなかった参加型・体験型プログラムである『ワークショップ』、それらの担い手である『ファシリテーター』、そして『ファシリテーション』を広く日本に知らせることとなりました。
その中野民夫さんは、『ファシリテーション』について以下のように述べています。
明るい兆しが広がっている。
環境、社会、経済、どこをとっても危機だらけのこの時代に、いや危機が深刻だからこそ、なんとかしなければという人々の意識と行動が、ふつふつと湧き出してきている。
(中略)
様々な問題は複雑に絡み合い相互に関連していて、簡単な解決策などない。誰か特定のリーダーや専門家や先生が、すべてを一気に解決してくれることも残念ながらありえない。だからこそ、様々な現場を懸命に生きる私たち一人ひとりが、孤立しないで集い合い、問い合うことが、出発点になる。力を生み出していくきっかけになる。それぞれの思いや知恵を率直に出し合い、刺激し学び合う。理解を深め、共感し、新たな解決策と結びつける。 そして行動し、振り返り、改善しながら前に進み続ける。人々の参加を大事にしたこのような動きが確かに広がっている。
そして、このような場をつくり、人々の参加を促進し、対話を育み、学びや創造を容易にする技法が「ファシリテーション」なのだ。
2001年に中野民夫さんによる『ワークショップ』の出版、2003年に堀公俊さんらが発起人となっての日本ファシリテーション協会(FAJ)設立と、国内におけるファシリテーションの普及・広がりは現在に至るまで25年近くの歩みが存在します。
今回の登壇に至った経緯
私が今回、「ファシリテーター99人カイギ」に登壇する運びとなったのは、関西大学の松田佳織さんにお声がけいただいたことがきっかけです。
今回の会場である関西大学梅田キャンパスには、これまで何度も松田さんが手掛けられてきたイベントに参加者として訪れていました。
2023年11月に実施された『問いのデザイン』の出版3年ちょっと記念企画を皮切りに、2024年6月に実施された『問いかけの作法』&『チームレジリエンス』の超!出版記念イベント、2025年1月に実施された『冒険する組織のつくりかた』出版記念イベントなど、主に安斎勇樹さん(株式会社MIMIGURI)が著者として執筆に取り組まれた本の出版記念企画で私は松田さんとご一緒し、私はその度にイベントレポートをまとめてきました。
登壇のお誘いの際、イベントレポートについて松田さんから以下のようなメッセージをお伝えいただいたことは、今回、私が話題提供でお話しした内容にも大きく影響しています。
「運営としても、後から振り返るための貴重な資料となっている」
「大森さんが書き遺すことは、対面とは違った形で、時間を超えて学びや振り返りを促すファシリテーションと呼べるのではないか?」
登壇に際して私が考えた内容や思いについては、以下の記事にまとめました。
なお、先述の『問いのデザイン』出版記念企画においては今回、登壇者としてご一緒した奥野美里さんもグラフィッカーとして参加されており、こうしたところでもご縁を感じていました。

従来のプログラムからの変更点
奥野美里さん、中谷和代さんと私が登壇することとなった今回の「ファシリテーター99人カイギ」では、これまでのプログラムからの変更が加えられていました。
これまで実施されてきたフォーマットでは、3人の登壇者の話題提供を25分ずつ行い、その後パネルディスカッションを行うというシンプルな構成となっていました。
また、グラフィッカーは毎回、3人のゲストの話題提供及びパネルディスカッションの内容をグラフィックにまとめてくれており、パネルディスカッション後に講評・振り返りを行うような形で全体のハーベストが行われていたとのことです。
今回は登壇者の中にグラフィック・レコーディング及びグラフィック・ファシリテーションに取り組まれてきた奥野さんがいらっしゃったことや、登壇者3名の総意として「より参加者の皆さんにも前のめりになってもらえるような」「今回の場そのものが生成的にファシリテーションされるような」そんな場をつくれないか?という思いがあり、事務局の皆さんとの話し合いの末、以下のような形に落ち着きました。
・オープニング
・登壇者3名からの話題提供
・パネルディスカッション
・登壇者3名による対話の場づくり(パネルディスカッション2)
・クロージング
構成としては「登壇者3名の話題提供の時間を従来よりも短くし、より対話できる時間を増やせないか?」という点に加え、「後半へ進むに従って参加者の皆さんにも話を聴くだけではなく、動きが感じられるものにできないか?」といった点を意識する中で、このような形に落ち着いたように思います。
以上、「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」に際しての前提をまとめてきました。ここからは、当日の内容についてまとめていければと思います。
ファシリテーター99人カイギ#05大阪
登壇者3名による話題提供
井澤さんによるオープニングの導入後、早速本題である登壇者3名の話題提供の時間がスタートしました。

話題提供のトップバッターとなった私は、まずファシリテーターとしての自身の活動領域・範囲を整理してお伝えしようと考え、以下のような簡単な図を準備しました。
1つは、ファシリテーターとして主に活動する業界・領域についての図です。

その他の領域とのコラボレーションもありうる。
もう1つの図では時間軸×空間軸で整理し、私がファシリテーターとしてプロジェクトや組織に関わる時間的・空間的な範囲について表してみました。
以下の図を眺めてみると、時間軸が長くなるに従い、1つの組織を超えて地域や社会に範囲が広がりつつあるのが見て取れます。

その後、ファシリテーターとしての歩みを起・承・転の3つのフェーズで分けてこれまでの実践についてお話し、各フェーズごとにその頃向き合っていた問いを皆さんにご紹介しました。
ファシリテーターとしての原体験である、ベンチャー企業におけるシビアな局面でのミーティングのデザインについてのお話や、ティール組織(Reinventing Organizations)やホラクラシー(Holacracy)との出会い、事業承継後に考えるようになった「未来に芽吹く学びの種を蒔く」「次世代に届ける」という意識とそれを実現する手段としての「書くこと」「遺すこと」などなど、限られた時間ではありましたが、私の半生についてお話しさせていただくことができました。
私の登壇後にお話しいただいた奥野さん、中谷さんにも上記の領域・範囲図をご活用いただきつつ、三者三様のファシリテーターとしての実践を参加者の皆さんに共有できたように思います。
話題提供のグラフィックは、金子由季さんによって以下のようにまとめていただきました。



パネルディスカッション
ゲスト3名による話題提供の時間が終わると、次に井澤さんが3名に問いを投げかけるパネルディスカッションの時間へと進みました。
カメラ位置を調整しつつ、話題提供の場面から変わって4名は舞台下に座り、会場の参加者の皆さんと目線を揃えながら「ファシリテーターにまつわる問い」について深めていく時間となりました。

この時間中の出来事で特に印象に残っているのは、井澤さんに「ファシリテーターって何?どんな人でしょうか?」と尋ねられた際の一幕です。
私自身の端的な回答としては、「人の集まる場に対して、何らかの願いや祈りを持って、そのプロセスに関わろうとする人」と表現してみました。
個人的には、「そもそも、ファシリテーションとはどういったものか?」という問いの解答については、先述の『ファシリテーションとは何か』(ナカニシヤ出版)の定義が気に入っています。
人々が集まって、やりとりをしながら共同で何かを行うときに、コミュニケーションの場を保持し、そのプロセスに働きかける取り組み・仕組み・仕掛け
ただ、この定義の中では「ファシリテーション」を行う人の「あり方」については、特に触れられていません。
この「あり方」を表現する上で、個人的には「願い」や「祈り」という言葉を選んでみたくなったのでした。
「ファシリテーションとは、コミュニケーションの誘導であり、コントロールである」という認識を持って活動されているファシリテーターもいらっしゃるかもしれませんが、その場合、「コミュニケーションを誘導・コントロールするファシリテーターの想像を超えるアイデアや成果」を望むことは難しいでしょう。
そもそも、複数人の人がひとつの場所に集まる場合、何らかの意図や目的がある場合が多い。
そしてその場合、せっかくならば、その場に集う一人ひとりの個性やポテンシャルが発揮されるような働きかけをしたい。
そう考えた際、ファシリテーターとしては場の目的のために最善の働きかけをしつつも、最後はその場に集った一人ひとりの主体性や創造性に委ねることになる。
この心境が「願い」であり「祈り」ではないかな、と感じたのでした。
この他、ファシリテーターとコンサルタントの違いや、自身にとって適切なファシリテーションのスタイルを見極めるためのポイント、「場数は正義」など多様なトピックが扱われ、その様子は以下のグラフィックにまとめていただきました。

「ファシリテーターとは?」

「ファシリテーターの学び方について」
登壇者3名による対話の場づくり
「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」として最後のパートは、登壇者3名による対話の場づくりでした。
登壇者3名として考えていた当初のこの時間の目的・狙いは、おおよそ以下の3つのポイントに集約できるように思います。
「グラフィックによる可視化の力を対話の場に反映すること」
「可能な限り、オンライン・リアルを問わず参加者の皆さんに臨場感を感じていただくこと」
「登壇者が個人として探求したい&参加者の皆さんにとっても興味関心の重なるテーマを扱うこと」
まずはじめに、ここまでグラフィックをまとめてきてくださっていた金子さんに登壇者の話題提供、そしてパネルディスカッションの内容について振り返っていただきました。

続いて、これらのプロセスを経て改めて3名で探求していきたいテーマを決めていくこととなりました。
選ばれたテーマは「非言語情報」。
中谷さんが専門とするアートの領域においても、日々のコミュニケーションにおいても、「非言語情報」は重要なファクターです。

ボディランゲージをはじめとする身体の動きや発声のニュアンス、言葉の意味に影響を与える態度や佇まい、場の設えによるメッセージの違い(壇上から見下ろす、円座になって座る等)……普段、意識をしていないだけで、「非言語情報」にもさまざまな意味・意図が含まれていることが見えてきます。
組織づくりの文脈では、こうした「非言語情報」は言外の何らかのメッセージを伝えてくれる「小さなシグナル」として丁寧に扱うことを心がけてきました。
組織内で「何となく元気がなさそう」「忘れ物や遅刻、欠席が増えた」などの形で現れる「小さなシグナル」を見過ごした場合、その後さらに重篤な状況へエスカレートしてしまうということも考えられます。
そういった点から見ても、「非言語情報」は重要なテーマと言えそうです。

私はオンラインの映り方を意識して、身体を会場側に向けて開いているのがわかります
登壇者3人が探り探りの中で対話していた内容としては、「非言語情報」に関連するテーマである「心理的安全性(Pschological Safety)」や、最終盤では非言語情報をもコミュニケーションの中で扱うことで展開される「生成的な対話(Generative Dialogue)」にも及んでいたように思います(当日中は扱いきれなかったのが悔やまれるところです)。
ダウンローディング(Downloading)
人々が、普段自分が言っていること・考えてることを、録音されたものをそのまま再生するようにコミュニケーションを取っている状態。礼儀正しく、予測的に話す状態。儀礼的会話(Talking Nice)とも称される段階。
討論(Debating)
自分や相手の意見、考え方をオープンに話し、聞いている状態。率直に自分の本音を話すが、合理的・客観的に判断するように聞いたり、相手の意見は聞き入れない状態。論争(Talking Tough)とも称される段階。
対話(Dialoguing)
自己の体験や本心を話し、相手の立場や考えを受け入れながら共感的に聞いている状態。内省的に話し、聴いている状態。内省的な対話(Reflective Dialogue)とも称される段階。
プレゼンシング(Precensing)
その場で話されていること全体や、今、その瞬間に現れようとしているものやプロセスに真摯に耳を澄ませ、感じ取り、表現している状態。生成的な対話(Generative Dialogue)とも称される段階。
C.オットー・シャーマー『U理論[第二版]』(英治出版)
Leadership in the New Economy: Sensing and Actualizing Emerging Futures
Facilitating Breakthrough: How to Remove Obstacles, Bridge Differences, and Move Forward Together
上記の参考文献をもとに作成
最後に、この3名の登壇者による対話の場づくりで展開された内容や今日この時間に至るプロセスについて、僭越ながらハーベスティングを行う役割を任せていただき、会場そしてオンラインの参加者の皆さんと学びをわかちあっていきました。

終わりに
以上、「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」について、登壇者の1人の視点から振り返りを行ってきました。
この振り返り記事で初めて「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」に触れる方にとってはその全体像が見えてくるような、当日参加もしくはアーカイブ動画を視聴されている方にとっては新たな視点が得られるような、そんなまとめにできたのではないかと思います。
今回の「ファシリテーター99人カイギ#05大阪」は私にとって、2013年から現在に至る人生の変遷や、その時々の実践と向き合った問い等について見直す、とてもありがたい機会となりました。
ご縁をいただいた関西大学の松田佳織さんをはじめ、今回の場をつくる上で尽力いただいた井澤友郭さんと金子由季さん、共にチャレンジングな場をホストすることとなった奥野美里さんと中谷和代さん、そして、当日の場をご一緒してくださった皆さんに感謝申し上げます。
今回のレポートがご覧いただいた皆さんの「ファシリテーション」「ファシリテーター」に関する探求の一助となれば幸いです。
また、当日お話しさせていただいたように、私自身の活動の願いは「未来に芽吹く学びの種を蒔くこと」「人と組織を活かす叡智を次世代に届けること」であり、今回のレポートに関して言えば、かつて松田さんに仰っていただいたように「時間と場所を超えて、誰かの学びやアクションのきっかけとなること」です。
もし、今回の記事をご覧いただいた中で疑問や質問、感じたことがありましたら、ぜひこちらからや、こちらに記載している連絡先などからお気軽にメッセージいただけると幸いです。
また、以下に関連情報や参考リンクもあわせてまとめておりますので、よろしければそちらもご覧ください。
近日開催予定の関連企画
7/18(金)ファシリテーター99人カイギ #06東京
8/23(土)ファシリテーター99人カイギ #07大阪
さらなる探求のための参考リンク
「ファシリテーターはどこにいますか?」|gaoryu
ジェネレーション・ファシリテーター考#0|世代間の葛藤・対立を越え、未来へ向かうファシリテーションの発案に至る探求の旅路
【総集編】一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ|創業〜現在に至る旅路を紐解く、インタビュー記事連載プロジェクト
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