ジェネレーション・ファシリテーター考#0|世代間の葛藤・対立を越え、未来へ向かうファシリテーションの発案に至る探求の旅路
先日、NPO法人U Journey主催の対話の場にて、私自身のこれまでの活動の背景や探求の旅路についてストーリーテリングし、話題提供する機会をいただきました。

そこでお話ししたのが、「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という概念です。
「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」とは、「世代間の葛藤・対立を越え、未来へ向かうファシリテーションを行う人・あり方」を意味する私の造語であり、今回の対話の場の準備中に生まれました。
今回の対話の場である第4回SOIL(Seeds of Insight Lab)をホストしてくださったNPO法人U Journeyは、Presencing Instituteの学習プラットフォーム「u-school」が提供する「u-lab」で出会った参加者たちの有志のチームによって結成されたU理論普及啓発・実践のイニシアチブです。
昨年開催されたU Journey設立記念イベントのレポートを執筆したことがご縁となり、今回の機会が生まれました。
U JourneyがMITのオットー・シャーマー博士がモデル化した「U理論(Theory U)」の普及啓発を行う団体であるという背景から、今回の対話イベントではU理論のUプロセスと、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが提唱した「英雄の旅(Hero's Journey)」という2つのモデルを用いつつ、自身のこれまでの旅路について語ってみることにしました。
Uプロセスの最初期の記述(Sensing→Precensing→Realizing)と英雄の旅の原型(Separation→Initiation→Return)には共通するものが感じられ、それが人生における本質的な変容の軌跡を語る上で応用できるのではないか?という実験的な試みでもありました。
いざ、2つのモデルを組み合わせてみると、当初の想定以上に自身のストーリーを語る上でパワフルに機能したということや、私自身のこれまでの旅路を統合し、これからの実践を構想する上でも役立ってくれたように思います。
そして、探求の旅路を経て、それらの経験を一筋の文脈・物語として捉えたときに、「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という実践・あり方が発見されました。
※トップ画像はこの「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という実践・あり方について広く紹介することとなった対話イベントの際の写真です。
以下、「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という新しく生まれた概念にまつわる「U理論(Theory U)」、英雄の旅(Hero's Journey)、また、「ファシリテーション(facilitation)」について整理しつつ、NPO法人U Journey主催の対話の場SOIL(Seeds of Insight Lab)で語った内容についてまとめていきたいと思います。
前提となる理論、モデル
U理論(Theory U)
『U理論(Theory U)』とは、2000年にマサチューセッツ工科大学のオットー・シャーマー博士(C.Otto Sharmer)が発表した論文『Presencing: Learning From the Future As It Emerges』の中で紹介されたプレゼンシング(Presencing)という概念及びプロセスを体系化した理論です。
オットー・シャーマー博士及び彼の同僚は「あなたの仕事の根底にある問いは何ですか?」という問いから始まるインタビューを学者、起業家、ビジネスパーソン、発明家、科学者、教育者、芸術家など約130名の革新的なリーダーたちに対して行う研究を行いました。
そしてその研究から、繰り返されてきた過去のパターンの延長線上ではなく「出現する未来」から学び、行動することから個人・組織・コミュニティ・社会で変容・イノベーションを生み出す原理と実践の理論体系……U理論(Theory U)の体系化に至ります。

U理論(Theory U)は2006年、『出現する未来(原題:Presence)』(講談社)の邦訳出版以降、少しずつ国内において知られ始めました。
ピーター・M・センゲ(Peter M, Senge)、オットー・シャーマー博士、ジョセフ・ジャウォースキー(Joseph Jaworski)、ベティ・スー・フラワーズ(Betty Sue Flowers)の4名によって著された本書ですが、オットー・シャーマー博士は本書の出版以前からさまざまな場面でこの共著者らと協働してきました。
以下、Uプロセスに関して初めて言及された書籍『出現する未来(原題:Presence)』が国内で出版されるまでの流れを簡単にまとめたものです。
1990年8月
ピーター・M・センゲが『The Fifth Discipline』を出版。
1991年9月
ロイヤル・ダッチ・シェル社(現シェル社)の戦略企画部門に所属していたアダム・カヘン(Adam Kahane)が、南アフリカの民族和解を推進するモンフルー・シナリオ・プロジェクトにファシリテーターとして参画。
アダム・カヘンにとってジョセフ・ジャウォースキー氏は当時、社外採用の同僚に当たる存在だった。
このプロジェクト以降、アダム・カヘンは企業・政府における問題解決プロセスのオーガナイザー兼ファシリテーターとしての活動を開始する。
1993年
アダム・カヘンがシェルを退職し、ジェネロン・コンサルティング(Generon Consulting)を設立。ジョセフ・ジャウォースキー氏とハノーバー保険元社長ビル・オブライエン氏(Bill O’Brien)がパートナーとして、オットー・シャーマー博士がリサーチパートナーとして参画。
1995年6月
ピーター・M・センゲ著『The Fifth Discipline』が『最強組織の法則』として邦訳出版(『The Fifth Discipline』増補改訂版が2011年6月に『学習する組織』として出版。小田理一郎さんが翻訳者として参加)。
1997年4月
ピーター・M・センゲ氏がSoL(The Society for Organizational Learning:組織学習協会)を設立。(後にSoLジャパンが地域コミュニティとして立ち上がり、現在、小田理一郎さんはGlobal SoLの理事、SoLジャパンの理事長を務めている)
2000年1月
オットー・シャーマー博士が『Presencing: Learning From the Future As It Emerges』を発表。
本論文の発表に際し、ピーター・M・センゲ、ジョセフ・ジャウォースキー、アダム・カヘンをはじめとする協働パートナーや、『知識創造企業』著者・野中郁次郎、組織心理学の第一人者エドガー・H・シャイン(Edgar Henry Schein)、組織開発の大家ビル・トルバート(Bill Tolbert)らへ協力に対する謝辞を述べている。
2001年1月
オットー・シャーマー博士、ピーター・M・センゲが共同執筆した『Community Action Research1』が、『Handbook of Action Research』に寄稿される。
2004年8月
アダム・カヘンが『Solving Tough Problems(邦題:それでも、対話を始めよう)』出版。
オットー・シャーマー博士が後に自身の書籍で紹介することとなる3つの複雑性(ダイナミックな複雑性、社会的な複雑性、生成的な複雑性)や、4つの話し方・聞き方について紹介している。また、本書の序文はピーター・M・センゲが担当している。
2005年8月
ピーター・M・センゲ、C.オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティ・スー・フラワーズの4名の共著で『Precense』が出版され、翌年2006年5月に『出現する未来』として邦訳出版される。
この後、オットー・シャーマー博士は2007年に『Theory U: Leading from the Future as It Emerges』を出版し、2010年11月に中土井僚さん、由佐美加子さんらの翻訳によって『U理論―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』が英治出版より出版されます。
この、2010年の『U理論』(英治出版)出版をきっかけに、U理論は本格的に国内へと紹介されていくこととなりました。
中土井僚さん、由佐美加子さんのお二人はその後も継続的にオットー・シャーマー博士の著作の翻訳出版を続けられ、現在、邦訳出版されているU理論関連書籍には、以下の5冊が挙げられます。

『U理論―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』
『出現する未来から導く―U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する』
『U理論[第二版]―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』
『U理論[エッセンシャル版]―人と組織のあり方を根本から問い直し、新たな未来を創造する』
また、2025年4月にオットー・シャーマー氏は新著『Presencing: 7 Practices for Transforming Self, Society, and Business』を出版しています。
英雄の旅(The Hero's Journey)
先述のように、英雄の旅(The Hero's Journey)とは神話学者ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)によって紹介された世界各地の神話・伝承に共通する普遍的な英雄物語の構造です。

英雄の旅(The Hero's Journey)が周知されることになったのは、キャンベルが1949年に発表した『千の顔をもつ英雄(原題:The Hero with a Thousand Faces)』によるところが大きく、『千の顔をもつ英雄』は現在、ハヤカワ・ノンフィクション文庫の〔新訳版〕上下巻で新訳版が出版されている他、今年2024年7月にNHK100分で名著の中でも紹介されました。
英雄の旅(The Hero's Journey)は人類最古の物語であるギルガメシュ叙事詩をはじめ古今東西のさまざまな英雄物語や冒険譚に共通する原型があることを明らかにし、スターウォーズシリーズを手がけたジョージ・ルーカスにも創造のインスピレーションを与えるなど、実際の物語の創作にも影響を及ぼしています。
英雄の旅(The Hero's Journey)の本質について、キャンベルは以下のような表現で端的に述べています。
英雄の神話的冒険がたどる標準的な道は、通過儀礼が示す定型―分離、イニシエーション、帰還―を拡大したものであり、モノミス(神話の原型monomyth)の核を成す単位と言ってもいいだろう。
英雄はごく日常の世界から、自然を超越した不思議な領域(X)へ冒険に出る。そこでは途方もない力に出会い、決定的な勝利を手にする(Y)。そして仲間(Z)に恵みをもたらす力を手に、この不可思議な冒険から戻ってくる。
また、英雄の旅(The Hero's Journey)をモチーフにワークショップを実施する事例も存在しており、ロバート・ディルツ(Robert Dilts)とスティーヴン・ギリガン(Stephen Gilligan)は『Hero's Journey: A Voyage of Self-Discovery(邦題:NLPヒーローズ・ジャーニー』の中で以下のような8つのプロセスに整理し、全4日間のワークショップへと落とし込んでいます。
1、天命を聞く Calling
2、天命を辞退する Refusal
3、境界を越える Threshold
4、守護者を見つける Guardians
5、自分のなかの悪魔と影に立ち向かう Demon
6、内なる自己を育てる Transformation
7、変化を遂げる Complete the task
8、帰還する Return home
ファシリテーション(facilitation)
『ファシリテーション(facilitation)』は、「促進する・容易にする」を意味する動詞・ファシリテート(facilitate)の名詞形です。
『ファシリテーションとは何か―コミュニケーション幻想を超えて』(ナカニシヤ出版)を引いてみると、ファシリテーションの定義には以下のような表現が用いられています。
人々が集まって、やりとりをしながら共同で何かを行うときに、コミュニケーションの場を保持し、そのプロセスに働きかける取り組み・仕組み・仕掛け
一般的には、参加型・体験型のワークショップの進行役がファシリテーターと呼ばれ、彼らが行う仕掛け・取り組みなどを指して「ファシリテーション」と称されることが多く、そのような認識をされている方も多いかと思います。
また、日本におけるファシリテーションの広がりにおいて、中野民夫さんの存在は欠かせません。
中野民夫さんが2001年に出版した『ワークショップ』は、それまでさまざまな業界・領域で実践されていたものの、体系立てて説明されていなかった参加型・体験型プログラムである『ワークショップ』、それらの担い手である『ファシリテーター』、そして『ファシリテーション』を広く日本に知らせることとなりました。
その中野民夫さんは、『ファシリテーション』について以下のように述べています。
明るい兆しが広がっている。
環境、社会、経済、どこをとっても危機だらけのこの時代に、いや危機が深刻だからこそ、なんとかしなければという人々の意識と行動が、ふつふつと湧き出してきている。
(中略)
様々な問題は複雑に絡み合い相互に関連していて、簡単な解決策などない。誰か特定のリーダーや専門家や先生が、すべてを一気に解決してくれることも残念ながらありえない。だからこそ、様々な現場を懸命に生きる私たち一人ひとりが、孤立しないで集い合い、問い合うことが、出発点になる。力を生み出していくきっかけになる。それぞれの思いや知恵を率直に出し合い、刺激し学び合う。理解を深め、共感し、新たな解決策と結びつける。 そして行動し、振り返り、改善しながら前に進み続ける。人々の参加を大事にしたこのような動きが確かに広がっている。
そして、このような場をつくり、人々の参加を促進し、対話を育み、学びや創造を容易にする技法が「ファシリテーション」なのだ。
2001年に中野民夫さんによる『ワークショップ』の出版、2003年に堀公俊さんらが発起人となっての日本ファシリテーション協会(FAJ)設立と、国内におけるファシリテーションの普及・広がりは現在に至るまで25年近くの歩みが存在します。
私自身のファシリテーションの本格的な探求は、2010年代以降の京都、特にまちづくりの領域での実践が入口となりました。
まちづくりの領域におけるワークショップの歴史を振り返ると、20世紀はハード建設のプロセスの一部として扱われるものであり、都市計画コンサルタントらが主要な実践者でした。
しかし、2000年代以降はそれ以前までの市民参加……公共事業の意思決定への参加及び合意形成のためのワークショップだけではなく、市民協働……まちづくりの事業の実施段階も含めたプロセス設計、組織づくりが可能となるファシリテーションが求められるようになっていきます。
その結果、ファシリテーターにも、その場限りの合意形成にとどまらず、チームメイキングのような要素も期待されるようになっていきます。
一方、アメリカでは、オープンスペーステクノロジーやワールドカフェ、フューチャーセンターなどの新しいファシリテーションの手法が開発され2000年代に日本に輸入されてきました。京都ではゼロ年代後半にNPO法人場とつながりラボホームズビーがこれを導入し、京都市未来まちづくり100人委員会で実装し、やがて2010年代に各区役所のデフォルトのサービスとして実装されていきます。この動きが京都の市民協働に大きなステップアップをもたらした事は記憶に新しいところです。
当日のストーリーテリング
以上、「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」の概念誕生に関わった3つの概念について整理してきました。
ここからは、それらを私がどのようにこれらを実践しながら統合しようとしてきたか、対話イベントSOIL当日に語ったストーリーについても簡潔にまとめていければと思います。
現在の私に至る原体験と原風景
私は現在、いくつかの肩書きを使いながら『人と組織のポテンシャルを発揮するための智慧の研究・発信を通じて、次世代に届けていくこと』を活動の指針としています。
具体的な活動としては、企業・団体におけるワークショップの実施や組織運営の支援、複数の関係者が関わるプロジェクトにおけるファシリテーション、企業事例のケースライティングや海外文献の翻訳協力といった執筆などが挙げられます。

また、2020年に地元・三重県伊賀市の兼業米農家を継いだ事業承継の当事者でもあり、今年で6年目を迎えます。

元々、三重県伊賀市に生まれ、家の四方を田んぼに囲まれた環境で育った私には、曽祖父母、祖父母、両親、弟と四世代の家族がおり、同居しながら暮らしていました。

私の原風景です
そして、四世代の人間関係と親戚も含んだ家族システム、お寺や神社の役といった古い集落の文化や慣習など、複雑な構造のもとで交わされるコミュニケーションが幼少期から10代の私には理解できず、また、質問しても大人たちはいつも忙しなく働いており、いつもどこか居心地の悪さを感じていました。
幸い、部活と勉強には熱心に取り組んでいたことから大学進学を機に大阪に出ることとなり、そこから私の旅路はスタートしました。
U理論×英雄の旅で紐解く人生の旅路
学生時代にワークショップとファシリテーションに出会った私は、「これだ!」と直感しました。
人が複数人集まった時のダイナミクスを紐解き、より心地よい状態へ導くには、この「ファシリテーション」というものに途轍もない可能性があるのではないか?と感じたのです。
学生時代に出会った仲間たちとさまざまなテーマでワールドカフェ等の手法を用いながら対話の場づくり、ファシリテーションを実践していく中で、私は「U理論(Theory U)」に出会うこととなりました。

大阪を中心とした仲間たちとの活動に一区切りをつけ、京都に拠点を移した2015年。
後に私が所属することになるコワーキングスペースImpact Hub Kyotoおよび場とつながりラボhome's viは「U.Lab x Impact Hub Kyoto U理論学習プログラム」の共同開催を予定しており、私はこのプログラムに参加することを決めました。
これ以降、私は本格的に「U理論(Theory U)」を探求していくこととなりました。

やがて、私は生業として企業や青年会議所を対象としたワークショップの実施などにも取り組むようになりますが、一時のワークショップ実施だけではその場でどれだけ素晴らしい対話が生まれても、その後の組織の変化に持続的なインパクトを発揮できない、という事態に何度も陥ることになりました。
そんな時に出会ったのが、フレデリック・ラルー著『ティール組織(原題:Reinventing Organizations)』でした。
『ティール組織(原題:Reinventing Organizations)』は、人類が有史以来、暴力による支配、法と階級による秩序、企業の誕生と生産性・能力主義の台頭など、さまざまな組織の作り方を発明してきた歴史を振り返りつつ、現在生まれつつある新しい組織運営・組織構造について紹介した書籍です。
人の集団には、今ここにいる人々だけではなく、その人々の行動を規定する制度・構造があるという視点や、そうした制度・構造はかつて生きた人々による試行錯誤の上で成り立っているという視点は、私に「ファシリテーション」に出会った時以来の衝撃をもたらしました。
『ティール組織』解説者である嘉村賢州が代表を務めるhome's viに所属していた当時の私は、『ティール組織(Reinventing Organizations)』をはじめとする組織論の探求にのめり込んでいくこととなりました。

そして、海外で実施されるトレーニングでの学びなどを経て、今度はそれらを講演などの形で伝えていく活動が始まりました。

ここから、私は最も大きな人生の転機に直面します。
家族との死別やパートナーとの結婚などのライフイベントが重なったほか、この頃には全世界がコロナ禍に陥るなど、公私共にあらゆる領域で「これまで通りの自分」では通用しない局面に直面することとなりました。
その後、再び地元へ戻り、米作りの事業承継を決断する際の私には葛藤もありましたが、その当時はそれが自分にとって選択できる唯一の選択肢でした。
その結果、これまで培ってきた人の集団に巻き起こるダイナミクスをより良い方向へ促そうというさまざまなアプローチを駆使して、今度は四世代分積み重ねられた家族システムの健全化に取り組むこととなったのでした。
その後の事業承継にまつわる私自身の葛藤や実践については、私自身のマガジンにまとめている他、事業承継ラボからインタビューいただき、その模様は記事として公開されています。
また、事業承継の時に痛感した「世代を超えて事業が受け継がれることの尊さ」「人ひとりが去ることによる組織のその後への影響の大きさ」といった気づきから、「書き遺すこと」の重要性を見出し、この「書き遺すこと」をクライアントワークにも活かしていくこととなりました。
ある企業や団体における素晴らしいアイデアや実績も、何らかの遺されていなければ後の世代に受け継がれることもなく、また、新しくそれらについて学びたいという後進へ伝えることもできません。
ある企業や団体における素晴らしいアイデアや実績が創業者などの個人に依存している場合、創業者が去るときにそれらの取り組みを生み出す文化や風土も組織から失われてしまいます。
四世代家族に生まれ、家業を事業承継することとなった私は、約100年近くの世代交代の歴史を体感し、次の三世代へより良い未来を遺し、繋ぐ意識を育む稀有な機会に恵まれました。
そして、関わる企業・団体といったクライアントの皆さんや身近な友人たち、家族に対してもまた「これまでを作ってきた先人たちへの敬意と、今を共に生きる人々やこれからを担う次世代に向けた願い」を持って日々、関わるようになりました。
こうした観点から、企業の社史の編纂や組織運営の伴走及び終結時の振り返りの場の設計・運営、長期プログラム終了後のインタビュー記事の執筆といった活動にも取り組んできました。
このような私のこれまでの探求の旅路をUプロセスの最初期の記述(Sensing→Precensing→Realizing)と英雄の旅の原型(Separation→Initiation→Return)を用いて表す際、以下のようなモデルを考えてみました。

そして、Sensing/Separation期(旅立ちと、ファシリテーション・組織論との出会い)、Precensing/Initiation期(人生の転機及び本質的な内面の変容)、Realizing/Return期(帰還と事業承継、世代を超えて未来に取り組みを届けるための新たなチャレンジ)の3期で区切り、ストーリーテリングを行うこととしました。
以上のような構成のもと、当日の場では、私含め4世代が同居する家族に生まれたこと、幼少期には理解できなかった家族システムや地域の文化・風習というコンテクスト、ファシリテーションや組織論の探求を深める上で見えてきた価値観と行動パターン、組織構造などの関連性、また、米作りの事業承継を経て体得した世代間の葛藤・対立を紐解くための胆力と共有知の重要性など、個人としても生業としても試行錯誤してきたプロセスを凝縮してお話しできたのではないかと思います。
ジェネレーション・ファシリテーター
上記のようなこれまでの旅路を眺めることで、いよいよここから現在の私についてお話しする前提が整いました。
では、現在の私がこれまでの旅路を振り返った時、どのような一貫するプロセスを見出すことができるのでしょうか?
言い換えるなら、私自身がこれまで取り組んできたワークショップの実践、組織運営の伴走支援、「書くこと」や「発信すること」等は、どのような一貫する取り組みとして整理することができるのでしょうか?
私自身が自身の旅路を振り返って得られた洞察は、以下のようなものです。
私自身のこれまでの探求・実践は、『家族や組織、コミュニティ、社会における世代間ギャップや価値観のズレから生じる葛藤・対立を、今という時代を共に生きる仲間や同胞として、共有できる目的や物語を作りながらより良い状態へ進めるための「ファシリテーション」』として理解できるのではないか?
つまり、私がこれまで探求し、取り組んできた諸々の営みは『ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)』とでも呼ぶべきあり方によるものだったのではないか?という仮説です。
では、『ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)』とはどういった存在でしょうか?
現在、仮置きしている定義は以下のような表現です。
「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」とは、家族や企業・組織、コミュニティ、社会における世代間ギャップや価値観のズレから生じる葛藤・対立を、今を生きる仲間や同胞として、共有できる目的や物語を作りながらより良い状態へ進めるよう伴走する人、という意味の用語です。
上記の表現は、私がこれまで取り組んできた、執筆やプロジェクト伴走をはじめとする活動でやらんとしている、長い時間軸で変容を見ていくあり方を表現しようとしたものです。
この『ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)』として大切にしているあり方、また、参考になるモデルとして、Berkana Instituteが体系化した「Two Loops」というモデルがあります。
このモデルは古いパラダイムから新しいパラダイムへの移行やその橋渡し、いかに社会におけるシステムチェンジが起こっているか?について捉えようとしたモデルです。
事業承継や組織の変容、家族のトランジション等、大小さまざまな古いシステムから新しいシステムへの移り変わりを公私共にさまざまな形で関わり、試行錯誤し、実践してきた私や、「書くこと」「誰かの人生を懸けた物語や紡いできた叡智を届けること」に取り組んできた私など、私の中にはさまざまな側面があります。
それらは実は、Two Loopsの示すパラダイムの移行の促進や、人・組織・社会における世代間の分断を橋渡ししていこうという『ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)』としての振る舞いだったのではないか?というのが、私の探求の現在地です。
ありがたいことに、先日の話についてスクライビングをしながら描いてくださっていた方もおり、そのスケッチにはU理論と英雄の旅、そしてTwo Loopsの親和性についても表現してくださっているように思います。

U理論×英雄の旅×Two Loopsや、「ジェネレーション・ファシリテーター」というコンセプトはまだまだ生まれたばかりのアイデアであり、関心を持っていただける皆さんと探求を重ねていきたいテーマです。
当日あいにく都合が合わずご一緒できなかった方もいらっしゃるので、機会を見つけて共有などもできると嬉しいですね。
終わりに
今回、「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という造語を生み出すきっかけとなったのは、「そもそも、私は一体何者なのか?」という長年の問いに対して仮にでもいいので答えを出したかったという背景もありました。
そして、ご縁が巡り巡って今回、U Journeyの主催する対話の場で私自身の人生について語り直す機会をいただき、その時に用いた「U理論(Theory U)」「英雄の旅(The Hero's Journey)」「ファシリテーション」「Two Loops」などのモデルとこれまでの経験がうまく組み合わさり、統合された結果、偶発的に「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」という概念が生まれたのでした。
あくまで仮説であり、また、私自身の活動や実践を表す便宜上の名称ではありますが、『世代間の葛藤・対立を越え、未来へ向かうファシリテーションの実践者』という概念を形作ることができたことは僥倖でした。
今後も、この「ジェネレーション・ファシリテーター(Generation Facilitator)」についての探求と実践については記事に遺していければと思います。
また、今回、私がストーリーテリングさせていただいた第4回SOIL(Seeds of Insight Lab)には、お久しぶりの方からここ最近で急速にご一緒する機会が増えた方などもいらっしゃいましたが、改めて深い領域から現在の私についてお伝えできる機会となりました。
お声がけいただいたU Journeyの皆さんに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
本記事を読み進める中で、気になった点や、U理論×英雄の旅×Two Loopsや、「ジェネレーション・ファシリテーター」というコンセプトに関して感じたこと・思い浮かんだ新たなアイデアなどありましたら、ぜひこちらからや、こちらに記載している連絡先などからお気軽にメッセージいただけると嬉しいです。
さらなる探求のための参考リンク
システムチェンジ|チェンジ・エージェント
【読書記録】トランジション―人生の転機を活かすために
レポート:「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間
レポート:「内なる変容が、社会を変える」 IDGs×U理論|オットー・シャーマー博士からのビデオメッセージと共に、日本に内発的リーダーシップの灯をともす
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