レポート:「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間
本記事は、NPO法人場とつながりラボhome’s vi/ティール組織ラボが主催した『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間』についてレポートしたものです。

『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』著者ステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)をゲストに招聘し、人や組織、社会のさまざまな変容(Transformation)の通訳に取り組まれる福島由美さんにサポートを頂きながら進められた今回のワークショップ。

今回のプロジェクトのソースである嘉村賢州さんは本ワークショップについて、昨年スイスで自身が体験した4日間の構成を2日間に凝縮し、再現しようという試みであると初日の冒頭にお話しされていました。
会場となった京都市中京区の京町家ちおん舍には全国各地から参加者が集い、ソース原理(Source Principle)の叡智に触れ、ソースワークの実践を積み重ねながら、探求を進めていきました。

今回のプログラムで扱われたソース原理(Source Principle)とは、経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威と影響力、創造的なコラボレーションに関する洞察・知見の体系です。
『ソース原理(Source Principle)』は、お金に対する一人ひとりの価値観・投影(projection)ついて診断・介入できるシステムであるマネーワーク(moneywork)の発明を機に発見・体系化されました。
そして、ソース原理の開発者ピーターには、世界各地にソース原理、マネーワークを学び、独自に発展させているお弟子さんに当たる人々がいます。
その1人であるトム・ニクソン氏の著作『すべては一人から始まる(原題:Work with Source)』が2022年10月に出版されたことで、国内に初めてソース原理が体系的に紹介されました。

今回のゲストであるステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)もまた、ピーターにソース原理を学んだ1人であり、今年10月には氏の著書の邦訳書である『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』が英治出版より出版されました。
今回のワークショップのゲストであるステファンは、ピーターから学んだソース原理をそのままの形で紹介するだけにとどまりまらず、ソース原理という新しい体系を生み出したピーターに敬意を表しながら、そのエッセンスを大切にしつつさらに発展させています。
その中で独自に生み出されたモデルが、今回のワークショップで本格的に紹介されることとなった『ソースジャーニー(The Source Journey)』です。

今回、実施された『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ』は、邦訳書籍の出版間もないステファン・メルケルバッハ氏をゲストに招き、ソースが歩む旅路をモデル化した『ソースジャーニー(The Source Journey)』を2日間かけて探求していく濃密な時間となりました。
以下、この2日間の体験と学びについて、このワークショップ開催に至るまでの背景についても触れながら紹介しようと思います。
今回のワークショップの開催背景
『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ』での学びをより深く理解するには、国内で育まれ、広がってきたソース原理にまつわるムーブメントについて概観することが役立ちます。
また、国内におけるソース原理のムーブメントと、今回の京都のワークショップ開催プロジェクトのソースである嘉村賢州さんの探求の旅路は深く交わっており、賢州さんの旅路を紐解くことでどのような希望や願いがソース原理を広げるムーブメントにつながったのかが垣間見えるかもしれません。
今回扱われた『ソースジャーニー(The Source Journey)』になぞらえれば、「私は何をこの世界に実現したいのか?」という問いに向き合い、そのためにリスクを取って一歩踏み出して以降、長期にわたって展開してきた旅路のプロセスの一例と捉えることもできるでしょう。
以下、ソース原理のムーブメントに繋がるhome's viと嘉村賢州さんの旅路について見ていきます。
場とつながりラボhome's viとは?
特定非営利活動法人場とつながりラボhome's viは『未来のあたりまえを今ここに』をパーパスとして掲げ、社会の一人ひとりが幸せになれる組織づくり・仕組みづくり・コミュニティづくりに挑戦する、場づくりの専門集団です。
2008年に設立されたhome's viはこれまで、国内外のさまざまなファシリテーション技法やコミュニケーション技法の調査研究と2014年以降の継続的な連続講座シリーズの実施、そして、これらの手法を用いたまちづくり活動、大学での講義、企業研修、組織変革といった活動に取り組んできました。
home's viの代表理事を務める嘉村賢州さんは、集団から大規模組織に至るまで、まちづくりや教育などの非営利分野から営利組織における組織開発やイノベーション支援に至るまで、規模の大小や分野を問わず、年に100回以上のワークショップを実施するファシリテーターとしての活動を積み重ねてきた、国内のファシリテーション実践の先駆者でもあります。
また、home's viのメンバー一人ひとりも独自の専門性を探求する経験豊かなファシリテーターであり、多くのメンバーが以下のような書籍に事例やファシリテーション手法に関する寄稿を行い、一人ひとりが本当にその人らしい個性を発揮し、活かしあいながら化学反応を起こしていくためのアイデアを紹介されています。
以上のように、年に100回以上の対話の場づくりを行ってきた賢州さんですが、ある時から「折角いい対話が生まれても次に繋がらない」「働いている人の本当に多様な個性を生かせていない」と、感じるようになったと言います。
そして賢州さんは、以下のような問いに突き当たりました。
(これは)ヒエラルキーという組織構造が阻んでいるのではないか?
人類は組織の作り方を間違えたんじゃないか?
このような中で賢州さんが出会ったコンセプトが「組織の問い直し」であり、フレデリック・ラルー氏の著した『Reinventing Organizations(組織の再発明)』でした。
ティール組織の探求からソース原理との出会いへ
2016年、賢州さんは吉原史郎さんと共にギリシャのロードス島で開催された『NEXT-STAGE WORLD: AN INTERNATIONAL GATHERING OF ORGANIZATION RE-INVENTORS』に参加し、同年10月に東京・京都で報告会を実施しました。
世界中の『Reinventing Organizations(組織の再発明)』に触発された実践者たちの集う国際カンファレンスの報告会は、その後の国内における『Teal組織』の探求・実践を活発化させる契機となりました。
その後、home' viは2017年夏頃よりホラクラシー(Holacracy)という組織運営法を取り入れ、自らの組織をティール的に運営するチャレンジが始まりました。
2018年に邦訳出版された『ティール組織』(英治出版)は10万部を超えるベストセラーとなり、日本の人事部「HRアワード2018」では経営者賞を受賞、2019年にはフレデリック・ラルー氏の来日イベントも開催されました。

また、ラルー氏が来日時に組織における役割の一つ・ソース(Source)について言及されたことをきっかけに、国内のソース原理の探求も盛んになりました。
ラルー氏もまたピーター・カーニック氏と出会い、彼からソース原理(Source Principle)を学んでいたのです。
ラルー氏は2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分で記載している他、『新しい組織におけるリーダーの役割』と題した動画内でソース原理(Source Principle)について言及したということもあり、国内で注目が集まりつつありました。
賢州さんは山田裕嗣さん、青野英明さんと共に『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』の翻訳・監修に携わることとなり、home's viは2022年8月に京都で開催されたトム・ニクソン氏の招聘イベントを主催しました。
その後、『すべては1人から始まる』は日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門にて入賞を果たすなど、ソース原理はビジネスの世界でも注目を集めることとなりました。
ステファンとの出会いから現在まで
2023年7月に賢州さんは青野英明さん、RELATIONS株式会社の皆さん、吉原史郎さん・優子さんらと共にスイスを訪れました。
スイスのステファン宅訪問時にはドイツ・ボン在住の仲間である相川千絵さんに通訳でサポートに入ってもらい、そこで初めて賢州さんとステファンは対面することとなりました。
そして、この時に賢州さんが体験したワークショップが今回のワークショップの元になっており、この時の出会いは今後のステファン来日企画へと繋がっていきました。
後日、別日程で複数の報告会も実施された他、青野英明さんが中心となってイニシアチブを推進し、2023年年末から2024年年明けにかけてステファンとパートナーであるクローディーヌさん(Claudine Merckelbach)の来日が実現しました。
さらに、2024年10月にはステファンとクローディーヌさんの再来日が実現。
RELATIONS株式会社による東京、大阪、博多でのソース原理基礎講座の実施、青野英明さんが主導した2daysワークショップなど、10月19日の『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』(英治出版)出版に合わせるように多数の催しが実施されました。
今回、京都で実施された『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間』は、今年10月に行われた一連のステファン関連企画群の1つでもあります。

今回のワークショップの前提知識
『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ』で扱われた『ソースジャーニー(The Source Journey)』をまとめるにあたり、その前提となっている英雄の旅(The Hero's Journey)と、今回のゲストであるステファンについてまず紹介できればと思います。
ステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)
『A little red book about source(邦題:ソース原理[入門+探求ガイド])』の著者であるステファン・メルケルバッハ氏は、スイスに拠点を置くオーディナータ社(Ordinata)を2001年に起業したソース原理(Source Principle)の実践者です。

オランダに生まれ、スイスのフリブールで育ったステファンはフリブール大学、ジュネーブ大学で哲学を研究しており、このことは現在の彼の肩書きである「哲学する経営者(philosopher-manager)」にも通じています。
現在、ステファンはコーチング、コンサルティングを行うオーディナータ社(Ordinata)において、ソシオクラシー(Sociocracy)をルーツに持つ組織運営体系『参加型ダイナミックス(participatory dynamics)』の提供を企業やチームに行うとともに、トム・ニクソン氏の立ち上げた情報ポータルサイトworkwithsource.comにも名前を連ねています。
また、ステファンは上記の活動に並行して2000年に小学校の設立に携わり、2021年まで小学校設立・運営プロジェクトのソースおよび小学校の校長として活動していた、教育者としての顔も持っています。
ステファンがソース原理、そしてピーター・カーニック氏に初めて出会ったのは、2013年のことでした。
"The Source Person" training dayと題されたその日のトレーニングでの出会いをきっかけに、自社の提供する企業を対象としたトレーニングやプログラムにおいてソースの概念は欠かせないものになったと、ステファンは書籍の中で述べています。
Curious about the title of "The Source Person" training day, on 25 September 2013 I innocently turned up, completely clueless as to just how much this experience would transform my professional life and my organization. Although only three participants were registered, Peter John Koenig, the moderator, surprised us by deciding to hold the day-long workshop anyway. A stroke of luck for us, as we got his full attention—just as he had ours. (…). Based on what I discovered that day I signed up for a longer program, a master class he organized the next year to transmit his findings. Since then the notion of source has become integral to the support and training we provide at Ordinata, a company I started in 2001.
また、ソース原理の発見・体系化によって新たな「言語」を生み出したピーターへの敬意を示しつつ、ステファン自身もソース原理の発展に努め、今回のワークショップで紹介されることとなった『ソースジャーニー(The Source Journey)』を開発するに至りました。
「人生の旅路」というメタファー
『ソースジャーニー(The Source Journey)』というソースの歩む旅路のモデルが表現しているように、「人生は旅のようなものだ」「誰もが人生という旅を往く旅人のようだ」というメタファーとメッセージが今回のワークショップの中で共有されることとなりました。
『ソースジャーニー(The Source Journey)』の基となった英雄の旅(The Hero's Journey)は、神話学者ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)によって紹介された世界各地の神話・物語に共通する普遍的な英雄物語の構造です。
太古の人々は古今東西を問わず、生き方や人生の教訓について物語として残してきており、それらは現代を生きる私たちにとっても当てはまる普遍的な構造を持っていることを示しています。
また、人生を「旅」と捉えることと内面の探求の関連について、フレデリック・ラルー著『ティール組織』の中では以下のように紹介されています。

人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅
(中略)
内面の正しさを求める旅を続けると、自分が何者で、自分の人生の目的は何かという内省に駆り立てられる。人生の究極の目的は成功したり愛されたりすることではなく、自分自身の本当の姿を表現し、本当に自分らしい自分になるまで生き、生まれながら持っている才能や使命感を尊重し、人類やこの世界の役に立つことなのだ。
人生を「自分の本当の姿を明らかにする工程」だととらえれば、自分の限界を現実のものとして冷静に見つめ、目に入るものを心穏やかにとらえることができる。人生とは、自分の中にもともと素養がないものに無理をしてなろうとすることではない。私たちはまた、周囲の人々や状況には何が足りないか、あるいは何が間違っているか、といったことではなく、そこに存在するもの、美しいもの、可能性に注意を向けるようになる。決めつけよりも思いやりと感謝を優先する。
逆境に優雅に対処する
人生を発見の行程だと考えれば、人生で出会う挫折や失敗、さまざまな障害に潔く対処できる。「この世の中に失敗などは存在しない。ただ自分自身や世界の奥底にある本当の姿に近づくための経験に過ぎない」という精神的な悟りへの入り口をつかむことができる。
また、人生を旅のメタファーで捉えることは、人生が予め計画した通りに進むとは限らず、時に困難や浮き沈みに見舞われる動的なプロセスであることを思い出させてくれます。
加えて、旅の始まりやその最中、そして旅の終える際には精神的な変容が起こる、ということを再認識させてくれます。
英雄の旅(The Hero's Journey)とソース原理(Source Principle)を基に体系化された『ソースジャーニー(The Source Journey)』を理解・実践する上で、上記のような記述や人生の旅路という観点も活用することができそうです。
このような人生の旅路とそれに伴う内面の変容の観点を持ちつつ、『ソースジャーニー(The Source Journey)』の基となった英雄の旅(The Hero's Journey)について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
英雄の旅(The Hero's Journey)
先述のように、英雄の旅(The Hero's Journey)とは神話学者ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)によって紹介された世界各地の神話・物語に共通する普遍的な英雄物語の構造です。
英雄の旅(The Hero's Journey)が周知されることになったのは、キャンベルが1949年に発表した『千の顔をもつ英雄(原題:The Hero with a Thousand Faces)』によるところが大きく、『千の顔をもつ英雄』は現在、ハヤカワ・ノンフィクション文庫の〔新訳版〕上下巻で新訳版が出版されている他、今年2024年7月にNHK100分で名著の中でも紹介されました。
英雄の旅(The Hero's Journey)は人類最古の物語であるギルガメシュ叙事詩をはじめ古今東西のさまざまな英雄物語や冒険譚に共通する原型があることを明らかにし、スターウォーズシリーズを手がけたジョージ・ルーカスにも創造のインスピレーションを与えるなど、実際の物語の創作にも影響を及ぼしています。
英雄の旅(The Hero's Journey)の本質について、キャンベルは以下のような表現で端的に述べています。
英雄の神話的冒険がたどる標準的な道は、通過儀礼が示す定型―分離、イニシエーション、帰還―を拡大したものであり、モノミス(神話の原型monomyth)の核を成す単位と言ってもいいだろう。
英雄はごく日常の世界から、自然を超越した不思議な領域(X)へ冒険に出る。そこでは途方もない力に出会い、決定的な勝利を手にする(Y)。そして仲間(Z)に恵みをもたらす力を手に、この不可思議な冒険から戻ってくる。
なお、英雄の旅(The Hero's Journey)をモチーフにワークショップを実施する試みはこれまでにも事例が存在しており、ロバート・ディルツ(Robert Dilts)とスティーヴン・ギリガン(Stephen Gilligan)は『Hero's Journey: A Voyage of Self-Discovery(邦題:NLPヒーローズ・ジャーニー』の中で以下のような8つのプロセスに整理し、全4日間のワークショップへと落とし込んでいます。
1、天命を聞く Calling
2、天命を辞退する Refusal
3、境界を越える Threshold
4、守護者を見つける Guardians
5、自分のなかの悪魔と影に立ち向かう Demon
6、内なる自己を育てる Transformation
7、変化を遂げる Complete the task
8、帰還する Return home
以上、英雄の旅(The Hero's Journey)について見てきました。
ここからはいよいよ、ステファンが体系化したモデルである『ソースジャーニー(The Source Journey)』についてと、実際にワークショップに参加しての気づき・学びについてまとめていきます。
ソースジャーニー(The Source Journey)
ステファン曰く、自身のアイデアを実現するため、リスクを取って一歩を踏み出したソース(創造の源)である人=ソースパーソンは『ソースジャーニー(The Source Journey)』という英雄の旅(The Hero's Journey)に似た旅路を辿ります。
そのため、今回のワークショップもその流れに沿って、全8つのプロセスについて順に辿りながら進みました。
また、今回のワークショップは本来、4日間の構成で組まれていたものを2日間に凝縮している都合上、ステファンから学んだ賢州さんがメインで進行し、特に重要なポイントについてステファンがバトンタッチして解説するという形で進められました。

賢州さんからは、おそらく日本で最も深く体系的にステファンのソースワークについて体験するこの場を通じて、皆さんにはソース原理の伝道師になっていってほしい、というメッセージが伝えられました。
ワークショップの進め方
まず、参加者の手元には配布資料として邦訳出版されたばかりの書籍『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』(英治出版)と、本ワークショップ専用のハンドブックが配布されました。
このハンドブックは言わば書籍に収録されている探求ガイド編の完全版であり、中にはピーター・カーニック氏がソース原理を初めて発見・体系化した際に見つけた26の原則も印をつけて収録されています。
今回の『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間』では、参加者は入門編の知見と探求ガイド編の実践をより深掘りする形で学びと実践を進めていきました。

『ソースジャーニー(The Source Journey)』における1つひとつのステップで内省のための個人ワークとペアワーク、時にはグループ対話や全体での質疑応答などを行い、2日間かけて全プロセスを巡るというものです。
これまでにあまり体験がないワークショップの進め方としては大きく2つ、2周回すオープニング・ラウンドと、ディスクレッション(discretion)がありました。
オープニング・ラウンドについては、1周目は自己紹介も交えつつの率直に感じていることのシェア、2周目はこの1日で意識したい意図、この日をこんな1日にしたいという意図を3つの動詞で書き、シェアしようというものです。
時に人にも与えられうるゴールではなく、内発的に生まれる意図を意識してこの時間を過ごそうというものです。
中には『自分の深くへ潜る、共通認識をつかむ、チームの皆さんと深く繋がる』、『育みあう、火を熾す、照らし合う』、『深く掘る、お互いに心を触れ合う、ソースジャーニーの炎をわかちあう』というものから、『燃える、輝く、迸る』のような抽象的な表現まで、さまざまな意図がシェアされました。

ディスクレッション(discretion)は、節度と相互の信頼による自由裁量といったニュアンスで共有された、守秘義務に代わる参加者間の共有事項です。
これを伝えてくれたステファン曰く、この考え方はピーター・カーニック氏の発案によるもの、とのことです。
ピーター自身としては自分から学んだ知見をどんどん広めていってほしい一方、ソース原理やその基となったマネーワークでは参加者の深い内面を取り扱う取り戻しワーク(Reclaming Work)なども行う都合上、個人情報などへの配慮も必要になり、守秘義務についても意識せざるを得ませんでした。
そこで守秘義務を伝えると、ワークショップの参加者は何もシェアすることがなくなってしまったり……「守秘義務」というものがうまくワークしていないのではないか?という発想に至ったと言います。
そこで、参加者一人ひとりの自由裁量や、思慮・節度を持って行動することを促すディスクレッション(discretion)を結ぶことを発案したとのことです。
ディスクレッションに関する説明の後、参加者はこの考え方に基づいて行動することに対する反対ラウンドも設けられました。
もし一人ひとりに反対意見がないかどうかを尋ねていき、反対意見があればそれを表明してより良い共有認識へと統合し、反論がない場合は「No Objection(反対意見はありません)」と答えて順々に回していきます。
このプロセスはトップダウンの形式や全員のYesをめざす全会一致・コンセンサスとも異なる、全員Noがない状態、同意(consent)に基づいた意思決定であるとの補足も賢州さんから伝えられました。
ソースジャーニーの全体像
『ソースジャーニー(The Source Journey)』のプロセスは、ピーター・カニック氏(Peter Koenig)のソース原理(Source Principle)の知見とジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell)の英雄の旅(The Hero's Journey)を組み合わせて構築したものであり、そのプロセスは0から7までの8つのプロセスで構成されています。

これらの全体像をテキストへまとめると、以下のような8つのプロセスとなっています。
0、準備 Preparations
1、コール The call
2、コールに応える Responding the call
3、旅を始める Beginning to the journey
4、盟友たち The allies
5、ドラゴンと向き合う The dragon
6、帰り道 The way back
7、次の旅へ Return and Transmission
ここからは、0から7までのステップおよび、当日のレクチャー内容についても簡単にまとめていきます。
0、準備 Preparations
一番初めの、ソースとしての活動が始まる前の準備の段階では、自分自身の価値観を明確にするというワークに取り組みました。
当日、配布されたテキストの情報を基に自身の価値観についての理解を深め、それを他者とわかちあいます。

価値観を明確にし、他者と対話をすることは、自分がいざソースとなった際に相手と共鳴しあえるかを対話して確認する際にとても重要なポイントです。
ある活動のソースとして、あるいは自分の人生のソースとして大切にしたい価値観を探るための問いもいくつも準備されており、1つひとつの答えを考えるだけでも十分にパワフルに感じられる時間でした。
1、コール The call
コールとは、日々、私たちが生活の中で受け取っているさまざまな情報であり、私たち一人ひとりの中にあるソースチャネル(伝達経路)を通じて絶えず何らかのアイデア、直感、ひらめきを私たちは受け取っています。
インスピレーションはメディアや友人たちとの会話などからやってくるものと、本当にどこからか自分の内側に生じるものや、何の脈絡もなくふと降りてくる・浮かび上がってくるものなど、さまざまなものがあります。
コールは私たちに何らかの行動を起こすことを促しますが、受け取っているだけのこの時点ではまだ、その人はソースではありません。
次のステップであるコールに応え、リスクを取って(take a risk)一歩踏み出すまでは、アイデアは現実に現れておらず、自分の中にのみ存在するためです。
また、ここでステファンが強調するのがソースとしての謙虚さです。
画期的な製品やサービスの開発・提供といった活動を始めたソースにとっても、それはゼロや無から生み出されたのではなく、人の話していたアイデアやメディアによる情報などのインスピレーションをコールとして受け取ったことで始まった場合があります。
そうした場合、ソースはあくまでそのインスピレーションを受け取ったことで活動が可能になったのであり、活動のもととなった人や情報に敬意と感謝を示すことは、それら一人ひとりの存在や活動にもまたソース(創造の源泉)を見出す姿勢につながります。
また、会場となったちおん舍を眺めつつ、ステファンは「床の間のようなスペースはこれから先、どんな人にも大事になるだろう」と話しました。

それは、アイデア、直感、ひらめきなどに耳を澄ませるソースタイムがソースとして最も重要な役割の1つであり、床の間のような空間はそれを助けてくれるものだ、とのことでした。
この感覚的なものは人によって捉え方や体感の仕方もさまざまであるため、時間をとりつつ他の人の意見も聞ける構成で進められました。
2、コールに応える Responding the call
ソース原理におけるソース(Source)とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、初めの無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割を指します。
コールに応え、一歩踏み出したことでようやくその人はある活動におけるソースとなります。
先の「コール(The call)」及びこの章においては、人がソースとして活動することの自然なあり方についても紹介されていたように思います。
ある日の帰り道、お店から美味しそうな匂いが漂ってきて(コール)、「よし、今晩は外食しよう」と決め、そのお店に入店する(コールに応える:時間・お金を費やすリスクを取る)ということもまた、ソースとしての活動です。
このほか、朝食を作ることや休日の予定を立てること、恋人に結婚を申し込むことから大きなビジョンを抱いて起業することに至るまで、さまざまなシチュエーションで人はソースになりうることが紹介されました。
振り返ってみれば、私たちはこれまでの人生で既に、何らかの活動のソースになったことがあるとがわかるでしょう。
また、ステファン曰く、ピーターはソース原理は人類の誕生と同じくらい古い起源を持つものであり、その現象や全体像がソース原理と名付けられるまでにも人はソースとして活動し、時に協働してきたと話している、とのことです。
続けてステファンは、ピーターによってソース原理が体系化されたことで、私たちはソースというものを共通言語として扱うことができ、さらにそれらの探求を続けて発展もさせていくことができると話し、ピーターへのリスペクトを表現されていました。

また、上記の図では人がリスクを取って一歩踏み出す際には、その一歩を支えるその人のビジョン、価値観があり、それが独自のフィールドを生み出すこと、また、それら3つの要素がイニシアチブのDNAであることが表現されています。
もうひとつ、ある活動・イニシアチブのソースになるということは、自分が既に身につけているスキルや能力が問題になるのではない、とステファンは話していました。
私たちは子どもを授かるとき、親学なるものを大学院まで学んでようやく親になるのではありません。
子どもを授かるために一歩を踏み出して行動を始め、いざ子どもが産まれてきた後は、親としてのあり方・行動は迷いながらも少しずつ、実践の中で身につけていくものである、という例え話をステファンは付け加えてくれました。
3、旅を始める Beginning to the journey
コールに応え、リスクを取って一歩踏み出したことで、その人のソースパーソンとしての旅路が始まります。
ソースには活動を推進する上で3つの役割が存在し、それぞれ起業家(entrepreneur)、案内人(guide)、守護者(guardian)と名付けられています。

賢州さんが特に印象に残っていると話されたこととして、ソースは初めのリスクを取るだけではなく、その後もリスクを取り続けることで推進している活動に創造性やエネルギーをもたらすことができるというものがありました。
また、トム・ニクソン著『すべては1人から始まる』や『ソース原理[入門+探求ガイド]』でも語られていることですが、ソースはプロジェクトや事業といった活動の最中ではほとんどが迷いの状態(doubt)にあるということを知ってほっとした、とも続けられていました。
ソースの迷いと明確さについては、以下のような記述が『すべては1人から始まる』にて見つかります。
「わかるときは、本当にわかる」とピーター・カーニックは言う。
だから、明確さが訪れるまでは、重要なステップに取りかからないようにしよう。
明確でないまま進んでしまうと、必ずと言っていいほど痛々しくて大小の大きい軌道修正に迫られる。そのため、明確さが訪れるのをじっと待ちながら、耳を傾けよう。
4、盟友たち The allies
ソースが自身のアイデアを実現するために活動を継続、イニシアチブを推進していくと、自分1人だけではとても実現することができず、盟友たちであるサブソースと旅路を共にすることも出てきます。
ソースである彼または彼女のビジョンや価値観に共感・共鳴し、ソースが生み出したフィールドで活動を始めた人々は、サブソースとしてフィールド全体の活動を推進するためにさまざまな取り組みを自主的にスタートさせます。
サブソースから見て、大元となるフィールドを生み出したその人は、フィールド及びイニシアチブ全体に対しての全面的なレスポンシビリティ(responsibirity)を負うグローバルソースです。(ここで言うglobalは全体的な、包括的な等の意で使用)
また、あるフィールドではサブソースであるその人も、自分の人生においてはグローバルソースであり、独自の価値観、ビジョン、フィールドを持っています。
このため、グローバルソース、サブソース共に相手がソースであるという自覚と尊重の姿勢を持ちながらコミュニケーションすることが重要となります。
それらの関係をステファンが表したのが、以下の図です。

ステファンは自社の財務について同僚に委任し、その同僚が財務領域におけるサブソースになってくれたというエピソードを紹介してくれました。
ある週末、同僚からのリクエストと彼女への信頼によってその財務領域を委任(transmission)した後、ステファンにはその領域に関してこの先どのように進めようか?等のアイデアはまったく降りてこなくなりました。
一方、財務領域におけるサブソースになったその同僚は週末から週明けにかけてさまざまなアイデアが降りてくるようになり、早速さまざまな提案をしてくれるようになったと言います。
財務も含めたイニシアチブ全体がうまく進むよう取り組むレスポンシビリティは依然、グローバルソースのステファンにあるものの、ステファン自身は財務領域におけるサブソースへの委任(transmission)がうまくいったことに喜んだとのことでした。
5、ドラゴンと向き合う The dragon
ある人がコールに応え、リスクを取って一歩踏み出し、ソースとしての旅路を続ける中で、うまくいかないことや困難に直面することがあります。
そしてそれは、自身の内面にある課題が影響している場合があります。
いまやサブソースという旅の盟友も得たソースにとって重要となるのは、ソース自身が健全な状態にあることです。
健全な状態を維持できなければ、それはフィールド全体やその中にいるサブソースにも影響を及ぼすためです。
では、健全なソースであるためには何が必要になるのでしょうか?
ステファン曰く、ソースが陥ってしまいがちな病理について知ることだと言います。
その病理の全体像について記しているのが、以下の図です。

ステファンが語ってくれた病理とは、ソース原理そのものを知らない故に起こる無知(Ignorant)、そして、ソースの陥りやすい病理として、ソース否定病(The source denier)、暴君(The tyrant)、怠け者(The slacker)の4つです。
特に支配的で荒々しい関わりとなる暴君(The tyrant)と、ソースが優しすぎたり無関心になる怠け者(The slacker)は両極の関係として紹介されました。
「あなたは暴君(The tyrant)と怠け者(The slacker)、どちらになりがちですか?」
こんな問いもステファンからは投げかけられ、中にはどちらにもなりうるという回答もありました。
ソースの病理に関連して、賢州さんからは以下の記事でも紹介されている「僕はキング・オブ・スラッカーだった」というエピソードが紹介されました。
6、帰り道 The way back
ソースとしての旅路の中で内面にある自身の課題……ドラゴンに対峙した時、ソース原理の源流であるマネーワーク('moneywork')または取り戻しワーク(Reclaming Work)がその助けとなってくれます。
ソース原理の源流であるマネーワーク('moneywork')はピーター・カーニック氏が発見・体系化したものであり、ピーターはコンサルタントとしてクライアントに向き合う中で、お金の話をした途端にクライアントの中に葛藤が生まれたり、トラブルが起きたり、その結果不合理な意思決定がなされたり、プロジェクトが失敗する様子を目撃してきたと言います。
『なぜ、お金はこれほどまでに力を持っているのか?』
『そもそも、お金とは何か?』
『お金の話をするまでは、あんなに価値観や繋がりを大事にしていたはずなのに、なぜお金の話になるとそれらを大事にできなくなってしまうのか?』
こういった問いからピーターは「お金と人との関係」について探求を始め、『私たちは、私たちの一部をお金に投影(projection)している』という気づきから、お金に投影した自分の一部を自分の中に取り戻す(reclaming)介入プロセスであるマネーワーク('moneywork')を体系化しました。
なお、マネーワークはお金に投影(projection)した本来の自分の一部・パワーを取り戻す(reclaiming)ことに役立ちますが、人の投影の対象はお金に限りません。
投影の対象はパートナーや義理の母、親友、政治家、政府、システムである場合もあり、何か自分を苛立たせるものに人は投影している可能性があります。
「自分のことばかり話している人を見るとイライラする」と感じたら、「自分だってそのように振る舞いたい」という欲求をその人に投影しているのかもしれない、というようにです。
ステファンはこの取り戻しワーク(Reclaming Work)の発見と体系化を、「ピーターによる人類への大きな貢献」と評していました。
そして、ステファンはこの「帰り道 The way back」のフェイズにて、参加者の中からお一人、この取り戻しワーク(Reclaming Work)の体験者を募り、安全な環境づくりの配慮のもと、取り戻しワークのセッションが行われました。

7、次の旅へ Return and Transmission
ソースの旅の最後のプロセスは、ソースの継承(transmission)です。
正確には、ソースの継承以外にもソースが自らイニシアチブを閉じるという選択肢や、ソースの継承がされないままグローバルソースが居なくなる・亡くなるというパターンも考えられます。
まず、継承が成立するのは信頼が培われた関係性にある1人から1人へ、自由意志による選択によってソースが受け渡される場合です。
ソースの継承に関しては、「後はみんなに任せるよ」では成立しません。
この時、渡し手がそれまで持っていたソースとしてのDNA、イニシアチブにおける創造性は受け手へと完全に引き継がれることとなります。
このことを表しているのが、以下の図です。

このソースの継承についてステファンは火の灯ったトーチを引き継ぐというメタファーで表現しており、不意の出来事でソースの引き継ぎが行われなかった場合、そのトーチはポトンと落ちている状態だと言います。
そして、落ちた後もトーチの火はしばらくソースのDNAを保ち続け、新たに拾い上げた人……「拾い上げて引き継ぐ」というリスクを引き受け、一歩を踏み出した人が新たなソースとなります。
ある参加者の方は、実際に自分がソースを担っていた施設の運営に関するソースを、儀式を通じて仲間や家族に見守られる中で受け渡すことができたという体験をシェアしてくださりました。
実際に、ソースの継承後は施設運営に関するアイデアは降りてこなくなり、引き受けてくれた新たなソースも現在、精力的に活動に取り組まれているとのことです。
また、ソースの継承はあるイニシアチブのソースになることと同様、スキルや能力ではなく、受け手と渡し手の価値観の共鳴が重要だとステファンは話してくれました。
以上、ソースの継承に関するセッションを以て、『ソースジャーニー(The Source Journey)』の8つのプロセスを見てくることができました。
最後に、質疑応答や全体での対話の中で印象的だった気づき・学びについてまとめていければと思います。
2日間を通して印象的だった気づき・学び
ステファンがソース原理に出会ったストーリー
ステファンとソース原理の出会いを語るには、ステファンが2000年に立ち上げた小学校の運営について紹介する必要があります。
この小学校設立・運営プロジェクトのソースであり、実際に校長を務めていたステファンでしたが、2008年に燃え尽きに陥ってしまい、一時、学校運営から離れることとなりました。
その後、2013年にピーター・カーニック氏、そしてソース原理に出会ったステファンでしたが、ピーターからの学びによって自身はまだ小学校のグローバルソースであることが明らかになりました。
学校運営に関しては後任者の女性に一任し、業務に関する引き継ぎを行い、月に一回の定期的なミーティングも設けていたものの、ステファンからその女性へのソースの継承は行われてはいなかったのです。
一度燃え尽きに陥った状態から自分がグローバルソースであること、グローバルソースとして学校運営というイニシアチブのレスポンシビリティ(responsibirity)があることを認めるには時間がかかり、2015年にようやく学校運営に戻る決心がついたと言います。
そして、2021年に後任者に無事に学校運営のソースを受け渡すことができ、それまではさまざまな苦しみもあったものの、無事に受け渡すことができて幸せだと語られていました。
「1つの生命体としての組織」という捉え方について
ある参加者の方からは、「1つの生命体としての組織」という捉え方があるが、一方でソース原理においては「組織は幻想である」と表現される場合もあり、ステファン自身はどのように考えられるか?という質問が投げかけられました。
この背景には、おそらく以下のような記述も影響しています。
新たな比喩―生命体としての組織
(中略)
進化型組織のリーダーたちは、理想の職場のあり方として、家族とは別の比喩を使う。実は彼らの多くが、自分の組織を「生命体」や「生物」と捉えている。生命は進化に向けてあらゆる知恵を働かせながら、少しでも美しい生態系を維持している。生態系は、全体性、複雑性、そして高い意識に向けて常に進化し続けている。自然は、自己組織化に向かうあらゆる細胞とあらゆる有機体の欲求に突き動かされて、常にどこかで変化している。そこには命令を出したりレバーを引いたりする中央からの指揮も統制もない。
存在目的―進化型組織はそれ自身の生命と方向感を持っていると見られている。組織のメンバーは、将来を予言し、統制しようとするのではなく、組織が将来どうなりたいのか、どのような目的を達したいのかに耳を傾け、理解する場に招かれる。
組織の「魂」
組織論の分野で最近登場した考え方が、組織はそれ単独それ自体独立した実態として世界に存在しているだけでなく独自の魂を持っている、というものだ。この考え方はフレデリック・ラルーの著書『ティール組織』によって広まった。(中略)しかし、この考え方にはいくつか大きなリスクがある。『ティール組織』で取り上げられているような参加度の高い組織は、ソースが去るかソースがその洗練された組織化の方法に全面的な責任を持って向き合えなくなると、従来型のパラダイムに逆戻りしてしまう場合がある。
組織とは、私たちの想像から成り立つものだ。客観的な現実に存在する実態というよりも、物語である。
概念はもう少し軽く受け止めた方が良い。組織を尊重するがゆえに個人のビジョンや願いが押さえつけられてしまうと、自分の代わりにビジョンや願いを組織に実現してもらおうと考えるようになる。
このパラダイムには、全員が組織のパーパスへと深く共感しすぎることで、逆に1人ひとりが自分自身の人生における天職を失ってしまうというリスクがある。
ステファンの答えは、両方の意見に賛成だというものでした。
組織は抽象であり、物理的な実体としては存在していない一方、私たちの頭の中にモデルとして存在しています。
トヨタという企業であれば、ショールーム、働く人、自動車、オフィスビルは実体として存在しています。
それらは元を辿ると、個人である人々の集合が関係を結び、どんな働き方をするか等について、ある価値観やブランドのもとにモデルとして統合されたものが組織(という物語)として存在しており、その結果、自動車をはじめとするプロダクトやそれを生産する人々が現実に存在するようになった、と言えます。
なお、組織の中にいる一人ひとりは実体として生きており、変わっていくからこそ、それにつれて組織も変わります。この意味で、ある意味組織は生きている、とも言えます。そして、一人ひとりが変われれば、組織も変わっていけるのです。
このような回答をステファンからいただきました。
賢州さんからは、ソース原理の考え方から見ると、組織に合わせにいこうとすることで一人ひとりのエネルギーや一人ひとりが自分の人生を生きるという感覚が薄まったり、失われてしまうことが懸念点だというお話がありました。
そして、組織に自分を合わせにいくのではなく、ある組織のパーパスや、あるソースの価値観と自分が響きあえるかどうか、一人ひとりが人生のグローバルソースとして自分の内側を起点に判断し選択することが大切、と補足を加えられていました。
なお、フレデリック・ラルー氏も後に自身の知見にソース原理を取り入れており、トム・ニクソン氏もまた双方の知見は取り入れることができると『すべては1人から始まる』にて言及しています。
今回のテーマにおいても、A or Bという二項対立の考え方ではなく、A and Bという考え方も有効かもしれないと感じられました。
もうひとつ参考にしたいのは、『Conscious You:Become the Hero of Your Own Story』にて紹介されている、統計学者ジョージ・E・P・ボックス(George E. P. Box)の言葉です。
『すべてのモデルは間違っているが、役立つものもある』
"All models are wrong and some of them are useful."
この言葉はどのモデルが正しいか間違いかではなく、どのモデルも完全な真実ではないということに加え、「どのモデルを取り入れることが、自分の人生をより良くするために役立つのか?」の判断は私たち一人ひとりに委ねられている、ということを意識させてくれます。
新しい組織づくりに取り組みたい人こそ、取り戻しを
最後に取り上げたいのが、取り戻しワーク(Reclaming Work)の重要性です。
『ソースジャーニー(The Source Journey)』におけるステップ6、「帰り道 The way back」にて扱われた取り戻しワーク(Reclaming Work)について、ステファンは「この仕事はピーターによる人類への大きな貢献」と評していました。
お金やある人について投影(projection)してしまったもの、本来は自分であった一部を切り離し、投げてしまったものを取り戻す(reclaiming)というものですが、この投影は自分のある一面が現れた時、そのことを人に嫌がられたり、拒絶されたり、無視されたりすることによってその一面を抑圧し、自由に表現できなくなることで発生します。
取り戻しワーク(Reclaming Work)を行うことで一度失った自らの能力を取り戻すことができ、取り戻したものは適切な場面で使えるようになります。
ここで、先ほどのような組織づくりの話に戻ってきます。
ステファン曰く、いわゆる自律分散的な組織を作りたい、上位下達のコミュニケーションや意思決定、ヒエラルキーを撤廃してフラットな組織構造を作りたいという人こそ、取り戻しワークで権威、権力、パワーを扱うべき場合が多いとのことです。
なぜなら、そう考える人の多くは権威や権力、パワーを良くないものとして自分から切り離してしまっており、だからこそ権限は分散しよう、階層構造は解体しようという発想に繋がっていることも多いからだと、ステファンは続けます。
ところが、もし自分が何かの活動のソースになったら、時にはパワーを発揮してイニシアチブを前進させるべき局面も訪れます。
もし、パワーや権威、権力に対する投影が存在し、それを取り戻すことができれば、必要な時にパワフルに振る舞うことも可能になります。
ちなみにステファン自身も「自分は誰かにとっての厄介者になりたくない」「面倒な人だと思われたくない」という投影をピーターのガイドによって取り戻し、必要な時に意識的な暴君性(The Tyrant)を発揮できるようになったと言います。(それによって過剰な権力志向になったり、権威主義的になることもないよ、と付け加えられていました)
終わりに
今回のレポートは、2日間にわたるステファンとクローディーヌさん、お二人の言葉をエネルギッシュかつ丁寧に通訳してくださった福島由美さん、今回のプロジェクトを生み出してくれた賢州さん、そして、場を共にした皆さんとの時間を風化させず、後からも振り返ることができるようにしたい、という目的でスタートしました。
いざ、こうして最後のまとめを書いている時点で既に20000字を超えているのですが、それでも2日間のワークショップの体験を十分に表現できたとは思えていません。
『ソースジャーニー(The Source Journey)』のステップ1つひとつでペアで、グループで、全体でのシェアがあり、そこでは一人ひとりの異なる視点やストーリーをわかちあうことができました。
また、ステファンは長期にわたる日本滞在と各地を転々としながらのセミナー、ワークショップの最中にもかかわらず、丸二日の長丁場に加えて懇親会の場でもその情熱と炎を絶やすことなく、誰よりもエネルギッシュに場に向き合い、ソース原理の叡智を紹介してくれました。
この2日間の体験と感動を表現するには、もう一度この場に集った皆さんとの気づきや学び、その後の旅路のシェアなども含めてようやく実現できそうな気がします。
ただ、1つこの2日間の中で私の人生のターニングポイントについて触れた時間がありました。
『ソースジャーニー(The Source Journey)』のステップ7、ソースの継承についてのパートです。
私自身、これまで『すべては1人から始まる』著者のトム(Tom Nixon)にわかちあったこともありましたが、1人の人として父と向き合った時間と、それによって父からソースを継いだあの時の経験がありありとワークショップ2日目に蘇ってきたのでした。

そして、2人とのご縁を繋いでくれた仲間たち
この時の体験が、「本当に尊い、次の世代に繋げていきたい物語や叡智、人の生きた証を遺す」という私の人生を懸けた取り組みに繋がっています。
懇親会での時間も含め、私のこの継承の時間を大切に扱ってくれたステファンや、じっくり耳を澄ませて聴いてくださった当日の場の皆さんには感謝してもしきれません。
今、私の手元にはステファンの書籍があります。

これまでの私自身の探求と実践、2日間の学びをここにまとめてきたわけですが、その後、改めてこの本に向き合うと、また違った見え方もしてきそうです。
ここまでこのレポートを読み進めてくださった皆さんも今、どのようなことが思い返されたり、新たな学びや気づきが得られたことでしょうか?
今回のレポートもまた、皆さんのそれぞれの人生の旅路における探求の一助になれば幸いです。
そして、もしよろしければ今後、どこかのタイミングで旅路をご一緒していけると嬉しいです。
さらなる探求のための参考リンク
国内におけるソース原理(Source Principle)探求の潮流を概観する:2025年1月時点の現在地
提唱者が語る! 人間らしい自然なビジョンの創作を可能にする「ソースプリンシプル」&「マネーワーク」
ティール組織ラボによる関連企画
12/12(木)ティール組織の概要をつかむ!「概論編」講座

12/19 (木)嘉村賢州が振り返る!2024年「次世代組織の重要トピック」トークイベント
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