“絵は社会を変えられる”かもしれない:分かりやすいという劇薬
絵描きなのに、文章で注目されるとは。
この数週間、歴史や選挙についてやたら重たくて長い投稿ばかりしていたら、なぜかフォロワーが急増して1000人を超えました。やや戸惑い気味のウラケンです。
例のnote群に、読みやすい!本職のライターみたい!というお声をいただいていて大変嬉しいのですが、文章を書くのではなく、絵を描くことで生活しております。
食い扶持として向き合ってきた絵ですが、しかし今回、絵の力について考えるキッカケがありました。
「分かりやすい」という名の劇薬
ヒトという生き物は「分かりにくい」が大嫌いです。分かりやすく書かれている文章でも、文字数が多いと反射的に読みたくなくなります。考えさせるものは最初から避けて通る人もいます。
逆に「分かりやすい」は大好物です。
先日の選挙で議席を伸ばしたオレンジの政党の支持者の多くは、元々選挙に興味がなく、投票にも行ったことがない層でした。政治などという、難しいことは考えたくないし、長い文章は読みたくないので、あの政党が打ち出している憲法案を読んでいません。
よく読めば非常に危うい内容ですが、多くの人が読まずに投票しています。契約書を読まずにハンコを押すようなものです。
(そもそも、あの憲法案の危険性に気づくには、小学校の社会の授業で習った日本国憲法を、何となくでも覚えているという教養が必要ですが…)
しかし、そんな彼らに刺さったのが TikTokや、YouTubeに流れてきた分かりやすい主張です。複雑な背景など全部取っ払って、世の中が悪いのは、〇〇のせいだ。という分かりやすい図式。
「分かりやすい」は使い方次第では、非常に有益ですが、用法用量を間違えると大変な副作用を招く危険な劇薬でもあります。実際、ナチ党はそのやり方で台頭しました。

ナチス・ドイツの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)は、明確に「大衆は理性的ではなく感情で動く存在である」と見なしており、彼の言動や政策にはその前提が強く反映されています。
大衆は小さな嘘よりも大きな嘘を信じる。
なぜなら、大きな嘘をつける者がいるとは思っていないからだ
Joseph Goebbels
結局、嘘だろうがデマカセだろうが『わかりやすい』が勝ってしまう世の中です。であるならば、カウンターが必要です。真っ当さが伝わるもう一方の『わかりやすい』が。
真っ当な「わかりやすさ」は可能か?
私は、それが絵や図解の力ではないかと考えています。例えば、環境省のお仕事で描いたアメリカザリガニの拡散防止に関する一連のイラスト群です。

中でも、定期的にXでバズっているのがこちら↑のイラストです。条件付特定外来生物であるアメリカザリガニが侵入することによって、水辺がどう変化するのかをイラストと、漫画的なコマ割りで説明したものです。
この図解は、私のアカウントではなく、環境省のHPなどから引っ張られ、たびたびSNSで突発的にバズっています。写真や文章だけでは伝わりづらい内容が、イラストによって可視化されたことで、何度も拡散される現象になっています。
アメリカザリガニの害、世紀末モヒカンみたいなノリのアメリカザリガニがコミカルに解説してるページが環境省にあってわかりやすい
— まさみティー🐫ピッコマノベルズ『秋風のレストラン革命!』連載中! (@MasamiT) January 13, 2022
ヒャッハー!🦞
恨むなら人間を恨みなー!🦞https://t.co/ckvQR7zhMN pic.twitter.com/0jwUXPnoP5
アメリカザリガニが入ると水草がなくなるのは、こういう環境改変能力をもつためです。
— ゲンゴロウ飼育ブログ🗯 (@gengo6com) May 13, 2025
外来種アメリカザリガニの成長戦略-水草を刈り餌生物の捕食効率を高めることで自分に有利な環境を創出-https://t.co/agO10og5TIhttps://t.co/BEgWDtoeXa pic.twitter.com/HxEiFcYNHx
また、この環境省の仕事から派生して、栃木県環境森林部自然環境課からご依頼を受け、桜を食い荒らす特定外来生物クビアカツヤカミキリや、外来水草の普及啓発のチラシのイラストとアートディレクションを担当しました。

さらに最近では、長崎大学のウナギに関する論文のプレスリリース用図解もお手伝いしました。
文章や写真だけだと、とっつきづらい情報も、内容を整理し、簡略化し、イラストにして吹き出しを足すことによってグッと関心を持って読んでもらえるようになります。
伝わらない世界を、イラストで翻訳する作業です。
絵で社会は変えられるかもしれない
アメリカザリガニの外来種問題も、写真と文章だけでは、伝わりづらかった問題が、図解にすることによって、一気に拡散されました。先ほどの、ゲンゴロウ飼育ブログさんのポストのインプレッションは105万なので、多くの方にアメリカザリガニの環境改変能力の危険性が伝わったはずです。
アメリカザリガニを拡散させた原因は人間にあります。要因は、彼らの危険性を知らなかったという無知です。であるならば、「まず知る」ことによって、多くの問題は事前に防ぎ、また既に発生している問題も、改善に向かわせることができるのではないでしょうか。
例えば、環境省のお仕事でアメリカザリガニの影響が伝わったように、水産資源が減少している危機的現状、守ることの重要性、保全・回復のメカニズムについても、イラストの力を生かして、伝えることができるかもしれません。
政府が海の環境や水産資源を守る研究にお金をあまり出さない。
— Taketo Ota@おさかなジャーナリスト (@osakanajournal) June 5, 2025
魚を獲りすぎないための漁業管理も、科学に基づかないものが多い。
そんな現状を受け、有名料理人の皆さんが、小泉進次郎大臣に改善を訴えました。https://t.co/Bznk3dAO98
魚が減った現実から目を逸らすのはやめよう。… pic.twitter.com/qHCZv42yDk
料理人の立場から農水大臣へ、水産政策改善の提言が行われたとのこと。関連研究の推進や資源管理の強化とあわせて、生態系の保全・回復も挙げられていて、非常に妥当かつ建設的な内容です。魚介類の減少に危機感を持っているのはプロの料理人の皆さんも同じです。農水省の取り組みに期待したいです。 https://t.co/YEtkp0GhCf
— オイカワ丸 (@oikawamaru) June 5, 2025
農水省さん、イラストレーター探してませんか?そこそこ、いい仕事しますよ。
普段はこんな仕事もしています
文章がウケていますが、これでも15年間、ペン先一つで食べてきたので、それなりに自負もあります。社会テーマに限らず、いろんな仕事をしてきました。
というわけで、改めて“何を描いてきたか”を紹介させてください。
例えば、こんな仕事です。









映画のポスター、公共施設の壁画、書籍、商品パッケージ、映画の図解など、媒体もジャンルも多岐にわたります。
伝わらない世界を、イラストで翻訳する。
真っ当さが伝わるもう一方の『わかりやすい』が必要なのは何故か。その答えはとどのつまり、これではないでしょうか。
「無知が、誰かの未来を奪うことがある」
この場合の誰かは、人間に限りません。自然や生き物も該当します。だからこそ、伝える方法を工夫したいのです。
イラストでも、文章でも、世の中が少しでも平和に近づけるような、『わかりやすい』翻訳を続けていければと思います。
それでは、読んでいただきありがとうございました。
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