『カフネ』Audible感想|買い出しの帰り道、耳で物語を連れて帰る
Audibleで阿部暁子さんの『カフネ』を聴いた日の、雑貨店の午後の話です。
▼今回聴いた本
Audible版『カフネ』
今日は珍しく、お出かけをします。
店を少しだけ留守にして、雑貨の買い出しへ。
プクはいつもの椅子の上で、あまり興味のない顔をしていました。
出かける前、プクはいつもの椅子の上で、
こちらを見ても見ていないような顔をしていた。

店番を頼むつもりで声をかけても、
しっぽの先を一度だけ動かしたきり。
あれでは「まかせておけ」ではなく、
「勝手に行けばいい」のほうだろう。
今日は雑貨の買い出しだった。
紙ものを少し。
小さな皿をいくつか。
あとは、見たとたん、うちの棚に置きたくなったものを少しだけ。
買い出しの日は、たいてい電車に乗る。
そして、だいたい本を読む。
でも今日は、本を開かなかった。
いま聴いているのは、『カフネ』。
イヤホンを耳に入れると、電車の揺れのあいだから、
声がするすると入ってきた。
帰り道に聴くには、少しやさしすぎる気もしたけれど、
今日はそれが悪くなかった。
ページをめくらなくていいぶん、
窓の外の景色も、膝の上の紙袋の重みも、そのまま残っている。

向かいの席では、小さな子が靴をぶらぶらさせていた。
ドアの上の路線図が、一駅ごとに灯りを移していく。
紙袋の持ち手が、手のひらに少し食い込む。
そういう帰り道の細かいことを残したまま、
物語だけが耳から入ってくるのが、今日はなんだかよかった。
しかも今回は、仕入れもたぶんよかった。
棚の端に置いたら似合いそうなものがいくつか見つかったし、
布ものもいい。
店に並べてみるまではわからないけれど、
帰りの電車で少し機嫌がいいなんて、店主としては珍しい。

こういう日は、だれかに報告したくなる。
店に戻れば、プクがいる。
たぶん寝起きの顔で。
そして、私が一日かけて選んだ雑貨より、
袋の中の猫缶に先に気づく。
今日はその猫缶も買った。
少しだけ、いいやつである。

もうすぐ最寄り駅に着く。
『カフネ』の続きはまだ気になるし、
袋の中には今日の戦利品が入っている。
帰ったら荷物を置いて、棚を見て、
それからプクに猫缶を見せようと思う。
猫缶だけ歓迎されて、私はついでかもしれない。
まあ、たいていそうだ。
店主が一日かけて選んだ雑貨より、
猫缶ひとつのほうに、たぶん、わかりやすく心が動く。
そういう店である。
今回、電車の中で聴いていた本
Audibleを初めて使う方は、無料体験の対象かどうかを先に確認しておくと安心です。
本を開くほどの余裕はない日でも、棚を拭いたり、洗い物をしたりするあいだに、少しずつ物語が進みます。
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