『ツバキ文具店』Audible感想|雨の日の店番に聴きたい、やさしい物語
Audibleで小川糸さんの『ツバキ文具店』を聴いた日の、雑貨店の午後の話です。
▼今回聴いた本
Audible版『ツバキ文具店』
今朝は静かな雨。
こういう日は、店の前の道まで少ししんとして見えます。
急ぎ足の人も少ないし、うちの店のドアベルは、だいたい静かなままです。
棚の上には、小さなかごや一輪挿しや木のトレー。
昨日と同じ顔ぶれが、今日もきちんと並んでいました。
売れていないのに、収まりだけはいい。
プクは窓ぎわの椅子にいました。
前足をのばして、引っ込めて、こちらの苦労など知らない顔です。
猫はいいです。
売上を気にしなくていいので。

本でも読もうかなと思ったのですが、今日は少し、文字が遠い日でした。
読めないわけではありません。
ただ、読むぞと決めて頁をめくるほどの元気がない。
そういう半端な日があります。
このところ、Audibleをよく聴いています。
最初は買い出しの帰り道でした。
その次は、台所。
今日は店番です。
店で耳の本を聴くなんてどうなのだろう、と少し思いました。
もっと働け、という話です。
でも、働いたところで雨はやみませんし、
急にお客さまが増えるわけでもありません。
なので今日は、そういうことにしました。
選んだのは、『ツバキ文具店』です。
題名を見たときから、好きそうだなと思っていました。
文具店、というだけで、なんとなくもう好きです。
聴いていてよかったのは、
人の気持ちを、さっさと片づけないところでした。
うまいこと言って終わらせない。
わかったような顔で、まとめてしまわない。
そういうところが、よかったです。
こちらはそのあいだ、値札を一枚だけ貼り替えました。
春らしい柄のハンカチに、先週の値段がついたままだったのです。
すぐできることを、何日もそのままにしていた。
暇な日は、そういうことばかり目につきます。
レジも一度開けました。
小銭の数は、朝とほとんど変わっていませんでした。
そんな店の午後に、『ツバキ文具店』が流れている。
それが少し、おかしかったのです。

うちにも、ときどき、棚の前で長く立ち止まるお客さまがいます。
手に取るでもなく、帰るでもなく、しばらくそのままの人です。
そういうときは、あまり横から口を出さないほうがいい気がします。
声をかけるにしても、ひとことくらいで。
たぶん、そのくらいです。
『ツバキ文具店』を聴いていたら、そんなことを思い出しました。

紙の本も、もちろん好きです。
机の上に置いてあるだけで、なんとなく気持ちが落ち着くところも好きです。
でも今日は、読むより、聴くほうが合っていました。
棚を整えながら。
レジの前に立ったまま。
少しぼんやりしたままでも、向こうから言葉が来てくれる。
それが、今日はちょうどよかったです。
途中で、プクが片耳だけ動かしました。
何に反応したのかはわかりません。
物語かもしれないし、外を通った人の足音かもしれません。
でも、その片耳だけが妙におかしくて、
私はそこで少し笑ってしまいました。

昼すぎには、雨も少し弱くなりました。
道は少し明るくなったのに、
売上のほうは、朝よりほんの少しましになっただけでした。
今日は、そういう日でした。
『ツバキ文具店』が気になる方はこちらから。
Audibleを初めて使う方は、無料体験の対象かどうかを先に確認しておくと安心です。
本を開くほどの余裕はない日でも、棚を拭いたり、洗い物をしたりするあいだに、少しずつ物語が進みます。
夕方、プクは椅子を下りてきて、レジのそばで一度だけ鳴きました。
たぶん、ごはんです。
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