『愛猫がくれた「魔法」の言葉 —— 捨て猫との20年が私をTEDxの舞台へ導くまで』第1話
あらすじ
幼い頃から家庭環境や学校でのいじめに苦しみ、孤独だった主人公にとって、小学4年生の時に引き取った黒猫「クロ」は唯一の心の拠り所だった。
やがて成長し、東京での生活や体調不良、故郷への帰郷を経て、樹脂粘土の創作活動に出会う。クロの死をきっかけに食生活が変わり、アニマルコミュニケーターとしての道を歩み始めた主人公は、保護犬・保護猫との出会いを重ね、彼らの心に寄り添いながら、「いのちの平等」と「幸せの本質」について深く考えるようになる。
過去のトラウマさえも自分の糧とし、前向きな心で生きることを選んだ主人公は、大阪万博やTED×Talkのステージに立ち、「保護犬、保護猫のいない世界」を目指して自らの体験とメッセージを世界に届ける。
『百獣の王からのメッセージ』
私が生まれるずっと前、まだ結婚したばかりだった父と母の物語。
二人は、当時まだ珍しかった大分県のサファリパークを訪れた。
父がハンドルを握る車が、厳重な二重扉を抜けて肉食動物エリアへと足を踏み入れる。
監視塔の上には、ライフルを構えた監視員。
平和な行楽地とは思えないほどの緊張感が漂っていた。
木陰でまどろむライオンたちの群れ。
その奥から、一頭の巨大な牡ライオンが、吸い寄せられるように二人の車へ近づいてきた。
沈黙を破り、屋根に重々しく置かれた前足の音。
「ボンッ、ボンッ」。
フロントガラスがライオンの黄金色のお腹で覆い尽くされた瞬間、父は恐怖で石のように固まった。
車内に響き渡るトランシーバーの叫び。
「落ちついてください!
そのまま動かないで!!!」
死を覚悟した数分間。
やがてライオンは何事もなかったかのように、悠然と群れの中へ帰っていった。
「あのライオン、何かを伝えにきたんだわ」
恐怖に震える父の横で、母だけは直感的にそう確信したという。
あの時、百獣の王は若き日の二人に何を告げたのだろうか。

