ベトナムの快進撃(番外編) 街歩きで見た各地の「今」
【連載】アジア株投資の最前線 第4回(番外編)
東京海上アセットマネジメント
シニアファンドマネージャー 秋澤 宏典
私は現在、平均して年2回位のペースでベトナムを定期的に訪問しています。昨年は9月と11月にベトナムを訪問しました。仕事で訪れる頻度が高いのはホーチミンとハノイですが、ダナンやフーコック島などにも観光目的で訪問しています。ベトナム現地の様子を、私の実体験も交えながらご紹介しましょう。
ロンタイン新空港
6月に商業運用へ
訪れる頻度が最も多いホーチミン市では、入国に時間がかかる事が非常に多いです。入国待機の列に1時間以上並ぶ事も珍しくありません。
タンソンニャット国際空港は市内にも近く便利なのですが、キャパシティー不足ゆえか増加を続ける旅行客需要に対応しきれていない印象です。国内線は新設された奇麗な第3ターミナルに移されており、手続きも少ないため比較的スムーズですが、第2ターミナルを使う国際線は常に混雑しています。

ホーチミン市では25年12月に新空港となるロンタイン国際空港が試験運用を開始。26年6月から第一期の商業運用を開始する見込みで、この状況は今後改善が期待できそうです。ただし、ロンタイン国際空港は市内中心部から距離があり、市内中心部へのアクセスも現状は高速道路のみである事から使い勝手は要確認かもしれません。
なお、将来的にタンソンニャット空港は国内線専用の空港になる方針だとされています。一方で、観光地であるダナンやフーコック島での入国手続きは、ピークシーズンを除き長時間待たされることはあまりありません。
預け入れ荷物を受け取り、ゲートを出ると、活気のある東南アジアの雰囲気が待っています。ハノイやホーチミン、ダナンではタクシーが数多く待機していますが、Grabなどの配車サービスも利用可能です。フーコック島では多くのホテルが空港送迎をしてくれるので、事前に連絡を入れておくと確実です(ホテルにもよりますが空港に近いホテルだと無料である事が一般的です)。
タクシー料金やGrabなどの配車サービスの利用料もリーズナブルで、スマホアプリから配車依頼が可能ですが、依頼してすぐつかまる事が多いです。空港などの場合、ピックアップ場所が指定・制限されているため、そこまでたどり着く必要がありますが、空港内に案内もあるので、初めて訪れる場合でもハードルはあまり高くないと思います。

ホーチミン市はベトナム南部の中心都市であり、同国最大の経済都市です。かつてはサイゴンと呼ばれていましたが、現在はホーチミン市が正式な呼称です。
市の面積もかつては東京都と同程度で人口は約1000万人弱と言われていましたが、2025年7月に実施された行政区画再編によって、新たにビンズオン省とバリアブンタウ省を吸収合併し、面積・人口ともに大幅に拡大しました。区画再編後のホーチミン市は、総面積6800平方キロメートル、総人口1400万人のメガシティーとなりました。
市内中心部を流れるサイゴン川の西岸に位置する「1区」にビジネス拠点やホテル、レストランが集結しており、1区と隣接する3区がホーチミン市の実質的な中心です。合わせて1区に隣接する4区、5区を含めれば主要な観光地がおおむねカバーされるので、旅行で訪れる際にはまずはここを拠点にするとよいと思います。
地元の人は市内中心部(主に1区と3区)を指してサイゴンと呼ぶことがあるようですが、25年7月の行政区画再編で1区に新設された行政区画にサイゴンの呼称が使われ、行政上の正式名称としても復活を果たしています。

ホーチミン市内中心部を歩くと、フランス植民地時代に建てられたであろう欧風の建築物が市内の至る所に残されているのを目にします。
サイゴン大教会(ノートルダム大聖堂)、サイゴン中央郵便局、ホーチミン歌劇場(サイゴン・オペラハウス)、ホーチミン市庁舎(人民委員会庁舎)などの特徴的な建築物は、いずれも19世紀後半から20世紀初頭に建設され、フランス本国の建築様式を取り入れたものですが、建物ごとに建築様式が異なっているのも印象的です。

東南アジアの都市らしく、夜遅くまで開いている店が並ぶ通りも数多くあります。ホーチミン市随一の繁華街でもあるブイビエン(Bùi Viện)通りは、夕方から屋台が並び始め、深夜まで旅行客や若者を中心に大変にぎわっています。ただエリアによっては音楽を大音量で夜通し流し続けているので、この周辺に宿泊する事はあまりお勧めできません。

近年ではサイゴン川東部のトゥドゥック市(2区、9区、トゥドック区が合併して成立)も開発が進んでおり、新都心トゥーティエム、西洋人が多く居住する高級住宅街タオディエンに加え、工業団地が集積するサイゴン・ハイテクパーク(SHTP)、大手財閥ビングループに属する不動産デベロッパー、ビンホームズ社が開発を進める郊外型都市開発プロジェクト「ビンホームズ・グランドパーク」など、ホーチミン市の成長をけん引する地域として、注目が高まっています(紛らわしいのですが、トゥドゥック市はホーチミン市の中にある市です)。
ハノイのお勧め
トレインストリート
北ベトナムの中心都市ハノイは、ベトナムの首都であり、政治・行政の中心地。人口は約900万人とホーチミン市に次ぐベトナム第二の都市です。
紅河(ソンホン、Sông Hồng)のほとりに位置しており、市内はホアンキエム湖やタイ湖など、数多くの湖を抱えています。紅河という名前も、雨期などの増水時に栄養分豊かな上流の赤土によって川が赤褐色に染まる事に由来しています。流域に広がる肥沃(ひよく)な土地、紅河デルタに築かれた街として、1000年以上前から発展してきました。これはメコン河流域(メコンデルタ)に発展したホーチミン市、という構図と良く似ています。
市内中心部には、国会議事堂や共産党中央局といったベトナム政治・行政の拠点に加え、仏印総督の邸宅でもあった大統領府、ホーチミン廟(びょう)、ホーチミン博物館などがあり、多くの訪問者や観光客で連日にぎわっています。

ホーチミン廟、ホーチミン博物館から歩いて15分ほどの距離にある「B52 戦勝博物館」は、墜落した米軍のB52爆撃機の残骸がそのまま展示されているなど、一見の価値があります。館内展示はシンプルですが、ベトナム戦争の生々しい記録を垣間見る事ができます。ベトナム側の視点で書かれてはいるものの、展示からは東西冷戦下の両陣営の対立の構図も見えてきます。

見どころの多いハノイですが、ぜひ訪れてほしい場所として「トレインストリート」を紹介したいと思います。SNSなどで共有されているのをご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、ハノイ駅の北東と南側にある線路沿いに所狭しと飲食店が並ぶ通りで、観光名所となっています。

線路沿いの席に座り少し待っていると、定期的に電車がゆっくりとした速度で通過していきます。手を伸ばせば触れる距離で眼前を通過していく電車は圧巻で、車内から景色を眺める観光客の方もいます。
日系ホテルも進出
リゾート地ダナン
ダナンはベトナム中部に位置し、ホーチミン市、ハノイに次ぐベトナム第三の都市ですが、ビーチリゾートを有する観光地でもあります。日本からも直行便が飛んでおり、手頃なリゾート地として近年人気が高まっています。
ミーケービーチ沿いには数多くのホテルが軒を連ね、選択肢が豊富過ぎるため、どこに宿泊すれば良いのか迷うほどです。ビーチからは少し離れますが「インターコンチネンタル・ダナン・サン・ペニンシュラ・リゾート」の人気が高く、家族連れなどには日系ホテル「ダナン三日月」などもお勧めです。

ダナン市内はコンパクトで、空港も市内中心部にあるため移動が比較的楽です。空港からビーチまでは10キロも離れておらず、道がスムーズであれば車で15~20分ほどの距離です。
ビーチ沿いのリゾートホテルに宿泊してゆっくり過ごすのも良いですし、少し足を延ばして「バナヒルズ」と呼ばれる観光名所を訪れることもできます。バナヒルズは標高1500メートルの山頂に作られたテーマパークで、ホテルやレストラン、遊園地などが併設されています。
ダナンから車で1時間弱の距離にホイアンという街があります。こちらは15~19世紀にかけてインドシナ半島有数の貿易港として栄え、日本を含む世界各国から商人が訪れた国際色豊かな街でもありました。江戸時代初期には朱印船貿易の拠点の一つにもなったことで日本人街が存在したほか、1593年に日本人が建てたとされる「来遠橋(日本橋)」と呼ばれる橋が、街のシンボルにもなっています。こちらはベトナム紙幣にも描かれており、非常に有名な観光スポットです。


古都とも称されるホイアンですが、特にランタンが飾られた旧市街を歩くと、異国情緒あふれる独特な街の雰囲気を味わうことができます。電線を地中化する事で街の景観を維持しており、歴史的な木造建築の多くが現在はカフェやレストラン、土産物店として利用されています。

かつては港町として栄え、海上交通の要衝でもあっただけあり、いまだに数多くの船が川を走っています。その多くが観光用途ですが、ホイアンの景観を構成する重要な要素となっています。街の成り立ちからしてもそうですが、イタリアの港町ベネチアとも少し似ているかもしれません。

アクティビティーという側面からは、上の写真にも出ている灯籠流しと、ココナツの森と呼ばれる場所で体験できる竹かご船(バンブーボート、バスケットボートとも)がお薦めです。日本の川下りとも似ていますが、流れがあまり急ではないので、家族全員で楽しめるものと言えそうです。

観光地としての色彩が強いダナンですが、政府は現在、ホーチミン市とダナンに国際金融センターを創設する事を目指しています。25年12月にダナン市で事務局が開設されると共に、新設される予定のダナン自由貿易区(FTZ)と連携して機能する構想となっているようです。
ホーチミン市は既にベトナム経済の中心都市であり驚きはありませんが、ダナンにも金融センターを造るというのは少し驚きでした。今度ダナンを訪問した際には、どういう状況なのか改めてチェックしてみたいと思っています。
カジノや遊園地も充実
最後の楽園フーコック
ベトナム南部に位置するタイランド湾に面したフーコック島は「ベトナム最後の楽園」とも称されるリゾート地です。日本からの直行便は現状ないため、ベトナムの都市を経由していくか、ソウル、台北、香港などからも直行便が出ています。
島内はエリアごとに雰囲気が分かれており、島の北部は遊園地や水族館、ビーチに加え、カジノなどが併設されたホテルが並ぶ「グランド・ワールド」というエリアが中心です。空港に近い島の中部は最初に開発が進んだエリアで、ホテルやレストランも数多く軒を連ねています。

島の南部は最も新しいエリア。イタリアの景色を模した「サンセット・タウン」には新しいホテルやレストランが並ぶほか、島全体が大きなテーマパークとなっている離島・ホムトム島に行くロープウエーなどもあります。どこも魅力的なエリアなので、目的に合わせて宿泊先や行先を選ぶと良いと思いますが、造りが新しく奇麗なのは南部、レストランが充実しているのは中部です。
サンセット・タウンには「キス・ブリッジ」と名付けられた観光名所や、ナイトマーケットが連日開催される通りなどもあり、見どころが豊富です。残念ながらすべてを紹介しきれないのですが、フーコック島を訪れる機会があれば、ぜひ行ってみて下さい。

サンセット・タウンのキス・ブリッジも、ダナンのバナヒルズにあるゴールデン・ブリッジも、同じデベロッパー(サンワールド社)が開発したものなので、どことなく雰囲気が似ているかもしれません。

秋澤 宏典(あきざわ・ひろのり)
東京海上アセットマネジメント株式会社
株式運用部 シニアファンドマネージャー
東京大学工学部卒、同大学院経済学研究科修了。大和総研を経て2008年に東京海上アセットマネジメント入社。株式運用部にて企業調査/株式運用のキャリアを歩む。ITセクターに明るい。21年から25年までシンガポール駐在、26年1月より現職。

企業概要
東京海上グループの中核資産運用会社として、主に個人投資家の顧客を対象とした「投資信託業」と機関投資家の顧客を対象とした「投資顧問業」を展開。運用資産残高は約9兆円(2025年3月末現在)。
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