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【小説】ア・リトル・ビット・クレイジー・デイズ #15│オシルコ

「はじめまして、レオン。マリちゃんも元気だった?」
 ミキヤが日本から帰ってきた。
 日本製の食品を、どっさりかかえて。
 ミキヤのお土産を物色しながら、私たちは近況を報告しあった。

 バーモントカレー、インスタントのお汁粉、のりたま、すし太郎、チキンラーメン。 
 レオンは興奮して、ひとつひとつ「これはなんだ?」「どうやって食べる?」と説明を求めた。
 ミキヤは日本の食べ物が、いかに素晴らしかったかを語り、私たちは生唾を飲んでその話を聞いた。
「俺は、日本食がめちゃくちゃ好きなんだ。天ぷら、すし、焼肉、ファンタスティック!」
 レオンは叫んだ。
 私が「日本にはもっとおいしいものがある」と、得意になってレオンに話していると、ミキヤが目を丸くして私を見ていた。
「なに?」
「いや、マリちゃん、英語上達したね。驚いたよ。むしろ俺のほうが、三ヶ月も英語から離れていたから、ぜんぜんダメだ」
 ミキヤは苦笑しながら肩をすくめた。
「レオンの言ってることも、ときどき聞き取れないし、英語もすぐ出てこなくなっちゃってる」
 自分では、気づかなかった。
 レオンと喧嘩したり笑ったりしているうちに、私の英語は上達していたらしい。

 確かにレオンは、私の英語をバカにするけれど、間違いはちゃんと直してくれるし、発音も教えてくれた。
「お風呂入るよ( I'm gonna take a bath.)」と言うと、
「は? こんな夜遅くバスに乗ってどこいくんだ?」とバカにされたあと、bathの発音がbusになっていると教えてくれる。それから舌の動きまで指示して、bathの正しい発音を特訓される。

 そんな調子で、私はいくつかの単語をネイティブ並みに発音できるようになった。いくつかだけど。マクドナルドとか、エンジェルとか。どちらも全く通じず、半泣きで帰ってきた私に、レオンが特訓してくれたのだ。

「うまくやっていたみたいだね、良かったよ」
 ミキヤはやさしく微笑んだ。

 レオンの強い要望で、その日はお汁粉を作って食べることにした。
 レオンは「Fuckin' nice!」と騒いで、「オシルコオシルコ」と練習していた。

 甘くて、あったかくて、日本の味がした。


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※この物語はフィクションであり、登場する人物および作中の出来事はすべて架空であり、実在の人物・出来事とは一切関係ありません。



【MAGAZINE】

【もくじ】

#00│プロローグ
#01|ジャパンセンター
#02│フラットシェア
#03|リージェンツ・パーク
#04│カイ
#05│語学学校
#06│ミキヤ
#07│レオン
#08│ザ・クラウン
#09│ピル
#10│猫
#11│キッチン
#12│隣人
#13│サイケデリック
#14│Daddy, I love you
#15│オシルコ
#16│チャイナタウン
#17│カールスバーグ
#18│ミルク
#19│雷鳴
#20│エッグ&トマト
#21│I am enough.
#22│セブンスター
#23│ジャクソン
#24│ワンケイ
#25│最終話│黒猫


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