『誰得?』【セルフきのころチャレンジ】(『誰?』の続き1)
朝、目が覚めると、
隣で知らない女が電話をしていた。
私のスマホで。
私の声で。
叫んでも声は出なかった。
鏡の中の私は眠っている。
女が一瞬だけ私に顔を向けた。
そして、私の声で電話の相手に告げる。
「起きました」
謎の女はその一言を発すると通話をやめ、
スマホをテーブルの上に置いた。
私は、寝起きの頭を必死に回転させ、考える。
今、「起きました」って言ったの?
誰に?
何のために?
いつから電話をしていたのか。
それもわからない。
「起きました」より前の会話は聞こえなかった。
声が出ないだけじゃない。
体が思うように動かない。
部屋の様子は、はっきり見える。
間違いなく、私の部屋だ。
私の寝ているベッドの隣のイスに、
知らない女が座っている。
なぜ知らない女だと思ったのか。

それは、女が、こんな格好をしていたからだ。
格好?
いや、コスプレには見えない。
翼も、頭の上に光っている輪っかも、
本物に見える。
私には、こんな知り合いはいない。
いるわけがない。
なぜ、「私のスマホ」だとわかったのか。
私のスマホには、こんなストラップが付いている。

純金製の「きのころ」フィギュアだ。
これは世界に一つしかない、はず。
……いや、ほんとは純金ではない。
これが純金だったら、重くて持ち歩けない。
違う。
問題は重さじゃない。
スマホに付けるには、高額すぎて物騒だ。
これは純金ではなくて——
そんな風に、頭の中で考えを巡らせていると、
女が、またこちらを向いた。
さっきは一瞬だったから、顔がよくわからなかったが、
今回は、はっきり見えた。
どことなく、私に似ているようだ。
「声が出ないでしょう?」
笑いながら言う。
間違いなく、私の声だ。
自分の声って、自分ではわかりにくいものだけど、
私は、声の仕事をしているから、はっきりわかる。
私は歌手。
そして、他の人間にはない、こんな能力を持っている。
私は、「誰?」と書かれたカップを、机の上に置いた。

正確には、机の上にカップを作り出した。
体が動かなくても、これくらいのことはできる。
女は笑った。
「面白いことをするわね。
さすが、キューティーセラミー!」
また、文字入りのカップを作り出す。
——私のことを知っているの?
「もちろんよ。
私の名前は、キューティクルセラミー」

キューティクル……セラミー!?
「今、あなたの体を動けなくしている。
声が出ないのも、そのせいよ」
——あなたの目的は何?
「私はね、このお方にお仕えしているの」
キューティクルと名乗った女は、
私に写真を見せてきた。

「宮廷 セラミー様よ」
キューテーセラミー!?
自分では大きな声を出したつもりだったが、
やはり、声は出ない。
そして、会話が微妙にかみあっていない。
これでは、目的を聞き出すのは、大変そうだ。
——さっきから気になってるんだけど
そう書いたカップを机の上に置く。
——鏡の中の私が眠ったままなの。
——これも、あなたの仕業?

「え?」
女…キューティクルセラミーは、
明らかに、うろたえた声を出した。
「それは私じゃない……!」
女がそう言ったのと同時に、鏡の中の私が目を開いた。
さっきまでかぶっていた布団もなくなっている。

「同期が完了しました」
鏡の中の私はそう言うと、鏡の中からこちら側へと——

歩いてきた!

キューティクルが叫んだ。
「誰?」
「私の名前は、キューティーセラミー。
別名、シークレット・アッコ」
アッコと名乗った少女は、私に向かってこう言った。
「助けに来たよ!」
<アバンタイトル終了>
タイトル、どんっ!
『劇場版キューティーセラミー
THE MOVIE』

ここは、とある映像制作会社の一室。
きのころと、一人の男が向かい合って座っていた。
男の名刺には「ヤバ巣」と書いてある。
きのころが、これ系の人物と関わるのは3回目だ。
映画制作会社のヤバ杉。
アニメ制作会社のヤバ井。
そして、今回は、
映像制作会社の「ヤバ巣」だ。
きのころは、noteというプラットフォームで、
「キューティーセラミー」という作品を掲載している。
このコンテンツは、本編・裏話とも話題を集め、
ニュースアプリ「SmartNews」にも掲載された。
(あ、これは本当の話です!)
ヤバ巣はこの作品をえらく気に入り、映画化したいというのである。
今日は、きのころを交えて、
映画の概要を説明しているところだ。
ヤバ巣が言う。
「冒頭の不穏な始まりから、
まさかの、Wセラミー!
しかも、敵は、ライバル、
宮廷 セラミーときた!
これは、『鬼◯の刃』の興行成績を超える大ヒット、
社会的ムーブメントになるかもしれませんよ!」
きのころは、突然のことに戸惑っていた。
「ひとつひとつ確認していいですか?」
「どうぞ」
——このまま会話形式を続けると、読者も作者も大変なので、
以下に、きのころが確認した内容を簡単にまとめる。
キューティーセラミー

アンドロイド。磁器を自在に作り出すことができる。
この映画の主人公であるセラミーは、
アニメ『キューティーセラミー』の変身ヒロインとして、
一度も打ち切りの危機を迎えることなく、
1年間無事に放送を終了した後、変身ヒロインを引退。
歌手「セラミー」として、ヒット曲を連発する。

先日行われたアリーナでのリリースイベントは、
全世界同時配信された。

きのころストラップ

純金に見えるストラップは、セラミーが自分で作ったもの。
磁器製で、中は空洞。金ピカに着色してある。
キューティクルセラミー

別の世界線からやってきたセラミー。
マルチバース理論によると、
私たちの宇宙以外にも無数の宇宙が存在する。
この天使のようなセラミーがアニメの主人公になっている、
あるいは、実在している宇宙があるのだ。
キューティクルセラミーは、
天使になりかけている存在として、
ちょっとだけ超能力を使うことができる。
冒頭で使ったのは、念動力の一種。
一定時間、セラミーの体の自由を奪うことができた。
ただし、念動力の維持にはかなりの集中力が必要。
アッコちゃん登場によって動揺した際に、
セラミーへの念動力は解除された。
ちなみに、髪の「キューティクル」(髪の毛の表皮などを構成する物質)によって頭頂部周辺にできる環状の輝きを「天使の輪」という。
花王のシャンプー「エッセンシャル」のCMソング「光ってますか天使の輪」で有名になった。
キューティクルセラミーが天使の姿をしているのはそのためである。
シークレット・アッコ

もう一人のキューティーセラミー。
セラミー第2クールで、魔法少女セラミーの代わりに、
ひみつのアッコちゃんが登場する世界線からやってきた。
説明のまとめは終わった。
簡単に、と言いつつ、まったく簡単ではない。
きっと、説明を簡単に終わらせるきのころがいる宇宙も、
どこかに必ず存在する。
ヤバ巣がきのころに聞いた。
「ここからの展開、どうなるか気になりませんか?」
「お聞きしましょう」
「キューティクルが、技を出します」
太陽拳!

「えええーーー!?
なんで太陽拳なんですか?」
「白い羽根が生えていて鶴みたいでしょ?
太陽拳は、鶴仙流の技ですから」
「いや、鶴だから使える、とかじゃないんですよ。
そもそも、鶴仙流じゃなくても、誰でも使えますし」
「だったら、なおさら好都合じゃないですか」
「えーと。わかりました。
では、セラミーはどうしますか?」
「ここは、アッコちゃんの鏡の力で乗り切ります」
バルス!

「アッコちゃんの力…じゃなくて、ただの手鏡でしょう?」
「ここでとっさに手鏡を出せるのがアッコちゃんなんですよ。
あ、サングラスは、セラミーが作リ出した磁器製です」
「なんか、バルスとか言ってますけど?」
目が、目がぁぁぁ!!

「こうなります」
「すっごくまぶしかっただけですよね?
バルス、関係なくないですか?」
「お客さんは大喜びですよ。
SNSにみんなで『バルス』とか投稿して、サーバーが落ちます」
「映画上映中のスマホは禁止なんですよ!」
「なんにしても、ここでキューティクルの目がくらんだすきに、
すかさず、セラミーが磁器製の壺で取り囲んで捕獲します」

「なるほど、これで、キューティクルは出られないんですね」
「ところが、まだ、戦いは始まったばかりです」
「そりゃ、映画が始まってから、
まだ5分も経ってないですからね!」
「敵の幹部たちの会話シーンがシルエットで挿入されます」
???「キューティクルがやられたようね……」
???「フフフ…彼女は四天王の中でも最弱……」
???「キューティーごときに負けるとは宮廷の面汚しよ…」
「四天王、キターーーーー!!!」
「きのころさん、落ち着いて。
宮廷セラミーが、次の刺客を送り出しますよ」
「40秒で支度しな」
「ラピュタネタ、かぶせてきますね」
「きっちり40秒後、次の刺客が現れます。
その名も——」
キューピーセラミー

「あのですね。ひとつだけ言わせてください。
キューピーじゃなくて、キユーピーです!」
「いいんです。ネタなんだから。
それ言ったら、キューテー(宮廷)セラミーもおかしいですよ」
「彼女の能力はなんですか?」
「彼女は、火力と食材を自在に操ることができます」
「料理は自分でする必要があるんですね?」
「華麗に舞いながら、たちどころに料理を作っていきますよ!」

「ちょっと待ってください。
今、宙を舞っていたのは何ですか?」
「キユーピー3分クッキングの仲間たち、です」

「今、永沢くんがいましたよ?
彼に火とか見せても大丈夫なんですか?」

「いえ、ただのタマネギですから!」
「彼女には、まだまだ底知れない力があるようですね」
「マヨネーズを無限に出せます」

「これ、MOCO'Sキッチンで見たやつ!」

「マヨネーズをオリーブオイルみたいにかけてますね」
「オリーブオイルなら許されるわけじゃないですよ!?」
できた!

「ちょっと豪華なビストロSMAPです」
「ちょっとどころじゃないんですが……
ていうか、ここ、どこでしたっけ?」
「きのころさーん、しっかりしてくださいよー。
セラミーの部屋に決まってるじゃないですか!」
「ですよねーーー😊」
「ここで、まさかの、セラミーチーム大ピンチ!」
「えええーーー?
単に料理を並べられて、
ピンチになる絵が見えないんですが……」
「この美味しそうな料理を前に、
我慢できる女子がいるでしょうか?」
「あー、食べますね。
これは、残さず食べちゃいます」
「2人とも、もう、お腹いっぱいで動けません!」
「セラミーチーム、負けちゃうじゃないですか!😭」
「きのころさん、泣かないで。大丈夫ですから!」
「ここで、助っ人登場です!」
セラミージュピター!

「これ、元は、ウルトラマンタロウです」

「すごいでしょ?」
「すごいですよ!」
(すごい、どうかしているとしか!)
「第3クールで、セラミージュピターが主役として
活躍している世界線からやってきます」

「彼女には、キューピーの料理攻撃は効かないんですか?」
「まこちゃんは料理上手なんですよ」
「なんで急に、まこちゃん!?」
まこちゃん
本名、木野まこと。『美少女戦士セーラームーン』の登場人物で、セーラージュピターに変身する。家事全般が得意で、料理も上手。
「料理上手なので、他人の作った料理には耐性があるんです」
「謎理論ですが、先に進めてください」
「はい。ここからは、華麗なる技の応酬です」
マジシャンズレッド!

超電磁砲!

ジュピターの超電磁砲は、
キューピーの調理道具を弾き飛ばした!
火拳!

ボルテッカー!

ジュピターのボルテッカーが
キューピーにヒットした。
こうかはばつぐんだ!
「この戦闘シーンの作画、力はいってますよね!?」
「かなり見応えありますね」
「ここだけで、30分、尺を取ります」
「いや、いくらなんでも引き伸ばしすぎでしょう!」
「昔のアニメにはよくあること」
「それならOKですね(にっこり)」
「で、キューピーがビリビリしているすきに、
セラミーが磁器製の火消し壺で捕獲します」

「なんか、主人公のセラミーが、
コーヒーカップと壺しか作ってないんですが……」
「サングラスも作りましたよ?」
「もうちょっと、主人公らしい活躍をさせた方がよくないですか?」
「何かを無限に作り出す系の能力は強すぎるんですよ。
セラミーが本気出したら、地球を制圧できます」
「じゃあ、まぁ、抑え気味でお願いします。
……えーと、これ、まだ続くんですか?」
「もうちっとだけ続くんじゃ」——
to be continued…
<次回、『もっと「誰得?」』>
キューティーセラミーと
キューテー(宮廷)セラミーの戦いの行方はいかに!?

<中締め>
きのころです。
お疲れカツカレーさんの企画【書き出しで魅了する作品】で
4位「ラビリンスで賞」をいただいた、
『誰?』の続きを書いてみました。
きっと誰も想像していない、
「誰得?」な展開になったと思います。
案の定(?)、1回では終わりませんでした。
もう少し、お付き合いくださいね!
今回は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
<続編はこちら>
<1位「ベスト書き出し賞」の続きはこちら>
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
「なんかいいかも」と感じていただけたら、
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