「マフラー健康党」決起大会
この記事は完全にフィクションです。
実在の人物・団体・書物とは何の関係もありません。
そして、以下の記事(「マフラー健康法」のすすめ)の続編です。
未読の方は、ぜひこちらからお読みください。
プロローグ
きっかけは、1冊の本だった。
『マフラー健康法』(きのころ著)。
正確にいうと、この本そのものではない。
この本はKindle出版で、5冊しか売れなかった。
そのうちの1冊はきのころ本人が間違って購入したものである。
本当のきっかけは、きのころが企画し、菌明書房に持ち込んだ3冊のインチキ本が、すべてベストセラーになったことである。
・『温頸のチャクラ——首から巡る生命の環』
(超古代健康哲学書)
・『マフラーホルモン:首からわかる温度心理学』
(「脳科学×温度心理学」入門書)
・『首を温める人は、首を切られない』
(ビジネス自己啓発書)
いずれも、ゴーストライターが書いたもので、契約の不備により、
名目上の著者であるきのころには1円も入らない。
これらの本は、発売当初は一部の「首温め愛好家」の間で静かに話題になっていた程度だったが、冬の記録的な寒波を機に、口コミが雪だるま式に広がっていった。
「首を温めるだけで、こんなに世界が変わるとは」
「肩こりも腰の痛みも眼精疲労も消えた」
「マフラー健康法は、令和の文明開化だ!」
SNSでは「#首を制する者は冬を制す」が連日トレンド入り。
街の書店は一連の「マフラー健康法」関連の本を平積みから「巻き陳列」へ変更した。
そして、全国のマフラー需要が劇的に高まる中。
個人も企業もマフラー生産にいそしみ、転売ヤーは爆発した。
——その頃にはもう、社会は首元から温まり始めていた。
「SNGs:持続可能な首温め目標」
ある日、きのころは「SDGs」のパロディとして、
「SNGs」を作ることを思いついた。
「SDGs」とは、
「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、
17の目標から構成されている。
それをベースにしつつ、「SNGs」=
「Sustainable Neckwarming Goals」
つまり、「持続可能な首温め目標」を考えたのだ。
🌏 持続可能な首温め目標(SNGs)
(以下、オリジナルであるSDGs→SNGsの順に記載)
1 貧困をなくそう
↓
1 冷え困をなくそう
経済状況・住環境に左右されず、誰もが基本的な温かさを確保できる社会へ。
2 飢餓をゼロに
↓
2 冷え不調をゼロに
肩こり・頭痛・免疫低下など、首の冷えが引き起こす健康リスクを根絶する。
3 すべての人に健康と福祉を
↓
3 すべての人に温もりと福祉を
首を温めることで、健康増進と幸福度の向上を目指す。
4 質の高い教育をみんなに
↓
4 質の高い温め教育をみんなに
正しいマフラー巻き方や冷え対策の知識を普及する。
5 ジェンダー平等を実現しよう
↓
5 巻き平等を実現しよう
性別・年代に関わらず、誰もが自分らしい巻き方を選べる社会へ。
6 安全な水とトイレを世界中に
↓
6 安全なマフラーと換気を世界中に
清潔で安全に使えるマフラー環境と、蒸れを防ぐ適切な換気を広げよう。
7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
↓
7 温もりをみんなに。そしてクリーンに
エネルギーに頼りすぎない、環境負荷の少ない「首からの省エネ暖房」を推進する。
8 働きがいも経済成長も
↓
8 巻きがいも温もり成長も
マフラー文化を育て、心地よいあたたかさが暮らしを豊かにする。
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
↓
9 首温め産業と技術革新の基盤を作ろう
新素材マフラー、スマート首温めデバイスなど、首元テックの発展を支える。
10 人や国の不平等をなくそう
↓
10 冷えの不平等をなくそう
「寒がり」「暑がり」に関わらず、誰もが自分に合った首温めを選べる社会へ。
11 住み続けられるまちづくりを
↓
11 巻き続けられる暮らしづくりを
季節や住環境の変化に左右されず、持続的に首を温め続けられる生活を整える。
12 つくる責任、つかう責任
↓
12 巻く責任、使う責任
マフラーを大切に使い、適切に手入れし、寿命を延ばす責任を持とう。
13 気候変動に具体的な対策を
↓
13 寒さ変動に具体的な対策を
急な冷え込みや気温変化に備え、迅速な首温め行動を推進する。
14 海の豊かさを守ろう
↓
14 首の周りの潤いを守ろう
乾燥や外気汚れから首元の肌を守り、健康を維持しよう。
15 陸の豊かさも守ろう
↓
15 身体の豊かさも守ろう
首だけでなく、肩・背中・全身の健康バランスにも配慮した温め習慣を広げよう。
16 平和と公正をすべての人に
↓
16 温もりと安らぎをすべての人に
首を温めることが、心の平和と落ち着きをもたらす社会を築く。
17 パートナーシップで目標を達成しよう
↓
17 マフナーシップで目標を達成しよう
マフラーを愛するすべての人々が協力し、首温め文化を未来へつなごう。
おわかりだろうか?
無意味である。
だが、きのころが遊び半分で作った「SNGs」17の目標が、
何かの間違いと起きてはならない偶然によりバズった。
教育関係者、医療関係者、繊維業界がフレーズを引用し、
自治体が「マフラーの日」を制定し、
小学校の保健だよりに「巻く責任、使う責任」が登場する。
——こうして、社会全体が首元から覚醒していった。
「マフラー健康党」決起大会
菌明書房の担当編集者から連絡があったとき、
きのころはタロットカードをシャッフルしていた。
「大変なことになってますよ」
「なにがです?」
「マフラー健康党の決起大会が、
ネットで生中継されるらしいんです」
「マフラー健康党!?」
きのころは、初めて聞くパワーワードに、
脳みそがシェイクされるのを感じた。
「あれ、きのころさん、ご存知なかったんですか?」
「初耳です。とりあえず、見てみます」
きのころは震える手で「マフラー健康党」を検索し、
公式Webサイトを発見。
きのころの目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
「マフラー健康党」と書かれた垂れ幕がかけられた会場は
色とりどりのマフラーを身につけた群衆でぎゅうぎゅう。
しばらくして、決起大会が始まった。
まずは、司会者によって、
『持続可能な首温め目標(SNGs)』が読み上げられた。
「え?なんで?」
きのころの疑問の声は、
もちろん、画面の向こうには届かない。
次に、会場内が暗くなった。
と同時に、会場に設置されたスクリーンに、
1枚のイラストが映し出される。

その瞬間、会場は熱狂の渦に包まれた。
きのころは混乱していた。
これはローゼンメイデン?
なんで人形がマフラーを!?
いや、そうじゃない。
これは何が起きてるんだ?
「まきますか まきませんか」
マンガ『ローゼンメイデン』(原作:PEACH-PIT)より。
主人公が受け取ったアンティークドールのネジを「まく」か「まかない」かの選択を迫るメールの文言に由来する。
続いて、スクリーンに
「『マフラー健康党』の歌、斉唱」
と映し出されると、壇上に、怪しい3人組が登場した。
全員、マフラーをミイラ男のように体じゅうに巻きつけている。

「さぁ、歌うザマスよ」
「そうでガンス」
「フンガー!」
スクリーンに、歌詞が表示された。
「マフラー巻きのうた」
マフラー巻き巻き マフラー巻き巻き
巻いて、巻いて、 まふ、まふ、まふ
きのころの混乱は加速した。
それは、幼い頃に聞いた「いとまきのうた」……
の安易な、いや、安易すぎる替え歌だったからだ。
ていうか、
「まふまふ」ってなんだ?
「もふもふ」の親戚か?
【図解】これが「まふまふ」だ!

会場の群衆が、声を合わせて、
「♫まふ、まふ、まふ」
と歌っている姿は、鬼気迫るものがあった。
きのころは震えながら思った。
あの青いぐるぐる巻き、
さっきから「フンガー」しか言ってない……
と思った矢先!
会場に突如響き渡った
「うるさーーーーい!」
の大声で、
「マフラー巻きのうた」はピタリとやんだ。
そして、静まり返った会場のスクリーンに、
次のイラストが映し出された。

「迷わず行けよ 行けばわかるさ」
プロレスラー、アントニオ猪木が好んだ一節。
そして、司会者は叫んだ。
1、2、3、
ダァーーーーーッ!
最後は、もちろん、会場の全員が声を合わせ、
割れんばかりの大音量が会場内に響き渡った。
そんな中、司会者の次の一言が、
今度こそ、きのころに白目をむかせることになる。
「いよいよご登場いただきましょう!
『マフラー健康法』の著者であり、
「マフラー健康党」の党首でもある——
きのころ氏です!」
画面に映ったのは——

誰やねん!?
高嶺の花子さん的に言うと、
「いや待てよ そいつ誰だ!?」
「全裸にネクタイの変態紳士」ってのは聞いたことあるけど、
全裸にマフラー?
とんだ変態菌士だな!
画面に映る「きのころ氏」(なりすまし)は、
赤いマフラーを巻き、堂々とした立ち姿で、
手足をぷらぷらさせ、座った目でこちらを見る。
そして、一言、こう言った。

いや、もう、
マフラー関係ないから!
きのころ(本物)は、日本の行く末を案じつつ、
タロットカードを1枚引いた。
描かれていたのは、
巨大なきのこ。
カード下部にはこう書かれていた。
THE MUSHROOM(きのこ)
「……いや、こんなカード、なかったよな?」
きのころは、事態が完全に自分の手を離れたことを悟った。
なんのはなしですか
今回は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
「なんかいいかも」と感じていただけたら、
スキやフォローで合図を送ってもらえると、とても励みになります。
どうぞ、よろしくお願いします。
