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ロジックを超えた先にある、泥臭い「グー」の系譜 ――ゲンスルー戦から宿儺戦へ――

 『HUNTER×HUNTER』のゲンスルー戦が好きだ。

 理由は最後のゴンのジャンケングー!の一撃が何度読んでも気持ち良すぎるからだ。

『HUNTER×HUNTER』18巻 No.99 より

 当然、そこまでの戦いでのゲンスルーの思った以上にゴンと向き合った上でちゃんと戦う姿勢だとか、ゴンの自分の腕一本失うことすら顧みない捨て身の反撃からの流れるように作戦に嵌めていく流れも小気味いいのだが、やっぱり最後の最後で思いっきり力を込めたパンチ一発で終わらせるところが素晴らしい。後のキメラアント編においては恐ろしさを感じさせるほどの一撃をゴンさんは見せてくれるのだが、シンプルに爽快感があるのはゲンスルー戦かなと思う。

 色んな能力だとか、知恵の限りを尽くしたロジックバトルもそりゃ面白いんだけど、やっぱ最後はゲンコツ一発で決めてくれるのが読んでてとても気持ちよい

 他のマンガでも、『DRAGON BALL』のピッコロ大魔王戦の最後に右拳を突き上げての体当たりで身体ごと貫くシーンが印象深い。身体が大きくなる前の初期『DRAGON BALL』の問答無用のクライマックスシーンだと思う。

『DRAGON BALL』14巻 No.68 より

 『DRAGON BALL』と言えばかめはめ波に代表される気弾系の技が有名だが、やっぱり直接フィジカルでぶん殴る(この場合は突き抜ける)って絵が魅力的になるし気持ちも乗りやすい。3倍界王拳でベジータに腹パンしたときとか、20倍界王拳でフリーザぶん殴った時なんかもすごく印象に残っている。

 現在コロコロコミックにて連載中で個人的にも激推ししている『運命の巻戻士』も、時間巻き戻し能力というチート能力が結構カジュアルにサクサク使えちゃう世界であるにも関わらず、だからこそ最後に主人公のクロノが敵対する相手をぶん殴ってくれるところにカタルシスがある。

 それ以外にも『NARUTO』の螺旋丸や千鳥(雷切)は広い意味ではパンチと呼べるんじゃないかとか、承太郎のオラオラはとか、ルフィのゴムゴムはどうだとか、二重の極みを忘れんなとか、語り継ぎたいぶん殴りの系譜は尽きないが、『HUNTER×HUNTER』の直系の遺伝子を感じるという面においては、『呪術廻戦』の宿儺との最終戦が大変良かった。

 良かったとは言ったものの、正直未だに『呪術廻戦』における黒閃の理屈はよくわからない。だが、虎杖が黒閃を重ねるほどに戦いのボルテージが確実に上がっていくことはわかる。言葉の意味はよくわからなかったとしても、とにかくすごいことは伝わる。

 率直に言ってしまうと、『呪術廻戦』というマンガはいわゆるロジックを駆使したバトルマンガとしてはあまりクオリティは高くなかったと思う。色々やりたいことはわかるのだけど、空回りしていた部分も少なからずあったと思う。少年マンガでフォートナイトとかAPEXみたいなバトロワをやりたかったんだろうけど、いくら何でも初期ルールが複雑すぎて全然頭に入ってこない死滅回游とか。

 しかし、死滅回游の途中くらいから明らかに自分が描きたいキャラを連発して登場させて、そのキャラクターの放つ熱を中心に据えて描くようになってから終盤にかけては俄然面白くなっていったマンガだったとも思う。

 立て続けに放たれる黒い火花、今は亡き束の間の師、七海の連続発生記録を大きく超える7発連続の黒閃が、七海を最も慕い、彼の愛用した呪具を携え戦場に臨んだ猪野の助力によって宿儺に炸裂する。

 その後の乱戦の後に、満を持しての虎杖の領域が展開される。そこで交わされる岩手県北上市の寂れ行く町で紡がれる言葉。宿儺にも五条にも自身の力は遠く及ばないと痛いほどに自覚しながら、それでも歩みを止めずにたどり着いた境地、だがその言葉も宿儺には響かない。二人は戦いを再開する。

 完全に心が折れてしまった友人に言える誠意に満ちた精一杯の言葉。立ち上がる友。最後に力を併せる高専一年生トリオ。使えるものは全て使い尽くして放たれる最後のボディへの一撃。

 最後の最後に両面宿儺は虎杖悠仁の名前を呼ぶ。劇中で常に大勢の中の一人に過ぎなかった虎杖を認めることで戦いは終わる。

 虎杖悠仁という主人公は作中で決して最強というわけではなく、彼に匹敵する強さを持ったキャラは複数登場していたと思う。しかし、彼は彼より強いどのキャラでも辿り着けなかった境地、成し遂げられなかった偉業を達成することで、物語は一旦の結末を迎える。

『呪術廻戦』は、決して非の打ち所がない完璧なマンガではなかったかもしれない。どちらかというと、迷走してたり途中の粗が結構目立つマンガだったように思う。 しかし、最後の一撃に至るまでのあの泥臭い足掻きと、仲間と血反吐を吐きながら繋いだ拳の重みは、どんな緻密な設定よりも鮮烈に記憶に刻まれた。 「とにかくすごいことは伝わる」。 その一点において、あのラストバトルは僕の中で、あの頃夢中で読んだ『HUNTER×HUNTER』や『DRAGON BALL』に匹敵する、至高の輝きを放っている。とにかく最後のワンパンが気持ち良すぎるので未だに何回も読み返してしまうのである。



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