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『呪術廻戦』完結に寄せて

 12月25日、『呪術廻戦』29巻、30巻が同時に発売され、完結を迎えた。

 最終決戦からの大きな引き延ばしもなく、昨今のジャンプ人気作の流れを汲む、潔い完結だったのではないかと思う。

 印象的だったのは、最終決戦の大詰めも大詰めに満を侍して放たれる虎杖の領域展開から描かれる。作者の故郷でもある、岩手県北上市の景色だ。

 ど田舎と呼ぶにはそこそこには栄えてて、インバウンドに期待するほどの観光名所があるわけでもない。これまで数々の激闘が展開されてきた渋谷や新宿のような都市の派手さは微塵もなく、夏油が人間社会に見切りをつける決定打になったいかにも過去の因習が蔓延ってそうな村とも違う。日本のどこにでもある、衰退の止まらない地方都市である。

 そこで語られる虎杖の言葉、差し挟まれる景色、自分と関わってきた人々の記憶、ここで提示されるのは作者であり主人公が至ったひとつの「境地」だろう。この物語を通して自身が考え、歩んできた道の到達点と認識を等身大の形で提示するには、自分が生まれ育ってやがて離れたその土地を選ぶのが最善であると判断したからだろう。

 『呪術廻戦』、『僕のヒーローアカデミア』、『鬼滅の刃』、近年完結したジャンプの人気漫画にはいずれも圧倒的に強い主人公たちの先人にあたるキャラクターが登場している。そのようなキャラクターが登場する理由は作劇上の理由であったり昨今のトレンドに沿った形であったり作者自身の嗜好というのが主な理由なのだろう。だが、これらの漫画がそろってそのような「最強」キャラクターを登場させる理由として偉大なるジャンプの先人たちへの畏れの意識みたいなものもあるんじゃないかと思う。

 これらの人気作はどれも「継承」が重要な主題になっている。主人公が生まれるずっと前から続く「継承」の流れの中に自身を位置づけ、それを受け継ぐことで力を得るのだという形でである。

 『呪術廻戦』がその中で興味深いのは、「継承」の重要性と同時に禍々しさも描いていた点である。「継承」が至上命題となることで多くの人を抑圧する「家」や「村」の存在。あまりに圧倒的な力を「継承」し、やがて覚醒に至ることで最強であると同時に孤独に陥る五条悟。

 地元に百貨店が出来たことで地元の商店街は消し飛んだ。けど百貨店には映画館が入ってるのでそれでチャラにしたと虎杖は言う。この言葉からは不思議な風通しの良さを感じる。「継承」を断ち切った百貨店に抵抗を感じると同時に、映画館という新しい何かを与えてくれる存在を歓迎もしているからだ。

 最終回の回想において、五条悟は自身の意思を繋いでいってほしい気持ちと同時に自分などより全然違う強さをもった人間がいた方がいいとも言う。そして虎杖に対して「期待してるよ」と述べて『呪術廻戦』における最後の登場を終える。

 「最強」と呼ぶにふさわしい力でもなく、社会全体を巻き込む崇高な意思でもなく、自分と異なる、なんなら明らかに道を見失いかけている他者に対する「期待」を失わないこと。その言葉を虎杖は「継承」することで彼の物語もまた幕を閉じる。

 この諦念と期待の双方を併せ持った余韻を残し、『呪術廻戦』は完結した。良い漫画だったと思う。


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