おひとりさまの老後|介護するとき 介護されるとき|桃とうなぎとシュークリーム
桃が食べたい
という祖母の願い。
検査が終わるまで待って
と、父は、はねのけた。
でも、祖母はそのまま帰らぬ人となった。
父は、今でもその後悔を抱えている。
わたしは、いつだって悔いのないように生きたいと思っている。
今、過ごしている人との時間も、これが最後かもしれないと思いながら過ごしている。
そうやって過ごしていたのに、わたしは母との最後の記憶がない。
いつもなら、父はとっくに眠りについている時間だった。
「母さんが危ない」と電話があった。
母は突然、この世を去った。
母を偲ぶといっては、母の好きだったシュークリームを食べる。
母が好きだったのは、昭和のスーパーに並んでいた、十個入りくらいのパックのものだ。
今どきの、生クリームとのダブルシューや、皮の固いシュークリームを食べさせたら、母は何と言うだろう。
「おいしいね」と喜ぶだろうか。
それとも、「やっぱりあのシュークリームがいい」と笑うだろうか。
先日、施設入居中の伯母がうなぎを食べたいといったので、差し入れした。
本人は、食べたことを覚えていなかったけれど、後悔はない。
ただ、うなぎを見ると、思い出すんだろうなと思う。
晩酌をしながら、うなぎを食べる父と、伯母の話をした。
「お父さんは、焼酎だよね」
食卓が笑顔に包まれた。
「思い出すことで、あちらの世界にいらっしゃる方のまわりがぽっと明るくなるんですよ」
と子どもの頃に聞いたお寺での話が、蘇る。
思い出の食べ物が、大切なひととわたしをつないでくれている。
息子たちは、何をみたら、わたしを思い出してくれるのかな。
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