夜のお使いミッション! スタバ店員さんの言葉の壁を越えた神対応と、想定外の巨大な戦利品 【無計画親子の台北、行き当たりばったり旅行記】第6話
「いらない、買わないよ!」とスタバの店員さんを全力で拒否した私。しかし翻訳アプリを見て大絶叫。店員さんが必死に伝えてくれようとした神対応の結末と、その後にホテルで妻から喰らった「あまりにも冷静すぎる現実的なツッコミ」に、深夜の部屋であたふたした全記録がこちらです。
【旅日記】夜の台北スタバお使いミッション!おじさんを襲う「優しさの雨」と帰国困難な戦利品
前回までのあらすじ
夜の台北。街には心地よい風が吹き、昼間のあの容赦ない蒸し暑さが嘘のように過ごしやすい時間が流れています。
前回のあらすじを3行でまとめますと、
「無計画のせいで夕食難民になる」
「欲張りすぎて泥沼にハマる」
「結果、謎の料理『斤餅(ジンビン)』に救われ大満足する」
という、いつもの行き当たりばったりな展開でございました。
お腹も心も満たされた私たち親子三人。
次なる目的地をGoogleマップにセットし、腹ごなしを兼ねて夜の街をのんびり歩き始めます。
それにしても、台湾の夜はとにかくバイクが多いですね。日本でいう「ちょっとそこまで自転車で」の感覚が、すべてスクーターに置き換わっているかのような圧倒的バイク社会。

道すがら、思わず足を止めたくなるようなお洒落なスイーツ店やジューススタンドが次々と現れ、目移りしてしまいます。


大通りに出たその時、日本でもお馴染みのあの看板が目に飛び込んできました。

「あッ、あれは……!」

我らが『すき家』です。こんな異国の地で出会うと、まるで生き別れた兄弟に再会したかのような安心感があります。台湾限定メニューなんてあるのかな、などと妄想が膨らみます。
そんな誘惑を断ち切り、いよいよ本日の「食後の目的地」が見えてまいりました。

みんな大好き、スターバックスです。台湾限定のドリンクを味わいつつ、お目当ての限定タンブラーを物色しようという完璧な計画でした。
目指すは、スターバックス(南京建國店)。
……ところが。
遠目に見ても、なんだかお店の様子が明らかに「呼び出しを食らった直後の生徒」くらい暗いのです。
不穏な空気を察しつつ近づいてみると、無情にも「お休み」の文字。

スマホの翻訳アプリをかざしてみると、そこにはこう書かれていました。
「より快適な環境を提供するため、来月いっぱい改装工事でお休みします」
……やってしまいました。行き当たりばったり旅の洗礼、ここに極まれりです。
がっかりする妻と息子に、私は「よ、よし! コンビニで台湾スイーツを買ってホテルに帰ろう!」と提案。切り替えの早さだけが私の取り柄です。
台湾のコンビニは実にエキサイティングでした。


パッケージに日本語が書いてあるものもあれば、漢字のニュアンスだけで「これはきっとツナマヨだな」と推理できるおにぎりがあったりと、見ているだけで時間が溶けていきます。

各自、気になるスイーツやドリンクを買い込み、ひとまずホテルへ帰還しました。

しかし。
私の胸の奥底で、あの緑色のセイレーン(スタバのロゴの魔女)が妖しく微笑みかけてくるのです。「このままスタバを諦めていいの?」と。
そこで、40代おじさん、一念発起いたしました。
「一人夜の台北スタバお使い単独ミッション」の結成です。
家族をホテルに残し、私は再び夜の街へ。実は、最寄りの店舗は閉まっていましたが、少し離れた場所にもう一店舗あることをリサーチ済みだったのです。
夜の台北は本当に歩いていて快適です。昼の熱気が引き、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う中、Googleマップを頼りに進みます。
すると突如、目の前に巨大な「船のマスト」が現れました。

「……あれ? 私はいつの間に港まで歩いてきたのだろうか?」
一瞬、自分の方向音痴が時空を歪めたのかと焦りました。ここは台北のど真ん中、海までは数十キロ離れているはずです。狐につままれた気分で近づくと、それは見事な船のマストのオブジェでした。

隣のビルを見上げると、そこには『EVERGREEN(長栄海運)』の文字が。

なるほど、世界的に有名なあの海運会社の本部だったのですね。まさか台北の街中で、これほど本格的な産業遺産的モニュメントに出会えるとは。お使いロードの嬉しい寄り道となりました。
興奮冷めやらぬまま、目的地であるスターバックス(松江店)に到着。
こちらの店舗は、棚から溢れんばかりにタンブラーが並ぶ「スタバグッズの聖地」のような場所でした。台湾らしいカラフルなデザインや、可愛いキャラクターもの。



中でもアウトドアブランド『スタンレー』とのコラボ商品は一際スタイリッシュで、物欲センサーが激しく反応します。
しかし、値札を見た瞬間。


「うっっ……!!」
あまりのプレミアムなお値段に、声にならない悲鳴を上げ、そっと、本当に静かに棚へお戻しいたしました。
大人の理性が勝った瞬間です。
ところで、台湾のスタバではテイクアウトの際、ドリンクをカシャッとハメて持ち歩けるビニール製の「吊り下げアイテム」をくれる文化があります。これ、日本にはないシステムでめちゃくちゃ可愛いんですよね。

店内を見ると、その吊り下げアイテムの「布製バージョン」がグッズとして売られているのを発見。これは良いお土産になると、迷わずカゴへ。
ドリンクは確か、杏仁豆腐のフラペチーノ(だったはず)を注文し、いざレジへ。
すると、店員さんが私に向かって熱心に何かを話しかけてくれます。もちろん、私の中国語能力は「シェイシェイ(ありがとう)」と「ニーハオ(こんにちは)」の二本の矢しかありません。
店員さんはレジ横にある、お洒落な「傘」が描かれたポップを指さしています。

そこには大きく『1800台湾ドル』の文字。当時のレートで約6,000円。
(ふむふむ。『この傘も一緒に買わないか?』と営業をかけられているに違いない)
そう思った私は、
「あ、いらないです。買わないよ〜」
という雰囲気を全身から醸し出し、お会計を済ませて立ち去ろうとしました。
しかし、店員さんは私を引き留め、再びその傘のポップを必死に指さして訴えかけてくるのです。その目は、ただの営業マンのそれではなく、何か重大な真実を伝えようとする義務感に満ちていました。
慌てて翻訳アプリを起動し、そのポップを画面越しに覗き込んで驚愕しました。
『1,800台湾ドル以上ご購入の方に、25周年記念傘をプレゼント!』
なんと、営業ではなく
「タダであげるから、どっちの色がいいか選びなさい!」
という、神様のようなおもてなしだったのです。疑ってごめんなさい、スタバの店員さん……!
言葉の壁を越えようと必死になって伝えてくれた店員さんの優しさに深く感動し、ありがたく立派な長傘を頂戴いたしました。
「最高のサプライズ土産ができたぞ!」
私はホクホク顔で、傘をマントのように翻しながら(心の中で)夜道を歩き、ホテルへと急ぎました。部屋のドアを開け、待っていた妻と息子に、ドヤ顔でその美しい25周年記念の長傘を披露します。
「見て! スタバでこんなに素敵な傘をもらっちゃった!」
感動の嵐が巻き起こるかと思いきや、私の目の前に立っていたのは、あまりにも冷静な目をした妻でした。
「……めっちゃいい傘。すごく素敵。……で、それどうやって持って帰るの?」
「え?」
「傘って、飛行機の機内持ち込みできない可能性あるよ? スーツケースに入るの?」
時が止まりました。
言われてみればその通りです。先が尖った長傘は、保安検査場で凶器と見なされるリスクが高く、多くの航空会社で機内持ち込みが制限されています。つまり、日本へ連れて帰るには「スーツケースに封印する」しか道はありません。
あと先考えずに巨大な戦利品をゲットしてしまった40代おじさん、深夜のホテルで大あわてです。
スーツケースを広げ、斜めの対角線上に傘をあてがってみます。
ギ、ギリギリ……! 本当にコンマ数ミリの戦いです。衣服をクッション代わりにし、なんとか、なんとか奇跡的に収めることに成功いたしました。
(日本に着いた時、バキバキに大破していないことを祈るばかりです……!)
ハラハラドキドキのミッションでしたが、台湾のお菓子の優しくてどこか懐かしい味と、スタバの店員さんの温かい親切心に触れ、忘れられない台北の夜となりました。



次回予告:
遠足前の小学生よろしく、ワクワクが限界突破して朝早くに目が覚めてしまったおじさん。寝静まる二人を尻目に、早朝の台北の街へと一人飛び出します。そこで出会った、のんびりとした台湾の朝の風景とは? 次回もお楽しみに!
おわりに
旅の醍醐味は、計画通りにいかないディープなハプニングの中にこそあります。お店が閉まっていたからこそ歩いた夜道、迷い込んだからこそ出会えたエバーグリーンのマスト、そして言葉が通じないからこそ生まれた店員さんとの温かいコミュニケーション。手元に残った一本の傘は、単なる記念品ではなく、台湾の人々の「おもてなしの心」そのものでした。スーツケースにギリギリ収まったあのハラハラ感も含めて、これだから旅はやめられません。
