【後編】中2長女が「3年前に好きだった本」をきっかけに菅野雪虫をめぐる冒険が始まった
読んでくださる方、いつもありがとうございます。
「読む幸せ・読んで幸せ」をテ-マにしています✨
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さて今日は、子どもと同じ本を読んだら思わぬ発見があったシリーズ、【菅野雪虫(すがの・ゆきむし) 編】の後編。
【前編】はこちらから↓↓↓
さて、たいしたものでもありませんが(笑)前回のあらすじです。
〈前回のあらすじ〉
「読むものがなーーい!」と騒ぐ小4次女。タイトルも著者名も忘れておきながら「私が3年前に好きだった本」を次女に紹介した中2長女。
唐突に我が家に現れたその本『アトリと五人の王』(菅野雪虫 著)を読んだ次女と、つられて読んだ母(私)は、思わぬ感動を得ることにーー。母は「3年前長女と一緒に読めばよかった」と後悔しつつ、ふいに興味が湧いた作家・菅野雪虫をめぐる旅に出たのであった。たぶん。

【1】そんなわけで『天山の巫女ソニン』を読んだ次女
菅野雪虫さんの代表作で、デビュー作でもある『天山の巫女ソニン』シリーズ全5巻。
やはり読みやすいようで、「ソニンと同じ気持ちになれる」と次女は一気に読了しました。
私は現在のところ2巻の途中ーーなのですが、感じたのは「ソニンのシリーズと、『アトリと五人の王』は似ている」ということ。
いえもちろん、菅野雪虫さんはいろんな物語を書いています。
でもソニンとアトリは似ている。
私には同一線上の物語に感じられます。
特別な才能、大いなる力を持たない女の子が「人間力」で試練を乗り越えていくんですよね(ソニンには少し能力がありますが、彼女の凄さはあくまで心の強さ)。
だから大人も共感できる。
設定上はファンタジーでも、読んでみると骨太で「地に足のついた物語」です。
ーー実は私、どうしても気になって最終巻である5巻『天山の巫女ソニン5 大地の翼』の解説を先に読んでみたのです。
いや、解説だけですよ!
解説や後書きが大好きなんです(そういう方いませんか?)。
小説を買うと、とりあえずここから読みます。
「ここから先はネタバレですよ」と書かれた場合は引き返しますが(笑)、
・文学界における著者の立ち位置や
・書かれた時代背景
・著者の他のおすすめ作品、関連本
などが分かっていると「本編の内容がより入ってくる」場合があるので、とりあえず読んでしまいます。
というわけで『天山の巫女ソニン 大地の翼』の解説ですが、執筆者はメレック・オータバシ氏。肩書きは(教授・サイモンフレーザー大学・世界文学部長)とあり、カナダの学者さんのようです。
いやぁ、これがとっても素晴らしい。
私、解説を読んで「ああっ!」と本を抱きしめてしまいました。
現在放送中のNHK朝ドラ『ばけばけ』のヘブン先生が、「スバラシ・・・」という、あれみたいな感じです。
「カイセツ、スバラシ・・・」。

下界の人々に自然界の動向などを告げるのが使命ですが、12歳のソニンは「才能がない」と故郷に戻されーーそこから物語が始まります
(ちなみにこの写真は槍ヶ岳・笑)
【2】「どんな読者のためにお書きになったお話ですか」
まず、メレック・オータバシ氏は知り合いの編集者に「日本の児童文学作品で、私が好きそうなものを教えてくれない?」と尋ねました。
すると相手は「メレックさんにぴったりの本があります。歴史小説みたいなファンタジーで、主人公が女の子なの。よく書けているから、きっと気に入ると思う」と『天山の巫女ソニン』を紹介。
そしてこう続きます。
ちょっと長いのですが、全部よいので削れません。
昨年、日本に滞在した際、『天山の巫女ソニン』の第一巻を手にしました。読み始めると、とまりません。(中略)十二歳の息子は、ママのおこもりを面白がって、「良さそうな物語だな、ママ。僕も日本語が読めるといいのに・・・」とまで言っていました。(中略)『天山の巫女ソニン』は、長男の大好きな『ハリー・ポッター』と類似した「成長する」物語です。
ーーーーーーー(中略)ーーーーーーーー
雪虫さんはJ.K.ローリングのシリーズに「感銘を受けた」といいます。想像力豊かな設定と、主人公の心理的な成長の点で似ているせいでしょうか。(中略)けれども、ソニンには、他の西洋ファンタジーとは、決定的な違いがあります。
(中略)さらに感心したのは、「神秘的な力を持つ主人公が、その力をだんだん失っていくうちに、人間として強くなる」という展開でした。これは、私のような、ファンタジーの一ファンにとっても、まったく予想外のことでした。
ーーーーーーー(中略)ーーーーーーー
世界文学は、鳥と似ています。優れた作品は、書かれた言語を問わず、国境をらくらくと超えることができるのです。(中略)けれども、雪虫さんとのメールのやり取りで知ったのは、ソニンは生まれながらにして世界文学だったということでした。
「どんな読者のためにお書きになったお話ですか」と伺うと、「アジアの働く少女――1日中働いた女の子が、疲れて眠くて、それでも続きを読みたくなるようなお話を書きたいと思っていました」と答えて下さいました。
【3】「アトリ」は「ソニン」――繋がったメッセージ
メレックさんはなんて素敵な質問をするのでしょう。
そして答えが「アジアの働く少女ーー1日中働いた女の子が、疲れて眠くて、それでも続きを読みたくなるようなお話を書きたい」だなんて。
もちろん性別や国・地域を超えて、決して恵まれた環境じゃなくても、頑張っている子を励ましたい--というお話なのだと私は受け取りました。
この解説でソニンに対する理解を深めたうえで、私は感じたのです。
「アトリは、菅野雪虫さんが10年以上の時を経て、改めて書いたソニンなのでは」と。
『天山の巫女ソニン』第1巻の単行本発売は2006年。
『アトリと五人の王』は2019年。
小説家の13年は長いです(いや誰にとっても)。
書き手としてより力をつけた後、改めて構築した作品。
「現代の子どもたちへ、不遇や不運にめげず、力強く生きて」というメッセージは、『アトリと五人の王』でより揺るぎないものとなっています。
ワクワクドキドキ、夢を見させてくれる児童文学もいい。でも私はこんな静かな祈りが込められた物語も、ぜひ子どもたちに読んでほしいと思います。

ただ私のように母国語しかわからない人間には翻訳者が素晴らしいことも大事です。プロの皆さんいつもありがとうございます
【4】親の視点だけでは出会えない作品・作家はやっぱりある
子どもたちが子どもである時期に、出会えて良かったーー。
我が家に思いがけずやってきた菅野雪虫さんは、私だけではたどり着けなかった作家さん。出会い方からしてちょっと運命的なものを感じます。
まぁ、次女がどう感じているかは次女の問題。でも「読みやすいし面白い!」とあれからどんどん菅野雪虫作品を借りてくるようになりました。
好きな作家さん、ひとりゲット✨
それだけで母は満足。
最近では、アイヌ神話をモチーフにしたファンタジー小説『チポロ』『ヤイレスーホ』『ランペシカ』、そして兄弟愛を描いた『星天の兄弟』を借りてきて、一気に読了。
「ほかにも読みたいものがある」と張り切っています。


さて、これを読んで「菅野雪虫さん気になる」と思った方。
お時間あればソニンから読むのがいいですが、「5冊はちょっと」という場合は『アトリと五人の王』をおすすめします。ソニンの魅力を1巻に濃縮したのがアトリと言っても過言ではないからです。
【5】答えは『烏は主を選ばない』の解説に…
ーー最後にまた時間を少し戻します。
この記事の【前編】で私が長女にした質問。
「阿部智里さんの八咫烏シリーズ第2巻『烏は主を選ばない』はどこにある?」
についてですが。
あぁなんかそんな話もあったよね。
覚えていてくださった方、ありがとうございます(笑)。
最初に「菅野雪虫・ソニン」と聞いて私が「なんか知ってる気がする」と記憶をたどった理由なのですが・・・。
実は八咫烏シリーズにハマっていた2年くらい前。その時にも『天山の巫女ソニン』に出会えるチャンスがあったんです。
解説マニアの私は、『烏は主を選ばない』の解説冒頭で書評家の大矢博子さんがこう書いていたのを思い出しました。
小野不由美「十二国記」を読んだとき。上橋菜穂子「獣の奏者」を読んだとき。菅野雪虫の「ソニン」を読んだとき。
どのときも、慌てて他の巻を買いに走ったのを覚えている。世評の高さは重々知っていながら、ファンタジーは苦手だからと手を出さずにいたことを激しく後悔した。こんな名作に乗り遅れてたなんて!
この時、「『十二国記』も『獣の奏者』もわかるけど・・・『ソニン』とは?」と一瞬、興味が湧きました(解説はこの後、八咫烏シリーズもそういう傑作であるーーという流れになります)。
でもたぶん「今度にしよう」と思ったのでしょう。
その時に調べていたら!
その時点で「面白そう」となっていたかもしれない。
そこから同じ作者の『アトリと五人の王』に行きついて、「これは長女が前に読んでた本では?」と気づくことができたかもしれない。
こういう情報は選書の大いなるヒントだとーーと分かってたはずなのに。
あぁ、もったいない。
と言いつつ私は今回、それも含めてすごく面白かったのです。なにが?
どんどん繋がったことが。

【6】「本で繋がる」「本が繋がる」ってなんて楽しいの!
まず。自分の「好きなもの(本)」で大切な人(子どもたち)と繋がることができた。
そして自分が尊敬できる、雲の上の存在のような方たちと「この本の読者」というただ一点の共通点で、繋がることができた(気がする)。
そう、『虹いろ図書館のへびおとこ』では「辻村深月さんはどこで感動したんだろう?」とワクワクし(前々回記事参照)。
『天山の巫女ソニン』では、カナダの大学教授がソニンだけでなく『ハリー・ポッター』が好きだとわかり。
ーーそれだけで嬉しい。さらに、
もともと大好きだった阿部智里さんの八咫烏シリーズを手に取ると、書評家の大矢博子さんが「『ソニン』は名作」と評価していたことを解説で改めて確認できた。
好きな本たちが繋がっている。
そして私たちは、
好きな本たちで繋がっている。
これってワクワクに満ちた冒険じゃないかと思う。
われら、市井のいち読者。
でも、読むことで冒険ができる。
なんて幸せなんだろう。
本が好きで、よかったなぁ。
というわけでーー。
ありがとう、アトリ。
ありがとう、ソニン。
ありがとう、タイトルも作者も忘れながらも妹の読書に助言をくれた長女。
ありがとう、いつも「読むものがなーーい!」と自己主張してくれる次女。
これからもよろしくお願いします😊
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
素晴らしい読書体験がたくさんの方に訪れますように!
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〈本デ-タ〉
『アトリと五人の王』(著者 菅野雪虫)
・単行本発売日:2019年6月
(中央公論新社/税別1700円)
『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』
・単行本発売日:2006年6月
・文庫発売日:2013年9月
※手元にあるのは文庫です(講談社文庫/税別640円)
※以下、シリーズをタイトルのみ記します
『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』
『天山の巫女ソニン3 朱烏の星』
『天山の巫女ソニン4 夢の白鷺』
『天山の巫女ソニン5 大地の翼』


ちなみに第1巻『烏に単は似合わない』を長女が初めて読了した際の感想は
「えっこれ書いた人20歳なの⁉ 意味わかんない」でした(笑)。 母「松本清張受賞時が20歳だから、書いたのはもっと前でしょ」 長女「ますます意味分かんないって」
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子どもと同じ本を読んでみた話、前々回はこちらから↓↓↓
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