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【前編】中2長女が「3年前に好きだった本」をきっかけに菅野雪虫をめぐる冒険が始まった

 読んでくださる方、いつもありがとうございます。
 「読む幸せ・読んで幸せ」をテ-マにしています✨
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 さて今日は、子どもと同じ本を読んだら思わぬ発見があったシリーズ。

 中学2年生の長女は3年前、その本の「誰が」好きだったのかーー。

 時間を巻き戻してあなたの心に今、会いに行きます。

 ――というほどの話ではないけれど、我が家で起こった読書体験の話を少し。 

 そしてこれは小学4年生の次女が「好きな作家」を1人獲得するまでの話でもあります。

・【読む子育て】小学生1人に1人「好きな作家」がいたら未来はどれほど素敵になるだろう↓↓↓


 子どもと同じ本を読んでみた話、前回はこちらから↓↓↓

『虹いろ図書館のへびおとこ』で辻村深月さんがどこに「ああっ!」となったのか親子で気になった話【読む子育て】

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【1】「読むものがなーーい」から始まった


 それは秋の週末の出来事でした。

小4次女(本好き) 
「読むものがなーーい!」

「あれ、『虹いろ図書館シリ-ズ』は? 6巻まであるでしょ」
小4次女「2周した」
「はははは・・・学校の図書館は?」

小4次女「今週、行きそびれちゃったの。月曜にはまた借りられるけど、休み時間は係活動であまり時間がないから、コレ!って決まった本があればいいんだけど・・・」

「あなたはけっこう好みがはっきりしてるからねぇ」

中2長女 ←横で聞いてた
「あのさ、次女ちゃんの好みって【できればファンタジー】【できれば女の子が主人公】【できれば翻訳もの以外】であってる?」

小4次女「うんそうだよ」

中2長女「私、5年生の時に学校の図書室に好きな本があったの。6年生の夏休みにも借りたんだけどね」

「なんて本? タイトル教えて!」
中2長女「・・・忘れた」

「書いた人は?」
中2長女「・・・忘れた」

母・小4次女「おい!」

中2長女「ちょっと待って、内容思い出すから。えぇと、ある王女が5人の王に嫁ぐ話だよ。いろいろ大変なんだけど、だんだん成長していくの」

「わかった!調べてみる」

 ――というわけでストーリーをスマホで検索すると、すぐに出てきました(便利な時代ですね!)

【2】なぜか「知ってる気」がしたのだけど


「これじゃない? 菅野雪虫(すがの・ゆきむし)『アトリと五人の王』

中2長女「 はいこれこれ! 懐かしいなぁ」

「2回借りるくらい好きだったんだ。言ってくれたら買ったのに・・・」

中2長女「いやなんか学校にあるという安心感があったからね」

小4次女「ふ~ん。とにかくこれが姉ちゃんのおススメなんだね?月曜日に図書室行ってみるよ」


 ――とある週末の会話はここまで。

 私は児童文学に詳しくなくて、菅野雪虫さんのお名前や作品を存じ上げませんでした。
 
 が、なんとなく「知ってる気」もしたのです。

 なぜだろう?

 そこで菅野雪虫さんの著作リストを見てみると、『天山の巫女ソニン』というシリーズ(全5巻)が代表作とありました。
 
 2005年に『ソニンと燕になった王子』で第46回講談社児童文学新人賞を受賞。改題加筆した『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』で第40回日本児童文学者協会新人賞を受賞。

「菅野雪虫・・・ソニン・・・菅野雪虫・・・ソニン・・・」

長女&次女「なんかブツブツ言ってるね」

「・・・はあっっ!」

長女&次女「びっくりした!」

「長女よ! ――あなたは今、阿部智里の八咫烏シリーズを読んでいますね? 2巻の『烏は主を選ばない』は、今どこにありますか?」

中2長女「急にどうした。たぶん枕元にあるよ」

「謎は・・・すべて解けた」
 
 ――さて、何がどう解けたのかは後まわしにするとして。


 まずは菅野雪虫『アトリと五人の王』がどんな話かと言いますと――。

菅野雪虫の世界へようこそ

 

【3】というわけで読むことになった『アトリと五人の王』とは?

 
 まずは同書の「序章」を引用させていただきます。

序章
 これは生涯で五回も結婚することになった、とある姫君の物語である。若くして嫁ぐのが当たり前の世とはいえ、数えで十歳の初婚から、九年で五回というのは、やや多い。
 いったいどんな偶然で、逆らえない運命で、あるいは自分で選んで、五回も嫁ぐことになったのかーーそれは、読んでのお楽しみ。

菅野雪虫『アトリと五人の王』
(中央公論新社/ p9 序章より)

 
 はい。私も読んでみましたが、展開の早さによる没入感と、全体を通して流れるシビアな人生観が特徴的な物語でした。

 文章はとても読みやすく、ある程度、読書慣れした小学生なら十分に読めると思います。

(対象年齢が特に見当たらなかったのですが、基本的には高学年以上かと思います)

 アトリはいわゆる「大人の事情・身勝手」「政治的背景」に翻弄され続けます。登場人物のなかには、どうしたって救えない人救われない人も出てくる。

 でも――少しずつ成長していく、アトリの心の強さが物語の柱。これがジワジワ染みてくるんですよね。


【4】1人の人間としての生き方を問う、現代風のファンタジー

 
 スカッと、胸のすくような冒険譚とは違います
 訪れる困難と闘ったり、乗り越えたりはする。
 でもやがて、諦めるべきことは静かに諦めるーーどうしても通じ合えない人間関係とかーーそんなアトリが印象的です。


 なんだか切なかったな。
 でも。

 私はたぶん、子どもとは違う視点をもって読み終えたと思います。全編を通して作者の祈りのようなものを感じました。

 奇跡は空から降ってくるものじゃない。
 でも手を差し伸べてくれる人もいる。
 
現代の子どもたちよ、どうか強い心で自分の道を切り拓いてーーそんな祈りです。

最初に嫁ぐのは「月の王」。優しい人でした。
彼が与えてくれたものがアトリの生き方の土台になります。
地位や財産ではありません


【5】クライマックスを読んで抱き合う姉妹


 ――話は最初に戻ります。

 開けて月曜日。
 図書室から無事に『アトリと五人の王』を借りてきた次女は、「読みやすいよ!」と2日間ほどで読了。

 残り30ページほどになったあたりから、ティッシュのある棚へ行ったり来たり。鼻をかみつつ読み進めています。

 「うおっ泣いてる!」。私はその時まだ未読だったので「あとで感想聞かせてね」と言ったのですが、次女は突然、本を抱えながら長女のもとへまっしぐら。

 「ね、姉ちゃーーーん!」と抱きつきました。

中2長女「あぁ、ここ読んでるんだね。気持ちわかるよ・・・」

小4次女「 姉ちゃーーん!」
中2長女「次女ちゃーーん!」

となぜか抱き合う2人(長女は笑ってた)。


 私が「ねぇねぇ、すごく泣ける場面があるの?」と聞くと、2人とも似たような返答をくれたのです。

「決定的に〝泣き〟の場面があるわけじゃない。でも最後に近づくにつれてなぜだか涙が出てくる

「へぇそうなんだ!」

 これでがぜん興味が湧き、私も読むに至ったわけなのですが。子どもに「わけのわからない涙」を流させる物語って、いいなぁと。
 
 ーーそして私も読んだあと、改めて2人に聞いてみたのです。


「もしかしたらこのラスト、こうなったほうがアトリは幸せだったんじゃないか・・・とか思わなかった? ママはいろいろ考えちゃった」


 するとちょっと考えて2人とも、同じようなことを言いました。


「いや、これでいいんだよ」

アトリは結果的に「5つの指輪」を手にします。
決しておめでたい、愛に溢れた指輪ばかりではありません。さてそれぞれどんな経緯で手に入れるのでしょうーー


【6】3年間も気づいてなかった長女の心


 さて、『アトリと五人の王』を読んで母としてハッとしたこと。

 長女は小学5年生の時にこれを「面白い!」と思っていたのです。翌年の夏休みにもう一度借りてくるほどに。

 確かに「その表紙見たことあるなぁ。また読んでるんだ」と言った覚えがあります。その時にもっと興味を持てばよかった。 

 そうしたら「こういう物語に感動できる子になった」という長女への理解がもっと早くに深まっていたことでしょう。


 私、時折テレビや何かを見ながら長女に言ってたんですよね。
 「誰かに〝幸せにしてもらう〟のって難しいことだよね。自分自身で人生を切り拓いたほうがいい。人を好きになるのは素敵なことだけど・・・」
 ーーなんて、母の人生観を聞かせる必要なんてまったくなかった(笑)。


 だってこの間、長女は言ったんです。

 私と次女が「五人の王で誰がいちばん好き? やっぱり〇番目のあの人かな・・・」と(ちょっと)盛り上がっている時に、


「あっそうか。2人はそういう風に読んでるんだ。私はアトリがいちばん好き。だってカッコいいもん」


 ーーそうだね。そうなんだよね。
 
 長女がいちばん深く読み解いていたのです(もちろん感想は人それぞれだけど)。


 こんどは私が「姉ちゃーーん!」と抱き着きたくなりました。

 さすがにそれは遠慮して(笑)、代わりに「あなたって選書のセンスいいよね!3年前だけど」と言うと、長女はフフフと片手を上げながら自室に去って行きました。


 あ~あ、大人になっちゃって。


長女はアトリを読んで素晴らしい感想文を書いたわけでも、「ぜひ読んで!」と強く人に薦めたわけでもない。ただ自分の勘で選書し、 「また読みたい」と翌年また借りて。数年後、求める人にそれを薦めることができた (タイトルも忘れてたけど)ーー私はそれが嬉しいのです


【7】そして次女は『天山の巫女ソニン』へ


 そんなわけで菅野雪虫さん、いいかも!

 次女の好みにも合うようなので、アトリの次はデビュー作でもある『天山の巫女ソニン』シリーズを我が家に迎えました。

 次女はあっという間に全5巻を読了。

 私はいま2巻の途中なのですが、「あぁこれは、確かに・・・」といろいろ感じるものがあり、この記事を書いています。

 
 さて、長くなったので今日はここまで。

 次回はこの続き、

アトリとソニンは〇〇〇〇の物語

・素晴らしい文学はどこかで繋がってる! そして読む人を繋げる力もある

・気になったときに調べておけばよかったーーで結局、母(私)が言ってた『烏は主を選ばない』の話はなんなの?

 ーーというお話をしたいと思います😊

 ご興味ありましたら、ぜひ読んでみてくださいね。
 またお会いできるのを楽しみに✨

・後編です↓↓↓


1人の作家を追いかけると作品間の繋がりに気づくことがあります。似たジャンルを書く他の作家との繋がりにも気づく。同じ作品を好む読者同士の心も繋がることがある。私はそんな「本をめぐる冒険」を子どもたちに体験してほしい。自分の内側を拓いていくことは最高の娯楽です



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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
素晴らしい読書体験がたくさんの方に訪れますように!
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〈本デ-タ〉
『アトリと五人の王』(著者 菅野雪虫)
・単行本発売日:2019年6月
(中央公論新社/税別1700円)

『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』
・単行本発売日:2006年6月
・文庫本発売日:2013年9月
※手元にあるのは文庫です(講談社文庫/税別640円)

※以下、シリーズをタイトルのみ記します
『天山の巫女ソニン2 海の孔雀』
『天山の巫女ソニン3 朱烏の星』
『天山の巫女ソニン4 夢の白鷺』
『天山の巫女ソニン5 大地の翼』



・全体の自己紹介です↓↓↓


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