うなぎが高いので、もどきを作った話
うなぎを弁当に入れたい、と思う日がある。
土用の丑の日が近づくと、ふと思うのである。あの艶やかな茶色と、甘じょっぱいたれの香りのことを。
ただし、うなぎというのは高い。びっくりするほど高い。スーパーの鮮魚コーナーで値段を見るたびに、私はそっと目をそらして帰ってくる。これをもう何年続けているだろうか。
そういうわけで、私はうなぎもどきを作ることにした。
材料は、はんぺんと木綿豆腐とのり、それからかば焼きのたれである。うなぎの「う」の字も入っていない。
しかしそういうものなのだと、私は思っている。「もどき」というのはそういうものだ。

まず木綿豆腐をレンジにかけて、よく水を切る。豆腐の水切りというのは地味な作業で、やっているあいだ特に何も考えることがない。ただじっと、水が出るのを待つ。

水が切れたら、アイラップにはんぺんと豆腐と片栗粉を入れて、袋の上からもむ。

これがなかなか楽しい。だんだんなめらかになっていく感触が、なんとなく気持ちよいのである。
粘土みたいだと思った。大人になっても粘土っぽいものをこねると少し楽しいのだから、人間というのはそういうものかもしれない。
のりの上にたねをのせて、フォークで模様をつける。うなぎっぽく、縦に線を入れるのだ。

これが、けっこう大事だと私は思っている。
味じゃない。見た目の話である。うなぎの線を入れることで、私の中でこれは「うなぎもどき」になる。
線を入れなかったら、ただの豆腐はんぺん焼きだ。人は見た目で食べるのだ、ということを、私はお弁当を作りながら何度も学んでいる。
フライパンで焼くと、いい香りがしてきた。かば焼きのたれを絡めると、色が急にうなぎらしくなる。なるほど、たれというのはすごいものだと思った。

お弁当箱にはいつもより気合いを入れてご飯を詰め、かば焼きのたれをたっぷりかけた。
大葉を一枚しいて、ねぎ入りの卵焼きをのせる。卵焼きは、うな丼っぽく見えるよう、いつもより少し平たく焼いた。そしてうなぎもどきをドーンとのせて、さらにたれをかける。

ミニトマトときゅうりを添えて、完成した。
山椒が高かったので、青のりをふってみた。
うなぎじゃないけれど、うな丼である。私はそう思うことにした。

持っていった夫がどう思ったかは知らない。特に何も言わなかったので、まあよかったのだと思う。
感想を言わない人間に感想を求めるのは、二十年たってもなかなか難しい。
忘れた頃に、「この間のお弁当おいしかった」と言ってきたりする。
それでも、毎日お弁当箱は空になって返ってくる。まあ、そういうものなのだろうと、今日も私はお弁当を作っている。
いつか、本物のうなぎをドーンとお弁当に入れれる日が来るといいなと思っている。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。 こんな話につきあってくださる方がいるというのは、なんだかうれしいことだと、私は思っています。またよかったら、のぞいてみてください。
🍱 今日のお弁当メモ
はんぺん
木綿豆腐
味付きのり
かば焼きのたれ
卵・ねぎ(卵焼き用)
大葉・ミニトマト・きゅうり(添え物)
ご飯
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