力の抜きどころ ~硬い字、軽い字、小さな抜け道~
「頑張る」という字を、じっと見たことがあるだろうか。
数年前、友人から聞いたひとことが、私の中で今もずっと生きている。
硬い字が、少しだけ軽くなった話。

数年前、友人からこんな話を聞いた。
「頑張る」って漢字、ひとつひとつ見ると
「頑な(かたくな)に張る」って書くんだよ。
言われてみて、初めて気づいた。
たしかに「頑」の字にはどこか意地っぽさがある。頑固とか。
ずっと使ってきた言葉なのに、こんなに硬い顔をしていたなんて。
社会の中で生きていれば、「頑張る」が必要な場面は、たしかにたくさんある。
踏ん張らなきゃいけない時、歯を食いしばらなきゃいけない時。
それは私もよく知っている。
でも、頑なに張ることで、かえってうまくいかなくなることも、同じくらいよく知っている。
その友人はこう続けた。
だったら「願いが晴れる」で「願晴る」にしたほうが、気持ちがいい。
もちろん辞書には載っていない。当て字だ。正しい表記でもなんでもない。
でも、正しいかどうかより、「この考え方が好きかどうか」のほうが、私には大事な気がした。
「頑張る」だと、なんだかガチガチに力が入る。
歯を食いしばって、踏ん張って、耐える感じ。
「願晴る」だと、同じ努力なのに、少し空が晴れているような気がしてくる。
不思議なものだ。漢字ひとつ変えただけで、同じ「がんばる」なのに、体の力の入り具合まで違ってくる。
私は好きなことを、これからも思いきりがんばりたい。
でも「頑張る」だとどこかで疲れて、カッチカチになって、続かなくなる自分を知っている。
だから最近は、心の中でそっと「願晴る」を選ぶようにしている。
同じことをしていても、言葉のイメージひとつで、力の抜き方が変わる。
それだけのことなのだけれど、それだけのことが、案外大きい。
とはいえ、これは「前向きになろう」という話でもない気がしている。
無理にポジティブになろうとすると、それはそれでまた別の「頑張る」になってしまう。
「願晴る」は、前向きであることを目指す言葉じゃなくて、力の抜きどころを教えてくれる言葉、というほうが近いかもしれない。
正式な漢字じゃなくていい。辞書に載っていなくていい。
自分がふっと軽くなる言葉を、自分で選んでいい。
そんなことを、友人の一言から教わった。
ちなみに、その友人も、「願晴る」のことは、別の人から聞いたのだとか。
言葉って、こうやってリレーしていくのかも。
そして今日、そのバトンは私のところまでやってきた。
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