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イラストレーターが政治の話をする理由|表現者は社会と無関係ではいられない

先週末、「理屈と論理が感情と反知性に呑まれる国」に関するXのポストがバズり、この記事を書いている(1/27)の時点で、117,416ビューを超え、3,500スキという、私が昨年1月にnoteを初めてから約1年の間で、最も読まれた記事になりました。

Xのポストには大量の引用コメントがついているので、休憩中や移動時間などに目を通していただけると嬉しいです。

記事をキッカケに、過去に書いた有料版の『表現を仕事にする人が、歴史と政治を学んだ方がいい理由【完全版】をご購入いただいた方も多く、本当に有難い限りです。

※ちょっと長すぎるのと、選挙の争点になる

●選挙の争点に直接的に関わる政策の問題提示
●高市氏と統一教会との癒着

これらはもっと早く、記事の前半に出した方がいいというご意見、この記事自体が感情的でナラティブではないか、というご批判もいただき、争点部分を抜粋した上で少し加筆し、構成を入れ替え、文字数を約半分にし、なるべく感情も削った再編集ショート版を作成しましたので、ご一読いただけると幸いです。

今回は、記事の反響を受け、なぜイラストレーターの私がこのような政治に関する記事を書いているのかをまとめました。

今回の記事の要点(読む時間がない方向け)

  • 「仕事を干されるかもしれない」不安を感じながら、私が政治の話を書く理由についてまとめました

  • 不安の背景には、「スパイ防止法」をめぐる動きと、表現が萎縮していく社会への危機感があります

  • 日本にはすでに機密漏えいを処罰する法律があり、現行法で一定の対応は可能とされています

  • 歴史を振り返ると、思想や表現を取り締まる法律は、必ず拡大解釈されてきました

  • 私は、子どもたちが「何を描いたか」で怯えずに生きられる国を残したいと考えています

記事が話題になり、思いがけずたくさんのチップと応援のコメントもいただきました。その中に特に印象に残っているコメントがあったので、一部抜粋します。

仕事を干されるかも知れないような危険にも立ち向かって、はっきりと意見を表明する勇気に感謝します。黙っていたら自由に仕事をする権利すら奪われてしまいかねないご時世。(中略)言い切れない不安でいっぱいです。

「仕事を干されるかも知れないような危険」。これは、私が政治的な話をXやポストに投稿する際、常に脳裏をよぎっていた懸念です。

「仕事を失うかもしれないのに、なぜ書くのか」

実際に、仕事を失うリスクはゼロではないかもしれません。既に私が知らないところで、このイラストレーターはこういう思考なのでと、候補から外されている可能性もあります。

この人の本好きだったのに幻滅したなどとも言われるでしょう。しかし、仕事を干されるリスクを抱えて、それでも書くのは、一つの大きな不安に起因しています。この不安がもし現実になったら、それこそ、仕事を干されるどころの話ではないのです。

権力と空気で表現が規制される国

では、私がなぜそこまで強い不安を感じているのか。その理由の一つが、いわゆる「スパイ防止法」をめぐる動きです。

近年、自民党の高市早苗氏や参政党を中心に、「スパイ防止法(あるいはそれに類する法制度)」の必要性を訴える声が繰り返し上がっています。その主張自体は、

・国家安全保障を守るため
・外国勢力による不正な活動を防ぐため

という、表向きにはもっともらしい理由で語られます。実際、日本には欧米諸国のような包括的なスパイ防止法が存在しない、という指摘は以前からありました。実際には、日本には刑法(外患誘致罪・外患援助罪)や国家公務員法の守秘義務、特定秘密保護法、不正競争防止法などがあり、機密情報の漏えいや外国勢力への協力行為は、すでに現行法で処罰の対象になっています。そのため、政府自身も国会答弁などで「現行法で一定の対応は可能」と説明してきました。

しかし、問題は「何をスパイ行為とみなすのか」「誰がそれを判断するのか」という点にあります。

「線引き」は必ず広がる

スパイ防止法が議論される際、よく引き合いに出されるのが
「普通に暮らしている人には関係ない」
「本当に危険な人だけが対象になる」

という説明です。

ですが、歴史を振り返ると、この種の法律は必ず対象範囲が拡大していくことが分かっています。

・最初は「外国のために情報を流す者」
・次に「国家の安全を脅かす恐れのある者」
・やがて「国益に反する言動をする者」

このように、線引きは少しずつ曖昧になり、広がっていきます。そして、その判断基準を握るのは、常に権力を持つ側です。これは決して仮定の話ではありません。

戦前の日本には「治安維持法」という法律がありました。当初は「国家体制を暴力的に転覆しようとする思想」を取り締まるための法律でした。

しかし実際には、

  • 特定の思想を持っていると疑われただけで

  • 小説や詩、絵画、論文を書いただけで

  • 「危険思想の持ち主」と見なされ、逮捕・投獄される

そうした事例が数多く生まれました。その一例がこちらの事件です。

一枚の絵が「証拠」とされ、投獄された青年


NHKのドキュメントで知ったのですが、同じ内容の記事を紹介します。

菱谷良一さん(当時19歳)は、学生が本を読み語り合う様子を描いた一枚の絵が問題視され逮捕されました。

特高警察は絵を「共産主義的会話の証拠」と決めつけ、自白を強要。菱谷さんは、暴力・脅迫による取り調べで、事実無根の「共産主義者」に仕立て上げられ、留置場・刑務所で計1年3カ月拘束されました。真冬の旭川刑務所の気温は零下30度まで下がったそうです。菱谷さんは仮釈放後、1943年に執行猶予付きの有罪判決を受け、師範学校は退学処分になりました。

「そもそも治安維持法なんていうのは知らんの。周りの学生と違って(自分は)全然幼稚なの。意識の鋭いやつは『いずれわれわれにも累が及ぶ』って言うけど、『ばか言え。そんなことあるわけがない』と、のんきに考えていた」

治安維持法100年:日常の絵を描いただけで投獄、104歳の生き証人が語る不条理

ゾッとしました。当局者の拡大解釈で、「政府に批判的な勢力」と見れば、大した証拠もなく摘発対象としてしょっぴかれ、投獄されてしまうのです。

このような事例から、私は「スパイ防止法」を「国家安全保障を守るため」「外国勢力による不正な活動を防ぐため」という文字通りの意味としては捉えることができません。

たとえ、直接的に表現を取り締まる法律ではなかったとしても、「国家にとって好ましくない言動」が問題視される社会の空気が生まれれば、表現は必ず萎縮します。そして一度、萎縮した表現は、簡単には元に戻りません。

仕事を干されるどころの話ではない

日本は同調圧力と空気の国です。しかも何故か、権力者側の気持ちを勝手にくんで忖度するという、強者におもねり、弱者を叩く空気に満ちています。

私が感じている不安は、「仕事を干されるかもしれない」という個人的な損得の話ではありません。

もっと根本的な、「自由に表現すること自体が危うくなる社会に向かっていないか」という不安です。

最近選挙が始まって、TicTokやYouTube、SNSに大量にデマが投稿されています。ヒトラーの右腕であり、ナチスの宣伝大臣であったゲッペルスは、戦意高揚を煽るため、デマや嘘が散りばめられたビラやポスターを大量に作成し、ばら撒きました。

表現を生業としている人は、それこそプロパガンダ用の映像やポスター、イラスト、音楽でも仕事が来れば食えていけるでしょう。私は戦意を煽るようなイラストを描くのはまっぴらごめんです。しかし、それを拒否すれば投獄されるような未来が待っている可能性があります。

このまま傍観すれば、最悪の場合、命の心配をしながら表現をする可能性があるのです。もしそれが現実になったとき、仕事を失うかどうか、という話は、あまりにも小さな問題になります。

旧統一教会との関係が問題視されてきた高市総理が、「国家の忠誠」や「スパイ」という言葉を用いて法整備を語ること自体に、私は強い違和感を覚えています。

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は、霊感商法や高額献金で、信者を家庭崩壊へ追い込み、反社会的勢力とされています。外国の反社会勢力と癒着している政治家が、「外国勢力による不正な活動を防ぐため」スパイ防止法を推進している。どうにも腑に落ちません。

怯えながら表現する未来

私には、3人の子どもがいます。3人とも何かを作ったり、描いたり、歌ったりするのが大好きです。しかし、それはうちの子だけでなく、多くの方々もそうであると思います。この日本が、

「何を描いたか」「何を書いたか」「何を歌ったか」で怯えなければならない国になってほしくない

表現することが、常に「ここまで踏み込んでいいのか」「誰かの機嫌を損ねないか」を気にしなければならない行為になったとき、それはもう、健全な社会とは言えません。大々的に政府と統一教会とのつながりを糾弾しないテレビの報道番組には、既にその空気を感じます。

表現者は、黙らなければならない存在ではない

私は、たまたま絵を描く仕事をしているだけで、特別に勇気があるわけでも、強い人間でもありません。それでも、不安を感じたことを言葉にし、歴史を振り返り、「同じ匂いがする」と感じたことを書く。それが、表現を生業とする人間としての、最低限の責任だと思っています。

「仕事を干されるかもしれない」
そんな不安を抱えながら書く理由は、

書かなかった先に、
もっと取り返しのつかない未来が見えるから
です。

高市総理は「『賛否の分かれる大きな法律案』を国会が始まる前に国民の皆様の信を問いたい」と、選挙直前に言っていました。しかし、我々はその内容を聞かされていません。意訳すれば、

「選挙に勝ったらとんでもない法律案を通すつもりだけど、今は中身は言えません。勝ってからのお楽しみです。」

というわけです。完全な後出しジャンケンです。そんな人物に総理を任せるわけにはいきません。 末っ子はまだ4歳です。将来彼らが大きくなったとき、「お父さんは、あのときに何もしなかったの?」と尋ねられ、何もしなかったとは言いたくありません。 書けることと、 描けること、自分が持ってるスキルでやれることは全部やる。

それでは、皆さん。選挙に行きましょう。
期日前選挙が始まっています。
投票所入場整理券が届いていなくても、、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証の提示や、窓口での本人確認で、小選挙区と比例代表の投票はできます。

長文読んでいただきありがとうございました。

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