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【2017年のBTS】夜明け前の闇を忘れない【アメリカの壁】


【追記:2026/3/21】「ARIRANG」がアメリカのラジオ局で放送されています!

一枚の未開封CDが物語るもの

Xで心を揺さぶられるポストに出会ったので、紹介させてください。

元ポスト和訳

「YOU NEVER WALK ALONE」のアルバムがガレージセールで発見されたという事実を知って、そして忘れないでほしい。
このサンプルは、曲をかけてもらうためにBig Hit Entertainment(訳注:現在のHYBE / BIGHIT MUSIC)からアメリカのラジオ局へ送られたもの。CDは未開封だったそうで、つまり一度も再生されなかった。完全に無視された。でも今、BTSがどんな位置にいるか……

絶対忘れない。

@yoonminluv_ot7さんのポストより

2017年のバンタンが出会った壁

現在BTSバンタンは兵役を乗り越えてグループとしての再始動を控え、毎日大きな話題を生んでいます。Netflixによるライブ配信とドキュメンタリーへの全面支援、Googleとのクイズイベント……。
世界的プロデューサーやソングライターたちが、彼らとのコラボを誇っています。

世界中の名だたるプロデューサーたちが、BTSのアルバムに関われたことをこれほどまでに誇り、興奮し、神やARMYに感謝を捧げている様子をまとめ読みすると、このアルバムが私たちにとっての祝祭であるだけでなく、K-POPの枠を超えた世界の音楽業界にとっての一大イベントであることが強烈に伝わってきますね!

「【和訳】BTS「ARIRANG」に関わったプロデューサーたちの言葉」より
完全にBTS公式と化したNetflix

しかし当然ながら、彼らは最初から恵まれていたわけでも、欧米音楽界で受け入れられていたわけでもありません。

2017年のアメリカを思い出す

2017年、バンタンはビルボード(BBMAs)で「Top Social Artist」賞にノミネートされ、初めて国際的な注目を浴びました。
このスポットライトはARMYを団結させ、国境を越えた連携を生んで、彼らに圧倒的な票差での勝利をもたらしました。

しかし、アメリカにおけるバンタンの認知度はまだまだでした。
今はインターネットが普及しているのでまた状況が違いますが、当時アメリカの音楽市場ではラジオが大きなシェアを持っていました。ラジオ局が曲をかけてくれなければ大衆に認知されず、Hot100への扉も閉ざされたままなのです。

この時代、アメリカのメインストリームラジオ局は、非英語圏の楽曲や、米国メジャーレーベル(BIG3=ユニバーサル、ソニー、ワーナー)の後ろ盾がないアーティストの楽曲をオンエアすることがほぼなかったようです。
これを打破するためか、事務所も流通契約を結び、後に『Dynamite』などの英語曲で大規模なオンエアを獲得しています。

Big Hit Entertainment(旧HYBE)の流通契約履歴
・2018年にソニー・ミュージック傘下の「コロムビア・レコード」と契約
・2021年10月にコロムビア・レコードとの契約を満了
・世界最大の音楽企業である「ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)」と契約

UMG傘下であるGeffen Recordsとの共同レーベルからKATSEYEが生まれていたり、現BIGHIT副社長がBTS兵役中にコロムビアで働いて人脈を作り、今回の新アルバムに生かしていたりして面白い

アメリカのARMYもラジオ局へのアタックを繰り返しますが、当時K-POP自体への認知度も低く、苦戦します。
PSYの『江南スタイル』のようなヒット例もあったようなのですが、坂本九の『スキヤキソング』みたいなものだったんでしょうか……。

K-POPアイドル初と言える規模で売れたため、BTSについて以外にも、韓国やK-POPについての質問が沢山来てしまい、矢面に立ったナムさんは応答で誤解を招かないよう神経をすり減らし、必死で用語を覚えたそう。

「2017頃から海外インタビュー対応が爆発的に増えたBTS」より

こういった話はなかなか公式に残りにくいのですが、当時の証言が映画「BTS ARMY:FOREVER WE ARE YOUNG」で語られていました。

でもラジオ局からはにべもなく門前払いを受ける日々が続きます。
「誰それ」はまだしも、「本物の曲でないと」「中国の曲はかけない」など、K-POP夜明け前と言うか、アメリカ人はアメリカの曲が聞きたいはずだ、そうだろ?的なナショナリズムを感じる局側の反応が語られてました。

「【映画】『BTS ARMY:FOREVER WE ARE YOUNG』【感想】」より

長い間、K-POP音楽の重要性について率直に語ってこられましたが、K-POPムーブメントを支援することで、あなたとあなたの放送局はどのような価値を得ましたか?
このことについて話せて本当に嬉しいです。というのも、私がBTSをかけ始めた頃は、彼らをかける番組はごくわずかだったからです。『Mic Drop』のことではなく、もっと前の話です。私は、彼らが最初にラジオを試みた曲『DNA』をかけていました。私はK-POPをしばらく聴いていましたが、このグループとこの時代の音楽には何か特別なものがあり、「これは良い……これはうまくいく」と思ったのです。

今やBTSは地球上で最大のグループとなり、すべての番組担当者が彼らの一部を欲しがっています。BTSの熱心なファンであるARMYのおかげで、私の放送局はEntercom(訳注:ラジオ放送会社)でトップのリスナー数を誇るTop 40放送局の一つです。私はARMYの一員であることを誇りに思います。

eQB カバー記事「eQB Cover Story: Sassy, PD, WKXJ/1037 KISS FM, Chattanooga(サシー、番組ディレクター、WKXJ/1037 KISS FM、チャタヌーガ)」より

Q:韓国語の歌詞が少なすぎるという批判についてはどう思いますか?
一生懸命に作った歌を、より多くの人々に聴いてもらうためです。
英語の歌詞ではない曲は、海外の放送局やラジオで好まれないことがよくありました。海外のARMYたちが初期の頃、ラジオ局に花束を送りながら「どうか曲を流してください」とお願いした話は有名です。放送局も、韓国語を差別しているというより、リスナーにとって聞き慣れた言語を好まざるを得ないためだったと思います。

「BIGHIT副代表ニコル・キムが語るBTSアルバム「ARIRANG」」より

未開封のCDは当時を物語る資料

冒頭でご紹介したポストは、こういった当時の背景を物語るものです。
CDにはプロモーション用の情報が書かれており、事務所がアメリカのプロモ会社を通じてアルバムを送り、ラジオ局へ働き掛けていたことがわかります。

アメリカのプロモ会社「PLANETARY」が貼ったシール

2/27 & 2/28 プレイリスト追加(訳注:オンエア解禁)
トラック3、4、5を試聴推奨。
FCC CLEAN(訳注:米連邦通信委員会の放送基準を満たしています=放送不適切用語なし)

BTS
「YOU NEVER WALK ALONE(BIT HIT ENTERTAINMENT)」
K-POPファン向け
2013年のデビューから3年で、BTSは複数の新人賞を獲得する存在から、本格的な韓国のスーパーアイドルへと成長を遂げました。彼らの目覚ましい影響力は、韓国やアジア全域にとどまらず、世界中に及んでいます。ビルボード、iTunes、オリコンなどの音楽チャートが彼らの成功の歴史を記録しています。世界中でのコンサートチケットやグッズの売り上げが、彼らの普遍的な魅力を証明しています。

プロモーション用サンプルCDのシールに書かれている文言(会社名間違ってるのが泣ける)

ちなみに「YOU NEVER WALK ALONE」のリリースは2017/2/13です。
『Not Today』『Spring Day』の他、WINGS期のメンバーソロ曲が全部入っているアルバムなのですが、試聴を推奨されているのは『Begin』『Lie』『Stigma』なのが面白いですね。アメリカ受けしそう、という判断だったんでしょうか。

このCDが未開封のままガレージセールで売られていたという事実は、当時BTSがアメリカの壁を越えるために行っていた地道なプロモーション活動と、それが関心を持たれず放置された厳しい状況を物語っています。
会社で不要とされたものが社員の手に渡り、週末の処分品セールに流れていった様子を想像すると、ARMYとしては切ないですね。

私たちイルアミ(日本のファン)には時々、国際ARMYが何故「BTSが道を切り拓いた」と強く訴えかけるのか不思議になる時がありますが、私たちにも日本コミュニティ中心に共有している物語があるように、海外にもこういったバンタンとの思い出がたくさんあるのだろうと思います。

夜が明ける前に足跡を振り返れ

해가 뜨기 전 새벽이 가장 어두우니까
먼 훗날에 넌 지금의 널 절대로 잊지 마
日が昇る前の夜明けが一番暗いから
遠い未来のおまえは、今のおまえを絶対に忘れるな

BTS『Tomorrow』より

兵役という雌伏の時間を経て(実際はソロ活動コンテンツが大量にあったので、ファンは退屈しませんでしたが……)、いよいよグループとしての再飛躍に向かうBTS。
「K-POP」というラベルを脱ぎ捨てるのか、拡大するのか、2026/3/20のリリースを控えて彼らの5thアルバム「ARIRANG」には高い注目が集まっています。

リリース後はアメリカを含むグローバル規模での反響が起こり、グラミーなどの話も出て、音楽業界もファンダムも熱狂の渦に巻き込まれるでしょう。
でも、祝祭の喜びに酔う中でも忘れたくないと思うのです。

たった一枚の未開封CDが、私たちに訴えかけてくるものを。
あの日バンタンが、まだ小さかった会社やファンダムと共に戦っていた闇の濃さを。
それを打ち破り、彼らが呼び込んだ光のまばゆさを。

追記:

「ARIRANG」がアメリカのラジオ局で放送されています!

@BTSx50Statesさんのポストより

本日午後9時(米国東部時間)時点で、『SWIM』は米国のラジオで1002回放送されました。 少なくとも11のMediabase系列局のプレイリストに正式に追加されたのです。

@BTSx50Statesさんのポストより

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