テニス上達メモ591.吉田正尚が語った「いい当たりの正体」
WBCで2試合連続逆転2ランの吉田正尚。私たちは、いい当たりを「手応えあり」と思い込んでいる。でも実際は逆です。このイメージのズレが、力みとフォームの乱れを生みます。
▶「手応えあり」という誤解
WBCオーストラリア戦、2試合連続の逆転2ランを放った吉田正尚は振り返ります。
「打った感触は本当に手に残らず、いい時って手に残らないので、振り切れたってこと」
すなわち会心の当たりを「手応えあり」と表現するのはイメージのズレ。
会心の当たりには「手応えがない」のです(関連記事「上手い人ほど軽やか」) 。
▶力む原因はイメージ
手応えありを、いいものとしてイメージしてしまうと、強く打とうとばかりする傾向性が高じます。
結果、力み、ますます会心の当たりは出にくくなります。
しかし手応えがない方向へ、気持ちと技術が推移していけば自然、巨人の大勢がいう「腕は振るものではなく振られる」、カブス今永昇太が言う「怖いぐらい力を抜く」というようになってきます。
すると会心が出るのです。
▶力を抜こうとしてはいけない
もちろん意識して、腕の力を抜くのではありません。
意識的になると、ボールは見えなくなるトレードオフの相関(関連記事「人間の認識システムの話」)。
なおかつ腕の力を抜こうと意識すると、逆にギクシャクして力が入ってしまいます(関連記事「自然体を意識すると『不自然になる』」)。
要諦は「イメージの書き換え」です。
つまり会心の当たりとは「手応えあり」ではなく、「手に残らない」イメージに書き換わると、自然と気持ちと技術が「腕は振るのではなく振られる」「怖いぐらい力を抜く」方向へ推移します。
▶フォームが乱れる原因
私たちの心身の動きはイメージが司ります。
階段の段差に関するピッチは一定であるとするイメージを備えているから、私たちは足元を見なくても、スタスタスタとリズミカルに下っていくことができます。
ところが、たとえば最後の1段だけ段差が深すぎたら、どうなるでしょう?
着地タイミングを誤って、ずっこけてしまいます。
それこそ皆さんが気にする「フォーム」も乱れます。
逆に浅すぎたら?
やはり着地タイミングを誤って、足を痛く打ちつけてしまいかねません。
着地タイミングが整うと、吉田正尚の言葉を借りれば「足に残らない」はずです(関連記事「階段をくだっているとき、最後の1段だけ段差のピッチが違っていたら?」)。
▶「本当に何も考えていない」byミスターWBC
テニス界のレジェンドであるアンドレ・アガシは「イメージがすべて」と言いました。
それが現実に対してズレていると、どんなに集中しても、誤った結果が出てしまいます。
では意識すれば、イメージは改まるのでしょうか?
否。
「本当に何も考えていない。平常心」と振り返ったという吉田正尚。
考えないから、上手くいきます(関連記事「考えないテニス」)。
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吉田無型(よしだ・むけい)
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