イップス克服に向けて057:イップス的なフォアは一度もなかった
イップスだったフォアが、一度も出なかった──。ただ調子が良かったのではなく、「崩壊が連続しなかった」事実こそ、距離感とタイミングが戻ってきた証。無意識に任せるとテニスは軽く、フォアが整うとサーブも連動して改善。「縁の糸」は意識でつかむものではなく、変えようとせずに変わっていくもの。その気づきの記録を、ここに残す。
ご無沙汰しております。いつも読まさせていただいてます。ありがとうございます。
以前、フォアハンドストロークのイップスで相談させていただいかと思います。
昨日、ダブルスの団体戦で4セットやりました。イップス的なフォアは一度もなかったです。
相手は相当なレベルで1回しか勝てませんでしたが、度々、あつい当たりのいい感覚のショットがありました。新しい発見は、ミスした時、特にバックアウトで抜けたあたりの時ですね。自分の体の動きが多分どうなってたのか、感覚的にわかるような気がしました。あー、また、あかんやつやっちゃったかー。ていうところで、ゲームの途中でショットの修正ができていた気がします。連続しておかしくなってフォアハンドストロークが崩壊するというのがなかったです。多分、感覚と実際のボールとの距離感がずれたまま打つからずっとおかしくなっていたんですかね。アカンときの感覚も残ってるので、入ったけどアカン感覚に近いショットだったとか、ミスしてもいい感覚だったとかわかる感じでした。さらには、フォアハンドストロークの改善によりなんか、サーブもよく入る感じになってきたような。それで、自分が負けたかなり上手い人達のダブルス見てると、ほんまに、タイミングドンピシャで皆さん打ってるんでプレイが軽い感じで。
吉田様がいつも言うように、1番大事なのは、感覚とタイミングなんですかね。
ちなみに、相手の玉、強烈なんでずっとベースラインからは下がって打ちました。
この数ヶ月でなぜか改善しました、何か要因があるとしたら、リターンのサイドをバックからフォアサイドにかえました。クロスのリターンは体が回るとコントロール不能になりますが、フォアサイドをやることで自然と修正されたのかもしれないです。
回答
▶水たまりの「うっかり」か、「引き込まれる」のか──その差は大きい
イップス的なフォアが一度もなかったのは、何よりでした。
ミスはあったとしても、アンフォーストエラーと、イップス的な「発作」とでは、感覚的に異質ですからね。
水たまりに気づかず、うっかりはまるのか、水たまりには気づいているのに、引き込まれるようにはまってしまうのか、くらいの違いがありそうです。
もちろん、後者のほうが、甚大です。
▶上手くいく時ほど、体の動きは分からない。意識は邪魔をしない
付け加えますと、自分の体の動きは、感覚的に分からないほうがいいですね。
この文章を集中して、スマホでお読みいただいているとしたら、指のスクロール(体の動き)などは無意識による操作で、よく分からないと思います。
上手くボールを打てているときは、体の動きを感じません。
「あー、また、あかんやつやっちゃったかー」っていう時に限って、違和感を覚えますから、体の動きに意識が向いてしまいます。
▶連続崩壊しないのは、距離感が戻った証拠
とはいえ「連続しておかしくなってフォアハンドストロークが崩壊するというのがなかった」というのは、仰せのとおり「感覚と実際のボールとの距離感」の修正が、上手くいったから。
それによって自然と、厚い当たりも増えてきます。
「相手の玉、強烈なんでずっとベースラインからは下がって打った」というのも適切です。
相手のボールが強烈にも関わらず、イメージがズレていると、さらに言えば攻撃する意図もないのに、ベースライン内にポジションを、取るのではなく、取って「しまう」のです。
▶縁の糸で伝染する。「誰も見てないし」にご用心
フォアがよくなるとサービスも良くなる。
すべてつながっていますからね。
波及効果が及びます(関連記事「小さな縁が、静かに影響を及ぼす」)。
このすべてつながっている「縁起」を忘れてしまうと、たまに「だれも見てないし」とばかりに、傲慢になったりして、そのブーメランが自業自得として返ってくるのは、私も痛感いたします(いやはや)。
それは、相手に仕返しされるというよりも、傲慢になった自分はまだこの程度か、という落胆。
こんなズルをしてしまった、という衝撃。
もやもやすることってありませんか?
その「業」に無自覚でいると、「なぜかやる気がなくなったり」「なぜか気分が落ち込んだり」「なぜか怒りやすくなったり」「なぜかとても小さなことが気になったり」する。
しかし、「なぜか」ではなくて、「だから」なのですね。
それは自業自得だから……。
気をつけたいものです。
▶「強く言えば言うことを聞く!」と、なぜか錯覚する
上手い人たちのテニスが「軽い」というのは、まさにそうだと思います。
私たちはなぜか、力めばいいショットが打てると思い込んでいる節がある。
それはあたかも、強く言えば相手が言うことを聞く(従う)に違いないと、勘違いするようなもの。
ところが現実はむしろ、強く口撃された相手は防衛反応を強めて、言うことを「聞かなくなる(逆らう)」のです。
▶上手い人ほど軽やか
「軽い」ですよね。
ジャストミートの「手応えあり!」とは言いますが、ジャストミートではむしろ手応えがありません。
ですから上手い人は、いくらテニスをやっても、(ほかの肘の外傷はあっても)「テニス肘」にはなりません。
手応えがないのだから、当然ですよね。
▶イチローの法則「変えのではなく変わる」
バックサイドからフォアへ。
そうやって環境の変化に伴い、(無意識的に)プレーが変わるのはいいですね。
変えるのではなく、変わるのです(関連記事「『言っておきたいのは変えたのではなく、変わった』byイチロー」)。
人はこけるときに、なんとか転ばないようにと、バランスやタイミングを無意識的に取ろうとして、最も運動神経を伸ばします。
オットットしているとき、「右腕を横に開いて……」「左ヒザを曲げて……」などと、体の動きは意識されません。
▶「オットット」の瞬間に能力が育つ
頭で意識しないから、体が学ぶのかもしれません。
運動神経を伸ばしたいからといって、わざとこけようとすると、どうしても身構えるから(意識的になるから)、変化は起きにくい(関連記事「意識すると『わざとらしい』」)。
スピンサーブの習得にあたって、トスを背中側へ上げると、スイングが意識的になります。
しかし図らずも背中側に上がってしまったトスを打ちにいこうとすると、自ずとスピンサービスに必要なスイングが現れるようなものです(関連記事「意識しないから、新たな能力が開花する」)。
▶「とんでもないところへ行くただ一つの道」
怪我の功名とでも、申しましょうか。
だからチャレンジして失敗する経験が大事。
リターンのサイドを、バックからフォアサイドに変えたのも挑戦。
イチローは、「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」と述べました(関連記事「全力だけじゃない。その『配分』にこそイチローらしさを見る」)。
ですから、多少のトスのズレなら打ちにいくのは、案外新たなショットの習得に役立てられたりします。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero