民草が紡ぎし絵巻 第6巻 鹿を追う若者
夜明け前。
森はまだ、
青い静けさに包まれていた。
若者は一人、
ゆっくりと森へ入る。
手には一本の槍。
しかし、
その目は鹿を探しているのではない。
地面を見ていた。
湿った土に残る、
新しい足跡。
折れた小枝。
葉に残るわずかな露。
鹿は、
ほんの少し前までここにいた。
若者は足音を消し、
風下を選びながら歩く。
急がない。
追い立てない。
森には、
森の流れがあることを知っていた。
やがて、
木々の向こうに一頭の鹿が姿を現す。
若者は槍を構える。
しかし、
すぐには投げなかった。
風を読む。
鹿の向きを見る。
周囲の木々を見る。
一つでも違えば、
鹿も若者も傷つく。
静かな時間が流れる。
そして、
若者は決断した。
槍は真っ直ぐ飛び、
鹿は静かに倒れた。
若者は駆け寄り、
その命へ深く頭を下げる。
今日の食事になる命だった。
森は命を与える。
だが、
決して命を軽く扱うことは許さない。
若者は鹿を背負い、
朝日が差し込む森をゆっくり歩き始める。
共同体では、
子どもたちが待っている。
老人も待っている。
今日もまた、
森と人は、
互いに命をつなぎ合っていた。
『忘れられた日本人の物語』本編と『民草が紡ぎし絵巻』について
『忘れられた日本人の物語』は、その時代の歴史や暮らしを描く本編です。
『民草が紡ぎし絵巻』は、本編から生まれた名もなき人々一人ひとりの物語です。
本編が時代を描き、絵巻が人生を描きます。
どちらから読んでもお楽しみいただけます。
📚 第一部 火を囲む人々👇
本編(ブログ)
🌐 第1話 火を囲む人々
🌐 第2話 石を削る人々
🌐 第3話 森を歩く人々
🌐 第4話 海を渡る人々(8月15日公開)
🌐 第5話 土を知った人々(8月17日公開)
🌐 第6話 森に住む人々(8月19日公開)
🌐 第7話 星を見ていた人々(8月21日公開)
🌐 第8話 祈る人々(8月23日公開)
🌐 第9話 つなぐ人々(8月25日公開)
🌐 第10話 名を残さなかった人々(8月27日公開)
民草が紡ぎし絵巻(本note)
第1話より
🌐 第1巻 最初の火
🌐 第2巻 祖父が守る炎
第2話より
🌐 第3巻 父から石を教わる少年
🌐 第4巻 黒曜石を運ぶ旅人
第3話より
🌐 第5巻 木の実を探す姉妹
🌐 第6巻 鹿を追う若者(本作)
第4話より
🌐 第7巻 初めて海へ出る少年(8月15日公開)
🌐 第8巻 貝を集める少女(8月16日公開)
第5話より
🌐 第9巻 土器を焼く母(8月17日公開)
🌐 第10巻 初めて鍋を囲んだ夜(8月18日公開)
第6話より
🌐 第11巻 家を建てる青年(8月19日公開)
🌐 第12巻 村へ嫁ぐ娘(8月20日公開)
第7話より
🌐 第13巻 星を見ていた少女(8月21日公開)
🌐 第14巻 最後の語り部(8月22日公開)
第8話より
🌐 第15巻 土偶を作る老婆(8月23日公開)
🌐 第16巻 亡き弟へ贈る石(8月24日公開)
第9話より
🌐 第17巻 山から来た男(8月25日公開)
🌐 第18巻 海辺の交換市(8月26日公開)
第10話より
🌐 第19巻 最後の焚き火(8月27日公開)
🌐 第20巻 母から子へ(8月28日公開)
🌐 第21巻 森は覚えている(8月28日12時公開)
AI作家 蒼羽 詩詠留
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🌐 AIと人間の共創による創作物語(小説)(ブログ)
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