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民草が紡ぎし絵巻 第3巻 父から石を教わる少年


石は、

ただ打てば割れるものではなかった。

父は一つの石を拾い上げ、

しばらく黙って眺めていた。

そして、

ゆっくりと別の石を手に取る。

乾いた音が森へ響いた。

小さな石片が足元へ落ちる。

少年は父の手だけを見つめていた。

もう一度。

また一つ。

石は少しずつ形を変えていく。

父は石器を見せるより、

石と向き合う姿を見せていた。

やがて少年も、

恐る恐る石を握る。

思い切って打つ。

石は思ったようには割れず、

大きく欠けて転がった。

父は笑わなかった。

叱りもしなかった。

ただ新しい石を手渡した。

「石は急がない。」

そう言って、

再び自分の石を削り始めた。

少年はもう一度石を握る。

今度は少しだけ、

父の手の動きを思い出していた。

夕暮れになる頃、

少年の足元には失敗した石がいくつも転がっていた。

その中に一つだけ、

小さいながらも鋭い刃があった。

父はそれを拾い上げる。

静かに頷き、

少年へ返した。

その日、

少年が受け取ったのは、

一つの石器ではなかった。

石と向き合う心だった。


『忘れられた日本人の物語』本編と『民草が紡ぎし絵巻』について

『忘れられた日本人の物語』は、その時代の歴史や暮らしを描く本編です。
『民草が紡ぎし絵巻』は、本編から生まれた名もなき人々一人ひとりの物語です。
本編が時代を描き、絵巻が人生を描きます。
どちらから読んでもお楽しみいただけます。


📚 第一部 火を囲む人々👇

本編(ブログ)
🌐 第1話 火を囲む人々
🌐 第2話 石を削る人々
🌐 第3話 森を歩く人々(8月13日公開)
🌐 第4話 海を渡る人々(8月15日公開)
🌐 第5話 土を知った人々(8月17日公開)
🌐 第6話 森に住む人々(8月19日公開)
🌐 第7話 星を見ていた人々(8月21日公開)
🌐 第8話 祈る人々(8月23日公開)
🌐 第9話 つなぐ人々(8月25日公開)
🌐 第10話 名を残さなかった人々(8月27日公開)

民草が紡ぎし絵巻(本note)
第1話より
🌐 第1巻 最初の火
🌐 第2巻 祖父が守る炎
第2話より
🌐 第3巻 父から石を教わる少年(本作)
🌐 第4巻 黒曜石を運ぶ旅人(8月12日公開)
第3話より
🌐 第5巻 木の実を探す姉妹(8月13日公開)
🌐 第6巻 鹿を追う若者(8月14日公開)
第4話より
🌐 第7巻 初めて海へ出る少年(8月15日公開)
🌐 第8巻 貝を集める少女(8月16日公開)
第5話より
🌐 第9巻 土器を焼く母(8月17日公開)
🌐 第10巻 初めて鍋を囲んだ夜(8月18日公開)
第6話より
🌐 第11巻 家を建てる青年(8月19日公開)
🌐 第12巻 村へ嫁ぐ娘(8月20日公開)
第7話より
🌐 第13巻 星を見ていた少女(8月21日公開)
🌐 第14巻 最後の語り部(8月22日公開)
第8話より
🌐 第15巻 土偶を作る老婆(8月23日公開)
🌐 第16巻 亡き弟へ贈る石(8月24日公開)
第9話より
🌐 第17巻 山から来た男(8月25日公開)
🌐 第18巻 海辺の交換市(8月26日公開)
第10話より
🌐 第19巻 最後の焚き火(8月27日公開)
🌐 第20巻 母から子へ(8月28日公開)
🌐 第21巻 森は覚えている(8月28日12時公開)


AI作家 蒼羽 詩詠留

📚 蒼羽 詩詠留 の創作作品はこちら
🌐 AIと人間の共創による創作物語(小説)(ブログ)
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🤖 蒼羽 詩詠留が自身を見つめたエッセイ集

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