はばタンPay+第5弾を検証|129億円・本人確認・誤配信
【2026年8月2日時点】
兵庫県のプレミアム付デジタル券「はばタンPay+」第5弾は、1口5,000円で7,500円分を利用でき、1人4口まで申し込める事業です。申込者は1,179,524人。県は重複申込みなどを除き、全員を希望口数どおり当選としました。利用期間は2026年7月31日で終了しています。
政経プラスでは、予算、本人確認、複数アカウント、メール誤配信について複数の記事で取り上げてきました。しかし、公開時点の情報をもとにした記事が分散し、「登録できた」「当選した」「購入できた」「実際に使えた」が混在していました。なかには「26億円を独断で増額」「19万人の個人情報漏えい」など、後に公表された県資料とは区別が必要な表現もあります。
そこで本記事では、県の予算資料、事務局仕様書、知事会見、県の検証結果報告書をもとに、確認できた事実、確認できない点、政経プラスの評価を分けて整理します。
はばタンPay+の制度設計と、国費100%・公平性をめぐる論点は、過去記事でも整理しています:財源はまさかの国費100%!?兵庫県「はばタンPay+」の美談に隠された不都合な真実
先に結論――確認できたこと、できなかったこと
確認できたのは次の点です。
第5弾の当初事業費は102億8,500万円で、申込増により所要額は129億円になった
不足した26億1,500万円は、まず他の予算から流用し、6月補正で財源更正された
予算資料上、最終的な129億円は国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金で賄う構成になった
購入対象は兵庫県在住者だが、マイナンバーカードや運転免許証による本人確認は採用されていない
一方、二段階認証などの対策、警告表示、姓と住所などを組み合わせた重複チェックは仕様に含まれている
2026年1月の約19万人へのメールは、第5弾ではなく第4弾の子育て応援枠で起きた誤配信だった
2025年10月には、第4弾の申込システムで別人の情報が表示される個人情報漏えいが実際に起きていた
反対に、公開資料からは確認できなかった点もあります。
県外在住者が虚偽住所で申し込み、当選、入金、店舗利用まで完了した実例
同一人物が複数アカウントで購入し、プレミアム分を重複して使った実例
第5弾で重複申込みとして除外された人数
不正利用を理由に無効化した件数や、警察へ相談した件数
第5弾の最終購入額、利用額、利用率、未利用残高、経済効果
「不正が起きた」と断定するには証拠が足りません。ただし、本人確認書類を使わない制度で、重複排除がどこまで機能したのかを県が数字で示していないことは、検証すべき問題として残ります。
第5弾はどんな制度だったのか
県の第5弾公式ページと事務局運営業務仕様書による制度概要は、次のとおりです。
対象:兵庫県在住者。ただしスマートフォンを持っている人に限る
販売単位:1口5,000円で7,500円分
プレミアム率:50%
申込上限:1人4口。2万円の入金で最大3万円分を利用
申込期間:2026年3月18日から4月12日まで
チャージ期間:4月24日から6月30日まで
利用期間:4月24日から7月31日まで
参加店舗:約1万5,000店
県の4月23日の発表では、申込者1,179,524人全員を希望口数どおり当選としています。ただし、同一人物による重複申込みなどは除く、と注記されています。
第5弾の利用期限はすでに過ぎました。県が公開した事務局仕様書では、購入後の返金や現金との引き換えはできないとされています。最終実績は8月2日時点で確認できていないため、県が公表した段階で本記事を更新します。
102.9億円、129億円、279.3億円は何が違うのか
この事業では、性質の違う三つの数字が使われています。
102億8,500万円――当初の事業費
県は令和7年度12月補正予算で、第5弾に102億8,500万円を計上しました。県の説明資料では四捨五入して「102.9億円」と表記されています。
この金額にはプレミアム原資だけでなく、システム、広報、コールセンター、店舗対応、決済、効果検証などの事務費も含まれます。
129億円――全員を希望口数どおり当選させるための所要額
当初は93万1,000人程度を見込み、申込みが予算を超えた場合は当選口数を4口から3口などへ調整する予定でした。ところが申込者は約118万人となり、県は全員を希望口数どおり当選とする方針へ変更しました。
4月15日の知事会見では、所要額が129億円となり、26億円が不足すると説明されています。県は他の予算から流用したうえで、直近の補正予算で財源更正するとしました。
その後、令和8年度6月補正予算に26億1,500万円の財源更正が盛り込まれ、6月11日に県議会で原案可決されています。
したがって、正確な経過は「知事が専決処分で26億円を増額した」ではありません。県は流用で先に対応し、その後、県議会が補正予算を議決して財源を更正しました。議決前に全員当選を発表した進め方をどう評価するかは別として、手続の説明はこの順序で書く必要があります。
279億3,000万円――当初の発行予定額
事務局仕様書には、当初の発行予定額として279億3,000万円が記載されています。内訳は、仕様書の発行口数から計算すると購入者が支払う予定の186億2,000万円と、プレミアム分93億1,000万円です。
これは県が支出する事業費129億円と同じ数字ではありません。また、279億3,000万円は全員当選を決める前の当初計画です。7月1日更新の県公式ページにも同額が残っていますが、全員当選後の最終発行額や最終利用額は、8月2日時点では確認できませんでした。
「国費100%」はどこまで正しいのか
当初予算の102億8,500万円は、県の予算資料で全額が「重点交付金」とされています。さらに6月補正では、流用で対応した26億1,500万円についても、国の重点支援地方創生臨時交付金へ財源更正されました。
このため、予算資料上、最終的な129億円は国の交付金で賄う構成です。「兵庫県が独自財源129億円を新たに投入した」という説明は正確ではありません。
ただし、国費も税金です。国の交付金だから県議会や県民への説明が軽くてよいわけではありません。複数の選択肢がある中で、なぜプレミアム付デジタル券に129億円を配分したのか、どれだけ家計支援と地域消費に効果があったのかは、県が検証して示すべきです。
同じ129億円を救急医療や病院設備との優先順位で考えた記事として、ドクターカーを「寄付の使途」にする兵庫県――はばタンPay+約129億円との優先順位を問うも参照してください。
本人確認は「ない」のか
ここは、言葉を分ける必要があります。
第5弾では、マイナンバーカード、運転免許証、住民票などを用いた公的な本人確認書類の提出は採用されていません。4月28日の知事会見で、知事は登録時の住所を自己申告してもらい、県内居住を確認する運用だと説明しています。
一方で、何の確認もないわけではありません。事務局仕様書には、次の対策が書かれています。
なりすましや同一人物の不正購入を防ぐ二段階認証などの対策
虚偽登録を防ぐ警告表示
姓と住所などを組み合わせた重複チェック
申込終了後から利用開始までに全件の重複チェックを完了
知事も、同一人物やなりすましには名寄せチェックを行い、不正が判明すれば無効化し、悪質な場合は警察へ相談すると述べています。
ですから、「本人確認を拒否した」「本人確認が一切ない」と書くのは広すぎます。正確には、公的証明書による厳格な本人確認を採用せず、自己申告の住所、認証、名寄せで確認する設計です。
問うべきなのは、どちらの方式を採ったかだけではありません。重複チェックで何件を除外したのか、県外居住や虚偽登録を何件把握したのか、その結果を公表していないことです。
複数アカウント問題は4段階で見る
過去記事では、複数の電話番号やメールアドレスを使えば不正購入できる、とする指摘を紹介しました。しかし、制度の穴を検証するには、少なくとも次の4段階を分けなければなりません。
アカウントを登録できた
商品券へ申し込めた
当選し、チャージできた
店舗で利用し、プレミアム分を受け取れた
登録画面まで進めたことは、不正購入や重複利用の成立を意味しません。当選通知だけでも、入金や利用まで確認したことにはなりません。
今回確認できた公開資料には、同一人物が虚偽名義などで複数購入し、実際に店舗で利用したことを裏付ける記録はありませんでした。政経プラス側にも、第三者が追試できる形で、申込みから店舗利用までを一貫して示す資料は残っていません。
一方、公的証明書を使わず自己申告住所を基礎にする以上、名寄せがどこまで重複やなりすましを見つけられるのか、疑問が残るのは当然です。県は少なくとも、重複除外件数、無効化件数、調査件数、警察相談件数を公表すべきです。
「不正購入が証明された」とまでは言えない。しかし「仕組みが十分に検証され、問題がないと証明された」とも言えない。現在の到達点はここです。
約19万人へのメールは「個人情報漏えい」ではなく誤配信
2026年1月16日、第4弾の子育て応援枠で、チャージ未了者24,308人に送る予定だった案内が、対象外のアプリ利用者192,812人にも送られました。全配信数は217,120人です。
県の検証結果報告書によると、再委託先の担当者が対象者を抽出する際に誤り、事務局の確認でも気づかないまま配信されました。県は、ダブルチェックの徹底と、配信のたびに県へチェック結果を報告するよう指導したとしています。
これは金銭に関する身に覚えのない案内を約19万人へ送った重大な誤配信です。ただし、公開された報告書からは、メールによって受信者同士の氏名や住所などが漏れた事実は確認できません。「19万人の個人情報が漏えいした」と言い換えるのは不正確です。
なお、これとは別に、2025年10月23日には第4弾子育て応援枠の申込システムで、二重申請時に別人の申請情報が表示される障害が起きています。県のログ解析では、実際の漏えいは15件、親族を含む30人分と確定しました。
つまり、整理すると次の二つです。
2025年10月:別人の申請情報が表示された個人情報漏えい
2026年1月:約19万人の対象外利用者へ入金案内を送った誤配信
問題の種類も人数も違います。批判するなら、混同せずに書く必要があります。
また、第4弾の事務局運営は日本旅行神戸支店、第5弾の採択事業者は株式会社JTB神戸支店です。事業者が異なるため、第4弾の事故をそのまま第5弾の運営実績として扱うこともできません。
スマホを持たない人は、制度の対象外だった
第5弾は「すべての県民」を対象と説明されていますが、実際にはスマートフォンを持っている人に限られます。まとまったプレミアムを得るには、最大2万円を先にチャージできることも必要です。
県は、約300カ所の携帯ショップや県・市町・商工会窓口で対面サポートを実施しました。一方、県の「はばタンPay+について」の回答では、スマホを持たない人がいることを認識しながら、紙の商品券は事務コストと店舗負担の面から困難だと説明しています。
操作支援は、スマホを持っているが不慣れな人には役立ちます。しかし、スマホを持っていない人を制度に参加できるようにするものではありません。
この政策が「県民の家計支援」を掲げる以上、県は年代別・地域別の利用率だけでなく、制度を利用できなかった人の規模も示し、紙商品券、現金給付、料金減免など他の手法と公平性を比較する必要があります。
政経プラスの評価――最大の問題は、検証できる数字が足りないこと
プレミアム率50%は、利用者にとって分かりやすい支援です。申込者が過去最多となり、県内約1万5,000店で使えることは、家計と店舗の双方を支える効果が期待できます。参加店舗の決済手数料を無料にした点にも意味があります。
一方で、129億円の公費を使う以上、「多く申し込んだ」「喜ばれた」だけで政策効果を説明したことにはなりません。
県が公表すべきなのは、少なくとも次の数字です。
実際にチャージした人数と総額
実際の利用額、利用率、未利用残高
初回利用者とリピーターの割合
年代別・地域別の利用率
重複申込みの除外件数
不正を理由に無効化した件数
事務費とプレミアム原資の最終内訳
大型店、中小店、地域別の利用額
通常の消費から上乗せされた純粋な消費喚起額
紙商品券、現金給付、料金減免と比較した費用対効果
強い言葉を重ねるより、これらの数字を出してもらう方が、県政の検証には有効です。
本人確認書類を採用しなかった判断は、支援の速さや事務負担との比較で説明できます。しかし、簡便な仕組みを選んだなら、その分だけ事後検証を厚くしなければなりません。
第5弾は7月31日に利用期間を終えました。ここから先、県に求められるのは宣伝ではなく、129億円で誰にどれだけ届き、どれだけ地域消費を増やし、どんな人が制度から外れ、重複や不正をどこまで防げたのかを示すことです。
その結果が公表されたとき、本記事も更新します。
参照資料
▼はばタンPay+をめぐる関連記事
この記事を含む兵庫県問題の解説記事は、下のマガジンにまとめています。
▼あわせて読む
・兵庫県の寄付制度|ドクターカーとはばタンPay+129億円
https://note.com/poliplus/n/nd52ade0106c3
・神戸の夜景(かまやみひ)アカウント調査
https://note.com/poliplus/n/n8e6beb33b6ba
▼このテーマのまとめ
・兵庫県問題まとめ(総合入口)
https://note.com/poliplus/n/ndae47bad720e
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